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1. 交通事故の損害賠償請求権に時効はある?
交通事故の被害者は加害者に対して損害賠償を請求できますが、損害賠償請求権には「消滅時効」が設けられています。
消滅時効とは、一定の期間が過ぎると権利を行使できなくなる制度です。長期間が経過してからの権利の行使を認めないことにより、法律関係を安定させることを目的としています。
時効期間を過ぎても請求自体は可能ですが、相手が時効を援用(=時効が完成したことを主張)すると賠償請求は認められません。そのため、時効期間を正確に把握し、期間内に請求できるよう準備を進めることが重要です。
2. 交通事故の時効期間は何年?起算点はいつ?
請求先 | 時効 | |
|---|---|---|
加害者側に対する請求 | 加害者本人 | 5年 ※物損については3年 |
自賠責保険・任意保険の保険会社 | 3年 | |
被害者が加入している | 任意保険会社 | 3年 |
政府保障事業の請求 | 3年 | |
交通事故に関する請求権の時効期間は、請求の相手方や損害の種類によって異なります。また、時効期間がいつから始まるのか(=起算点)についても正確に理解しておかなければなりません。
交通事故に関する各種請求の時効期間と起算点について解説します。
2-1. 加害者本人に対する損害賠償請求|3年・5年・20年
交通事故の被害者は、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間は、次の①②のうちいずれか早く経過する期間です。
①損害および加害者を知った時から3年または5年
※人身損害(死亡・後遺障害・けが)については5年、物的損害(それ以外)については3年
②不法行為の時から20年
たとえば2026年2月1日に交通事故が発生し、その日に加害者が誰だか分かったとします。この場合、けがに関する損害賠償請求権の時効は2031年2月1日が経過したとき(=2031年2月2日になったとき)に完成します。
3年または5年の時効期間は、損害と加害者の両方を知った時点から進行します。損害を知った時点で加害者が不明である場合は、3年または5年の時効期間は進行しません。この場合は、20年の時効期間が先に経過することもあります。
なお、「損害を知った時」と「不法行為の時」は、それぞれ次の時期を指します。
【損害を知った時】
死亡による損害 :死亡時
後遺障害による損害:症状固定の診断時
けがによる損害 :けがを認識した時
物的損害 :損害を認識した時
【不法行為の時】
死亡による損害 :死亡時
後遺障害による損害:症状固定の診断時
けがによる損害 :事故発生時
物的損害 :事故発生時
2-2. 自賠責保険の被害者請求|3年
交通事故の被害者は、加害者が加入している自賠責保険から補償を受けることができます。対象は人身損害(死亡・後遺障害・けが)のみです。被害者が自賠責保険の請求を自ら行うことは「被害者請求」と呼ばれています。
自賠責保険の被害者請求の時効期間は、損害および保有者を知った時から3年です。「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいいます。
人身損害については、加害者に対する損害賠償請求権の時効期間は5年ですが、自賠責保険の被害者請求の時効期間は3年と異なる点に注意してください。
2-3. 加害者が加入している任意保険の保険会社に対する請求|3年
加害者が任意保険に加入している場合、被害者はその保険会社に対し、損害賠償に相当する保険金を請求できます。時効期間は、権利を行使することができる時から3年です。「権利を行使することができる時」とは、以下の時期を指します。
死亡による損害 :死亡時
後遺障害による損害:症状固定の診断時
けがによる損害 :事故発生時
自賠責保険と同様に、任意保険についても、損害賠償請求権の時効期間は一律3年です。人身損害についても、5年ではなく3年となる点にご注意ください。
2-4. 被害者(自分)が加入している任意保険の保険会社に対する請求|3年
被害者が任意保険に加入しており、人身傷害保険や車両保険などが付いている場合は、その保険金を請求できることがあります。
時効期間は権利を行使することができる時から3年です。人身損害についても、5年ではなく3年となります。起算点(=権利を行使することができる時)は、加害者側の任意保険会社への請求と同様です。
2-5. 政府保障事業の請求|3年
交通事故の加害者が不明である場合や、加害者が自賠責保険に加入していなかった場合には、被害者は自賠責保険の補償を受けることができません。このような被害者を救済するために「政府保障事業」が設けられています。政府保障事業を利用すると、人身損害について自賠責保険と同等の補償を受けることができます。
政府保障事業の請求期限は3年間とされており、起算点は以下のとおりです。
死亡による損害 :死亡日
後遺障害による損害:症状固定の診断日
けがによる損害 :事故発生日
3. 時効期間が過ぎたら、損害賠償請求はできない?
時効期間が経過しても、相手方に対して損害賠償を請求することはできます。しかし相手方が「時効なので支払わない」と意思表示(時効の援用)をすれば損害賠償責任を免れます。時効を援用するかどうかは相手方の自由ですが、損害賠償の支払いを受けられる可能性は低いでしょう。
ただし、時効の完成を阻止することで、事故発生時などから時間が経っていても損害賠償を請求することは可能です。弁護士のサポートを受けながら、時効の完成を阻止する対応を速やかに行ってください。
4. 時効の完成を阻止する方法
損害賠償請求権などの消滅時効の完成を阻止するためには、時効の完成猶予(停止)または更新(中断)の効果が認められている手続きをとりましょう。
4-1. 時効の完成猶予(停止)
「時効の完成猶予」とは、時効期間が経過しているにもかかわらず、一時的に消滅時効が完成しない状態をいいます。2020年3月31日以前に適用されていた旧民法では「時効の停止」と呼ばれていました。
時効の完成猶予または停止の効果が生じるのは、以下のいずれかの事由が発生した場合です。猶予期間(停止期間)が経過するまでは、消滅時効が完成しません。
時効の完成猶予事由 | 猶予期間 |
|---|---|
・裁判上の請求 ・支払督促 ・裁判上の和解 ・民事調停、家事調停 ・破産手続、再生手続、 または更生手続への参加 | その事由が終了するまで ※確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって 権利が確定することなくその事由が終了した場合は、終了時から6カ月を経過するまで ※天災その他避けることのできない事変のためにこれらの手続きができないときは、 その障害の消滅時から3カ月を経過するまで |
・強制執行 ・担保権の実行 ・留置権による競売 ・法律の規定による換価のための競売 ・財産開示手続 ・第三者からの情報取得手続 | その事由が終了するまで ※申立ての取下げまたは法律の規定に従わないことによる取り消しによって その事由が終了した場合は、終了時から6カ月を経過するまで ※天災その他避けることのできない事変のためにこれらの手続きができないときは、 その障害の消滅時から3カ月を経過するまで |
・仮差押え ・仮処分 | その事由の終了時から6カ月を経過するまで |
・履行の催告 (内容証明郵便による請求など) | 催告時から6カ月を経過するまで ※1回のみで、再度催告を行っても時効の完成は猶予されません |
・書面または 電磁的記録による協議の合意 | 以下のいずれか早い時まで ①合意時から1年経過時 ②合意において1年未満の協議期間を定めたときは、その期間の経過時 ③当事者の一方から相手方に対して協議続行拒絶通知が書面でされたときは、 通知時から6カ月経過時
※最長通算5年まで、再度協議の合意によって時効の完成を猶予することができます |
時効の停止事由 | 停止期間 |
|---|---|
・履行の催告 (内容証明郵便による請求など) | 催告時から6カ月を経過するまで ※1回のみで、再度催告を行っても時効は停止しません |
・天災その他 避けることのできない事変のため、 時効を中断できないとき | その障害の消滅時から2週間 |
4-2. 時効の更新(中断)
「時効の更新」とは、時効期間がリセットされることをいいます。2020年3月31日以前に適用されていた旧民法では「時効の中断」と呼ばれていました。
時効の更新または中断の効果が生じるのは、以下のいずれかの事由が発生した場合です。
時効の更新事由 | 対象となる手続き・事由 |
|---|---|
右のいずれかの事由がある場合に、 確定判決または確定判決と同一の効力を 有するものによって権利が確定したこと | ・裁判上の請求 ・支払督促 ・裁判上の和解 ・民事調停、家事調停 ・破産手続、再生手続、更生手続への参加 |
右のいずれかの事由が終了したこと | ・強制執行 ・担保権の実行 ・留置権による競売 ・法律の規定による換価のための競売 ・財産開示手続 ・第三者からの情報取得手続 |
権利の承認 ※債務者自身が債務の存在を承認したこと | - |
【時効の中断(2020年3月31日以前に交通事故が発生した場合)】
・裁判上の請求
・差押え
・仮差押え
・仮処分
・債務の承認(債務者自身が債務の存在を承認したこと)
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5. 交通事故の時効完成が近い場合の注意点
交通事故が発生してから損害賠償請求を始めるまでに時間がかかり、消滅時効の完成が間近に迫っているときは、以下のポイントを押さえながら対応してください。
5-1. 時効が完成する日を正確に把握する
まずは、損害賠償請求権の時効が完成する日を正確に把握しましょう。損害の種類などによって、時効の起算点が異なることに注意してください。
時効完成日が分かったら、そこから逆算して準備を進めます。直前対応にならないよう、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
5-2. 時効を気にするあまり、焦って安易に示談しない
消滅時効の完成が迫っているからといって、安易に示談に応じてはいけません。示談が成立すると原則として撤回できないため、妥協すると後悔するおそれがあります。
時効の完成は、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などによって阻止できます。示談交渉が長引きそうな場合は、まず時効対策を優先することを検討しましょう。
5-3. 請求の準備が間に合わない場合は、内容証明郵便を送付しておく
消滅時効の完成が間近に迫っていて、損害賠償請求の準備が間に合わない場合は、相手方に内容証明郵便を送付しましょう。請求の詳細や根拠を整理できていなくても、以下の事項などを記載した内容証明郵便を送付すれば、時効の完成を6カ月間猶予できます。
交通事故の場所、日時
損害賠償を請求する旨
請求額(暫定的なものでよい)
内容証明郵便による時効の完成猶予は6カ月間しか続かないので、その間に裁判所に訴訟を提起しましょう。
5-4. 弁護士に相談してサポートを受ける
時効完成を避けつつ損害賠償を請求するためには、弁護士のサポートが役立ちます。すぐに弁護士へ相談して、どのような対応をとるべきかについてアドバイスを受けてください。
被害者自身や家族の保険に弁護士費用特約がついていれば、経済的な負担なく弁護士に依頼できます。交通事故に遭ったら、特約を使えるかどうか契約書などで確認しておくとよいでしょう。
6. 発生から時間が経った交通事故について、弁護士に相談するメリット
交通事故に遭った後、時間が経ってから相手方に損害賠償を請求する際には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士への相談には、主に以下のメリットがあります。
6-1. 時効完成前に適切な対応をとり、権利を確保できる
損害賠償請求権の消滅時効が完成すると、交通事故に関する賠償金を一切受け取れなくなってしまいます。時効完成を阻止するためには、時効の完成猶予または更新の措置をとらなければなりません。
弁護士に相談すれば、時効完成を阻止するために適切な対応をとってもらえます。弁護士に相談する時期が少し違うだけで、損害賠償請求の可否が分かれることもあるので、すぐに弁護士へ相談してください。
6-2. 証拠が乏しい場合でも、賠償金の獲得を目指せる
事故から時間が経つほど、当時の記録や証拠が不足しやすくなります。証拠が乏しいと請求は難しくなりますが、それだけで直ちに請求できなくなるわけではありません。
弁護士に依頼すれば、残っている資料の整理や追加証拠の収集、主張の整理や組み立てなどを通じて、賠償金獲得の可能性を探れます。「もう遅いかもしれない」と感じても、まず相談することが大切です。
6-3. 賠償金の増額や、納得できる解決が期待できる
加害者側の保険会社は、不当に低い示談金額を提示してくるケースがよくあります。保険会社の主張を鵜呑みにせず、法的な観点から検証や反論を行うことが大切です。
弁護士に依頼すれば、漏れのない損害の把握、弁護士基準による金額の算定、適切な過失割合の主張などを通じて、賠償金の増額を求めて粘り強く交渉してもらえます。その結果、賠償金の増額を含む納得できる解決が期待できます。
6-4. 労力やストレスが大幅に軽減される
けがの治療や日常生活と並行して、保険会社との交渉や資料準備を行うのは大きな負担です。
弁護士に依頼すれば、損害賠償請求に必要な手続きの大部分を代行してもらえます。労力やストレスが大幅に軽減され、けがの治療や日常生活に専念できるようになることは、弁護士に依頼する大きなメリットの一つです。
なお、弁護士に依頼する際、その費用を心配する人も多いかと思います。もっとも、被害者が加入する自動車保険に弁護士特約が付いている場合、費用負担はゼロ、もしくは少ない費用で弁護士に依頼できるため、保険内容を確認するとよいでしょう。
7. 交通事故の時効についてよくある質問
Q. 示談金の提示を長期間無視していた場合でも、こちらから相手に連絡してよい?
時効が完成する前に、改めて相手方に連絡して損害賠償を請求すべきです。時効が完成する時期や連絡の内容などを検討するため、事前に弁護士へ相談してください。
Q. 保険会社との電話やメールでのやりとりで、時効の進行が止まることはある?
保険会社に対して損害賠償を請求する旨を伝えた場合や、保険会社側が損害賠償を支払う旨を伝えてきた場合などには、時効の完成が猶予されることがあります。
ただし、内容証明郵便などのきちんとした記録が残る方法で催告(請求)を行った方が確実です。
Q. 会社への通勤中の事故でも、時効期間は通常の交通事故と同じ?
交通事故の損害賠償請求権の時効期間は、事故が発生した場所や場面の影響を受けません。会社への通勤中に起きた事故についても、プライベートでの運転中などに起きた事故と時効期間は同じです。
Q. 刑事事件としての交通事故の時効は何年?
刑事訴追が認められる公訴時効期間は、該当する罪の法定刑によって決まります。人身事故について最もよく見られる「過失運転致死傷罪」の法定刑は「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」とされており、公訴時効期間は被害者が死亡した場合で10年、負傷した場合で5年です。
8. まとめ 交通事故の時効期間は損害の内容などによって3~20年
交通事故の損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年(物損については3年)が経過すると時効によって消滅します。また、保険会社への請求については一律3年で時効が完成します。時効完成後は損害賠償を請求できなくなるので、速やかに弁護士へ相談して請求を行いましょう。
時効完成が迫っていても諦める必要はありません。弁護士に依頼すれば、速やかに時効の完成を阻止しつつ、賠償金の獲得を目指して尽力してもらえます。
(記事は2026年5月1日時点の情報に基づいています)
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