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1. 交通事故による脳挫傷とは?
脳挫傷(のうざしょう)の主な症状や治療方法、回復の見込みなどについて解説します。
1-1. 脳挫傷の主な症状や治療方法
交通事故などによって頭部に外からの強い力がかかり、脳が衝撃を受けて損傷した状態を「脳損傷」と言います。「脳挫傷」はそのうち、脳の損傷が局所的なものを言います。
脳挫傷の状態に陥ると、意識消失などの意識障害、激しい頭痛や嘔吐、けいれん発作などが起きる場合があります。また、そのほかの症状として、腕や足などが動かない、または感覚がない麻痺の状態、眠気、平衡感覚の消失、言語障害などが生じる場合もあります。
事故から数時間以内に症状が現れる場合もあれば、事故から何日も経ってから症状が出るケースもあります。交通事故で強い衝撃を受けたら、事故の直後に症状がなくてもすみやかに医師の診察や検査を受けるのが望ましいです。
脳挫傷に脳内出血を伴う場合、出血や腫れがわずかであれば、入院し、管理された状態で出血などがおさまるまで経過観察します。
一方、損傷や出血がひどく、時間の経過とともに出血が広がり、脳室内に髄液や血腫が増大して脳の損傷が拡大するなど、重症の頭部外傷と診断される場合、多くは集中治療室に収容され、血圧のほか、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を適正なレベルに維持して管理されます。
出血によって頭蓋内の圧力が高まり、脳の中にある境界や隙間から脳組織の一部がはみ出す「脳ヘルニア」が生じた場合は、脳の圧迫を防止するために手術で血液を除去するケースもあります。
1-2. 脳挫傷の完治、回復の見込みは?
脳挫傷になると、脳の損傷した箇所が完全に修復されるのは難しいとされています。ただし、集中的なリハビリテーションと、6カ月から数年にわたる時間経過によって、失われた脳機能が回復するケースもあるとされています。
損傷した箇所の周辺で損傷した部分を補う新たな神経回路のつなぎ直しがなされたり、脳の別の箇所で損傷した領域の機能を補ったりといった作業によって、こうした機能の回復がなされると考えられています。
1-3. 脳挫傷の命の危険は?
脳挫傷が重症になると、脳の腫れや出血によって脳の圧迫や脳の内圧上昇が起こり、脳の血流が遮断されて命の危険が生じます。また、脳ヘルニアが生じた場合は呼吸や心拍などの生命維持に重要な機能を制御する脳の領域である脳幹が圧迫され、命の危険が生じます。
重症の脳挫傷の場合は、死亡率も高いとされています。軽症段階からの重症化を防ぐためには、X線を使って体内を撮影するCT検査を定期的に受けるなど、経過観察が重要とされています。
2. 交通事故で脳挫傷と診断されたらどうするべき?
交通事故で脳挫傷と診断されたら、以下のような行動をとるようにしてください。
2-1. 精密検査を受け、医師と相談しながら治療に専念する
事故時に頭部を強く打って意識喪失や意識混濁などの意識障害が生じていると、多くの場合は救急搬送されて医療機関を受診します。
仮にその場では意識がはっきりして何事もないように見えても、頭部を打った場合は事故後すぐに医療機関を受診してください。医師に頭部を打ったことを伝え、検査を受ける必要があります。
脳の損傷が見られる場合は、医師の指示のもと、損傷の程度に応じた入院治療や通院治療を慎重に進めます。たとえ症状がやわらいだとしても、自己判断で治療を中止しないようにしてください。完治した、またはそれ以上の症状改善が見込めない「症状固定」の状態になったと医師から診断を受けるまで治療を続けてください。必要な検査が行われていなければ、脳の損傷と交通事故との因果関係を証明できない可能性もあります。
2-2. 【重要】早めに弁護士に相談する
退院して通院治療に切り替わった際には、治療と並行して交通事故の加害者に対する損害賠償請求の見通しを立てるため、弁護士への早めの相談をお勧めします。
損害賠償を請求するには加害者や加害者側の保険会社とやりとりをする必要がありますが、弁護士に依頼すればこうしたやりとりを一任できるため負担から解放され、治療に専念できます。
2-3. 後遺障害等級認定の申請をする
脳挫傷による後遺症が残った場合は、後遺症の程度に応じた賠償を受けるために、後遺障害等級認定申請という手続きをします。
後遺障害等級には、後遺障害の程度が最も重い第1級から、最も軽度の第14級までの等級があります。等級が認定されるかどうか、認定された場合にどの等級になるかは、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額などに影響を与えます。逸失利益とは、事故がなければ将来得られるはずだった利益のことです。等級が1つ違うだけで、全体の賠償額が大きく異なる場合もあります。
後遺障害等級認定申請には、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者側で申請を行う「被害者請求」の2つの方法があります。どちらの方法を使うべきかは、後遺症の内容や程度によっても異なるため、弁護士から支援を受けることをお勧めします。
2-4. 加害者側と示談交渉をする
完治もしくは後遺障害等級に認定されたら、治療費や休業損害、慰謝料、逸失利益などの損害を整理し、請求金額を明確にしたうえで、加害者側と示談交渉を開始します。
示談が成立した場合は、示談の内容を記載した合意書を作成し、示談金を受け取って終了となります。
2-5. 交通事故ADRや訴訟で解決する
示談交渉がまとまらなかった場合は、裁判によらず、第三者を交えた話し合いで紛争を解決する裁判外紛争処理機関(ADR)を利用したり、裁判(訴訟)を起こしたりして、加害者側に対して損害賠償を請求します。
3. 交通事故で脳挫傷を負った場合の後遺障害慰謝料はどう決まる?
脳挫傷で後遺症が残り後遺障害慰謝料を請求する場合、用いられる基準や認定される後遺障害等級に応じて慰謝料の金額が変わります。
3-1. 慰謝料を決める3つの基準
交通事故の損害を算定する基準として、一般的に以下の3つの基準があります。
【自賠責保険基準】
自賠責保険が独自に設定している基準です。最低限度の補償であり、補償金額の上限があるなど、補償の範囲も限定されています。
【任意保険基準】
任意保険の各保険会社が独自に定めている補償基準です。補償範囲や上限について、明確な決まりはありません。具体的な基準は各保険会社が独自に内部的に定めているため、一般には公開されていません。
【弁護士基準(裁判所基準)】
過去の裁判例などをもとにしつつ、裁判所の考え方などをふまえた基準です。弁護士が通常、示談交渉や裁判で参考にするのがこの基準です。過去の裁判で判断された内容に則した基準のため、仮に裁判になった場合でも、裁判所も基本的にはこの基準を参考にして判断します。
通常は、自賠責保険基準→任意保険基準→弁護士基準の順で基準となる金額が高くなります。弁護士が依頼を受けた場合は、弁護士基準で算定した金額で交渉を行います。
3-2. 後遺障害慰謝料は等級ごとに金額が大きくなる
後遺障害慰謝料では、自賠責保険基準と弁護士基準において、設定された等級ごとに金額の目安が定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
1級 (要介護) | 1650万円 | 2800万円 |
2級 (要介護) | 1203万円 | 2370万円 |
1級 | 1150万円 (1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円 (958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円 (829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円 (712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円 (599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円 (498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
自賠責保険基準においては、第1級、第2級についてのみ、介護が必要とされる後遺障害の場合に通常の第1級、第2級の慰謝料に上乗せされた金額が設定されています。
被扶養者がいる場合はさらに上乗せされ、第1級は1850万円、第2級は1373万円となります。また、初期費用として第1級は500万円、第2級は205万円が加算されます。
弁護士基準の後遺障害慰謝料の金額は、各等級とも自賠責保険基準よりも高い金額に設定されています。また、第1級、第2級において、介護が必要かどうかは問いません。
4. 交通事故の脳挫傷でなり得る後遺症および後遺障害等級
脳挫傷を負った際になり得る後遺症や、後遺障害等級について解説します。
4-1. 身体性機能障害:麻痺など
脳挫傷によって脳内の運動機能を支配する部分が損傷すると、身体の麻痺や歩行障害、バランス感覚の障害などを引き起こす場合があります。これを「身体性機能障害」と言います。
身体性機能障害の一つである麻痺の場合、その程度によって認定される可能性のある後遺障害等級は以下のとおりです。
等級 | 該当する具体例 |
|---|---|
第1級1号 (別表第1) | ①高度の四肢麻痺(両手両足すべての麻痺) ②中程度の四肢麻痺で常時介護を要するもの ③高度の片麻痺(片側の上下肢の麻痺)で常時介護を要するもの のいずれか |
第2級1号 (別表第1) | ①中程度の四肢麻痺 ②軽度の四肢麻痺で随時介護を要するもの ③高度の片麻痺(上肢または下肢の一つのみの麻痺)で随時介護を要するもの のいずれか |
第3級3号 (別表第2) | 中等度の四肢麻痺で介護を要しないもの |
第5級2号 (別表第2) | ①軽度の四肢麻痺 ②中程度の片麻痺 ③高度の単麻痺 のいずれか |
第7級4号 (別表第2) | ①軽度の片麻痺 ②中程度の単麻痺 のいずれか |
第9級10号 (別表第2) | 軽度の単麻痺 |
第12級13号 (別表第2) | 軽微な麻痺で、運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度のもの |
なお、「程度」の判断基準は以下のとおりです。
【高度】障害のある部分の運動性や支持性がほとんど失われ、下肢の場合は歩行や立位、上肢の場合は物を持ち上げて移動させるなどの基本動作ができないもの。
【中等度】障害のある部分の運動性や支持性が相当程度失われ、障害のある部分の基本動作にかなりの制限があるもの。
【軽度】障害のある部分の運動性や支持性が多少失われており、障害のある部分の基本動作を行う際の巧緻性(こうちせい)および速度が相当程度損なわれているもの。
4-2. 遷延性意識障害
「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」は、脳挫傷などによって意識不明となり、そのまま長期の昏睡状態に陥る状態を言います。呼吸や心拍などの生命維持活動は保たれているものの、食事や移動、排泄、意思疎通などの自発的な活動はできない状態と理解されています。
遷延性意識障害は、「植物状態」とも呼ばれます。日本脳神経外科学会によると、「植物状態」とは治療をしていても、3カ月以上、以下の6項目を満たす状態のことを指すとされています。
自力移動不能
自力摂食不能
糞尿失禁状態
意味のある発語不能
簡単な従命以上の意思疎通不能
追視あるいは認識不能
遷延性意識障害と診断された場合、通常は、食事や排泄、自立ができず全面的に介護を要する状態、いわゆる「寝たきり」の状態であるため、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として、後遺障害等級1級1号(別表第1)に該当すると判断されます。
4-3. 高次脳機能障害(記憶障害や注意障害など)
「高次脳機能障害」とは、脳の損傷などによって記憶や言語、判断、感情のコントロールなどのさまざまな機能に障害が出て、日常生活や社会生活に支障が生じる状態を指します。
代表的な症状には以下のようなものがあります。
記憶障害:何度も同じことを話したり質問したりする、物の置き場所を忘れる
注意障害:作業にミスが多い、集中力が続かない
社会的行動障害:何事にもイライラする、コミュニケーションがとれなくなった
遂行機能障害:行き当たりばったりの行動をし、計画性がない
失語や失認など
高次脳機能障害と診断された場合、その程度によって認定される可能性のある後遺障害等級は以下のとおりです。
等級 | 該当する具体例 |
|---|---|
第1級1号 (別表第1) | ①重篤な高次脳機能障害のため常時介護を要するもの ②高次脳機能障害による高度の認知症などで常時監視が必要となるもの のいずれか |
第2級1号 (別表第1) | ①重篤な高次脳機能障害のため、食事、入浴、用便、更衣などに随時介護を要するもの ②高次脳機能障害による認知症などで随時他人による監視を必要とするもの など |
第3級3号 (別表第2) | ①4つの能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの ②4つの能力のいずれか2つ以上の大部分が失われていて著しく困難が大きいもの のいずれか |
第5級2号 (別表第2) | ① 4つの能力のいずれか1つの能力の大部分が失われていて著しく困難が大きいもの ②4つの能力のいずれか2つ以上の半分程度が失われていて、困難はあるがかなりの援助があればできるもの のいずれか |
第7級4号 (別表第2) | ① 4つの能力のいずれか1つの能力の半分程度が失われていて、困難はあるがかなりの援助があればできるもの ②4つの能力のいずれか2つ以上が相当程度失われていて、困難はあるが多少の援助があればできるもの のいずれか |
第9級10号 (別表第2) | 4つの能力のいずれか1つの能力の相当程度が失われていて、困難はあるが多少の援助があればできるもの |
なお、表で出てくる「4つの能力」とは、次の4つを指します。
意思疎通能力:記銘力、記憶力、認知力、言語力など
問題解決能力:理解力、判断力など
作業負荷に対する持続力、持久力
社会行動能力:協調性
4-4. 外傷性てんかん
「外傷性てんかん」とは、外傷性の脳損傷によって脳に異常放電が起こり、その異常信号によって引き起こされる意識喪失やけいれん発作などを指します。外傷性てんかんと診断された場合の後遺障害等級は、発作の頻度や種類に応じて、以下の等級に該当すると判断されます。
等級 | 該当する症状の具体例 |
|---|---|
第5級2号 (別表第2) | 1カ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの |
第7級4号 (別表第2) | ①転倒する発作等が数カ月に1回以上あるもの ②転倒する発作など以外の発作が1カ月に1回以上あるもの のいずれか |
第9級10号 (別表第2) | ①数カ月に1回以上の発作が転倒する発作など以外の発作であるもの ②服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの のいずれか |
第12級13号 (別表第2) | 発作の発現はないが、脳波上に明らかなてんかん性棘波を認めるもの |
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5. 【計算例】交通事故で脳挫傷を負った場合の慰謝料額
交通事故で脳挫傷になった場合に請求できる後遺障害慰謝料について、弁護士基準(裁判所基準)に基づく計算例を紹介します。
5-1. 【CASE1】高次脳機能障害で後遺障害3級が認定された場合
回復期のリハビリテーションも含めて入院6カ月、通院1年の入通院慰謝料:298万円
後遺障害慰謝料:1990万円
合計:2288万円
5-2. 【CASE2】遷延性意識障害で後遺障害1級(要介護)が認定された場合
入院1年3カ月で症状固定と判断された場合の入通院慰謝料:340万円
後遺障害慰謝料:2800万円
合計:3140万円
5-3. 【CASE3】遷延性意識障害になったあとで死亡した場合
入院1年で症状固定の判断前に死亡した場合の入通院慰謝料:321万円
事故と死亡の間に因果関係があり、死亡者が一家の大黒柱だった場合の死亡慰謝料:3000万円
合計:3321万円
6. 交通事故の脳挫傷に関する裁判例
交通事故により脳挫傷などの傷害を負い後遺障害が残った事案で、後遺障害の等級や逸失利益、将来介護費などに争いが起こった「東京地方裁判所平成30年3月29日判決(交通事故民事裁判例集51巻2号414頁)」の裁判例を紹介します。
【事案の概要】
・事故の被害者は自転車に乗っていた当時8歳の子ども
・加害者が運転していたのは貨物自動車
・事故現場は片側1車線の道路で制限時速30km
・被害者が自転車で走行中、進行方向から方向を変え、横断歩道のない場所で対向車線側に渡ったところ、対向車線側を走行してきた加害者の貨物自動車と衝突した
・被害者の診断傷病名は「びまん性脳損傷、脳挫傷、外傷性くも膜下出血」
・入院約9カ月、通院約9カ月を経て症状固定
・自賠責保険では、脳外傷による高次脳機能障害や身体性機能障害で後遺障害等級2級1号が認定された
【主な争いのポイント】
①高次脳機能障害等について後遺障害等級2級1号に該当するかどうか
→加害者の保険会社側は5級2号相当と主張
②逸失利益について、将来得られたはずの基礎収入を、厚生労働省による「賃金構造基本統計調査(通称:賃金センサス)」の2014年版から算出した「年収536万400円」とするのは妥当かどうか
→加害者の保険会社側は「466万3500円の年収と想定すべき」と主張
③将来介護費について、被害者が67歳になるまでは日額2万円の職業介護、週のうち1日は近親者介護として日額1万円という金額について妥当かどうか
→加害者の保険会社側は職業介護として日額3000円、近親者介護として日額1500円を主張
【裁判所の判断】
裁判所は以下のとおり判断しました。
①後遺障害について、被害者の症状に一定の改善が見られるものの、全般的な認知障害や重篤な記憶障害、コミュニケーションの障害が残るなど、高次脳機能障害の程度は深刻であると判断し、後遺障害等級2級1号(別表第1)に該当する
②逸失利益の基礎収入について、被害者側の主張した536万400円を採用
③将来介護費について、一律日額9000円を認定
以上を判断したうえで、裁判所は加害者に対し、遅延損害金を除いて約9640万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を下しました。
7. 脳挫傷について、適正な後遺障害等級の認定を受けるために必要な資料
後遺障害等級認定の審査は書面で行われるため、必要な書類をもれなくそろえての提出が重要となります。
脳挫傷の後遺障害認定で必要な資料で代表的なものは以下のとおりです。ただし、すべての書類が必ず必要というわけではなく、後遺障害の内容などによって必要な書類は異なります。
書類名 | 概要 |
|---|---|
後遺障害診断書 | 症状固定時に主治医が作成する書類で、症状固定日や症状固定時の具体的な症状、 残存した後遺障害の内容、程度などを記載した診断書。 専用の書式あり |
画像検査の結果 (CTやMRIなど) | 頭部のCT検査やMRI検査などの画像検査の結果。 事故直後に撮影したものや症状固定時に撮影したものなど、複数時期の画像が必要 |
頭部外傷後の意識障害についての所見 | 事故直後からの意識喪失、意識障害の有無や、程度などについて、 経過とともに医師に作成してもらう書類。 脳損傷による高次脳機能障害などの後遺障害では、意識障害の有無などが非常に重要な認定資料となる |
神経心理学的検査の結果 | 高次脳機能障害の診断と評価のために認知機能や精神状態の変化などに関して実施される検査の結果。 知能検査としての「MMSE」や「長谷川式簡易知能評価スケール」、 認知機能障害の有無や程度を測る「TMT」などの検査がある |
神経系統の障害に関する医学的所見 | 運動機能や感覚機能の障害について医師が評価し作成する書類。 運動機能や、食事、着替え、歩行といった身の回りの動作能力についての自立の有無などの記載や、 認知、行動、情動障害の有無に関する評価項目がある |
日常生活状況報告書 | 高次脳機能障害の有無や程度の評価のための資料として、 被害者の日常生活における支障の有無や程度を、家族や介護する人が記載した報告書。 日常生活のさまざまな場面において、後遺症の影響が出ているかどうかをチェックする |
8. 交通事故で脳挫傷を負った場合に、慰謝料以外に請求できる賠償金
交通事故で脳挫傷を負い、後遺障害が残った場合には、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などの慰謝料以外に、以下の賠償金についても請求できます。
項目 | 概要 |
|---|---|
治療費 | 事故後、症状固定日までの治療費全般。通常は保険会社が医療機関に直接支払う |
入院雑費 | 入院中の入院雑費(テレビカード代、おむつ代など)として基準に従った金額。実費ではない |
通院交通費 | 通院のために公共交通機関やタクシーなどを使用した場合の交通費。 自家用車の場合は、ガソリン代実費全額ではない点に注意 |
介護費用 | 生涯にわたり要介護になった場合、平均余命により算出した生存期間に対応する職業介護 または近親者介護の費用 |
家屋改造費や車両改造費 | 後遺障害により移動などの日常生活に困難を要する場合の 自宅のバリアフリー化の費用や、福祉車両への改造費用 |
葬儀費用 | 死亡事故の場合の葬儀費用 |
休業損害 | 事故後、症状固定日までの間の仕事の休業分の補償 |
逸失利益 | 症状固定日以降の将来にわたる収入の減少分の補償 |
9. 交通事故による脳挫傷について、適正額の賠償を受けるためのポイント
脳挫傷について適正額の賠償を受けるためのポイントとしては、主に以下があります。
9-1. 必要に応じて適正な後遺障害等級の認定を受ける
後遺障害は、認定される等級によって後遺障害慰謝料や逸失利益の額が数百万円以上変わる可能性もあります。認定される等級を適切なものにするためには、後遺障害診断書などの資料を余すところなくそろえて提出し、適正な等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定申請は、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者側で申請を行う「被害者請求」の2つの方法があります。どちらの方法を利用するべきかは、後遺症の内容や程度によっても異なるため、まずは弁護士への相談をお勧めします。
9-2. 損害項目を漏れなく集計する
後遺障害が残った場合、被害者が請求可能な損害項目は多岐にわたります。これらの損害項目を漏れなく集計して、適切な基準に従った金額で加害者側に請求すべきです。自力での集計が難しい場合は、弁護士のサポートを受けましょう。
9-3. 保険会社の提示額に安易に合意せず、弁護士基準で損害額を計算する
損害賠償の基準金額は、弁護士基準(裁判所基準)が最も高い金額で設定されています。被害者側としては、この弁護士基準に従って適切な賠償を受けるべきです。
加害者側の保険会社は、弁護士基準よりも低額が設定されている自賠責保険基準や任意保険基準による金額を提示してくるケースが少なくありません。提示額が適切かどうか、弁護士に相談するなどして、きちんと検討するようにしましょう。
10. 交通事故で脳挫傷を負ったら、弁護士に相談や依頼をしたほうがいい理由
交通事故で脳挫傷を負った場合、弁護士に相談や依頼をしたほうがいい主な理由としては、以下が挙げられます。
10-1. 弁護士基準で損害賠償を請求できるため、賠償額を増額できる
弁護士に依頼をすれば、弁護士基準(裁判所基準)で適切な損害賠償の金額を算定し、請求できます。また、損害項目が多岐にわたる場合は、損害項目を漏れなく請求する必要がありますが、弁護士に依頼すれば、こうした項目についても漏れがないようにチェックしたうえでの請求が可能です。
10-2. 後遺障害等級認定の申請をサポートしてもらえる
後遺障害等級認定で、適切な等級の認定を受けるためには、医師に後遺障害の内容や程度に応じた適切な後遺障害診断書を作成してもらうなど、適切な資料の用意が非常に重要です。
どのような資料を収集すべきか、そのために実施しておくべき検査はどういったものがあるかなどについては、弁護士に依頼をすれば適切なアドバイスがもらえます。
また、手続き自体を被害者側で申請したほうがよい場合は、こうした手続きも弁護士に一任できます。
10-3. 示談交渉を含め、手続きを代行してもらえる
後遺障害等級が認定されると、その結果をふまえて加害者側に請求する損害項目や金額を整理し、加害者側と示談交渉をします。この交渉に関しても弁護士に一任できるため、精神的負担を軽減できます。
10-4. ADRや訴訟に進んだ場合も対応してもらえる
示談交渉がまとまらない場合は、裁判外紛争処理機関(ADR)を利用しての手続きや訴訟などの段階に進む必要があります。専門性の高い手続きなので、スムーズに進めるためには弁護士のサポートがあると安心できます。
10-5. 弁護士費用特約を使えば、弁護士費用がかからない
自身が加入している自動車保険などに弁護士費用特約が付帯している場合は、弁護士の費用を保険会社からの保険金でまかなえるため、自己負担なく弁護士への依頼が可能です。こうした特約が利用できるかどうかや上限額については、加入している保険会社に確認しましょう。
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11. 交通事故による脳挫傷に関してよくある質問
Q. 脳挫傷と診断されても後遺障害等級が認定されないケースはある?
後遺障害等級は、後遺症の内容や程度が一定の基準に該当する場合に認定されます。そのため、脳挫傷と診断されても、軽症で後遺症が残らなかった場合や、後遺症が残った場合でも、等級に認定される程度の障害が残らなかった場合は等級が認定されない可能性があります。
Q. 脳挫傷による高次脳機能障害は見た目では分からない?
高次脳機能障害は、一見しただけではわからない症状もあります。ともに日常生活を送る家族が、事故前と比べて被害者の物忘れがひどくなった、怒りっぽくなった、日付がわからなくなった、コミュニケーションがとりづらくなったなどの変化を感じ取れば、脳挫傷による脳機能の損傷と結びつく症状が浮き彫りになるでしょう。
Q. 脳挫傷で意識不明にならなかった場合でも慰謝料は請求できる?
入通院慰謝料は、事故によるけがの治療のために入院や通院をした期間などに応じて支払われる慰謝料のため、意識不明になったかどうかは関係なく請求が可能です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級の認定を前提とする慰謝料ですが、脳損傷による後遺障害としての遷延性意識障害は、意識障害の存在が必要となります。
また、高次脳機能障害も意識障害の有無が認定のための一つの要素になるとされています。ただし、明らかな意識障害がない場合でも、そのほかの事情から後遺障害等級が認定されるケースもあります。
Q. 脳挫傷について後遺障害等級が認定されなかったら異議申立てはできる?
後遺障害等級認定が非該当となった場合や、認定された等級に不満がある場合は、自賠責保険会社などに対する異議申立てが可能です。
もっとも、当初の提出書類をそのまま引き継いで異議申立てをした場合は、結果が変わらない可能性が高くなります。異議申立てをする場合は、適切な資料を収集したり、場合によっては再度必要な検査などを実施したりして、資料をそろえ直してから検討してください。
Q. 脳挫傷で弁護士に相談するタイミングはいつがいい?
治療終了後、保険会社との示談交渉が開始したあとでも弁護士への相談や依頼は可能ですが、できれば事故後の早い段階で一度、弁護士に相談することをお勧めします。
事故後であれば、保険会社との必要なやりとりは弁護士に任せて治療に専念できます。後遺障害認定に必要な資料の収集について事前に弁護士からアドバイスを受けておけば、スムーズな準備も可能になります。
Q. 交通事故の数年後に脳挫傷を自覚することはある? 慰謝料は請求できる?
交通事故で脳挫傷の傷害を負ったあと、数年後に自覚症状が出る可能性は医学的にも否定されていません。ただし、交通事故の賠償との関係では「因果関係」が問題となります。慰謝料を請求するためには、数年後に現れた症状が交通事故による脳挫傷によって生じたものだと医学的な観点から証明する必要があります。
この証明が難しい場合も多いため、請求の可否については一度弁護士に相談するのが望ましいと言えるでしょう。
12. まとめ 交通事故で脳挫傷を負ったら弁護士に相談を
交通事故で脳が衝撃を受けて損傷し、脳挫傷の傷害を負った場合、長期間の治療の負担に加え、重い後遺障害が残るケースも少なくありません。
後遺障害が残った場合、後遺障害等級認定を申請して障害の程度に準じた等級の認定を受け、それに基づいた損害賠償請求をする流れになるでしょう。後遺障害の内容によって必要な資料が変わってくるため手続きが複雑多岐になり、加害者側に対して自力で賠償を請求するのが難しくなります。
こうした法的な賠償請求に関して弁護士の支援を得れば、煩雑な作業を一任でき、治療や療養に専念できるようになるため、弁護士への依頼をお勧めします。
(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)
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