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1. 休業損害証明書とは?|休業損害の賠償を請求する際に必要な書類
休業損害証明書とは、交通事故によって被害者が受けた休業損害に関する情報を証明する書類です。被害者の勤務先である会社などが作成します。自営業やフリーランスなどの場合は、勤務先がないため自分で収入を証明する必要があり、確定申告書や売上帳などの書類で休業損害を証明します。
「休業損害」とは、けがをして働けなくなったり、治療のために入通院したりしたために仕事を休んだことに伴い、得られなかった収入を指します。たとえば、会社員である被害者が欠勤したことにより減額された給与や、自営業者が働けなくなったために減った利益などが休業損害に当たります。
会社員などの給与所得者が、加害者側の保険会社に休業損害を請求する際には、原則として休業損害証明書の提出を求められます。保険会社は休業損害証明書の内容を確認したうえで、休業損害を支払うかどうかを判断します。
休業損害証明書は勤務先に書いてもらうものです。被害者が自分で記入してはいけません。必ず勤務先に記入を依頼しましょう。
なお、自営業者や専業主婦(主夫)などの給与所得者ではない人は、休業損害証明書を提出する必要はありません。ただし、休業損害を保険会社に請求するときは、別の方法で損害を証明する必要があります。
2. 休業損害証明書の虚偽記載はバレる?
休業損害証明書に虚偽の記載がなされる例がまれに見受けられます。たとえば、休んだ日数や過去の給与額について、実際よりも多い数字を記載する例などです。休業損害証明書に虚偽の記載が含まれていると、保険会社の調査によって発覚する可能性があるので注意が必要です。
保険会社は、源泉徴収票などの添付書類と休業損害証明書を照らし合わせて、不審な記載がないかどうかを確認します。勤務先に対して、電話や文書で照会を行うケースもあります。複数の方法で裏付けを取るため、休業損害証明書の虚偽記載はバレてしまうことがあります。
3. 休業損害証明書の虚偽記載が起きるケース
休業損害証明書は勤務先が記載するものなので、きちんとした会社に勤めていれば、基本的に虚偽記載のリスクは低いと考えられます。
しかし、中には「自分で書いておいて」などと言われて、被害者自身が休業損害証明書を記入して提出するケースもあるようです。この場合、被害者が休業損害を水増ししようとして、虚偽の記載をする例が見られます。また、勤務先が記入した休業損害証明書を受け取った後、被害者自身が改ざんすることもあるようです。
さらに、被害者と勤務先が結託して、虚偽の内容の休業損害証明書を作成するケースも考えられます。被害者が本来よりも多額の休業損害を受け取るため、休んだ日数や給与額を多めに記載するよう勤務先に依頼するような場合です。
コンプライアンスがしっかりしている会社なら、被害者のこのような要求を受け入れることはないでしょう。しかし、企業としてのコンプライアンス意識が薄い場合は、「被害者を助けてあげたい」などの思いから休業損害証明書の虚偽記載に加担する事もあり得ると思われます。
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4. 休業損害証明書の虚偽記載がバレた場合のリスク
休業損害証明書の虚偽記載が保険会社にバレた場合、休業損害が支払われません。正しい内容の休業損害証明書を提出し直す必要があります。
また、意図的に虚偽の休業損害証明書を提出した場合は、以下の罪に問われるおそれがあります。逮捕・起訴されて有罪判決を受け、刑務所に収監されることもあり得るので十分注意してください。
犯罪の種類 | 成立するケース | 法定刑 |
|---|---|---|
詐欺罪 | 保険会社にうそをついて、 本来よりも多くの休業損害などの賠償金をだまし取ろうとした場合 | 10年以下の拘禁刑 |
有印私文書偽造罪・同行使罪 | 被害者自身が休業損害証明書を記入し、 勤務先が記入したものと偽って保険会社に提出した場合 | 3カ月以上5年以下の拘禁刑 |
有印私文書変造罪・同行使罪 | 勤務先が記入した休業損害証明書を、 被害者自身が改ざんしたうえで保険会社に提出した場合 | 3カ月以上5年以下の拘禁刑 |
5. 休業損害証明書の見本・サンプル
休業損害証明書には、交通事故による休業損害の額を計算・証明するための事項を記載します。
主な記載事項は以下のとおりです。
【①休業した期間、日数】
けがの影響により、実際に休業した期間と日数を記載します。日数は欠勤・半日欠勤・年次有給休暇などの内訳別に記載します。
【②休業した日付】
実際に休業した日付を記載します。様式所定の方法により、欠勤・半日欠勤・年次有給休暇などの種類を区別します。
【③休業日における給与の支給の有無、金額】
休業した日について給与が支払われているならその旨と金額、支払われていないならその旨を記載します。給与が支払われている場合は、その額が休業損害から控除されます。
【④平均賃金を計算するために必要な情報】
休業損害の額は「平均賃金×休業日数」によって計算されるため、平均賃金を計算するために必要な情報を記載する必要があります。月給制で働いている場合は、事故前3カ月間に支払われた給与の額や勤務日数などを記載します。
【⑤休業補償給付または傷病手当金の受給の有無】
休業した日について、労災保険の休業補償給付または健康保険の傷病手当金を受給している場合はその旨と給付の種類などを、受給していない場合はその旨を記載します。二重取りはできず、労災保険や健康保険からの受給額は休業損害から控除されます。
6. 休業損害証明書を準備する際の注意点
保険会社に休業損害を請求する際には、以下の各点に注意して休業損害証明書を準備しましょう。
6-1. 自分で記入せず、必ず勤務先に書いてもらう
休業損害証明書は、被害者が自分で記入するものではなく、勤務先に書いてもらうものです。被害者自身が記入したことが発覚すると、休業損害が支払われず、さらに有印私文書偽造罪などの責任を問われるおそれがあります。
「自分で書いておいて」などと言われても、それは認められないことを伝えて、必ず勤務先の担当者に記入を依頼しましょう。
6-2. 勤務先から休業損害証明書がもらえないときの対処法
勤務先の協力を得られず、休業損害証明書を書いてもらえないときは、相手側の保険会社に相談してみましょう。代わりに提出すべき書類などの案内を受けられます。たとえば、給与明細とタイムカードやシフト表を組み合わせることで、収入と休業分を証明できる可能性があります。
また、弁護士に交通事故の対応を依頼しているなら、弁護士から勤務先に説明してもらうことも考えられます。弁護士の説得により、勤務先の考え方が変わって休業損害証明書を記入してもらえるかもしれません。
6-3. 記入漏れや間違いがないか確認する
勤務先から休業損害証明書の交付を受けたら、記入漏れや内容の誤りがないかを確認しましょう。
特に休業の日数や内訳、過去の給与額などは、支払われる休業損害の金額に直結する重要な事項です。事実に沿っているかどうかを慎重に確認しましょう。自信がない場合は、弁護士にチェックを依頼することをおすすめします。
7. 会社員が休業損害を請求してから受け取るまでの流れ
会社員などの給与所得者が、交通事故に関する休業損害の賠償を保険会社に請求し、実際に支払いを受けるまでの流れを解説します。
7-1. 【STEP1】勤務先に休業損害証明書の作成を依頼する
まずは勤務先に対して、休業損害証明書の作成を依頼します。
休業損害証明書の様式は、保険会社に問い合わせれば送付してもらえます。また、保険会社のウェブサイトからダウンロードできることもあります。受け取った様式を勤務先の担当者に渡すか、ウェブサイトのURLを案内しましょう。
7-2. 【STEP2】休業損害証明書などの必要書類を揃える
勤務先から休業損害証明書を受け取ったら、その内容が正しいかどうかを確認します。もし誤りが含まれていたら、勤務先に訂正を求めましょう。
休業損害証明書のほか、原則として前年分の源泉徴収票が必要になります。源泉徴収票が手元にない場合は、勤務先に発行してもらいましょう。源泉徴収票を準備できない場合は、事故前3カ月間の賃金台帳の写し、雇用契約書、所得証明書などによって代用できます。保険会社の指示に従って準備しましょう。
7-3. 【STEP3】加害者側の保険会社に必要書類を提出する
休業損害証明書や源泉徴収票などが揃ったら、保険会社に提出します。保険会社は審査を行い、休業損害を支払うかどうかを判断します。
休業損害の請求がすべて認められた場合は「7-6. 【STEP6】休業損害の賠償金が振り込まれる」に進んでください。一部でも拒否された場合は「7-4. 【STEP4】示談交渉を行う」に進みます。
7-4. 【STEP4】示談交渉を行う
保険会社に休業損害の請求を拒否されたときは、満額の支払いを求めて交渉します。拒否の理由を保険会社から聞き取ったうえで、的確に反論することが大切です。
保険会社との示談交渉は、弁護士に依頼することをおすすめします。労力やストレスが軽減されるほか、休業損害を含む損害賠償を増額できる可能性が高まります。
7-5. 【STEP5】ADRの申立てや訴訟提起を行う
示談交渉がまとまらないときは、ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟の利用を検討しましょう。
ADRは、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなど、裁判所以外の第三者機関が運営する紛争解決の手続きです。弁護士などの有識者が和解のあっせんや審査を行い、交通事故紛争の解決を図ります。訴訟よりも短期間で手続きが済み、解決内容も柔軟に定めやすいのがADRの特徴です。
訴訟は、裁判所において行われる紛争解決の手続きです。示談交渉やADRによる解決が難しいときは、訴訟による解決を目指しましょう。訴訟で被害者側の主張が認められれば、裁判所は判決により、保険会社に対して損害賠償の支払いを命じます。
ただし、訴訟の途中で当事者が歩み寄って和解が成立し、判決に至ることなく解決するケースもあります。当事者双方が和解を望んでおり、裁判所の心証開示などによって妥協点が見えてくれば、和解が成立する可能性が高まります。
7-6. 【STEP6】休業損害の賠償金が振り込まれる
休業損害証明書の内容に問題がないと保険会社が判断すれば、提出してから数週間程度で休業損害の賠償金が振り込まれます。示談交渉・ADR・訴訟などによって休業損害の額が確定した場合も、確定後数週間程度で振り込まれるのが一般的です。
8. 交通事故で仕事を休んだ人が弁護士に相談・依頼するメリット
交通事故の被害に遭って仕事を休んだら、損害賠償請求の対応は弁護士に依頼するのが安心です。自動車保険や火災保険に付いている弁護士費用特約を利用すれば、ほとんどの場合自己負担なしで弁護士に依頼できます。また、自分の保険に弁護士費用特約がついていなくても、家族の保険を利用できる場合があります。
交通事故で仕事を休んだ人が、弁護士に相談や依頼をすることの主なメリットは以下のとおりです。
8-1. 休業損害証明書の準備についてアドバイスを受けられる
休業損害証明書の準備にあたっては、内容の確認や勤務先に拒否された場合の対応など、さまざまなポイントに注意しなければなりません。弁護士に相談すれば、休業損害証明書の準備にあたって気を付けるべきことや、必要な対応などについてアドバイスを受けられます。
8-2. 休業損害の請求方法や適正額が分かる
休業損害証明書の準備に加えて、休業損害の請求に必要となるその他の準備や対応、支払いを受けるまでの見通しなどについても、弁護士に相談すればアドバイスを受けられます。
また、どのくらいの額の休業損害を受け取れるのかも、過去の裁判例や実務基準などを踏まえて教えてもらえます。相手方の保険会社が提示する賠償金は、最低限の補償基準である「自賠責基準」や、保険会社が独自で定める「任意保険基準」により算定されていることが多く、客観的な損害額よりも低額となる傾向にあります。被害者が正当な賠償金を受け取るには、過去の裁判例をベースとする「裁判所基準(弁護士基準)」で請求しなければなりません。
弁護士のアドバイスと保険会社の提示額を照らし合わせれば、不当に低い金額提示を見抜いて裁判所基準による増額を求めることができます。
8-3. 休業損害以外の賠償請求についてもアドバイスを受けられる
交通事故の被害者は、休業損害以外にもさまざまな項目の損害賠償を請求できます。治療費・慰謝料・逸失利益・車の修理費など、請求できる損害項目は多岐にわたります。弁護士には、休業損害以外の賠償請求についても幅広く相談可能です。
弁護士に依頼すれば、発生している損害を漏れなくリストアップして、適正な賠償金額を計算してもらえます。適正な賠償金額を知らないまま示談交渉に臨むと、慰謝料や治療費などを低く見積もられるリスクがあります。
8-4. 示談交渉を代行してもらえる
弁護士に依頼すれば、保険会社との示談交渉を代行してもらえます。加害者本人や相手の保険会社と関わらなくて済むので、労力やストレスが軽減されます。また、もし保険会社から理不尽なことを言われても、法的な観点から的確に反論してもらえるので安心です。当初の提示額からの大幅な増額も期待できます。
8-5. ADRや訴訟に発展する場合も、スムーズに対応してもらえる
保険会社との示談交渉がまとまらず、ADRや訴訟が必要になる場合にも、弁護士に依頼していればそのままスムーズに対応してもらえます。ADRや訴訟の手続きは複雑で、慎重な対応が求められます。経験を積んだ弁護士に対応を任せるのが安心です。
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9. 休業損害証明書の虚偽記載はバレるのかに関連して、よくある質問
Q. 保険会社に休業損害証明書を提出した後で、間違いに気づいたときはどうすべき?
すぐに保険会社へ連絡して、間違っている部分と正しい情報を伝えましょう。速やかに間違いを訂正すれば、大きな問題になる可能性は低いです。
Q. 休業損害証明書の虚偽記載がバレると、示談交渉で不利になる?
保険会社のチェックが厳しくなるうえに、意図的な虚偽記載の場合は刑事罰のリスクも生じるので、示談交渉でも不利に働く可能性が高いと思われます。
10. まとめ 休業損害証明書の虚偽記載はバレる可能性が高い
休業損害証明書の虚偽記載が保険会社にバレると、休業損害が支払われないだけでなく、刑事責任を問われるなど大きな問題に発展するおそれがあります。被害者自身が勝手に記入するのではなく、必ず勤務先に記入してもらい、内容が正しいことを確認したうえで保険会社に提出しましょう。
休業損害の請求を含めて、交通事故の損害賠償請求は弁護士に相談しながら進めるのが安心です。弁護士に依頼すれば、休業損害だけでなく慰謝料や逸失利益などを弁護士基準で算定し、有利に示談交渉を進めてもらえるので、早い段階で相談することをおすすめします。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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