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バイク事故のけが・後遺症の一覧 被害の特徴や賠償金について解説

更新日: / 公開日:
体が直接外部にさらされているバイクでの事故には、さまざまな部位をけがしてしまう可能性があります (c)Getty Images
突然のバイク事故に遭った場合、けがの痛みだけでなく「後遺症が残ったらどうしよう」「これから仕事や生活はどうなるのか」といった将来への不安で、心身ともに大変な思いをするケースが少なくありません。 バイク事故の被害者が受け取れる慰謝料には「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類があります。どれを請求する際にも専門的な知識が必要で、自分だけで加害者の保険会社と交渉することは大きな不安や困難が伴います。特にけがによる後遺症が残った場合、適正な補償を受けるためには弁護士からの支援が不可欠です。 死亡重傷率が高いとされるバイク事故で残る可能性のある後遺障害と、後遺障害慰謝料をはじめとする賠償金の適正な相場などについて、弁護士が詳しく解説します。

目 次

1. バイク事故の被害の特徴は?

1-1. バイク事故の発生状況

1-2. バイク事故は死亡・重傷率が高い

1-3. バイク事故のよくあるパターン

2. バイク事故によるけが・後遺症の一覧表

2-1. 頭部の後遺症

2-2. けいついの後遺症

2-3. 脊髄の損傷

2-4. 顔の後遺症

2-5. 骨折による後遺症

2-6. 内臓損傷による後遺症

3. バイク事故の被害者が受け取れる慰謝料の種類

3-1. 入通院慰謝料|けがで入院や通院をしたとき

3-2. 後遺障害慰謝料|後遺症が残ったとき

3-3. 死亡慰謝料|亡くなったとき

4. バイク事故で慰謝料以外に受け取れるお金は?

4-1. 積極損害|実際に支出した費用

4-2. 消極損害|得られなくなった収入

4-3. 自損事故の場合に受け取れる保険金

5. バイク事故で争点になりやすい過失割合

6. バイク事故で後遺症が残った場合に損害賠償を受け取るまでの流れ

6-1. 【STEP1】 医師の指示に従って通院や治療をする

6-2. 【STEP2】後遺障害診断書を発行してもらう

6-3. 【STEP3】後遺障害等級の認定を受ける

6-4. 【STEP4】加害者側と示談交渉をする

6-5. 【STEP5】交通事故ADRや訴訟を行う

6-6. 【STEP6】損害賠償が支払われる

7. バイク事故の被害者が弁護士に相談するメリット

7-1. 保険会社とのやりとりを一任できる

7-2. 賠償金を大幅に増額できる可能性がある

7-3. 後遺症が残った場合、適切な対応をしてもらえる

8. バイク事故に関する解決事例

9. バイク事故のけがや後遺症に関してよくある質問

10. まとめ バイク事故で後遺症が残った場合などは弁護士の支援が不可欠

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1. バイク事故の被害の特徴は?

バイク事故は、体が直接外部にさらされる分、大けがにつながりやすく、長期の入院の末に後遺症が残ってしまう可能性があります。最悪の場合、命を失うおそれもあります。

1-1. バイク事故の発生状況

警察庁が公表している「二輪車の安全利用の促進」という統計によると、2024(令和6)年に二輪車乗車中に重傷を負った件数は6566件、死亡者数は487人にものぼります。死亡事故に至った場合の主な損傷部位は頭部と胸部であり、頭部損傷による死亡者のうち39.7%が事故の衝撃でヘルメットが外れてしまっています

この事実は、万が一の事故に備え、ヘルメットを正しく着用し、胸部プロテクターを使用することが自分の命を守るためにいかに重要であるかを示しています。

1-2. バイク事故は死亡・重傷率が高い

バイク事故の最大の特徴は、自動車の事故と比べて死亡・重傷率が高い点にあるとされています。

その理由の一つは、体が直接外部にさらされる点です。バイク乗車時は事故の衝撃をダイレクトに受けるため、命を落とす可能性が高いと言えます。死亡事故に至らなくても、大けがを負い、長期入院の末に後遺症が残ってしまう事例も多くあります。事故直後は自覚がなくても、後々重い後遺症に苦しむおそれもあるのがバイク事故の特徴です。

1-3. バイク事故のよくあるパターン

バイク事故には、いくつかの典型的なパターンがあります。

【ケース①】交差点を直進するバイクと、対向車線から右折してくる車が衝突する事故
右折車との衝突事故(右直事故)です。右折する車が、直進してくるバイクの速度や距離を見誤ったり、見落としたりすることで発生します。

【ケース②】車が車線変更や左折をする際に、死角にいたバイクの存在に気づかず接触する事故
バイクは車体が小さいため、車のミラーの死角に入りやすいです。車が車線変更や左折をする際に、後ろのバイクに気がつかず、接触する危険性が高いと言えます。

【ケース③】すり抜け時に車に巻き込まれる事故
渋滞中も含め、バイクで車の横を通り抜けようとした際に、急にドアを開放したり、車線変更しようと不意に動き出したりした車とぶつかるケースがあります。

【ケース④】カーブでの単独事故
スピードの出し過ぎや、路面の砂や砂利、雨で濡れたマンホールなどが原因で、カーブを曲がりきれずにスリップし転倒してしまう事故もよく起こります。

2. バイク事故によるけが・後遺症の一覧表

体が直接外部にさらされているバイクでの事故には、さまざまな部位をけがしてしまう可能性があります。生活に支障をきたす後遺症が残るリスクもあります。

【バイク事故によるけが・後遺症の一覧表】

けがの部位など

主な後遺症

頭部

・高次脳機能障害

(記憶力や集中力が低下する、感情のコントロールが難しくなり怒りっぽくなる)

むち打ち(けいつい捻挫)

・しびれ

・痛み

脊髄

・中心性脊髄損傷

(手足の麻痺やしびれが続く)

・対麻痺

(下半身が完全に動かなくなる)

顔や目

・醜状障害

(顔に傷あとややけどのあとなどが残る)

・複視

(物が二重に見える)

・視力の低下

・失明

骨折

・機能障害

(関節の動きが悪くなる)

・変形障害

(骨がずれたり、まっすぐではない形でくっついてしまったりする)

・偽関節

(関節ではない部分が不安定に動いてしまう)

・短縮障害

(足の骨折によって左右の脚の長さに差が出る)

内臓

・呼吸器の障害

・肝臓や脾臓(ひぞう)などの消化器系の障害

・腎臓などの泌尿器系の障害

2-1. 頭部の後遺症

バイク事故では転倒した際に頭を強く打ちつけてしまうケースが少なくありません。ヘルメットを着用していても、脳に深刻なダメージが残り、後遺症につながる場合があります。

代表的な後遺症の一つに「高次脳機能障害」があります。これは、事故で脳が損傷を受けたことによって、記憶力や集中力が低下する、感情のコントロールが難しくなり怒りっぽくなる、物事の計画を立てて実行できなくなる、といった症状が現れる障害です。事故で脳挫傷を負い、意識が戻ったあとも以前のように仕事や日常生活を送ることが困難になる、といったケースもあります。

2-2. けいついの後遺症

バイク事故で追突されたり転倒したりした際に、首がむちのようにしなることで衝撃を受け、「むち打ち(けいつい捻挫)」と診断されるケースは非常に多いです。事故直後は興奮していて痛みを感じなくても、翌日以降に首や肩の痛み、腕や手のしびれ、頭痛、めまい、吐き気といった症状が現れるのが特徴です。

多くの場合、これらの症状は時間とともに改善しますが、治療を続けてもしびれが完全には取れなかったり、天候によって痛みがぶり返したりすることがあります。このような症状が残った場合、「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害に認定される可能性があります。軽い事故だと思っても必ず病院で診察を受けることが大切です。

2-3. 脊髄の損傷

背中を強く打ちつけた場合、「脊髄(せきずい)」という非常に重要な神経が損傷し、重篤な後遺症が残ることがあります。

脊髄は背骨の中にある神経の束であり、脳からの指令を手足に伝えたり、手足からの感覚を脳に伝えたりする役割を担っています。この神経が事故の衝撃で傷つくと、手足が動かしにくくなる麻痺や、しびれ、感覚が鈍くなるといった症状が現れます。

たとえば、事故で背骨の骨折は認められなかったものの、脊髄損傷と診察され、手足の麻痺やしびれが続く場合には「中心性脊髄損傷」と診断されることがあります。後遺症が残ると、重症度によっては下半身が完全に動かなくなる対麻痺(ついまひ)に至ることもあり、日常生活に大きな支障をきたします

2-4. 顔の後遺症

バイク事故では、顔を直接地面などに強く打ちつけてしまう事例も少なくありません。顔は人の印象を大きく左右するため、傷あとが残ると精神的な苦痛も大きくなります

代表的な後遺症として、顔に傷ややけどのあとなどが残ってしまう「醜状障害(しゅうじょうしょうがい)」があります。また、事故の衝撃で目の周りの骨を折る「眼窩底骨折(がんかていこっせつ)」などを負い、物が二重に見える複視の症状が出たり、視力が低下したりするだけでなく、最悪の場合、失明に至るといったかたちで後遺症が残る可能性もあります。

2-5. 骨折による後遺症

バイクから投げ出されたり、車の下敷きになったりして、腕や足や背骨などを骨折した場合、治療が終わっても完全に元どおりにならず、後遺症が残ることがあります。

関節の動きが悪くなる後遺症として「機能障害」があります。たとえば、手首の骨折後に「手首が以前のようにスムーズに曲がらなくなった」という症状がこれにあたります。

ほかにも、骨がずれたり、まっすぐではない形でくっついてしまったりする後遺症として「変形障害」や、骨折した部分がうまくつながらず、関節ではない部分がぐらぐらと不安定に動いてしまう状態として「偽関節(ぎかんせつ)」、足の骨折によって左右の脚の長さに差が出る後遺症として「短縮障害」があります。

2-6. 内臓損傷による後遺症

バイク事故では、転倒した際にバイクのハンドルが胸やおなかに強く当たったり、体を地面に打ちつけたりすることで、外傷がなくても内臓が損傷してしまうケースがあります。

たとえば、ろっ骨を骨折し、折れた骨が肺に刺さって呼吸が苦しくなってしまう「呼吸器の障害」が残ることがあります。また、事故の衝撃で肝臓や脾臓といった消化器系の臓器や、腎臓などの泌尿器系の臓器が損傷し、手術で臓器の一部を摘出した結果、その機能に障害が残るケースも後遺障害として認定されます。

3. バイク事故の被害者が受け取れる慰謝料の種類

バイク事故の被害者が受け取れる慰謝料には「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類があります。

慰謝料の金額は、どの基準で計算するかによって大きく変わります。主な基準は「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つです。

自賠責保険基準は、自賠責保険から支払われる保険金額を算出する基準です。事故の被害者への最低限の補償を目的としているため、3つの基準のなかで最も低い金額となります。任意保険基準は、任意保険会社が定める独自の基準で、一般には公開されていません。加害者の保険会社から提示される金額は、任意保険基準で算出されていることが多いです。

裁判所基準(弁護士基準)は過去の裁判例をもとにした基準で、3つのなかで最も高額となります。

弁護士基準での慰謝料額の相場は、下の図のとおりです。

バイク事故の慰謝料の種類と相場(裁判所基準の場合)。6カ月間通院した場合、自賠責基準の入通院慰謝料は約60万円である一方、裁判所基準では116万円(軽傷と認定される場合は89万円)が相場となる
バイク事故の慰謝料の種類と相場(裁判所基準の場合)。6カ月間通院した場合、自賠責基準の入通院慰謝料は約60万円である一方、裁判所基準では116万円(軽傷と認定される場合は89万円)が相場となる

各慰謝料について、自賠責保険基準と裁判所基準(弁護士基準)で金額を比較します。

3-1. 入通院慰謝料|けがで入院や通院をしたとき

バイク事故でけがをして入院や通院が必要になった場合、その精神的な苦痛に対して支払われるのが「入通院慰謝料」です。この金額は、どの基準で計算するかによって大きく変わります。

【自賠責保険基準】
自賠責保険はすべてのバイクで加入が義務づけられており、被害者を救済するための「対人賠償」に限定された保険です。加入者自身のけがには適用されません。法律で定められた最低限の補償をするかたちとなります。

入通院慰謝料は、次の2つの計算方法のうち、いずれか少ないほうが支払われます。ただし、治療費などを含めて上限が120万円となっている点には注意が必要です。

  • 1日あたり4300円×治療期間(入院+通院)

  • 1日あたり4300円×実治療日数(実際に入通院した日数)×2

【裁判所基準(弁護士基準)】
裁判所基準(弁護士基準)は過去の裁判例をもとにした基準で、弁護士が交渉したり裁判をしたりする際に用います。自賠責基準よりも大幅に高額になるのが一般的です。

たとえば、入院せずに6カ月間(実通院日数70日)通院した場合、自賠責基準の入通院慰謝料は約60万円である一方、裁判所基準(弁護士基準)では116万円(軽傷と認定される場合は89万円)が相場となります。金額に大きな差が出るため、適正な慰謝料を受け取るには弁護士へ相談することが大切です。

3-2. 後遺障害慰謝料|後遺症が残ったとき

治療を続けても残念ながら完治せず、後遺症が残ってしまった場合の精神的苦痛に対する補償が「後遺障害慰謝料」です。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺症の重さに応じて認定される「後遺障害等級」に基いて決まります。

下表のとおり、弁護士が介入することで受け取れる慰謝料額は2倍から3倍以上になることも珍しくありません。適正な補償を受けるためには弁護士からの支援が不可欠です。

【後遺障害等級と慰謝料額の目安】

後遺障害等級

自賠責保険基準での慰謝料額の目安

弁護士基準での慰謝料額の目安

第1級(最重度)

1100万円

2800万円

第2級

958万円

2370万円

第3級

829万円

1990万円

第4級

712万円

1670万円

第5級

599万円

1400万円

第6級

498万円

1180万円

第7級

409万円

1000万円

第8級

324万円

830万円

第9級

245万円

690万円

第10級

187万円

550万円

第11級

135万円

420万円

第12級

93万円

290万円

第13級

57万円

180万円

第14級

32万円

110万円

3-3. 死亡慰謝料|亡くなったとき

バイク事故によって家族が亡くなった場合、残された遺族の深い悲しみや精神的苦痛に対して「死亡慰謝料」が支払われます。この金額も、自賠責保険基準と弁護士基準では大きな差があります。

【自賠責保険基準】
亡くなった本人分として400万円が支払われ、さらに遺族(配偶者、子、父母)の人数に応じて加算されます。

本人の死亡慰謝料

400万円

遺族の死亡慰謝料

請求権者の数に応じて以下の金額を加算

1人:550万円

2人:650万円

3人:750万円

※被扶養者がいる場合は、上記の額に200万円を加算します。

【裁判所基準(弁護士基準)】
弁護士基準では、被害者の家庭における立場によって相場が異なります。

被害者の家庭内における立場

死亡慰謝料(本人と遺族の合計)

一家の支柱

2800万円

母親・配偶者

2500万円

その他

2000万円~2500万円

このように、弁護士基準で請求することで、受け取れる慰謝料額は大幅に増額される可能性があります。

4. バイク事故で慰謝料以外に受け取れるお金は?

バイク事故で慰謝料以外に受け取れる「積極損害(実際に支出した費用)」と「消極損害(得られなくなった収入)」、さらには自損事故の場合に受け取れる保険金について解説します。

4-1. 積極損害|実際に支出した費用

交通事故に遭わなければ支払う必要のなかった、実際にかかった費用のことを「積極損害」と言います。積極損害は主に次の6つに分けられます。

  • 治療関係費:病院での治療費、手術代、薬代など

  • 通院交通費:病院に通うために利用した公共交通機関の運賃や、自家用車を使った場合のガソリン代など

  • 付添看護費:入院中の付き添いや、通院の際の付き添いが必要になった場合の費用

  • 入院雑費:入院中に必要となる日用品や通信費など

  • 将来の介護費用:重い後遺障害が残り、将来にわたって介護が必要になった場合の費用

  • バイクの修理費:事故で壊れたバイクの修理費用

なお、事故でバイクが壊れた際、修理が不可能な全損の場合や、修理費がバイクの時価額(損害時点での市場価値)を上回る場合は、バイクの買い替えにかかる費用が認められるケースもあります。

4-2. 消極損害|得られなくなった収入

交通事故がなければ本来得られたはずの収入に関する補償を「消極損害」と言い、主に「休業損害」と「逸失利益」の2種類があります。

【休業損害】
事故によるけがの治療のために仕事を休んだことで、減ってしまった収入に対する補償です。給与所得者だけでなく、自営業者や主婦の家事労働なども対象となります。

【逸失利益】
事故が原因で後遺障害が残ってしまった、あるいは亡くなってしまったために、将来得られるはずだった収入が得られなくなったことに対する補償です。

4-3. 自損事故の場合に受け取れる保険金

相手のいない自損事故の場合でも、自分が加入している任意保険から保険金を受け取れるケースがあります。相手からの賠償がない分、自分が加入している保険の内容が重要になります。

【人身傷害保険】
自分の過失割合(不注意や落ち度の比率)にかかわらず、治療費、休業損害、慰謝料など、実際の損害額を算定して保険金が支払われます。

【搭乗者傷害保険】
人身傷害保険とは別に、契約時に定められた一定額の保険金が支払われます。

【自損事故保険】
人身傷害保険や搭乗者傷害保険に加入していない場合に、最低限の補償として、定額の保険金が支払われます。

【車両保険】
事故で壊れた自分のバイクの修理費などが補償されます。

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5. バイク事故で争点になりやすい過失割合

交通事故が発生した際に、事故の当事者双方にどれくらいの不注意(過失)があったのかを割合で示したものを「過失割合」と言います。たとえば、加害者の過失が80%、被害者の過失が20%であれば、過失割合は「80:20」となります。

過去の多くの裁判例をもとに、事故の状況ごとに基本的な過失割合が類型化されています。バイク事故で特に多い「交差点での右折車と直進バイクの事故」の場合、信号機のある交差点でお互いに青信号で進入したケースでは、基本的な過失割合は「バイク:15%、車:85%」とされています。

ただし、実際の事故では個別の状況が異なるため、基本の過失割合に「修正要素」を加えて、最終的な過失割合を判断します。たとえば、先ほどの右直事故のケースで「車がウィンカーを出さずに合図なしで右折した」「車が交差点の中心によらずにショートカットして早回り右折をした」「バイク側に時速15km以上の速度違反があった」といった事情があれば、それぞれの状況に応じて過失割合が5%から20%程度修正されます。

このように、具体的な事故状況によって過失割合は大きく変わります。保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合は、安易に合意せず、弁護士に相談することをお勧めします。

6. バイク事故で後遺症が残った場合に損害賠償を受け取るまでの流れ

バイク事故で後遺症が残った場合に損害賠償を受け取るまでには、主に次のような手順を踏みます。

6-1. 【STEP1】 医師の指示に従って通院や治療をする

けがの治療は、医師の指示に最後まで従うことが非常に重要です。途中で通院をやめてしまうと、慰謝料が減額されるだけでなく、後遺症が残った場合に正当な補償を受けられなくなる可能性があります。

治療を続けてもこれ以上はよくならない状態を「症状固定」と言います。症状固定は医学的な言葉というより、損害賠償の手続きを進めるうえでの一つの区切りです。症状固定の診断を受けるまでは、医師の指示どおりに通院を続けましょう。

6-2. 【STEP2】後遺障害診断書を発行してもらう

治療を続けても残念ながら症状が改善しなくなった症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の手続きを行います。この手続きにおいて最も重要な書類が、担当の医師に作成してもらう後遺障害診断書です。

認定される等級によって、後遺障害慰謝料の金額は大きく変わります。適切な等級認定を受けるためには、後遺障害の認定基準に沿って、具体的な症状や検査結果などが診断書に記載されていることが非常に大切です。

交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、適切に検査が行われているかや後遺障害診断書に必要事項が記載されているかを確認してもらえます。

6-3. 【STEP3】後遺障害等級の認定を受ける

医師に作成してもらった後遺障害診断書を使って、後遺症の重さに応じた等級の認定を受ける手続きに進みます。申請方法には、加害者の任意保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身で手続きを行う「被害者請求」の2種類があります。

事前認定は、加害者の保険会社が必要な書類を集めて申請してくれるため、被害者にとっては手間がかからない方法です。一方、被害者請求は、被害者自身(または依頼した弁護士)が後遺障害診断書やレントゲン写真などの資料を集めて、加害者が加入する自賠責保険会社に直接申請する方法です。適切な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者自身で資料を収集できる被害者請求のほうがお勧めです。

6-4. 【STEP4】加害者側と示談交渉をする

後遺障害等級が認定されると、すべての損害額が確定し、加害者側の保険会社との示談交渉が始まります。保険会社が提示する金額は、法的に認められる基準よりも低い独自の基準で計算されているケースがほとんどです。専門知識のない個人で対等に交渉するのは非常に困難なため、示談交渉は弁護士に依頼することをお勧めします。

6-5. 【STEP5】交通事故ADRや訴訟を行う

話し合いでの解決が難しいときは、中立的な第三者機関に間に入ってもらったり、最終的には裁判所に判断を仰いだりする方法があります。

交通事故ADR(裁判外紛争解決手続)は、裁判をせずに、交通事故の紛争解決を専門とする中立な機関で話し合う手続きです。「日弁連交通事故相談センター」や「交通事故紛争処理センター」といった機関が無料で利用でき、弁護士などの専門家が間に入って和解のあっせんをしてくれます。

訴訟は、裁判所に訴えを起こし、被害者と加害者の双方の主張や証拠をもとに、裁判官に法的な判断(判決)を下してもらう手続きです。専門的な手続きであるため弁護士への依頼が不可欠です。裁判所が法に基づいて賠償額を判断するため、保険会社の基準よりも大幅に高い基準での解決が期待できます。

6-6. 【STEP6】損害賠償が支払われる

保険会社との話し合いや裁判がすべて終わり、賠償金の金額と内容が正式に決まったあとは、指定の口座へお金が支払われることで、事件が解決します。

7. バイク事故の被害者が弁護士に相談するメリット

交通事故の対応は、心身ともに大きな負担がかかります。特に相手の保険会社は、交通事故対応のプロであり、被害者自身だけで交渉を進めるのは非常に困難です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 保険会社とのやりとりを一任できる

  • 賠償金を大幅に増額できる可能性がある

  • 後遺症が残った場合、適切な対応をしてもらえる

自分や家族が加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、保険会社が弁護士費用を負担してくれるため、実質的な自己負担なく弁護士に依頼できる場合がほとんどです。まずは自分の保険内容を確認してみましょう。できるだけ早い段階で弁護士に相談することが、納得のいく解決への第一歩です。

7-1. 保険会社とのやりとりを一任できる

賠償金の交渉や過失割合の修正など、保険会社との煩雑で精神的負担の大きいやりとりをすべて弁護士に任せられます。弁護士に一任することにより、自身は治療に専念し、一日も早い回復をめざすことができます。

さらに、示談交渉で解決しない場合でも、交通事故紛争処理センターなどのADR(裁判外紛争解決手続)や、最終手段である訴訟に移行した場合でも、弁護士は専門知識を生かし代理人として対応してくれます。

7-2. 賠償金を大幅に増額できる可能性がある

保険会社が提示する賠償額は、法律で定められた最低限の補償である自賠責保険基準、または保険会社が独自に定めている任意保険基準で計算されており、裁判で認められる「裁判所基準(弁護士基準)」よりも大幅に低いケースがほとんどです。弁護士が介入し、最も高額な弁護士基準で交渉や請求をすることで、慰謝料などの賠償金を大幅に増額できる可能性があります。

交通事故の損害額を算定する際の3つの基準の図解。弁護士に示談交渉を依頼すれば慰謝料など損害賠償の増額が期待できる
交通事故の損害額を算定する際の3つの基準の図解。弁護士に示談交渉を依頼すれば慰謝料など損害賠償の増額が期待できる

7-3. 後遺症が残った場合、適切な対応をしてもらえる

後遺症が残った場合、その症状に見合った適切な「後遺障害等級」の認定を受けることが、適正な賠償額を得るために極めて重要です。弁護士は、認定のポイントを押さえた後遺障害診断書の作成を医師に依頼する際の助言や、認定に必要な検査に関するアドバイス、そして認定機関への申請手続きまで、専門的な知識で全面的にサポートします。

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8. バイク事故に関する解決事例

筆者が弁護士として解決した過去の事例として、大型トラックが急に旋回したことにより、バイクが巻き込まれた事故があります。

事故の影響で足の関節が不自然な状態になったことにより、歩行の際に障害が残りました。また、過失割合について加害者側と争いがありました。

事故後すぐに相談があり初期の段階で代理ができたことで、後遺障害について適切な手続きをすることができ、後遺障害を認定することができました。また、過失割合についても依頼者が納得できるものとなり、交渉でスムーズに終了することができました

9. バイク事故のけがや後遺症に関してよくある質問

Q. バイク事故に遭って後遺障害の第7級が認定された場合、慰謝料はいくらもらえる?

後遺障害の第7級が認定された場合、自賠責保険基準だと慰謝料は409万円が目安です。

一方、弁護士に依頼すると、裁判でも使われる最も正当で高額な「裁判所基準(弁護士基準)」で請求します。裁判所基準(弁護士基準)での後遺障害7級の慰謝料は1000万円が相場です。加害者の保険会社の提示額より大幅に増える可能性があります。

Q. バイク事故から1カ月経過後に初めて病院に行った場合、後遺症が残っていたら慰謝料をもらえる?

時間が経ってからの通院は「本当に事故が原因なのか?」と疑われる傾向にあります。そのため、事故以外にけがの原因がないと説明をしなければなりません。事故から一定の期間を経て病院で診察を受けた際は、弁護士に相談してみましょう。

Q. バイクの運転中に自損事故を起こしたら補償は受けられる?

相手のいない自損事故では、相手を救済するための自賠責保険は使えません。自分で加入している任意保険の契約内容によっては、自分のけがに対する補償を受けられる可能性があります。

Q. バイク事故によって同乗者がけがをした場合、補償は受けられる?

同乗者も被害者としてみなされるため、補償を受けられます。事故の責任がある加害者側の自賠責保険や任意保険に対し、治療費や慰謝料など損害の賠償を求めることができます。

10. まとめ バイク事故で後遺症が残った場合などは弁護士の支援が不可欠

バイク事故による後遺障害慰謝料の金額は、後遺症の重さに応じて認定される「後遺障害等級」に基づいて決まります。医師の指示に従って通院を続け、適切な後遺障害等級を認定してもらうことが大切です。

また、弁護士に依頼して「裁判所基準(弁護士基準)」で賠償金を請求することで、加害者の保険会社が提示する賠償金額から大幅に増額できる可能性があります。

バイク事故で後遺症が残った場合に適切な損害賠償を受け取るには専門知識が不可欠であるため、少しでも疑問や不安があれば、一人で抱え込まずに専門家である弁護士へ相談することをお勧めします。

(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)

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石井政成(弁護士)

石井政成(弁護士)

石井・竹口法律事務所 代表弁護士
第二東京弁護士会所属、登録番号59308。交通事故、医療過誤、家事事件を主軸として、数多くの事件の解決に尽力する。特に後遺症が争点となる交通事故や、医療過誤事件においては、当事務所の共同代表である医師兼弁護士の竹口英伸と一体となり、医学的観点から深く事案を分析することで、後遺症の適切な認定や、正当な賠償請求の実現を力強くサポートを行う。依頼者の一人ひとりが受けた被害を最大限に回復するために、常に最善の道を模索し、全力で弁護活動に取り組んでいる。
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朝日新聞社が運営する「交通事故の羅針盤」は、交通事故問題の解決をサポートするポータルサイトです
突然の交通事故で、「まさか」という現実に直面し、不安な日々を過ごしていませんか?
身体的な苦痛に加え、保険会社とのやり取りや補償内容への疑問など、金銭的・精神的な負担は計り知れません。私たちは、そんなあなたの心を少しでも軽くしたいという想いから、交通事故問題に取り組む弁護士を集めたポータルサイト「交通事故の羅針盤」を開発しました。
このサイトでは、交通事故問題の解決に役立つ正確な情報を提供するとともに、あなたの状況に合った弁護士をスムーズに検索できるサービスを通じて、あなたの「安心の道しるべ」となることを目指しています。
「まさか」の出来事をなかったことにはできません。しかし、その後の人生を少しでも心穏やかに過ごしていくために、頼れる専門家と共に進んでいくことは可能です。
「交通事故の羅針盤」が、あなたの未来を拓く一助となれば幸いです。
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