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1. 後遺障害慰謝料とは
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故によるけがが完治せず後遺症が残ったことで、被害者が被った肉体的・精神的損害を補填する賠償金です。
1-1. 後遺障害慰謝料=後遺症による身体的・精神的苦痛の賠償金
交通事故の後遺症が残ると、被害者は生涯にわたり肉体的・精神的な苦痛を負います。
後遺障害慰謝料は、こうした後遺症による苦痛を賠償するため、加害者が被害者に対して支払うものです。加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社が被害者に対して後遺障害慰謝料を支払います。
1-2. 後遺障害慰謝料の額は、後遺障害等級によって決まる
後遺障害慰謝料の目安額は、損害保険料率算出機構が認定する「後遺障害等級」によって決まります。
後遺障害等級は要介護1級・2級と通常の1級から14級までの16段階で、後遺症の部位や内容に応じて認定されます。症状が重いほど等級の数字が小さくなり、後遺障害慰謝料も高額となります。
等級が少し違うだけで数百万円以上金額が変わるケースもあります。そのため、後遺症の内容に見合った適正な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。具体的な金額は「3. 【等級別】後遺障害慰謝料の金額相場」で紹介します。
2. 【重要】後遺障害慰謝料の3つの算定基準|保険会社の提示額は適正でない可能性大
後遺障害慰謝料の額を算定する基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3種類があります。
このうち、被害者が受け取るべき適正な金額を算定できるのは「弁護士基準」です。一方、加害者側の保険会社は「自賠責保険基準」や「任意保険基準」を用いて、不当に低額の後遺障害慰謝料を提示してくるケースが多いので十分注意してください。
ここでは、慰謝料の金額を決める3つの基準について説明します。
2-1. 自賠責保険基準|最低限の補償額
「自賠責保険基準」は、自賠責保険から支払われる保険金額を算定する基準です。自動車を運転する人には、自賠責保険への加入が義務付けられています。
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を提供するものです。そのため、自賠責保険基準による慰謝料額は最低限の水準にとどまります。
2-2. 任意保険基準|加害者側の保険会社の独自基準
「任意保険基準」は、保険会社が独自に定めている保険金額の算定基準です。
任意保険は、自賠責保険に上乗せする形で被害者の損害を補償するものです。そのため、任意保険基準による慰謝料額は、自賠責保険基準よりもやや高く設定されています。
しかし、保険会社は支払額をできる限り抑えたい立場にあります。そのため任意保険基準による慰謝料額は、客観的な被害者の損害全額をカバーするものではなく、それよりも大幅に低い水準となります。
2-3. 弁護士基準(裁判所基準)|被害者に有利かつ公正な基準
「弁護士基準(裁判所基準)」は、過去の裁判例に基づき、被害者に生じた客観的な損害額を算定する基準です。
弁護士基準による慰謝料額は、自賠責保険基準や任意保険基準よりも高額となるのが一般的で、被害者にとって有利です。また、訴訟(裁判)になれば弁護士基準による損害賠償が命じられる可能性が高いので、公正性も確保されています。
被害者には、弁護士基準による額の損害賠償を請求する正当な権利があります。後遺障害慰謝料についても、必ず弁護士基準に基づいて請求しましょう。
3. 【等級別】後遺障害慰謝料の金額相場
後遺障害慰謝料の目安額は、後遺障害等級に応じて以下のとおり決まっています。任意保険基準は一般には公表されていないため、自賠責保険基準と弁護士基準の金額をまとめました。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 後遺障害慰謝料(自賠責保険基準) |
|---|---|---|
要介護1級 | 2800万円 | 1650万円 |
要介護2級 | 2370万円 | 1203万円 |
1級 | 2800万円 | 1150万円 |
2級 | 2370万円 | 998万円 |
3級 | 1990万円 | 861万円 |
4級 | 1670万円 | 737万円 |
5級 | 1400万円 | 618万円 |
6級 | 1180万円 | 512万円 |
7級 | 1000万円 | 419万円 |
8級 | 830万円 | 331万円 |
9級 | 690万円 | 249万円 |
10級 | 550万円 | 190万円 |
11級 | 420万円 | 136万円 |
12級 | 290万円 | 94万円 |
13級 | 180万円 | 57万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 |
弁護士基準と自賠責保険基準では、かなりの差があるのが分かります。また、認定される等級が少しでも変わると、後遺障害慰謝料の額に数百万円もの差が生まれることがあります。
被害者としては、適正な後遺障害等級の認定を受けたうえで、弁護士基準によって後遺障害慰謝料を請求することが大切です。
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4. 【後遺症の内容別】後遺障害慰謝料の金額相場
後遺障害等級は、後遺症の部位や内容に応じて認定されます。交通事故時に多く見られる後遺症について認定され得る後遺障害等級と、等級に応じた後遺障害慰謝料の金額相場を解説します。
4-1. むちうちになり、痛みやしびれが残った
「むちうち」とは、首に強い衝撃が加わって生じる、痛みやしびれなどの神経症状です。
むちうちによる痛みやしびれは、治療を受けても完全にはなくならないことがあります。その場合、症状に応じて以下の後遺障害等級の認定を受けられます。
後遺障害等級 | 神経障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
12級 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
12級の認定を受けるためには、痛みやしびれの原因が画像検査等によって明らかである必要があります(=他覚的所見)。これに対して14級は、自覚症状のみであっても、交通事故が原因であることを医学的に説明できれば認定を受けられる可能性があります。
4-2. 骨折した部位に後遺症が残った
交通事故で骨折をした部位には、以下のような後遺症が残るケースがあります。
神経障害:痛みやしびれ
機能障害:手足や指の機能が失われる、関節の可動域が制限される
運動障害:脊柱(背骨)の周りが動きにくくなる
変形障害:骨が変形する、手足の偽関節などが生じる
短縮障害:脚が短くなる
欠損障害:手足や指を失う
骨折後にこれらの後遺症が残った場合には、症状に応じて以下の後遺障害等級の認定を受けられます。
後遺障害等級 | 神経障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
12級 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
後遺障害等級 | 機能障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
1級 | 両上肢の用を全廃したもの | 2800万円 |
両下肢の用を全廃したもの | ||
4級 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | 1670万円 |
5級 | 1上肢の用を全廃したもの | 1400万円 |
1下肢の用を全廃したもの | ||
6級 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | 1180万円 |
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | ||
7級 | 1手の5の手指またはおや指を含む4の手指の用を廃したもの | 1000万円 |
両足の足指の全部の用を廃したもの | ||
8級 | 1手のおや指を含む3の手指の用を廃したもの | 830万円 |
おや指以外の4の手指の用を廃したもの | ||
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | ||
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | ||
9級 | 1手のおや指を含む2の手指の用を廃したもの | 690万円 |
おや指以外の3の手指の用を廃したもの | ||
1足の足指の全部の用を廃したもの | ||
10級 | 1手のおや指またはおや指以外の2の手指の用を廃したもの | 550万円 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | ||
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | ||
11級 | 1足の第1の足指を含む2以上の足指の用を廃したもの | 420万円 |
12級 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | ||
1手のひとさし指、なか指またはくすり指の用を廃したもの | ||
1足の第1の足指または他の4の足指の用を廃したもの | ||
13級 | 1手のこ指の用を廃したもの | 180万円 |
1足の第2の足指の用を廃したもの | ||
第2の足指を含む2の足指の用を廃したもの | ||
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの | ||
14級 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を 屈伸することができなくなったもの | 110万円 |
1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの |
後遺障害等級 | 運動障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
6級 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの | 1180万円 |
8級 | 脊柱に運動障害を残すもの | 830万円 |
後遺障害等級 | 変形障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
6級 | 脊柱に著しい変形を残すもの | 1180万円 |
7級 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1000万円 |
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | ||
8級 | 1上肢に偽関節を残すもの | 830万円 |
1下肢に偽関節を残すもの | ||
11級 | 脊柱に変形を残すもの | 420万円 |
12級 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
後遺障害等級 | 短縮障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
8級 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの | 830万円 |
10級 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの | 550万円 |
13級 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの | 180万円 |
後遺障害等級 | 欠損障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
1級 | 両上肢のひじ関節以上で失ったもの | 2800万円 |
両下肢のひざ関節以上で失ったもの | ||
2級 | 両上肢の手関節以上で失ったもの | 2370万円 |
両下肢の足関節以上で失ったもの | ||
3級 | 両手の手指の全部を失ったもの | 1990万円 |
4級 | 1上肢のひじ関節以上で失ったもの | 1670万円 |
1下肢のひざ関節以上で失ったもの | ||
両足のリスフラン関節以上で失ったもの | ||
5級 | 1上肢の手関節以上で失ったもの | 1400万円 |
1下肢の足関節以上で失ったもの | ||
両足の足指の全部で失ったもの | ||
6級 | 1手の5の手指またはおや指を含む4の手指を失ったもの | 1180万円 |
7級 | 1手のおや指を含む3の手指を失ったもの | 1000万円 |
おや指以外の4の手指を失ったもの | ||
1足のリスフラン関節以上で失ったもの | ||
8級 | 1手のおや指を含む2の手指を失ったもの | 830万円 |
おや指以外の3の手指を失ったもの | ||
1足の足指の全部で失ったもの | ||
9級 | 1手のおや指またはおや指以外の2の手指を失ったもの | 690万円 |
1足の第1の足指を含む2以上の足指を失ったもの | ||
10級 | 1足の第1の足指または他の4の足指を失ったもの | 550万円 |
11級 | 1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの | 420万円 |
12級 | 1手のこ指を失ったもの | 290万円 |
1足の第2の足指を失ったもの | ||
第2の足指を含む2の足指を失ったもの | ||
第3の足指以下の3の足指を失ったもの | ||
13級 | 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの | 180万円 |
1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの | ||
14級 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 110万円 |
4-3. 顔面に強い衝撃を受け、視力が低下した
交通事故によって顔面に強い衝撃を受けると、視力が低下する場合があります。
眼鏡やコンタクトレンズなどによる矯正視力が一定水準を下回る場合、以下の後遺障害等級の認定を受けられます。ただし、矯正視力が元々低かった場合、後遺障害慰謝料が減額される可能性があります。
後遺障害等級 | 視力障害の内容 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
1級 | 両眼を失明したもの | 2800万円 |
2級 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの | 2370万円 |
3級 | 両眼の視力が0.02以下になったもの | 1990万円 |
4級 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの | 1670万円 |
5級 | 両眼の視力が0.06以下になったもの | 1400万円 |
6級 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの | 1180万円 |
7級 | 両眼の視力が0.1以下になったもの | 1000万円 |
8級 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 830万円 |
9級 | 1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下になったもの | 690万円 |
10級 | 両眼の視力が0.6以下になったもの | 550万円 |
13級 | 1眼の視力が0.06以下になったもの | 180万円 |
4-4. 頭を強く打ち、高次脳機能障害(記憶障害・注意障害など)になった
「高次脳機能障害」とは、脳の損傷によって以下の4つの能力のいずれかが失われた状態です。交通事故によって頭を強く打つと、高次脳機能障害が残る場合があります。
意思疎通能力
問題解決能力
作業負荷に対する持続力、持久力
社会行動能力
高次脳機能障害が残った場合は、その程度によって以下の後遺障害等級の認定を受けられます。
後遺障害等級 | 高次脳機能障害の内容 | 失われている能力 | 後遺障害慰謝料 (弁護士基準) |
|---|---|---|---|
3級 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、 終身労務に服することができないもの | ①いずれか1つ以上の能力が全部失われている | 1990万円 |
②いずれか2つ以上の能力の大部分が失われている | |||
5級 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | ①いずれか1つ以上の能力の大部分が失われている | 1400万円 |
②いずれか2つ以上の能力の半分程度が失われている | |||
7級 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの | ①いずれか1つ以上の能力の半分程度が失われている | 1000万円 |
②いずれか2つ以上の能力の相当程度が失われている | |||
9級 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | いずれか1つ以上の能力の相当程度が失われている | 690万円 |
12級 | 通常の労務に服することはできるが、 多少の障害を残すもの | いずれか1つ以上の能力が多少失われている | 290万円 |
14級 | 通常の労務に服することはできるが、 軽微な障害を残すもの | わずかな能力喪失が認められる | 110万円 |
5. 後遺障害慰謝料が増額されるケース
以下に挙げる事情がある場合、後遺障害慰謝料が通常よりも増額されることがあります。
5-1. 複数の後遺症が残った場合
交通事故の後遺症が複数残っている場合、「併合」によって高い後遺障害等級が認定されることがあります。
併合等級が認定されるケース | 認定される後遺障害等級 |
|---|---|
①5級以上に相当する後遺障害が2つ以上ある | 最も重い等級+3級 |
②8級以上に相当する後遺障害が2つ以上ある(①の場合を除く) | 最も重い等級+2級 |
③13級以上に相当する後遺障害が2つ以上ある(①②の場合を除く) | 最も重い等級+1級 |
たとえば2つの後遺症が残っていて、それぞれ5級と6級に相当する場合は、併合によって後遺障害3級が認定されます。この場合、後遺障害慰謝料の目安額は1990万円です。
5-2. 加害者の交通違反がきわめて悪質である場合
加害者の交通違反が危険運転やあおり運転などきわめて悪質である場合は、後遺障害慰謝料が増額されることがあります。加害者の理不尽な行為によって後遺症を負った被害者の精神的苦痛は、一般的な交通事故に比べて大きいと判断される可能性があるからです。
5-3. 加害者に不誠実な態度を取られた場合
事故現場や示談交渉の場で、加害者が責任逃れをしたり、被害者を侮辱したりするなど不誠実な態度を取った場合は、慰謝料が増額されることがあります。加害者の不誠実な対応により、被害者の精神的苦痛が増すと考えられるためです。
6. 後遺障害慰謝料が減額されるケース
後遺障害等級が認定されたからと言って、等級に応じた後遺障害慰謝料を満額受け取れるとは限りません。以下のケースでは、後遺障害慰謝料が減額されます。
6-1. 被害者側にも過失がある場合
被害者に過失がある場合、事故の損害賠償額は過失割合に応じて減額されます(=過失相殺)。後遺障害慰謝料も過失相殺の対象です。
たとえば後遺障害12級が認定された場合、後遺障害慰謝料の目安額は290万円です。しかし、被害者にも2割の過失があると、加害者に請求できる後遺障害慰謝料は2割減額されて232万円になります。
6-2. 被害者側の素因が後遺症の一因となった場合
後遺症が残ったことにつき、交通事故だけでなく被害者の素因(既往症や持病など)が影響した場合は、損害賠償が減額される可能性があります。
たとえば、被害者が元々患っていた骨粗しょう症の影響で、交通事故による骨折が重症化して後遺症が残った場合は、素因減額が行われる可能性があります。
7. 交通事故の被害者が後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れ
交通事故の被害者が、後遺障害慰謝料を含む損害賠償を受け取るまでの流れは、以下のとおりです。
7-1. 事故直後の対応
交通事故が発生した直後の段階では、以下の対応などを行います。
負傷者の救護
道路上の危険を防止するための措置(車両を道路脇に寄せる、停止表示板を設置するなど)
警察官への報告
相手方の住所、氏名、連絡先などの確認
保険会社への連絡
特に、後の損害賠償請求に備えて、警察官への報告や相手方の住所・氏名・連絡先などの確認は必ず行いましょう。
7-2. 医療機関の受診・けがの治療
自覚症状の有無にかかわらず、速やかに医療機関を受診し、けがをしている場合は治療を受けましょう。
医師の指示に従って、症状固定(=治療を続けても症状が改善しない状態)の診断を受けるまで治療を続けることが大切です。自分だけの判断で治療を止めてはいけません。
7-3. 後遺障害等級認定の申請|「被害者請求」がおすすめ
症状固定の診断を受けた後、後遺障害等級認定の申請を行います。申請方法は、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」と被害者自ら申請する「被害者請求」の2つです。
被害者請求は被害者自身がきちんと書類をそろえて申請できるので、納得できる認定を受けやすい利点があります。手間はかかりますが、弁護士に依頼すれば手続きのサポートを受けられます。
7-4. 示談交渉
後遺障害等級の認定後、加害者側の保険会社と示談交渉を行います。弁護士基準を用いて損害額を計算し、事故状況に見合った過失割合を主張しながら請求を行いましょう。
保険会社と対等に交渉するためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
7-5. ADR・訴訟
示談交渉がまとまらない場合、裁判所以外の第三者機関が取り扱うADR(裁判外紛争解決手続)や、裁判所での訴訟を利用します。
損害額や過失割合などについて、客観的な証拠に基づいて主張・立証を行うことが、ADRや訴訟で有利な解決を得るためのポイントです。弁護士のサポートを受けながら対応しましょう。
7-6. 損害賠償の受け取り
示談交渉・ADR・訴訟の結果が確定したら、その内容に従って後遺障害慰謝料を含む損害賠償が支払われます。保険会社が支払う場合は、確定してからおおむね1カ月以内に損害賠償が支払われます。
8. 適正額の後遺障害慰謝料を受け取るためのポイント
交通事故の被害者が適正額の後遺障害慰謝料を受け取るためには、以下のポイントを踏まえて対応しましょう。
8-1. 事故後速やかに医療機関を受診する
交通事故の発生から医療機関を受診するまでの期間が長く空くと、けがや後遺症が事故によって発生したことを証明しにくくなります。交通事故に遭ったら、できる限り早く医療機関を受診するのが大切です。
8-2. 医師の指示に従って通院を続ける
医師の指示に従わず、自分だけの判断で治療を中断すると、後遺症と事故の間の因果関係を証明するのが難しくなります。医師から症状固定の診断を受けるまでは、必ず医師に指示された頻度で通院を続けてください。
8-3. 認定基準を踏まえた後遺障害診断書を医師に作成してもらう
後遺障害等級認定の審査においては、医師が作成する後遺障害診断書の記載が最も重視されます。
後遺障害診断書には、等級認定基準を満たしていることが読み取れる記載が必要です。記載内容が不十分な場合は、弁護士を通じて医師に説明や補足を依頼し、適切な記載を求めましょう。
8-4. 弁護士に依頼する
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、弁護士のサポートが有効です。
特に被害者請求を行う際には、弁護士に依頼すれば申請書類を全体的にチェックしてもらえるので、適切な形で申請をすることができます。手間のかかる書類の準備などを代行してもらえるため、労力やストレスを軽減できる点も大きなメリットです。
また、後遺障害等級認定の申請だけでなく、その後の示談交渉やADR・訴訟の対応も弁護士に任せられます。相手の保険会社が提示する不当に低い示談金額に対して、弁護士基準で賠償金額を算定し、粘り強く交渉してくれるため、増額が見込めます。交通事故の後遺症が残りそうなときは、後遺障害等級認定や損害賠償請求について、早めに弁護士への相談・依頼を検討しましょう。
なお、加入している保険に弁護士費用特約が付いている場合は、自己負担ゼロまたは少ない費用負担で弁護士に依頼できます。特約の有無や利用方法などは、保険会社に確認してください。
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9. 後遺障害慰謝料以外に請求できる交通事故の損害賠償
後遺障害慰謝料のほかにも、交通事故の被害者は加害者に対して、以下に挙げるような損害の賠償を請求できます。
9-1. 積極損害|治療費・物損など
「積極損害」とは、交通事故が原因で支出せざるを得なくなった費用です。治療費や車の修理費など、以下の積極損害の賠償を請求できます。
積極損害の項目 | 概要 |
|---|---|
治療費 | けがを治療するために、医療機関や薬局に支払った費用 |
装具、器具の購入費 | 義歯、義眼、義手、義足、かつら、眼鏡、 コンタクトレンズ、介護ベッド、コルセット、車いすなどの購入費用 |
通院交通費 | 通院するためにかかる交通費 |
入院雑費 | 入院中に日用品を購入するための費用 |
付添費用 (職業付添人) | 職業付添人に入院や通院への付き添いを依頼する場合の費用 |
介護費用 (職業介護人) | 職業介護人に介護を依頼する場合の費用 |
自動車の修理費 | 壊れた自動車の修理費用 |
代車費用 | 壊れた自動車が使えない期間に借りる代車の費用 |
9-2. 消極損害|休業損害・逸失利益など
「消極損害」とは、交通事故によって得られなくなった利益です。休業損害や逸失利益など、以下の消極損害の賠償を請求できます。
消極損害の項目 | 概要 |
|---|---|
休業損害 | 交通事故の影響で仕事を休んだことによって得られなくなった収入 |
逸失利益 | 交通事故による死亡や後遺症によって将来得られなくなった収入 |
付添費用 (近親者) | 入院や通院に近親者が付き添う場合に、 その時間で経済活動ができなくなることによる逸失利益 |
介護費用 (近親者) | 近親者が介護をする場合に、 その時間で経済活動ができなくなることによる逸失利益 |
9-3. 入通院慰謝料
「入通院慰謝料」は、けがをしたことによる身体的・精神的苦痛の賠償金です。入院期間や通院期間に応じた額の入通院慰謝料を請求できます。
9-4. 近親者の慰謝料
「近親者の慰謝料」とは、被害者が死亡した場合や、被害者に重度の後遺症が残ったことで近親者が受けた精神的苦痛の賠償金です。被害者の配偶者・父母・子などにつき、数百万円程度の慰謝料が認められる場合があります。
10. 後遺障害慰謝料に関してよくある質問
Q. 認定された後遺障害等級に納得できない場合、どうすればいい?弁護士に依頼すれば等級が上がる?
損害保険料率算出機構に対する異議申立てや、自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理制度、裁判所で行われる訴訟を通じて不服を申し立てる方法があります。
これらの手続きは弁護士に依頼するのが一般的ですが、必ず等級が上がる(後遺障害慰謝料が増額される)わけではない点に留意してください。
Q. 交通事故の加害者に後遺症が残ったら、被害者側に後遺障害慰謝料を請求できる?
被害者にも過失がある場合は、その割合に応じて、被害者(または保険会社)に対して後遺障害慰謝料を請求できます。
11. まとめ 後遺障害慰謝料は数百万円から数千万円に及ぶ場合もある
交通事故によるけがが完治せず後遺症が残った場合は、相手方に対して後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料の適正額は、後遺障害等級や過失割合などに応じて決まります。数百万円以上の高額に及ぶことが多いので、弁護士のサポートを受けながら適正額の獲得を目指しましょう。
弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の被害者請求のサポートを受けられるほか、保険会社との示談交渉も代行してもらえます。漏れのない損害の把握、弁護士基準による損害額の算定、適切な過失割合の主張などを通じて、賠償金を増額するために粘り強く対応してもらえます。交通事故の被害に遭ったら、早い段階で弁護士に相談しましょう。
(記事は2026年2月1日時点の情報に基づいています)
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