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交通事故の加害者になったらとるべき初動とは? 負う責任と対処法

更新日: / 公開日:
交通事故の加害者になった場合、どのように対応するのがベストでしょうか(c)Getty Images
交通事故を起こしてしまった場合、「まず何をしたらいいんだろう」「これからどうなってしまうのだろう」と不安になるでしょう。被害者への対応や警察からの聴取、保険会社の専門的な説明に混乱する人も少なくありません。 交通事故の加害者は、拘禁刑や罰金刑などの刑事上の責任に加え、被害者への損害賠償という民事上の責任も負います。事故直後の対応は、その後の刑事処分や示談交渉の結果に大きく影響します。そのため、落ち着いて対処することが大切です。事故後の対応に不安がある場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。 交通事故の加害者がとるべき初動のほか、加害者が負う法的責任や示談成立までの流れを弁護士がわかりやすく解説します。

目 次

1. 交通事故発生直後に加害者がすべきこと

1-1. 【STEP1】被害者を救護する

1-2. 【STEP2】道路上の危険を防止する

1-3. 【STEP3】警察に事故の報告をする

1-4. 【STEP4】保険会社に連絡する

1-5. 【STEP5】証拠保全を行う

2. 交通事故の加害者がやってはいけないこと

2-1. 被害者を救護せず「逃げ得」とばかりに立ち去る

2-2. 事故現場で示談する

2-3. 警察官にうそをついたり、逆恨みで被害者を侮辱したりする

3. 交通事故の加害者が負う法的責任

3-1. 刑事上の責任|拘禁刑や罰金刑など

3-2. 民事上の責任|損害賠償

3-3. 行政上の責任|免許の停止または取り消し

4. 交通事故の加害者になったら、事故後はどうなる? 家族にも影響は出る?

4-1. 経済的な影響

4-2. 社会生活への影響

4-3. 精神的な影響

5. 交通事故の加害者がすべきこと

5-1. 被害者の承諾を得たうえで、お見舞いをする

5-2. 警察の捜査に対して誠実に協力する

5-3. 医療機関を受診する

5-4. 過失割合に応じて、相手に損害賠償を請求する

6. 交通事故の示談が成立するまでの流れ

6-1. 事故直後の対応

6-2. 被害者側からの連絡

6-3. 示談交渉

6-4. 示談書の締結

7. 交通事故の加害者が検察や裁判所から呼び出された場合の対処法

7-1. 検察から呼び出しを受けた場合

7-2. 裁判所から呼び出しを受けた場合

8. 交通事故の加害者が弁護士に依頼するメリット

9. 交通事故の加害者がショックから立ち直れない場合の対処法

10. 交通事故の加害者に関してよくある質問

11. まとめ 交通事故の加害者になった場合は弁護士に相談を

1. 交通事故発生直後に加害者がすべきこと

交通事故が発生した直後に加害者がとるべき行動と順序は次のとおりです。

  • 【STEP1】被害者を救護する

  • 【STEP2】道路上の危険を防止する

  • 【STEP3】警察に事故の報告をする

  • 【STEP4】保険会社に連絡する

  • 【STEP5】証拠保全を行う

1-1. 【STEP1】被害者を救護する

道路交通法72条第1項は、事故を起こした運転者や乗務員には救護義務があると定めています。そのため、最優先すべきは被害者の安全確認です。

負傷者がいる場合はただちに119番通報をしたうえで、救急車が到着するまでできる限りの応急手当を行ってください。これらの救護処置を行わずに立ち去ることは「救護義務違反(ひき逃げ)」として扱われ、きわめて重い刑事罰や行政処分の対象となります。

1-2. 【STEP2】道路上の危険を防止する

停車中の事故車に後続車が衝突するなどの二次被害を防ぐため、車を安全な場所へ移動させます。ハザードランプを点灯させたり、停止表示板(三角板)や発炎筒を設置したりして、後続車に危険を知らせます。これも道路交通法第72条に定められた法的義務です。

1-3. 【STEP3】警察に事故の報告をする

どんなに軽微な事故であっても、必ずその場で警察へ通報しましょう。これも道路交通法72条第1項に定められた義務です。警察への報告を怠ると「報告義務違反」と判断されるだけでなく、保険金の請求に不可欠な「交通事故証明書」が発行されなくなります

1-4. 【STEP4】保険会社に連絡する

警察への通報と並行し、自身が加入している任意保険会社へ連絡を入れましょう。多くの保険会社は「事故から30日以内」などの通知期限を設けています。早めに連絡することで、事故後の示談交渉の進め方や被害者への対応について具体的なアドバイスを受けられます

1-5. 【STEP5】証拠保全を行う

記憶が鮮明なうちに、現場の状況を記録しておきます。これらは事故における当事者の落ち度である「過失」の割合(過失割合)の認定や刑事事件における過失の有無の判断において、適切な結論を導くための重要な材料となります。大切なのは客観的な記録を保全することです。自分の記憶に基づく説明など、客観性のないものは信用性が認められにくいです。

たとえば、車両の損傷箇所や路面のブレーキ痕、信号機や標識の位置関係など、事故現場の写真や動画をなるべく多く撮影しておけば、あとの検証に役立ちます

ドライブレコーダーのデータを保存しておくことも重要です。上書きされないよう、microSDカードを抜いて保管してください。データは思ったよりも早く消えてしまうケースが多い点に注意しましょう。

また、周囲に目撃者がいれば、連絡先を聞いておくと心強いです。

2. 交通事故の加害者がやってはいけないこと

交通事故の加害者になったときにとってはいけない言動は次の3つです。

  • 被害者を救護せず「逃げ得」とばかりに立ち去る

  • 事故現場で示談する

  • 警察官にうそをついたり、逆恨みで被害者を侮辱したりする

2-1. 被害者を救護せず「逃げ得」とばかりに立ち去る

恐怖心から事故現場を離れたり、「たいしたことはないだろう」と自己判断して立ち去ったりすることは厳禁です。これは「ひき逃げ(救護義務違反)」として厳しく処罰されます。

ひき逃げと見なされると、刑事罰が重くなるだけでなく、免許取り消しなどの非常に過酷な行政処分が科されます。また、被害者に対する損害賠償責任という観点でも、慰謝料の金額が増額される可能性があります。

必ず現場にとどまり、救護義務と通報義務を果たすようにしましょう。

2-2. 事故現場で示談する

被害者から「急いでいるから、この場で◯万円払って解決にしよう」と提案されても、絶対に応じてはいけません。事故現場での示談には次のようなリスクがあります。

【不利な条件での合意】
事故直後では、詳細な事故状況のほか、法的に妥当な過失割合や適切な損害額など詳細な賠償義務の内容が明らかではありません。その段階で示談を成立させると、不当に重い義務を課せられる可能性があり、トラブルのもととなります。

【保険金支払い対象外】
保険会社によっては「損害賠償の請求を受けた場合、事前に保険会社の承認を得ずにその全部または一部を承認しないこと」という約款があるケースが多く見られます。これに違反して勝手に示談した場合、保険金が一部または全部支払われないおそれがあります。

2-3. 警察官にうそをついたり、逆恨みで被害者を侮辱したりする

自分を正当化するためにうその供述をしたり、被害者に暴言を吐いたりすることは、かえって状況を悪化させ、次のようなリスクが発生する原因となります。

【刑事処分が加重される】
虚偽の説明は「反省の色なし」と判断され、検察官の起訴判断や裁判官の量刑判断において不利に働く可能性があります。

【示談交渉が難航する】
被害者に対する侮辱や不誠実な態度は被害感情を逆なでします。そのため、被害者から慰謝料の増額を主張されたり、スムーズに示談してもらえなくなったりするなど、示談合意が困難となる可能性があります。

3. 交通事故の加害者が負う法的責任

交通事故の加害者になった場合、刑事上の責任だけでなく、民事および行政上の責任も負うことになります。

3-1. 刑事上の責任|拘禁刑や罰金刑など

拘禁刑や罰金など、刑事裁判によって科される責任です。実際に起訴され、刑事裁判にかけられるのは重大な交通事故の場合が多いです。

【相手を死傷させたことに対する責任(自動車運転処罰法)】
交通事故により人を死傷させた場合に負う責任です。

運転中の不注意が原因であれば「過失運転致死傷罪(第5条)」が適用され、「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」が科せられます。

飲酒や暴走、信号無視などの危険運転が原因であれば「危険運転致死傷罪(第2条)」が適用され、被害者が負傷したケースでは15年以下の拘禁刑、死亡したケースでは1年以上の有期拘禁刑が科せられます。

【事故の原因となった違反に対する責任(道路交通法)】
事故を引き起こす原因となった交通ルール違反に対する責任です。

信号無視(第7条)の場合は3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が、速度超過(第22条)の場合は6カ月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が、科せられます。

酒気帯び運転と酒酔い運転(第65条1項)では、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金がそれぞれ科せられます。

【事故直後の義務を怠った責任(道路交通法)】
ひき逃げなど、事故発生後に運転者がとるべき法的義務を怠った場合に負う責任です。

救護義務違反(第72条1項前段)では5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が、報告義務違反(第72条1項後段)では3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科せられます。

3-2. 民事上の責任|損害賠償

交通事故で加害者となった際は、被害者が被った損害を金銭で賠償する責任が生じます。任意保険に加入している場合、一般的に保険会社が窓口となって示談交渉や訴訟対応を行い、賠償金が確定すれば保険金として支払われます。

賠償項目は多岐に渡ります。車の修理代のほかにも、けがをしている場合であれば治療費や入通院慰謝料、休業損害、後遺症が残る場合には後遺障害慰謝料や逸失利益なども賠償の対象となります。

なお、責任の根拠となるのは自動車損害賠償保障法3条の「運行供用者責任」や民法709条の「不法行為責任」です。

3-3. 行政上の責任|免許の停止または取り消し

いわゆる「点数制度」に基づく免許の停止や取り消しの可能性もあります。過失の重さのほか、被害の結果による加算点数に過去の違反歴に基づく点数を含めた累積点数によって、処分の内容が決定します。

加算点数の決まり方は、基礎点数と付加点数の合計で決まります。

  • 基礎点数: 事故の原因となった交通違反に対してつく点数

  • 付加点数: 過失の重さや被害の結果に応じて加算される点数

累積した合計点数が一定の基準に達すると、免許の停止や取り消しといった処分が下されます

4. 交通事故の加害者になったら、事故後はどうなる? 家族にも影響は出る?

事故の規模や任意保険の加入状況、その後の対応によって変わるものの、交通事故の加害者になると主に「経済的な影響」「社会生活への影響」「精神的な影響」が出ると想定されます。

4-1. 経済的な影響

多くの場合、加害者は事故によって多額の損害賠償責任を負担することになります。経済的な影響は、事故の結果が死傷者のいない「物損事故」なのか、死傷者のいる「人身事故」なのか、人身事故のなかでも「死亡事故」や「重度後遺障害事故」なのかといった事情に左右されます。

多額の損害賠償責任は財産状況を一変させるものであり、無保険の場合、破産を余儀なくされるケースもあります。

このような事態を回避するために、任意保険に加入したり、弁護士のサポートを受けて適切な賠償額を計算したりすることが大切です。

4-2. 社会生活への影響

過失の程度や被害の結果が重く、万が一、刑事裁判で拘禁刑が科された場合、刑務所に収監されることになり、生活状況は大きく変わります。

仮に罰金刑や執行猶予判決で刑務所への収監は免れたとしても、職種によっては解雇により失職したり、免許の停止または取り消しによって仕事や日常生活に支障をきたしたりすることもあり得ます

また、このような事態に陥ることで、家族が苦しい家計を強いられたり平穏な生活を失ったり、場合によっては近所から厳しい視線にさらされたりするなど、少なからず影響が出る可能性があります。

事故の加害者となった影響を少しでも軽減するためには、弁護士のサポートを受けることが大切です。

4-3. 精神的な影響

事故が重大なものになると、被害者に対する罪悪感や自責の念、これからの自身や家族の生活に対する不安などから、精神的なショックを受けてしまう人もいます。このような場合、迷わず専門家への相談を検討してください。

5. 交通事故の加害者がすべきこと

交通事故の加害者が事故後にとるべき対応として、次の4つが挙げられます。

  • 被害者の承諾を得たうえで、お見舞いをする

  • 警察の捜査に対して誠実に協力する

  • 医療機関を受診する

  • 過失割合に応じて、相手に損害賠償を請求する

5-1. 被害者の承諾を得たうえで、お見舞いをする

事前に承諾を得たうえで、被害者へのお見舞いを検討しましょう。この場合、自分の任意保険会社が窓口になっているのであれば、その担当者と連携し、お見舞いの時期や方法を打ち合わせるのが望ましいです。

被害者の大変な時期にお見舞いに訪れると、かえって気分を害する結果になるかもしれません。もし、被害者に断られた場合は、謝罪文の送付などを検討しましょう。

また、お見舞いに行くときには、勝手に示談の合意や支払いの約束をしないよう注意してください。

5-2. 警察の捜査に対して誠実に協力する

警察の捜査には誠実に応じることが大切です。事実をありのままに話し、反省の意思があるとわかってもらうことで、起訴される可能性が低くなるかもしれません。

また、警察が作成する「供述調書」や「実況見分調書」は、刑事処分の重さを決めるだけでなく、あとの示談交渉での過失割合にも直結するきわめて重要な証拠となります。基本的に訂正できないため、事実関係は正確に、納得いくまで説明しましょう。

5-3. 医療機関を受診する

加害者の治療費は、健康保険でカバーされる部分を除き、原則として自己負担です。

しかし、被害者側にも過失がある場合、相手が加入している自賠責保険や任意保険に対し、自分の過失割合に応じた治療費を請求できる可能性があります。

また、最近は多くの自動車保険に「人身傷害保険特約」が付帯しています。自分の加入している任意保険にこの人身傷害保険特約がついていれば、過失割合にかかわらず、自分の保険から治療費などの支払いを受けられる可能性があります。

こうした請求を行うためには、事故後、適切に医療機関を受診していることが必要です。交通事故のけが、特にむちうちなどは、数日経過してから強い痛みやしびれが出るケースも少なくありません。事故直後に受診していないと、あとから痛みが出ても事故との因果関係を疑われ、治療費の支払いを受けられなくなるおそれがあります。違和感を覚えたら、迷わず医師の診察を受けてください。

5-4. 過失割合に応じて、相手に損害賠償を請求する

事故は加害者の一方的な過失によるとは限りません。被害者側にも交通違反や不注意があれば、その程度に応じて賠償額を差し引く「過失相殺」が行われます。

このとき、過失割合に応じて、被害者への賠償額が差し引かれると同時に、自身から被害者に対しても、その過失割合に応じた損害の請求ができます。たとえば、相手にも3割の過失がある場合、加害者は自分の損害の3割を被害者側へ請求できます。

このように、過失割合の決定は重要かつ大きな争点となるため、専門家である弁護士のサポートを受けて適切に計算することが大切です。

6. 交通事故の示談が成立するまでの流れ

加害者が任意保険に加入している場合、多くの場合では保険会社の担当者が窓口となって示談交渉を進めます。事故発生から示談成立までの流れは次のとおりです。

  • 事故直後の対応

  • 被害者側からの連絡

  • 示談交渉

  • 示談書の締結

6-1. 事故直後の対応

救護や警察への報告、保険会社への連絡を確実に済ませます。また、相手の連絡先や氏名、けがの状況を把握します。同時に、事故状況に関する証拠も保全します。

6-2. 被害者側からの連絡

事故直後すぐに示談が始まるわけではありません。被害者にけががある場合、その治療経過を見守ることになります。この間の治療の確認は、保険会社が窓口となります。

治療が完了し、治療費や通院交通費、慰謝料などの損害額が確定するまで、本格的な交渉は保留です。被害者が完治するか、これ以上治療しても改善しないと医師が判断する「症状固定」の状態になったあと、後遺障害等級の認定申請が終わったあとに示談の金額交渉が始まります。

6-3. 示談交渉

治療が終了、または後遺障害等級の認定審査が終わると、損害項目の金額の確定や、過失割合の判断を経て、被害者に対して、具体的な賠償金額を提示します。これも保険会社が窓口となって提示をします。加害者自身がすることは特にありません。

ただし、被害者が示談内容に納得せず、直接連絡をしてくるようであれば、感情的なトラブルや生活への影響を避けるためにも弁護士への相談を検討したほうがよいでしょう。

6-4. 示談書の締結

被害者が提示された賠償額に合意すれば、「示談書」を作成します。示談書は「免責証書」とも呼ばれ、これに被害者が署名と捺印をすることで示談が成立します。

この示談書の内容に従って、保険会社から被害者に賠償金が支払われます。

7. 交通事故の加害者が検察や裁判所から呼び出された場合の対処法

交通事故の発生後、加害者が検察や裁判所から呼び出しを受けた場合、取り調べに誠実に対応するほか、裁判所への出廷義務などを果たすことが大切です。それぞれの場合の対処法を解説します。

7-1. 検察から呼び出しを受けた場合

事故の発生後しばらくすると、検察庁から取り調べのための呼出状が届くことがあります。これは、検察官が起訴という刑事処分を下すかどうかを判断するための重要な手続きです。

検察の取り調べは、逮捕されていない限り任意であり、強制ではありません。しかし、正当な理由なく拒否し続けると「逃亡のおそれあり」と判断され、逮捕されるリスクがあります。そのため、基本的には誠実に協力し、必ず出頭することが大切です。仕事などでどうしても都合がつかない場合、事前に担当者に連絡し、日程調整を依頼してください。

なお、警察でも検察でも、取り調べに弁護士の同席は認められていません。そのため、取り調べに対しては自分一人で臨む必要があります。

取り調べでは、罰金刑で済ませる「略式起訴」を希望するかについて意見を求められる場合もあります。略式起訴とは、正式な裁判を開かず書面審理のみで刑を確定させる手続きです。早期解決につながる一方、前科がつく点は公判(正式裁判)と変わりません。

7-2. 裁判所から呼び出しを受けた場合

裁判所から呼出状が届いたときは、まずそれが「刑事裁判」か「民事裁判」かを確認し、速やかに弁護士へ相談してください。

刑事裁判の場合、被告人として出廷義務があり、欠席すると勾留(身柄拘束)される可能性があります。刑事裁判が開かれるためには、被告人に弁護人がついている必要があります。もし、弁護士を探すことができない場合、裁判所が弁護人を選ぶ被告人国選弁護人の制度があります。通常は呼出状とともに案内文が同封されていますが、詳しくは裁判所に確認してください。

民事裁判(損害賠償請求)の場合は、任意保険に加入していれば、すぐに保険会社へ連絡します。通常は保険会社が弁護士を選任し、加害者の代理人として対応してもらえます。保険に加入していない場合は、弁護士に相談してください。呼出状を無視して欠席すると、相手の主張をすべて認めたものとして「敗訴判決」が下されるというきわめて深刻な不利益を被ります

8. 交通事故の加害者が弁護士に依頼するメリット

交通事故の加害者になった場合に弁護士に対応を依頼することには、刑事責任と民事責任それぞれの面でメリットがあります。

【刑事面でのメリット】
刑事面では、検察官への働きかけを通じて不起訴処分が得られたり、刑事裁判となった場合に罰金刑や執行猶予刑などで済むようサポートしてもらえたりする点が挙げられます。

特に、処分の軽重を決める大きな要因である被害者との示談では、感情的な対立から加害者個人では接触を拒否されるなど、交渉がスムーズに進まない可能性もあります。

このような場合に弁護士が介入することで、冷静かつ相場観をふまえた交渉が可能となり、示談成立が期待できます。また、身柄を拘束されている場合は、保釈請求などの釈放手続きを依頼することも可能です。

【民事面でのメリット】
民事面では、任意保険に加入していれば保険会社の示談代行や選任された弁護士によって適切な解決が図られるのが一般的です。しかし、保険未加入(無保険)の場合は、相手方から請求された損害額の妥当性や過失割合を自分で判断しなければならず、きわめて困難な状況に立たされます。専門的な知識がなければ、相場とかけ離れた賠償額を認めてしまうリスクもあるため、弁護士のサポートが不可欠です。

弁護士費用の目安は、刑事弁護で50万円程度からとなりますが、無罪を争う場合や保釈請求を行う場合は加算されます。民事の示談交渉は30万円程度からが目安で、請求されている金額や解決の難易度、訴訟の有無により変動します。費用については、弁護士によって違いがあるため、よく確認する必要があります。

9. 交通事故の加害者がショックから立ち直れない場合の対処法

交通事故の加害者となったことによって、「相手にけがをさせてしまった」という罪悪感や、将来への強い不安に悩まされることは十分あり得ます。人によっては、うつ状態や適応障害に陥る場合もあるかもしれません。

大切なのは、損害賠償や示談交渉、刑事手続きといった「法的な問題」と、自分自身の「心理的な問題」を切り離すことです。金銭的な補償や複雑な書類作成、被害者側との直接的なやりとりは、保険会社や弁護士といった専門家に依頼することが可能です。専門家の手を借りることで、自分は心の問題に専念できます。

そして、自分の心の問題が、うつ症状や不眠症状など、現実的な症状として出てきたときは、迷わず精神科や心療内科の医師、あるいは心理カウンセラーなどの専門家に相談してください。

事故を起こした加害者であることを理由に、専門家の手を借りることをためらう必要はありません。むしろ、心の問題に向き合う余裕を作ることで、被害者に対して誠意をもって向き合う余裕も生まれると言えます。

10. 交通事故の加害者に関してよくある質問

Q. 交通事故の加害者と被害者の決め方は?

交通事故における加害者と被害者の区別は、法律によって厳密に定義されているわけではありません。実際の手続きでは、事故における落ち度(過失)がより重いほうを「加害者」、もう一方を「被害者」と呼んでいます。

この過失の有無や大きさは、事故当時の現場の状態や車の速度、路面状況などの客観的な事実に基づき、過去の裁判例に照らして判断されます。

Q. 交通事故を起こして逮捕されることはある? 前科はいつつく?

逮捕されるのは主に「逃亡や証拠隠滅のおそれ」がある場合です。交通事故事案では、被害者が死亡した重大事故、あおり運転や飲酒運転などの危険運転、ひき逃げなどのケースで逮捕の可能性が高まります。

前科がつくタイミングは、刑事裁判または略式手続を経て有罪判決が確定した時点です。検察官が不起訴処分とした場合には前科はつきません。

Q. 被害者に謝罪すると過失割合で不利になる?

被害者へ謝罪した事実そのものが、法的な過失割合の算定に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、言動によっては、「事実と異なる事故状況や責任の度合いについて認めた」あるいは「支払いの約束をした」などと捉えられ、無用なトラブルを招く可能性があります。謝罪としてどのような言葉を選ぶのかはよく注意しましょう。

Q. 交通事故の被害者となったが、加害者にお金がない場合はどうすればいい?

加害者に支払い能力がない場合、まずは相手が任意保険に加入しているか確認しましょう。加入していればその保険会社に請求ができるため、問題ありません。

加害者が任意保険未加入の場合、強制加入である自賠責保険に被害者自身が直接請求する被害者請求を行います。仮に、自賠責保険すら未加入の場合は、自賠責保険と同等の限度額内で国から損害の補填(ほてん)を受ける政府保障事業の利用を検討します。

Q. 交通事故の被害者となったが、加害者に誠意がない場合、慰謝料の増額は可能?

加害者の対応がきわめて不誠実であると判断される場合、慰謝料の増額が認められる可能性があります。交通事故の慰謝料には原則として一定の相場があり、通院期間や日数によって金額が決まります。

また、加害者がひき逃げをしたり、事故現場で被害者を侮辱したりするなど、特段に悪質な態度をとった場合には、精神的苦痛を増大させたとして一定の割合で増額が認められるケースがあります。

11. まとめ 交通事故の加害者になった場合は弁護士に相談を

交通事故の加害者になると、さまざまな責任に対処しなければならず、大きな負担が発生します。刑事上の責任として拘禁刑や罰金刑が科されるケースがあるほか、民事上の責任として被害者への損害賠償をする必要があります。免許の停止または取り消しという行政上の処分が下される可能性もあります。

しかし、これらの責任については正しく対処していくことで、その影響を最小限にとどめられます。弁護士に対応を依頼すれば、不起訴処分に向けて検察官に働きかけてもらえたり、刑事裁判で罰金刑や執行猶予刑を得られるようにサポートしてもらえたりすることが期待できます。被害者側との示談交渉の対応を委任することも可能です。

法的な手続きを弁護士に委ねることは、決して責任逃れではありません。交通事故の加害者になったものの、どう対応すべきか迷った場合は、専門家である弁護士に相談してください。

(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)

この記事を書いた人

石井匠太郎(弁護士)

石井匠太郎(弁護士)

まえばし法律事務所 弁護士
群馬弁護士会所属、登録番号50539。一般民事、交通事故事案、家事事件、債務整理などの事件を広く取り扱う。交通事故事案については、被害者側と加害者側の双方を取り扱っており、過去の解決実績をふまえ、重度後遺障害事案や死亡事案、過失割合をめぐる紛争などの幅広い類型の事件に対して、後遺障害認定のサポートやADR、訴訟など、依頼者のために最適な紛争解決手段を選択し、適正な賠償額を獲得することに注力している。また、保険金請求に関する事件も多く取り扱っている。一橋大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。趣味はヴァイオリン演奏。
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