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1. 交通事故の過失割合が重要な理由
過失割合は、裁判においては提出された主張や証拠に基づいて、裁判官が判断します。
しかし、すべての交通事故が裁判になるわけではありません。むしろ、多くの交通事故は裁判外での和解で決着がつきます。
裁判外では、事故当事者間の話し合い(協議)に基づく合意によって、過失割合を決めるのが一般的です。この過失割合が、事故の当事者にどのような影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
1-1. 損害賠償額に大きな影響を及ぼす
交通事故に遭うと、けがによる治療費や慰謝料、車の修理費など、さまざまな損害が発生します。
たとえば、交通事故でけがをしたことにより治療費や休業損害(仕事を休まざるを得なかったために生じた損害)、慰謝料など合計100万円の損害が発生したとします。この場合、被害者の過失割合が0割であれば、100万円が100%賠償金として支払われます。
一方、たとえば被害者の過失割合が4割であれば、100万円の40%である40万円が損害額から差し引かれ、60万円が支払われます。このように被害者にも落ち度がある場合に過失割合に応じて損害賠償額を減額することを「過失相殺」と言います。
さらに、事故発生について4割の過失がある被害者は、加害者に発生した損害の40%を賠償しなくてはなりません。たとえば、加害者側の損害額の合計が50万円だった場合、40%にあたる20万円を賠償しなくてはなりません。つまり、このケースで最終的に被害者が受け取れるのは「60万円ー20万円=40万円」となります。
以上のように、過失割合は事故の当事者が受け取れる損害賠償額に大きな影響を及ぼします。
1-2. 目安となるのは「基本過失割合」
過失割合を決める際には、過去の裁判官の発表や裁判例の集積により、事故の類型(タイプ)ごとにある程度の過失割合の方向性が定まっている点をふまえなければなりません。この事故の類型ごとに定められた過失割合の方向性を「基本過失割合」と言います。
たとえば、信号機の設置されていないほぼ同じ幅の道路の交差点で、直進車同士が衝突した事故の場合、「左方優先」などの考え方から「左方から直進した左方車が4割、右方車が6割」というように基本過失割合が定められています。
また、信号機の設置されていないほぼ同じ幅の道路の交差点で、直進車と右折車が衝突した場合には「直進車が3割、右折車が7割」というように基本的過失割合が定められています。
まずは、どのような事故類型なのかを確認したうえで、該当する事故類型の基本過失割合を基準に当事者間で話し合いを進めていく必要があります。そして、基本過失割合に照らして、その割合を修正する要素がないかを検討していくのです。
1-3. 保険会社の提示する過失割合が被害者に有利とは限らない
事故の被害者となった場合、加害者側の保険会社から過失割合が提示される場合が多いでしょう。当然、加害者側の保険会社も基本的過失割合の考え方をふまえて過失割合を提案してくるケースがほとんどです。
ただし、加害者側の保険会社は被害者の味方ではありません。あくまで加害者サイドに立って提案をしてきます。そのため、加害者側が提示してきた過失割合が、被害者にとって有利な内容であるとは限りません。
したがって、加害者側の保険会社が提示した過失割合が本当に妥当なのかを必ず検討する必要があります。保険会社が提示してきた過失割合をうのみにせず、まずは弁護士に一度相談しましょう。
2. 交通事故の過失割合について弁護士に相談または依頼するメリット
交通事故の過失割合について、被害者が弁護士に相談や依頼をするメリットとして、次の5つが挙げられます。
事故状況に応じた適切な過失割合がわかる
過失割合を主張するための証拠を効果的に集められる
加害者側の不当な提示に対して、法的な観点から反論できる
示談交渉や訴訟などの対応を任せられる
慰謝料などを含めた損害賠償の増額が期待できる
2-1. 事故状況に応じた適切な過失割合がわかる
過失割合は事故類型ごとに定まっていますが、事故類型といってもさまざまです。十字路の交差点なのか丁字路の交差点なのか、優先道路なのかそうでないのか、信号機による交通整理はなされているのか、自動車同士の事故なのか自動車とバイクの事故なのかなど、事故類型は無数にあります。
事故に遭った場合、まずはこの無数にある事故類型のなかから、自身の事故に該当する類型を発見します。そのうえで、該当する事故類型の基本過失割合を修正する要素がないかを検討します。
適切な事故類型の見極めや修正要素の検討はなかなか骨が折れる作業です。一人で悩まず弁護士に相談し、適切な基本的過失割合を決定してから保険会社と交渉を行ったほうがよいでしょう。
2-2. 過失割合を主張するための証拠を効果的に集められる
適切な事故類型を探し出す、あるいは修正要素を検討する際に、そもそも事故がどのような状況で発生したかについて争いになるケースがあります。
たとえば「相手方の信号は赤信号だった」「いや、黄色信号だった」であるとか、「ウィンカーランプ(方向指示器)が点灯していなかった」「いや、点灯していた」といった争いです。そのような争いを整理してからでないと、適切な事故類型を探し出すことや、修正要素を検討することは困難です。
争いになった事故の状況を整理するのは証拠です。有力な証拠となるのはドライブレコーダー映像や警察が作成する「実況見分調書」ですが、車両の損傷箇所などから事故の状況を推認する場合もあります。
弁護士であれば、必要かつ適切な証拠を集められます。事故の状況をめぐって争いになった際には弁護士の助力が必要となるでしょう。
2-3. 加害者側の不当な提示に対して、法的な観点から反論できる
加害者側から不当と思われる過失割合が提示される場合があります。
弁護士である筆者が経験したものに次のような事例があります。
被害車両が走行していたのは優先道路であった点を考慮せずに基本過失割合が提示された
自転車の運転手が幼い児童であったことが何ら考慮されていなかった
加害車両が法律上走行してはならない道路を走行していた点が何ら考慮されていなかった
特に優先道路かそうでないか、被害者が幼い児童であったかは、保険会社としても容易に入手できるはずの情報です。そのため、こうした情報が考慮されていない保険会社の提示は不当と言わざるを得ません。
残念ながら、このように不当な提案がなされるケースはそれほど珍しくありません。保険会社の提案内容について弁護士のチェックを受けることは重要です。
2-4. 示談交渉や訴訟などの対応を任せられる
過失割合が問題となる事故に関する示談交渉の流れは次のとおりです。
事故状況についての合意
基本過失割合についての合意
修正要素についての合意
過失割合についての合意
損害賠償についての合意
このように合意を一つずつとりつけていくのは、事案によってはなかなか骨が折れる作業です。たとえ流れを理解していても、被害者自身で交渉し、適切な内容で合意をするのは簡単ではありません。
しかし、合意前に弁護士に相談すれば、適切な合意の方向性を把握でき、安心感を得られることが期待できます。
示談交渉の結果、交渉が決裂する場合もあります。過失割合について相手方と折り合いがつかない場合が典型例です。その場合、基本的には訴訟(裁判)で決着をつけることになります。裁判は民事訴訟法というルールに従って進むため、高度な専門性を必要とします。これを弁護士の助力なしに進めるのは困難です。裁判を行うのであれば、不利な結果とならないよう、弁護士をつけたほうがよいでしょう。
2-5. 慰謝料などを含めた損害賠償の増額が期待できる
慰謝料の算定には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」という3つの基準があります。
・自賠責保険基準:最低限の補償基準。強制保険である自賠責保険に基づく
・任意保険基準:任意保険会社が独自に定める。自賠責保険基準より高いが、弁護士基準より低い
・弁護士基準(裁判所基準):過去の判例に基づく。3つの基準のなかで最も高くなる
保険会社が提示する賠償金額は自賠責保険基準や任意保険基準に基づいており、裁判で用いられる弁護士基準よりも大幅に低いケースが多いです。
しかし、弁護士が介入することで、裁判を前提とした交渉が可能となるため弁護士基準での算定や請求が可能になります。それにより慰謝料の大幅な増額が期待できます。
このほかにも、後遺障害等級の認定申請やこれに基づく適切な損害賠償額の算定なども弁護士に依頼できるため、賠償額の増額につながるでしょう。
3. 交通事故の過失割合について、弁護士に相談すべきケース
過失割合をめぐって次のような状況になった場合、弁護士への相談を検討しましょう。
相手方が提示した過失割合に納得がいかない
事故の状況が複雑で基本過失割合が定められていない
証拠が少ない
後遺障害が残った、あるいは死亡したなど重大な結果が生じた
相手が弁護士に依頼している
3-1. 相手方が提示した過失割合に納得がいかない
「事故発生時、信号は赤だった」「いや、信号は黄色だった」というふうに、事故の状況について当事者双方の認識が異なる場合には、被害者が考える過失割合と加害者側の提示する過失割合とで食い違いが生じます。
このような場合、弁護士に相談すれば、どのように示談交渉を進めていくべきか、あるいは示談交渉が決裂して裁判となってしまった場合にどのような見通しとなるのかを知ることができます。
また、感情や感覚の面で、相手方の提示してきた過失割合に違和感を覚え、納得がいかない場合もあります。このような場合でも、弁護士に相談して適切な基本過失割合を知ることで、自分の違和感が正しいのかどうかを確認できます。それにより、示談時の納得感も増すでしょう。
3-2. 事故の状況が複雑で基本過失割合が定められていない
すべてのタイプの事故について、基本過失割合が定められているわけではありません。基本過失割合が示されたどの事故類型にも当てはまらない事故もあります。そのような場合に弁護士は、似たような事故がないか裁判例を検索したり、当時の運転状況から過失の程度をゼロから検討したりします。
いずれにしても、基本過失割合が定められていないような複雑な事故状況の場合、適正な過失割合を検討するのは困難で、弁護士の助力が必要になるでしょう。
3-3. 証拠が少ない
証拠となるドライブレコーダー映像がない場合、事故の状況について当事者双方の主張が食い違うケースがよくあります。証拠がないのをいいことに、事実と異なる主張をする人もいれば、悪気はなくとも思い込みや記憶違いから事故当時の状況と異なる主張をする人もいるのです。
そのような場合、実況見分調書など、ほかに重要な証拠がないか確認する必要があります。適切な過失割合を決めるには、弁護士に依頼して証拠を収集し、どのような主張ができるのかを検討することが必要となるでしょう。
3-4. 後遺障害が残った、あるいは死亡したなど重大な結果が生じた
後遺障害が残ったケースや死亡事故のケースでは、損害額が大きくなります。損害額が大きくなるということは、過失割合が1割違うだけで、受取金額に大きな差が生じるということです。
たとえば損害額が10万円であれば、被害者に1割の過失がついても減額されるのは1万円ですが、損害額が1000万円であれば100万円が減額されることになります。
そのため、損害額が大きくなる後遺障害が残ったケースや死亡事故のケースでは、できるだけ過失割合が小さくなるよう、弁護士のサポートを受けたほうがよいでしょう。
3-5. 相手方が弁護士に依頼している
加害者が弁護士に依頼すると、その後は弁護士が交渉の窓口となります。
そして、加害者側の弁護士は代理人として、基本的に加害者の利益だけを考えて交渉を行います。つまり被害者の過失割合をできるだけ大きくしようとし、被害者の損害額もできるだけ小さく評価しようとします。
そのような加害者側の弁護士を相手に、被害者自身で交渉することは困難です。相手方に弁護士がついた場合には、すぐに弁護士に依頼しましょう。
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4. 交通事故の弁護士費用の相場は?
弁護士費用は弁護士によって設定金額がさまざまですが、相場を知るうえでは「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」が参考になるでしょう。この基準は2004年3月31日に廃止されましたが、全国の弁護士会が法律相談料や書面鑑定料、着手金、報酬金、手数料などの報酬の標準を示すためのガイドラインとして策定したものです。
弁護士報酬は、事件の経済的な利益の額、つまり弁護士が介入した争いの解決により依頼者が得られた金銭的利益をもとに決まります。(旧)日本弁護士連合会報酬等基準における経済的利益の額ごとの着手金と報酬金の相場は次のとおりです。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
|---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円超3000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円超3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
5. 弁護士費用特約を利用すれば、自己負担を抑えられる
弁護士費用特約とは、主に自動車保険に付帯しており、事故時の弁護士費用を補償してくれるものです。
弁護士費用特約に加入していると、通常1回の事故につき被保険者1人あたり最大300万円までの弁護士費用が保険会社から支払われます。自分が加入していなくても、配偶者や同居の親族などが加入している弁護士費用特約を利用できるケースがあるため、保険会社に特約を利用できるか確認してみるとよいでしょう。
弁護士費用特約を利用すると、多くの場合で自己負担なく、あるいは少ない費用負担で弁護士に依頼できます。特約を利用しても保険料は上がらないため、安心して弁護士に依頼できます。なお、特約に加入していない場合は、基本的に弁護士費用はすべて自己負担となります。
6. 交通事故の過失割合について、弁護士に相談する際の流れ
まず、自身が加入している保険会社に、事故について弁護士費用特約を利用できるか確認してください。特約を利用できる場合、弁護士費用の負担を考えずに弁護士に依頼できます。
次に、交通事故に精通した弁護士を探しましょう。示談交渉が決裂した場合に備え、訴訟提起後の対応も可能な弁護士を選ぶのがよいかもしれません。
弁護士を探したら、次は実際に弁護士と会って相談をしましょう。相談時には「話を真摯に聞いてくれるか」「説明が丁寧でわかりやすいか」「依頼した場合の費用の説明が明確か」などを確認しましょう。
その弁護士に任せられると判断したら、弁護士と契約を交わして依頼します。このとき、特に弁護士費用特約の範囲内で依頼できるかを確認するとよいでしょう。
7. 弁護士に依頼して過失割合が変わった事例
筆者の手がけた事例に、依頼人の過失を無過失にすることができたケースがあります。
この事例では、コンビニエンスストアの駐車場内での事故について相手方は「5:5」の過失割合を主張していました。
相手方によれば、依頼者の車が突っ込んできたとのことでした。しかし、依頼者から提供されたドライブレコーダー映像を確認したところ、依頼者の車両は停止中で、むしろ突っ込んできたのは相手方の車両であった事実が判明したのです。
ただちに相手方の保険会社へドライブレコーダー映像を送り、依頼者の無過失を主張し、納得してもらえました。
このように、ドライブレコーダー映像のような客観的な証拠資料があると、過失割合の交渉も行いやすいです。
8. 交通事故の過失割合と弁護士に関してよくある質問
Q. 依頼する弁護士によって、最終的な過失割合は変わる?
弁護士によって過失割合が変わり得るのは当然です。なぜなら、過失割合は交渉や訴訟活動によって決まるので、弁護士が何を証拠にどのような活動をするかによって結論は変わる可能性があるからです。
交通事故案件の経験を積んだ弁護士に依頼することが望ましいですが、経験の有無を相談時に見極めることは難しいかもしれません。相談時に不明点をわかりやすく説明してくれるか、見通しをある程度明確に示してくれるか、といった視点で弁護士を選ぶとよいでしょう。
Q. 示談成立後でも、弁護士に依頼すれば過失割合を変更できる?
示談成立後は、原則として過失割合の変更はできないと考えたほうがよいでしょう。たとえば、一定の過失割合を前提に、先に物的損害(物損)について示談をしたあとに、人身損害(人損)について示談をする際には、物損の示談と異なる過失割合とすることはできない点に注意が必要です。
つまり、先行する物損についての示談で過失が5割とされたなら、あとの人損についての示談でも過失は5割となるということです。同じ事故において、物損と人損とで異なる過失割合になるのはおかしいからです。
Q. もらい事故のように過失が争われていない事故でも弁護士に相談するメリットはある?
被害者に過失のないもらい事故の場合、被害者側の保険会社は加害者側との示談交渉を代行してくれません。交渉のプロである保険会社と自ら交渉を行うと不利になる可能性が高いです。慰謝料や逸失利益(事故がなければ将来得られたはずの利益)などの損害賠償を増額させる意味でも、弁護士に依頼するメリットは大いにあります。まずはどれくらい増額が見込めるのか、弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 物損事故でも弁護士に相談してもよい?
弁護士を介入させたとしても、物損事故は人損事故と比べて損害賠償を大幅に増額することが難しいケースが多いです。そのため、受け取る賠償額が弁護士費用を下回る「費用倒れ」となるおそれがあります。ただし、弁護士費用特約が利用できれば、費用倒れは基本的に考えなくてよくなり、弁護士に依頼しやすいでしょう。
9. まとめ 交通事故の過失割合に納得できない場合は弁護士に相談を
過失割合は、事故発生の原因が当事者それぞれにどの程度あるかという点が問題になるため、対立が最も深まる争点の一つです。
過失割合は、過去の裁判例から導き出された「基本過失割合」に基づいて決められ、その後の損害賠償額にも影響を及ぼします。もっとも、事故の状況は事案によって異なり、簡単に決められないケースも少なくありません。相手方の保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合や過失割合の妥当性が判断できない場合は、交通事故に精通した弁護士に相談するのがよいでしょう。
当事者同士が感情的に対立するケースもあり、自分だけで過失割合の問題を解決するのはとても大変です。しかし、少なくとも弁護士に相談するだけで、自分の考えが正当なものなのか知ることができ、解決に向けて前進できます。また、弁護士に正式に依頼すれば、弁護士が調査、検討のうえ、依頼者の利益が最大になるよう、適切な過失割合での解決に向けて取り組んでくれます。
過失割合が争点となった場合には、一人で悩まず、弁護士に相談してみてください。
(記事は2026年5月1日時点の情報に基づいています)
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