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1. 交通事故の裁判とは?
交通事故の裁判には、大きく分けて民事裁判と刑事裁判があります。それぞれどのようなものか解説します。
1-1. 民事裁判|交通事故の損害賠償請求について争う
「民事裁判(民事訴訟)」は人と人との間の紛争やトラブルを裁判所に訴えかけ、裁判所に判断をしてもらう手続きを指します。
民事裁判は、交通事故で被害者が負った損害の賠償について審理する場であり、最終的には裁判所が被害の大きさを賠償金額の大きさで評価して判断します。
なお、交通事故の裁判は事故の被害者側が起こすのが通常で、簡易裁判所または地方裁判所に提起します。加害者側が裁判を起こすケースはまれです。裁判を起こした側は「原告」、起こされた側は「被告」と呼ばれます。
1-2. 刑事裁判|加害者の刑事責任の有無や重さを判断して裁く
交通事故の裁判には、民事裁判のほかに刑事裁判もあります。
主に交通事故の被害の大きさを賠償金額の大きさで評価する民事裁判に対し、刑事裁判は加害者の刑事責任の有無やその重さを判断し、裁く手続きです。
加害者が起こした交通事故の状況や責任の重さ、被害の重さなどを考慮して、加害者に対する刑罰として、罰金や拘禁刑(刑務所などへの収容)、執行猶予などを判断する場でもあります。
この記事では、事故相手との損害賠償問題を解決する方法として、民事裁判をメインに解説していきます。
2. 【裁判は最後の手段】交通事故の損害賠償問題を解決する方法
交通事故の損害を加害者側に請求する場合、通常はいきなり裁判を起こすことはなく、まずは加害者側との示談交渉からスタートします。
加害者や加害者の保険会社と示談交渉がうまくいかなかった場合は、裁判所で話し合いをする民事調停や、裁判外で第三者を挟んで話し合う交通事故ADR(裁判外紛争解決手続)の利用を検討します。
これらの手続きでも解決できない場合や、そもそも加害者側が逃げているなどで話し合いができない場合は、最終的な解決方法として民事裁判を考えることになります。
交通事故の損害賠償問題を解決する方法に関して、それぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。
項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
示談交渉 | ・解決までの時間が短い ・費用がほとんどかからない | ・当事者の合意ができないと解決しない ・中立の立場で間に入る第三者がいないため、 双方の言い分の調整が難しいケースも多い |
ADR (裁判外紛争解決手続) | ・主要な機関のADRは手数料が基本的に無料(実費がかかる場合あり) ・進行が早く、解決までの期間が比較的短い ・弁護士に依頼をしなくても、弁護士が中立の立場で関与してくれる | ・加害者側が応じないと手続きが開始できない ・自転車同士の事故の場合や、加害者が任意保険に加入していない場合など、 ADRを利用できないケースがある
|
民事調停 | ・裁判所への申立手数料は低額 ・裁判所が間に入って話し合いを進行できる ・必ずしも法律に則った内容だけに限らず、柔軟な解決が可能 | ・加害者側が出席しないと手続きが進まない ・事故の状況自体に争いがある場合など、 事実認定ができないために解決ができないケースがある ・どちらか一方でも結論に納得しないと成立しない |
民事訴訟 | ・相手側が全面的に争う場合や話し合いに応じない場合も、 最終的に必ず結論が出る ・裁判所の基準に従った客観的な判断が出される ・裁判所の決定には強制力がある | ・経験や知識の差による影響が出やすいため、 十分な経験と知識に基づき適切に主張をして証拠を出さないと、 適正な賠償を得られない可能性がある ・手続きが複雑 ・請求額が高額になると、裁判所への手数料も高額になる ・解決までに年単位の期間を要することもある |
3. 交通事故の民事裁判を起こしてから解決するまでの流れと期間
裁判にかかる期間はそれぞれの事案ごとに異なるものの、当事者が争う項目が多いほど、裁判にかかる期間も長くなる傾向にあります。
裁判が和解で終了する場合でも6カ月から1年程度、判決へ進む場合は1年から1年半程度の期間はかかると考えておいたほうがよいでしょう。
裁判の具体的な流れは以下のとおりです。
3-1. 【STEP1】裁判所に訴状など必要書類を提出
交通事故に限らず、一般に裁判を起こす場合は、訴状や証拠資料、証拠説明書などのほか、弁護士に依頼する場合は訴訟委任状などの書類を提出する必要があります。
交通事故では、訴状の記載方法や提出する証拠などがある程度類型化されています。裁判所が求める必要な情報や資料をきちんとそろえることが重要です。
人身傷害事故の場合に提出する主な資料は以下のとおりです。
事故証明書
実況見分調書やドライブレコーダーの映像など事故状況の記録
医師が作成した自賠責書式の診断書、診療報酬明細書
各種領収書
休業損害証明書
後遺障害がある場合は後遺障害診断書や後遺障害等級認定表
ただし、これらはあくまで一例で、事案によってはほかにも必要な書類を判断して提出する必要があります。
3-2. 【STEP2】訴訟期日|口頭弁論期日、弁論準備期日など
裁判所は提出された訴状などの書類を審査し、原告(訴えを起こした側)と調整したうえで1回目の訴訟期日(裁判の日程)を決定します。その後、被告(訴えられた側)に、訴状などの書類とともに、裁判が提起されたことや1回目の裁判の日程などが通知されます。
1回目の裁判からおよそ1カ月から1カ月半に1回程度のペースで裁判の日程が開催されます。
裁判には、公開の法廷で実施され一般人が傍聴可能な「口頭弁論期日」のほか、非公開の手続きである「弁論準備期日」などがあります。
また、直接裁判所に出向いて出席する方法のほか、遠方の場合は裁判所の許可を得て電話で参加することや、昨今ではウェブ会議形式でオンラインで期日に参加することも可能になりつつあります。
3-3. 【STEP3】和解勧告や和解協議
裁判での和解とは、裁判手続きのなかで話し合うことで決着や解決をする手続きのことを指します。裁判の手続きがある程度進むと、裁判所から和解を打診されることがあり、これを「和解勧告」と言います。
また、和解の内容などに関して裁判官を交えて当事者で話し合うことを「和解協議」と言います。和解の場合、裁判所が白黒はっきり判断するわけではなく、当事者双方が合意した内容で裁判が終了するため、裁判所が出す判決と比べて、比較的柔軟な解決が可能な点がメリットです。
ただし、和解は当事者の合意ができて初めて成立するため、和解内容に一方でも同意しない場合には不成立となります。
3-4. 【STEP4】証人尋問や本人尋問
和解がまとまらない場合や、そもそも和解が困難な事案では、判決に向けて手続きが進みます。
裁判の終盤では、証人尋問や本人尋問という手続きが行われることがあります。証人尋問は、事故の目撃者や医師など、原告や被告以外の第三者の証言を裁判官の面前で聞く手続きです。一方、本人尋問は原告と被告それぞれの証言を聞く手続きです。
事故の状況や被害者の症状、後遺症の程度などについて当事者間に争いがない場合は、尋問手続きが省略されることもあります。
3-5. 【STEP5】判決
すべての審理が終了したら、裁判所による判決が出されます。
判決当日には、必ずしも当事者や代理人が出席する必要はありません。後日、判決文という書類が各当事者に、弁護士がついている場合は弁護士に渡されます。
当事者双方が判決の内容を受け入れた場合は、ここで裁判が終了し、判決が確定します。裁判が終了すると、その判決内容に従って、被害者から加害者に対して交通事故の賠償額の支払いを請求することになります。
3-6. 【STEP6】控訴や上告
判決の内容に納得ができない場合は、判決文を受け取ってから2週間以内に控訴を提起する必要があります。
控訴した場合は、控訴審で審理が行われます。最初の判決が地方裁判所の場合、控訴審は高等裁判所で実施されます。さらに、控訴審判決に不服がある場合は上告ができます。控訴審が高等裁判所の場合、上告審は最高裁判所で審理されます。
ただし、上告審はそもそも審理を受け付けてもらうことさえ非常に難しいため、実際には控訴審までで結果が決まることがほとんどです。なお、そもそも控訴審で最初の裁判所と違う判断が出るケースは、決して多くはないという点にも注意が必要です。
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4. 交通事故の民事裁判を起こすべきケース
加害者と被害者の意見や言い分が対立していて、お互いが譲ることができない場合は、話し合いでの決着は困難です。特に以下の項目について争いがある場合は、民事裁判を起こして裁判所に判断をしてもらいましょう。
過失割合:事故の責任がどちらにどのくらいあるか
後遺障害等級:事故の後遺症が後遺障害に該当するか、該当する場合は何等級か
損害額:自賠責基準か裁判所基準か、休業補償や逸失利益、慰謝料の金額は適正か
また、そもそも加害者側との話し合いが一切できない場合や、被害者側の適切な請求に対して加害者がまったく応じる気配がない場合なども、裁判を起こすべきと判断することがあります。
さらに、賠償請求の消滅時効が成立する期間が迫っている場合は、民事裁判を起こして時効が成立しないように止める必要があります。たとえば事故でけがを負った場合、人損部分の損害賠償請求の時効は、損害および加害者を知った日の翌日から5年または事故の翌日から20年です(2020年4月1日施行の民法改正後)。
5. 交通事故の民事裁判を起こすメリット
交通事故で民事裁判を起こすと、以下のようなメリットがあります。
5-1. 損害賠償額が増額される可能性がある
交通事故の損害賠償額を計算する際には、一般的に自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)という3つの基準があります。
自賠責保険基準はすべての自動車に加入が義務付けられている自賠責保険に基づいており、3つの基準のなかで最も低額となります。
任意保険基準は任意保険会社が独自で定めている支払い基準で、自賠責保険基準よりは高いものの、弁護士基準よりは低くなりやすいです。相手の保険会社は、自賠責保険基準や任意保険基準を用いて算定した賠償金額を提示してくることがほとんどです。
一方、弁護士基準は過去の裁判で判断された内容をもとにした基準で、賠償金額は最も高額になります。
裁判所も基本的に弁護士基準を参考にして判断することになるため、裁判になった場合は当初加害者の保険会社が提示してきた金額よりも、最終的に増額されるケースが少なくありません。
5-2. 相手の合意がなくても強制的に解決できる
示談交渉やADR、調停はすべて相手が同意しないと解決にいたらない手続きですが、裁判は裁判所の判決によって、最終的に相手の合意無しに強制的に決定される手続きです。
そのため、相手と話し合いの条件がまとまらない場合や、そもそも相手が話し合いにすら応じない場合でも、強制的に賠償額を決定することが可能です。
5-3. 双方が歩み寄り、和解にいたる
裁判の判決は強制的に決定を下すものですが、裁判では話し合いによる「和解」で解決することも可能です。
示談交渉などと違うのは、強制的な決定権限を持っている裁判官が、最終的に判決を出す場合の見通しをふまえて、客観的な意見を示したうえで和解案を提示し、双方に和解を勧めることがあるという点です。
最終的な判決の見通しがわかることで双方が歩み寄り、和解にいたるというケースも多くあります。
5-4. 遅延損害金を請求できる
裁判では、遅延損害金の請求をすることができます。遅延損害金とは、本来の支払期日までに賠償金の支払いがない場合、遅延日数に応じて賠償金額に一定の利率で加算されるお金です。いわば「利息」のようなもので、交通事故の場合、法律上は事故直後から遅延損害金が発生すると考えられています。
裁判を起こして勝訴判決を受けた場合、治療費や慰謝料などのほかに、事故日以降の遅延損害金も受け取ることができます。
5-5. 弁護士費用の一部を加害者側に請求できる
裁判では「弁護士費用」という項目を相手に請求することが可能です。弁護士費用は基本的に自己負担ですが、裁判で損害が認められた場合には、慰謝料などの損害の合計額に対する一定の割合の額を「弁護士費用」として受け取ることが可能になります。
もっとも、実際の弁護士費用の金額ではなく、裁判所の決定した範囲での一定額になる点に注意が必要で、損害合計額の10%程度が一般的です。たとえば損害合計額が1000万円の場合は、弁護士費用として100万円程度を加害者側に請求できます。
6. 交通事故の民事裁判を起こすデメリット
示談交渉などで話し合いが終了する場合の期間と比べて、民事裁判は長期的に時間がかかるため、その分損害賠償金を受け取れる時期が遅くなるという点がデメリットです。
一般的に裁判を起こす場合、裁判が和解で終了する場合でも6カ月から1年程度、判決へ進む場合は1年から1年半程度は期間がかかると考えておく必要があります。
また、裁判には費用もかかります。裁判所に納める手数料は、請求金額が大きくなるほど高額になり、弁護士に裁判を依頼する場合は弁護士費用がかかります。後遺障害等級の認定結果を争う場合は医師の意見書などが必要になるケースもあり、その場合には意見書の作成費用などもかかります。ただし、加入している保険の弁護士費用特約を利用できる場合は、これらの費用負担を抑えることができます。
さらに、裁判は裁判所が客観的に判断するため、必ずしも自分が思うような結果が得られない可能性がある点にも注意が必要です。
7. 交通事故の民事裁判にかかる費用は?
交通事故の民事裁判を起こす場合にかかる費用について解説します。
7-1. 裁判の手続き費用|数万円~100万円程度
交通事故の民事裁判の場合、裁判自体にかかる費用は、加害者側に求める賠償金額の大きさに比例します。訴額、つまり求める賠償金額が大きいほど、裁判所に納める手数料の金額も大きくなるためです。
裁判所に納める手数料以外にも、裁判所が書類を発送するための郵便切手代がかかることもあります。また、裁判中に医療記録など各種の記録を取り寄せたり、医師に鑑定書や意見書の作成を依頼したりすると、費用が数万円から数十万円になる場合もあります。
以下は、訴額に応じた裁判所への手数料額(印紙代)の一例です。
損害賠償請求額(訴額) | 裁判所への手数料額(印紙代) |
|---|---|
100万円 | 1万円 |
500万円 | 3万円 |
1000万円 | 5万円 |
5000万円 | 17万円 |
1億円 | 32万円 |
3億円 | 92万円 |
7-2. 弁護士費用|30万円〜数千万円
交通事故の場合の弁護士費用は、一律固定の金額ではなく、加害者側に請求する賠償額や最終的に決定された賠償額に応じて、一定の割合で決定されることが多くあります。
たとえば、加害者への請求額が1000万円で、最終的に決定された賠償額が500万円だった場合弁護士費用の一例は、以下のようになります。
【着手金:請求額の5%+9万円】
1000万円×5%+9万円=59万円
【報酬金:決定された賠償額の10%+18万円】
500万円×10%+18万円=68万円
※すべて税抜表記です。
※一般的に、請求額や決定された賠償額の金額に応じて、報酬割合が変動します。
※上記のほか、実費や弁護士日当などの費用が発生するのが一般的です。
なお、弁護士費用に関しては各弁護士がそれぞれ具体的な報酬基準を作っており、弁護士によって報酬基準が異なるため、依頼前に必ず弁護士に確認することをお勧めします。
8. 交通事故の民事裁判について、弁護士に相談や依頼をするメリット
交通事故の民事裁判について弁護士に相談や依頼をすると、以下のようなメリットがあります。
民事裁判を起こすべきかどうかについてアドバイスを受けられる
訴状などの提出書類の作成や複雑な手続きを代行してもらえる
和解に応じるべきかどうかを適切に判断できる
弁護士費用特約を活用すれば、弁護士費用の負担を減らせる
8-1. 民事裁判を起こすべきかどうかについてアドバイスを受けられる
交通事故で損害賠償額などについて相手と合意できない場合、必ずしも民事裁判を起こしたほうがよい結果になるとは限りません。裁判をすると決めてから弁護士に相談や依頼をするのではなく、示談交渉の段階で、現時点での問題や不満について一度弁護士に相談することをお勧めします。
示談交渉をこのまま進める場合と、裁判に進んだ場合の見通しの説明を弁護士から受けたうえで、民事裁判を起こしたほうがよいと判断された場合には、裁判を考えるとよいでしょう。
8-2. 訴状などの提出書類の作成や複雑な手続きを代行してもらえる
裁判を起こす場合、裁判所に提出する訴状や証拠書類などを準備する必要があり、自分で行うには非常に手間と時間がかかります。
また、交通事故の裁判では訴状の記載方法や提出する証拠などがある程度類型化されていて、裁判所が求める必要な情報と資料をきちんとそろえることが重要なポイントの一つとなります。
そのため弁護士に依頼せずに裁判を起こすと、必要な情報や資料を裁判所に出すことができず、予想以上に裁判が長期化してしまったり、場合によっては本来認められたはずの適正な賠償額が認められなくなってしまったりなどのリスクにつながるおそれもあります。
交通事故に関して経験豊富な弁護士に依頼することで、これらのリスクを抑えながら、書類作成や手続きを任せることができます。
8-3. 和解に応じるべきかどうかを適切に判断できる
裁判では、裁判所から和解案を提示されることがあります。その際、提示された和解案が適切かつ妥当なものかどうか、自ら判断したうえで和解に応じるかどうかを決定し、ときには和解条件について交渉する必要があります。和解案が適正かどうか判断するには、過去の類似の裁判例などに基づいて、和解に応じず判決に進んだ場合の見通しを判断することができる経験が必要となります。
経験のある弁護士に依頼することで、和解を提案された際の適切な判断を任せることができます。
8-4. 弁護士費用特約を活用すれば、弁護士費用の負担を減らせる
事故前から加入している自身の任意保険に弁護士費用特約が付帯している場合は、弁護士費用特約を利用することで弁護士費用の負担をゼロまたは大幅に抑えて、弁護士に依頼することが可能です。
弁護士費用の負担を抑えたうえで、さまざまなメリットを得られるため、弁護士費用特約が付いている場合は積極的に利用を検討してください。
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9. 民事裁判を通じて交通事故トラブルを解決できた事例
弁護士である筆者が、過去に実際に依頼を受けて経験した事例を紹介します。
以下のようなケースで、筆者のもとに相談と依頼がありました(個人情報保護の観点から、事案の内容を修正しています)。
タクシー乗車中に後ろからきた自動車に衝突された30代男性
診断名は頚椎椎間板損傷(けいついついかんばんそんしょう)など
後遺障害等級認定では事前認定で14級9号の認定、異議申立てを行ったところ同様の認定
保険会社は14級9号の認定結果をもとに示談提案
被害者はこの結果に納得できず筆者の事務所に相談
筆者はまず後遺障害認定結果について検討するため、医療記録を取り寄せたうえで、医師の意見を聞くなどして内容を検討しました。CTなどの画像について画像鑑定医の読影によって、客観的に見ても神経圧迫の異常所見があるとの意見書が医師から得られれば、14級より重い12級に該当するのではないかと判断しました。
ただし、このケースでは損害賠償請求の時効期間が迫っていたこともあり、後遺障害等級の認定結果に異議申立てなどを行ったうえで交渉を続けていると、時効期間を経過してしまうおそれがありました。
そこで、裁判のなかで解決をめざすこととし、民事裁判を起こしました。
CTなどの画像を含む医療記録に基づいて、専門の医師に意見書の作成を依頼し、CT画像上でも神経を圧迫している所見があるとの意見をもらいました。裁判では、その医師の判断と、実際に被害者が自覚している腕のしびれなどの症状が医学的に整合する点などを主張しました。
結果として、裁判所は後遺障害等級12級13号に相当する後遺障害が残っていると認定し、その判断を前提に後遺障害慰謝料や、将来得られるはずだった利益である逸失利益の金額を算定してもらいました。最終的には、当初保険会社から提示された金額よりも500万円以上増額した金額で和解し、決着となりました。
10. 交通事故の裁判に関してよくある質問
Q. 交通事故の相手側が裁判に出廷しないとどうなる?
相手側が裁判の日程に出席せず、こちらの提出した書類に何の反論も提出しない場合、最終的には裁判所の判断で、原告である自分の主張が全面的に認められることになります。これを「欠席判決」と呼びます。
Q. 加害者側でも、交通事故の裁判を起こせる?
一般的には被害者側から裁判を起こすことが圧倒的に多いものの、加害者側が自らに損害賠償責任がないことの確認を求める裁判を起こすことは可能です。これを債務不存在確認訴訟と言います。また、同じようなかたちで、責任はゼロではないものの一定額に限定されることを確認するための裁判を起こすことも可能です。
Q. 判決が確定したあと、加害者が賠償金を支払わない場合はどうすべき?
加害者が何の財産も持っていない場合は別ですが、基本的には確定した判決に基づき強制執行の手続きを裁判所に申し立てることを検討します。
強制執行によって、加害者の不動産や預貯金、有価証券、月々の給与などの財産を差し押さえて、強制的に損害賠償額を回収することをめざします。
Q. 交通事故で裁判にいたる割合はどのくらい?
筆者の感覚では、交通事故の依頼のうち、裁判にいたる割合は全体の10%から20%程度の印象です。多くは示談交渉などの話し合いで解決にいたっています。
加害者側と争う点が多かったり、後遺障害が重いなどの理由で賠償額が大きくなったりする事案の場合は話し合いではまとまらず、裁判での解決が適切であると判断することもあります。
また、裁判になった場合でも多くのケースでは和解で解決にいたります。判決まで進むケースはかなり少ないと言えます。
11. まとめ 交通事故で裁判を起こすべきかどうか判断する際は弁護士に相談を
民事裁判は、交通事故の相手との争いを解決するための最後の手段です。裁判には損害賠償額を増額できる可能性があるなどのメリットもありますが、時間や費用がかかるため、どんなケースでも民事裁判を起こすべきというわけではありません。
自分のケースが裁判を起こすべきか、交渉でまとめるべきかの判断は、経験や知識がないと難しいものです。弁護士に相談すれば、示談交渉をこのまま進める場合と、裁判に進んだ場合の見通しの説明を受けたうえで、裁判を起こすべきかを適切に判断できるでしょう。
加害者や保険会社からの提示額に納得がいかないなどの理由で裁判を検討し始めたら、まずは一度弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)
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