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1. 人身事故を起こすとどうなる?
人身事故を起こすと、民事・刑事・行政上の責任が発生します。それに伴い、被害者から損害賠償請求を受けたり、警察に取り調べを求められたり、免許の停止や取り消しによって自動車を運転できなくなったりします。
このような事態が立て続けに発生すると、どう対応すればよいかわからず混乱してしまうかもしれません。その場合は、速やかに弁護士へ相談してアドバイスを受けてください。
2. 人身事故の加害者が負う3つの責任
人身事故を起こした人が負う法的責任は、民事上の責任・刑事上の責任・行政上の責任の3つに分類されます。それぞれどのような責任なのかについて解説します。
2-1. 民事上の責任|損害賠償責任を負う
「民事」とは私人(個人や法人)の間の法律関係を意味します。たとえば、当事者の間で何らかのトラブルが生じた場合に、いずれか一方が相手方に対して負うのが民事上の責任です。
交通事故に関する民事上の責任として問題となるのは、主に損害賠償責任です。事故について過失のある側は、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません。
被害者であっても、自分にも一定の過失が認められる場合は、相手方に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
なお、自賠責保険や任意保険に加入している場合は、相手方に対する損害賠償責任が保険によってカバーされます。特に対人・対物賠償無制限の任意保険に加入していれば、損害賠償の全額を保険会社が支払うため、自己負担は生じません。
2-2. 刑事上の責任|刑事罰が科される
「刑事」とは、犯罪に関する事柄を意味します。犯罪行為をした場合に、刑事罰などを科されるのが刑事上の責任です。交通事故については、主に相手方が死傷した場合に刑事上の責任が生じます(人身事故)。
一般的な人身事故であれば「過失運転致死傷罪」が成立します。過失運転致死傷罪の法定刑は「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」です。また、きわめて危険な運転行為をした場合は「危険運転致死傷罪」が成立し、無免許運転の場合は法定刑が加重されるなど、より重い刑事責任が問われる可能性もあります。
上記のほか、道路交通法違反に当たるさまざまな行為が犯罪とされていますが、その多くが交通反則通告制度の対象とされています(後述)。
2-3. 行政上の責任|反則金や違反点数、免許停止(免停)や免許取り消し
「行政上の責任」とは、行政機関から不利益な処分を受けることを意味します。交通事故について問題となる行政上の責任は、主に反則金の納付や運転免許の違反点数の加算、免許の停止および取り消しです。
道路交通法違反に当たる行為の大部分は犯罪とされているものの、その多くが交通反則通告制度の対象とされています。警察官が告知した額の反則金を納付すれば、刑事上の責任を問われないというものです。反則金の納付は、行政上の責任に当たります。
また、人身事故を起こした人に対しては、交通違反の内容などに応じて違反点数が加算されます。違反点数が一定以上累積すると、免許の停止や取り消しの行政処分が行われます。違反点数の加算や免許の停止・取り消しを受けることも、行政上の責任に当たります。
3. 人身事故の違反点数
人身事故を起こした人には、運転免許の違反点数が加算されます。加算点数は、交通違反の内容や被害者のけがの状況などによって決まります。
3-1. 違反点数の内訳|基礎点数と付加点数
人身事故で加算される違反点数は、「基礎点数」と「付加点数」の2種類です。「基礎点数」は、交通違反の内容に応じて加算されます。「付加点数」は、被害者の死亡や後遺障害の有無、けがの治療期間など、人身事故の結果に応じて加算されます。
人身事故では、基礎点数と付加点数を合計した点数が加算されます。
3-2. 主な違反行為に対する基礎点数一覧
人身事故に関連する主な交通違反には、以下の基礎点数が加算されます。交通違反が重大であるほど、加算される基礎点数が多く設定されています。
違反行為の種別 | 基礎点数 |
|---|---|
酒酔い運転 | 35点 |
酒気帯び運転 | 0.25mg/1L以上:25点 0.25mg/1L未満:13点 |
救護義務違反 | 35点 |
無免許運転 | 25点 |
速度超過 | 50km/h以上:12点 30km/h(高速40km/h)以上50km/h未満:6点 25km/h以上30km/h(高速40km/h)未満:3点 20km/h以上25km/h未満:2点 20km/h未満:1点 |
携帯電話使用等 (交通の危険) | 6点 |
信号無視 | 2点 |
追い越し違反 | 2点 |
優先道路通行車妨害等 | 2点 |
安全運転義務違反 | 2点 |
無灯火 | 1点 |
3-3. 被害者の状況に応じた付加点数一覧
人身事故で加算される付加点数は、被害者の死亡・後遺障害・けがなどの事故の結果と、事故責任の程度で決まります。主な付加点数は以下のとおりです。
交通事故の種別 (事故の結果) | 専ら加害者の不注意によって 事故が発生した場合の付加点数 | それ以外の場合の付加点数 |
|---|---|---|
死亡 | 20点 | 13点 |
治療期間3カ月以上、 または後遺障害あり | 13点 | 9点 |
治療期間30日以上 3カ月月未満 | 9点 | 6点 |
治療期間15日以上 30日未満 | 6点 | 4点 |
治療期間15日未満、 または建造物損壊 | 3点 | 2点 |
4. 免許停止や免許取り消しは何点以上?期間はどのくらい?
違反点数が一定以上累積すると、運転免許の停止または取り消しの行政処分が行われます。
免許の停止処分を受けた場合は、免停期間が明けるまで運転できません。免許の取消処分を受けた場合は、運転免許を失います。再び運転するには免許を再取得しなければなりませんが、欠格期間中は再取得ができません。
免許停止および免許取り消しとなる点数のラインは、前歴回数で決まります。「前歴」とは、過去3年以内に免許の停止処分もしくは取消処分を受けた事実、または免許の拒否もしくは保留に該当した事実です。
ただし、運転できる期間に1年以上無事故・無違反であれば、それ以前の前歴はカウントされません。たとえば、免許停止処分が明けてから1年間無事故・無違反で過ごし、その後に人身事故を起こした場合は、前歴0回となります。
前歴の回数に応じた免許停止・免許取り消しの点数のラインは、下表のとおりです(特定違反行為を除く)。
前歴 | 免許停止になる累積点数 | 免停期間 |
|---|---|---|
0回 | 6~14点 | 6~8点:30日間 9~11点:60日間 12~14点:90日間 |
1回 | 4~9点 | 4~5点:60日間 6~7点:90日間 8~9点:120日間 |
2回 | 2~4点 | 2点:90日間 3点:120日間 4点:150日間 |
前歴 | 免許取り消しになる累積点数 | 欠格期間 |
|---|---|---|
0回 | 15~24点 | 1年(3年) |
25~34点 | 2年(4年) | |
35~39点 | 3年(5年) | |
40~44点 | 4年(5年) | |
45点以上 | 5年 | |
1回 | 10~19点 | 1年(3年) |
20~29点 | 2年(4年) | |
30~34点 | 3年(5年) | |
35~39点 | 4年(5年) | |
40点以上 | 5年 | |
2回 | 5~14点 | 1年(3年) |
15~24点 | 2年(4年) | |
25~29点 | 3年(5年) | |
30~34点 | 4年(5年) | |
35点以上 | 5年 |
なお、特定違反行為(=運転殺人傷害等・危険運転致死傷・酒酔い運転・麻薬等運転・著しい交通の危険を生じさせる妨害運転・救護義務違反)をした場合は必ず免許取り消しとなり、欠格期間は最長10年です。
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5. 人身事故で加算された違反点数は、いつリセットされて消える?
運転免許の違反点数が残るのは、原則として加算から3年間です。
過去3年間の累積点数が上記の「4. 免許停止や免許取り消しは何点以上?期間はどのくらい?」で紹介した数値に達すると、免許の停止処分または取消処分が行われます。3年を経過した違反行為の点数は、累積対象から外れます。
ただし違反点数の累積については、以下の特例が設けられています。
運転可能期間に1年以上無事故かつ無違反の場合は、それ以前の点数は累積しない
運転可能期間に2年以上無事故かつ無違反であった後、3点以下の軽微な違反行為をし、その後3カ月以上無事故かつ無違反の場合は、その軽微な違反行為の点数は累積しない
違反者講習を受講した場合は、それ以前の点数は累積しない
6. 人身事故による違反点数の加算を防ぐ方法はある?
人身事故に関する違反点数の加算を防ぐ方法はありませんが、免許の停止処分や取消処分を受けた場合は、その処分について審査請求や取消訴訟により不服申立てが可能です。
ただし、被害者が死傷している以上、不服申立てが認められるハードルはかなり高いと言わざるを得ません。基本的に、人身事故を起こすと免許の停止や取り消しは避けられないと考えておきましょう。
7. 人身事故で違反点数が加算されたら、罰金も科される?
人身事故を起こして違反点数が加算されても、罰金が科されるとは限りません。違反点数の加算は行政上の手続きであるのに対し、罰金は刑事罰であり、両者は性質が異なるためです。
7-1. 罰金が科されるのは、刑事手続きにかけられた場合のみ
人身事故を起こした人に対して罰金が科されるのは、検察官に起訴されて刑事手続きにかけられた場合に限られます。すべての人身事故について起訴が行われるわけではなく、実際に起訴されるのは一部のみです。罰金を科すための刑事手続きには「公判手続」と「略式手続」の2種類があります。
公判手続は、裁判所において公開の法廷で行われる手続きです。「正式裁判」とも呼ばれており、本格的な審理が行われます。これに対して略式手続は、非公開で行われる簡略化された手続きです。
検察官が100万円以下の罰金を求刑するときは、略式手続を選択するのが一般的です。被疑者に異議がなければ略式手続が行われ、多くの場合は即日で罰金刑が科されます。
略式手続は負担が軽い半面、被告人の反論の機会が事実上失われます。犯罪事実や量刑を争うためには、略式手続を拒否して公判手続を求めなければなりません。どちらを選択するのがよいかは、弁護士と相談したうえで判断しましょう。
7-2. 罰金と反則金の違い
公判手続や略式手続によって科される罰金と、交通違反をしたときに納める反則金は異なるものです。罰金は刑事罰であるため、科されると前科が付きます。一方、反則金は行政上の責任として納付するものです。反則金を納付すると、罰金を含む刑事罰を科されることがなくなります。反則金を納付しても、前科は付きません。
大半の人身事故について問題となる「安全運転義務違反」は、交通反則通告制度の対象です。反則金の額は、運転していた車種に応じて6000円~1万2000円です。反則金を納付すれば、罰金などの刑事罰が科されません。
ただし、相手方を死傷させたことについて成立する「過失運転致死傷罪」などは、交通反則通告制度の対象外です。そのため、反則金の納付で刑事罰を回避することはできません。
7-3. 罰金が科される可能性が高いケース
人身事故で罰金が科されやすいのは、運転態様が悪質な場合です。たとえば妨害運転(あおり運転)や大幅な速度超過など、危険性の高い運転による事故では、罰金などの刑事罰を受ける可能性が高まります。
また、被害者が死亡したり重篤な後遺症が残ったりするなど、事故の結果が重大な場合も、罰金などの刑事罰が科されやすい傾向にあります。
8. 人身事故の罰金が払えないとどうなる?対処法は?
人身事故の罰金が払えないと、労役場に留置されます。労役場は刑務所などの刑事施設に併設されており、留置されている期間は刑務所の受刑者に近い処遇を受けます。土日祝日などを除き、指定された作業に従事することになります。
実務上、労役場留置1日当たりの金額は5000円とされるのが一般的です。未払いの罰金額に達したら釈放されます。たとえば30万円の罰金が未払いの場合は、60日間労役場に留置されます。
親族などに頼んで罰金を納付してもらえば、その金額分、労役場留置の日数も減ります。自分で罰金を支払えない場合は、親族などへの相談も検討しましょう。
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9. 【加害者側】人身事故を起こした場合の対応の流れ
人身事故を起こした場合、まず事故現場で被害者の救護を行いましょう。具体的には、道路脇などの安全な場所に被害者を運んで応急処置をする、救急車を呼ぶなどの対応が求められます。
また、道路上の危険を防止する措置も講じなければなりません。事故車両を道路脇に寄せて停止表示板を設置するなど、別の事故を誘発しないような対応をとりましょう。
その後警察官を呼んで、事故の発生状況などを報告します。警察官に事情聴取を求められたら、誠実に協力することが大切です。
任意保険に加入している場合は、保険会社にも連絡しておきましょう。今後の被害者への対応を代行してもらえます。自分もけがをしている場合は、速やかに医療機関を受診してください。早期に治療を開始することが、けがの完治にもつながります。
任意保険に加入していない場合は、いずれ被害者から損害賠償を請求されます。自力で対応するのは困難なので、弁護士に相談してください。
10. 【被害者側】人身事故に遭ってしまった場合の対応の流れ
人身事故の被害に遭ったときは、損害賠償請求を見据えながら対応してください。
事故現場では、相手方がけがをしている場合は救護します。また、事故車両を道路脇に寄せて停止表示板を設置するなど、道路上の危険を防止する措置をとりましょう。ただし、自分が大けがをしているときは無理をしなくて構いません。
その後、必ず警察官を呼んで人身事故の報告をしましょう。加害者側から「警察は呼ばないでほしい」などと言われても、応じてはなりません。警察官に対して事故の報告をしないと、交通事故証明書の発行を受けられず、警察官による実況見分も行われないので、損害賠償請求に大きな支障が生じてしまいます。
交通事故によるけがの治療は、事故直後から始めることが大切です。早期に治療を開始すれば完治しやすくなるとともに、損害賠償請求においても有利に働きます。速やかに医療機関を受診してください。
医師から完治の診断を受けたときは、加害者側との示談交渉を開始します。完治せず後遺症が残ったときは、症状固定の診断後に後遺障害等級の認定を受け、それから示談交渉を始めましょう。
示談交渉は、加害者が任意保険に加入している場合は保険会社、加入していない場合は加害者本人との間で行います。いずれも難しい対応が求められるので、弁護士に依頼するのが安心です。
示談交渉がまとまらないときは、ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟によって解決を図ります。ADRと訴訟は専門性の高い手続きですが、弁護士に依頼すれば適切に対応してもらえます。
示談交渉・ADR・訴訟などの結果が確定すると、その内容に従って賠償金が支払われます。保険会社から支払いを受ける場合、確定後おおむね1カ月以内に振り込まれます。
人身事故の被害者が納得できる額の賠償金を受け取るためには、弁護士のサポートが欠かせません。そのためにも、信頼できる弁護士を見つけるようにしてください。
11. 人身事故の違反点数についてよくある質問
Q. 人身事故の加害者でも、違反点数が加算されないことはある?
被害者がけがをしていれば、軽微な事故でも違反点数が加算されます。違反点数の加算を避けることはできません。
Q. 人身事故の違反点数はいつ加算される?
違反行為をした時点、すなわち事故が発生した時点で加算されます。
Q. 物損事故でも違反点数は加算される?
物損事故の場合は、特段の事情がない限り違反点数は加算されません。
Q. 人身事故を起こしても、相手がけがを申告しなければ物損事故にできる?
けがしていることを相手が警察官に伝えなければ、物損事故として取り扱われる可能性があります。ただし、相手に人身事故としての報告を控えるよう強制することはできません。後日、人身事故として報告されるケースもあります。
Q. 人身事故で相手が示談に応じてくれない場合、違反点数に影響する?
相手が示談に応じるか否かは、違反点数に影響しません。
Q. 人身事故で不起訴になったら、罰金はどうなる?
不起訴の場合、罰金は科されません。
Q. 軽い人身事故なら、罰金なしになることはある?
罰金が科されるのは、検察官に起訴された場合に限られます。人身事故については過失運転致死傷罪などが成立しますが、実際に起訴するかどうかは検察官の裁量に委ねられています。事故の態様が軽微である場合は、起訴されず罰金が科されない可能性もあると考えられます。
Q. 人身事故の罰金の通知はいつ来る?いつ払う?
公判手続が行われる場合は、裁判所の法廷で審理の末に罰金刑が言い渡され、判決の確定後30日以内に支払います。
略式手続の場合は、検察庁に呼び出されて出頭し、その場で事実確認や手続きへの同意を行います。その後裁判所が審理を行ったうえで、郵送などによって被告人に略式命令書を交付します。略式命令の確定後30日以内に罰金を支払う必要があります。
公判手続の審理や、略式手続に関する出頭要請がいつ行われるのかは、事故に関する事情や裁判所の混み具合などに応じてケース・バイ・ケースです。
12. まとめ 人身事故を起こすと運転免許の違反点数が加算され、民事・刑事の責任を問われるかも
人身事故を起こすと、民事・刑事・行政上の責任を負うことになります。運転免許の違反点数の加算や、累積点数に応じた免許停止・取り消しは行政上の責任の一つです。
人身事故による違反点数の取り扱いについて分からないことがあるときは、弁護士に相談してください。弁護士には、損害賠償請求に関する対応も依頼することができます。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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