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交通事故紛争処理センターとは|ADR利用の流れ・メリットとデメリットを解説

更新日: / 公開日:
相手の任意保険会社との交渉が長引いたら、ADRを検討しましょう(c)Getty Images
交通事故の示談交渉がまとまらない場合は「交通事故紛争処理センター」を利用することで解決できる可能性があります。センターは弁護士が中立の立場で間に入り、無料で和解あっせんや裁定を行うADR機関です。 裁判よりも費用や時間の負担が少なく、実際に高い割合で和解が成立しています。一方で、利用できる条件やデメリットもあるため、事前に理解しておくことが重要です。 交通事故紛争処理センターの仕組みや利用方法、メリット・デメリット、裁判との違いまで、弁護士がわかりやすく解説します。

目 次

1. 交通事故紛争処理センターとは? ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

2. 交通事故紛争処理センターは何をしてくれる?

2-1. 損害賠償請求についての法律相談

2-2. 和解あっせん

2-3. 公正中立な立場からの審査・裁定

2-4. 和解あっせんを担当する弁護士の紹介

3. 交通事故紛争処理センターを利用できるケース

4. 交通事故紛争処理センターを利用して損害賠償を受けるまでの流れ

4-1. 【STEP1】電話予約

4-2. 【STEP2】利用申込書の作成・提出

4-3. 【STEP3】法律相談

4-4. 【STEP4】和解あっせん

4-5. 【STEP5】審査・裁定

4-6. 【STEP6】損害賠償の支払い

4-7. 裁定に不服があれば、裁判へ

5. 交通事故紛争処理センターを利用するメリット

5-1. 無料で利用できる

5-2. 短期間で交通事故の紛争を解決できる

5-3. 中立公正な弁護士が担当するため、信頼性が高い

5-4. 弁護士基準に近い額の損害賠償を受けられる

6. 交通事故紛争処理センターのデメリットは?

6-1. 利用できないケースがある

6-2. 相談担当者の弁護士は、必ずしも被害者の味方ではない

6-3. 遅延損害金は請求できない

7. ADRと示談はどっちがいい?

8. ADRと訴訟(裁判)はどっちがいい?

9. 交通事故紛争処理センターを利用する場合でも、弁護士に依頼したほうがよい理由

10. 交通事故紛争処理センターを利用して、交通事故トラブルを解決できた事例

11. 交通事故紛争処理センターについてよくある質問

12. まとめ 交通事故紛争処理センターは「無料で解決を目指せるが万能ではない」選択肢

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1. 交通事故紛争処理センターとは? ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

交通事故紛争処理センターは、交通事故の示談交渉で当事者間の話し合いが行き詰まったとき、無料でサポートしてくれる公益財団法人です。全国11カ所の本部・支部・相談室を通じて、弁護士(嘱託弁護士)が間に入り、早期解決を目指します

同センターが行うのは、ADR(裁判外紛争解決手続)と呼ばれる解決方法です。ADRとは、裁判による判決を経ずに、あっせん・仲裁・調停といった手続きを通じて紛争を解決する方法の総称で、裁判と比べて費用や時間の負担が少ない点が特徴です。

2024年度の実績では、センターが取り扱った5,067件のうち88.2%にあたる4,470件で和解が成立しています。示談交渉が難航した場面でも、高い割合で解決に至っていることがわかります。なお、利用にあたっては一定の要件があり、すべての事案で利用できるわけではありません。

2. 交通事故紛争処理センターは何をしてくれる?

交通事故紛争処理センターでは、法律相談から和解あっせん、裁定まで一貫したサポートを受けることができます。具体的な内容を見ていきましょう。

2-1. 損害賠償請求についての法律相談

嘱託弁護士や相談担当者が、提出された資料をもとに、交通事故の損害賠償に関する助言を行います。何度でも無料で利用でき、電話相談にも対応しています。ただし、医療関係書類の取得費用や交通費、資料作成費などは自己負担となります。

2-2. 和解あっせん

示談交渉が行き詰まった当事者の間に嘱託弁護士が入り、公平・中立な立場からアドバイスをしながら和解案を提示します。人身事故の場合は3回から5回、物損事故の場合は2回程度の期日で和解が成立するケースが多く、裁判と比べて早期解決が期待できます。なお、手続き中に虚偽の主張や威圧的な態度をとることは認められていません。

2-3. 公正中立な立場からの審査・裁定

和解あっせんで合意に至らなかった場合、当事者は14日以内に審査を申し立てることができます。審査では、当事者双方から事情を聴取したうえで、過去の類似判例なども参考にしながら、最も妥当と判断される裁定が示されます。

重要なのは、加害者側の保険会社はこの裁定の内容に拘束されるという点です。相手方が保険会社であれば、申立人が裁定に同意することで、加害者側の保険会社の同意・不同意に関係なく、その内容どおりの和解が成立します。

2-4. 和解あっせんを担当する弁護士の紹介

2025年8月1日時点で、センターには173名の嘱託弁護士が登録されており、弁護士費用の負担なく手続きを進めることができます。ただし、一度担当弁護士が決まると手続き終了まで変更することはできません

また、担当弁護士はあくまで公正・中立の立場でかかわるため、被害者側の利益を最大化するために動いてくれるわけではない点には注意が必要です。被害者に寄り添った解決を望むのであれば、センターの利用とは別に、自分で弁護士に依頼することを検討すべきでしょう。

3. 交通事故紛争処理センターを利用できるケース

交通事故紛争処理センターを利用できるのは、自動車・バイクが関係する交通事故で、加害者側が任意保険または共済に加入しており、その保険会社・共済との間で示談交渉が行き詰まっているケースです。

被害者本人のほか、遺族や代理人弁護士からの申立ても認められています。利用できる時期にも条件があります。負傷がある場合は症状固定(これ以上治療を続けても改善が見込めないという診断)の後が原則で、後遺障害が残った場合は後遺障害等級認定手続きが終了してからとなります。

また、すでに裁判が提起されている案件では利用できないほか、センターへの申立てから3年以上経過した事故については手続きが終了します。さらに、事故発生から一定期間が経過している場合も受け付けられないことがあるため、示談交渉が行き詰まったと感じたら早めに相談することをおすすめします。

4. 交通事故紛争処理センターを利用して損害賠償を受けるまでの流れ

交通事故紛争処理センターの手続きは、予約から和解・裁定、支払いまで段階を踏んで進みます。全体の流れを確認しておきましょう。

交通事故紛争処理センターで損害賠償を受けるまでの流れを図解。通常の裁判より早い解決が期待できる
交通事故紛争処理センターで損害賠償を受けるまでの流れを図解。通常の裁判より早い解決が期待できる

4-1. 【STEP1】電話予約

まず、最寄りの交通事故紛争処理センターに電話で連絡し、初回相談の予約を取ります。予約の際には、申立人の住所地または事故発生地が確認されます。

申立人と相手方があらかじめ合意している場合を除いて、申立人の住所地または事故発生地を管轄するセンターに利用を申し込むことになります。事前に管轄の支部を調べておくとスムーズです。

【交通事故紛争処理センターの住所・電話番号】

拠点

住所

電話番号

東京本部

東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリスビル25階

03-3346-1756

札幌支部

北海道札幌市中央区北1条西10丁目 札幌弁護士会館4階

011-281-3241

仙台支部

宮城県仙台市青葉区一番町4-6-1 仙台第一生命タワービルディング11階

022-263-7231

名古屋支部

愛知県名古屋市中村区名駅南2-14-19 住友生命名古屋ビル24階

052-581-9491

大阪支部

大阪府大阪市中央区北浜2-5-23 小寺プラザビル4階南側

06-6227-0277

広島支部

広島県広島市中区八丁堀14-4 JEI広島八丁堀ビル4階

082-962-5421

高松支部

香川県高松市丸の内2-22 香川県弁護士会館3階

087-822-5005

福岡支部

福岡県福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル10階

092-721-0881

さいたま相談室

埼玉県さいたま市大宮区下町1-8-1 大宮下町1丁目ビル7階

048-650-5271

金沢相談室

石川県金沢市本町2-11-7 金沢フコク生命駅前ビル12階

076-234-6650

静岡相談室

静岡県静岡市葵区黒金町11-7 大樹生命静岡駅前ビル4階

054-255-5528

4-2. 【STEP2】利用申込書の作成・提出

センターから送付された利用申込書に必要事項を記入し、診断書や事故証明書などの必要書類を添付して提出します。申込書はセンターだけでなく、相手方の保険会社にも直接送付されます。書類の不備があると手続きが遅れるため、漏れがないよう丁寧に準備することが大切です。

4-3. 【STEP3】法律相談

提出された資料をもとに、嘱託弁護士や相談担当者が損害賠償に関する助言を行います。希望者は電話相談も利用できます。物損事故の場合は、この相談を経ずにそのまま和解あっせんに移行することもあります。相談は何度でも無料で利用できますが、医療関係書類の取得費用や交通費などは自己負担です。

4-4. 【STEP4】和解あっせん

嘱託弁護士が当事者の間に入り、公平・中立な立場から和解案を提示します。人身事故では3回から5回、物損事故では2回程度の期日で和解が成立するケースが一般的です。担当弁護士はあくまで中立の立場であるため、被害者側の利益のために尽力してくれるわけではありませんが、最も高額な支払い基準である「弁護士基準(裁判所基準)」に近い損害賠償額が認められるケースもあります。和解が成立した場合は示談書を作成し、手続きは終了となります。

4-5. 【STEP5】審査・裁定

和解あっせんで合意に至らなかった場合、当事者は14日以内に審査を申し立てることができます。審査では、当事者双方の出席のもとで事情が聴取され、過去の類似判例なども参考にしながら裁定が下されます。

加害者側の保険会社はこの裁定に拘束されるため、相手方が保険会社であれば、申立人が裁定に同意することでその内容どおりの和解が成立します。

4-6. 【STEP6】損害賠償の支払い

和解または裁定による合意が成立すると、加害者側の保険会社から損害賠償金が支払われます。支払い時期や方法については、成立した示談書または裁定書の内容に従います。センターでの手続きが完了した後は、原則としてやり直しができないため、内容をしっかり確認したうえで合意することが重要です。

4-7. 裁定に不服があれば、裁判へ

裁定の内容に納得できない場合は、裁判を提起することができます。センターでのADR手続きはあくまで任意の解決手段であり、裁判を起こす権利が失われるわけではありません。

ただし、裁判は費用も時間もかかるため、弁護士に相談したうえで、裁判に踏み切るだけの見通しがあるかどうかを慎重に見極めることが大切です。

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5. 交通事故紛争処理センターを利用するメリット

交通事故紛争処理センターには、費用や解決スピード、専門家の関与といった点で多くのメリットがあります。主な利点を確認していきましょう。

5-1. 無料で利用できる

センターの利用にあたって、相談料や和解あっせんの手数料は一切かかりません。弁護士費用の負担なく、専門家のサポートを受けながら示談交渉を進められるのは大きな利点です。

ただし、医療関係書類の取得費用、センターまでの交通費、資料のコピー代、通信費などは自己負担となります。あくまで手続き自体が無料という点はおさえておきましょう。

5-2. 短期間で交通事故の紛争を解決できる

裁判で判決を得るには、一般的に1年近くかかることも珍しくありません。一方、センターを利用した場合は、3カ月から半年程度で解決に至るケースが多く、被害者の負担を大きく軽減できます

人身事故で3回から5回、物損事故で2回程度の期日が目安とされており、手続きの見通しが立てやすい点も安心材料のひとつです。

また、申立人が裁定に同意した場合は、加害者側の保険会社はその裁定内容に拘束されます。保険会社の意向に関わらず和解が成立するため、交渉が一方的に引き延ばされるリスクも抑えられます。

5-3. 中立公正な弁護士が担当するため、信頼性が高い

センターの嘱託弁護士は、加害者・被害者のいずれにも偏ることなく、公正・中立な立場で手続きを進めます。感情的になりがちな当事者同士の交渉とは異なり、法的な根拠にもとづいた冷静な判断が示されるため、双方が納得しやすい解決につながりやすいといえます。

5-4. 弁護士基準に近い額の損害賠償を受けられる

交通事故の損害賠償額の算定には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3つがあります。

自賠責保険基準:最低限の補償基準。強制保険である自賠責保険に基づいている
任意保険基準:任意保険会社が独自に定める基準。自賠責保険基準より高いが、弁護士基準より低い
弁護士基準(裁判所基準):過去の判例に基づく基準。3つの基準のなかで最も高額になる

保険会社が提示する示談金は自賠責保険基準や任意保険基準にもとづくことが多く、弁護士基準と比べて低額になりがちです。

センターを利用した場合、嘱託弁護士が弁護士基準を参考に和解案を提示するため、保険会社との直接交渉よりも高額の賠償金を受けられる可能性があります。自ら弁護士に依頼しなくても弁護士基準に近い解決が期待できる点は、センター利用の大きなメリットといえるでしょう。

自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の違いの図。弁護士基準が最も高額となる
自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の違いの図。弁護士基準が最も高額となる

6. 交通事故紛争処理センターのデメリットは?

交通事故紛争処理センターには、無料で利用できるなどのメリットがある一方で、利用にあたっていくつかの制約や注意点もあります。事前に把握しておきましょう。

6-1. 利用できないケースがある

センターを利用できるのは、相手方が任意保険または共済に加入している場合に限られます。加害者が無保険の場合や、自転車同士・自転車と歩行者の事故、自身が契約する保険会社との紛争などは、原則として利用できません。

また、すでに裁判が提起されている案件では利用できないほか、センターへの申立てから3年以上が経過すると手続きが打ち切られます。利用を検討する前に、自分のケースがセンターの取り扱い範囲に該当するかどうかを確認しておくことが必要です。

6-2. 相談担当者の弁護士は、必ずしも被害者の味方ではない

センターの嘱託弁護士は公正・中立の立場でかかわるため、被害者側の利益を最大化するために動いてくれるわけではありません。一度担当弁護士が決まると、手続きが終了するまで変更することもできません。相性の問題や力量への不安を感じても、途中で担当を替えることは認められていないのです。

また、手続きには平日昼間の面談が多く、仕事を休まなければならない場面も生じますが、その分の休業補償はセンターから受けられません。被害者に寄り添った解決を望むのであれば、自分で弁護士に依頼することを検討すべきでしょう。

6-3. 遅延損害金は請求できない

遅延損害金とは、損害賠償金の支払いが遅れたことに対するペナルティとして、本来の賠償金に上乗せして請求できる金銭のことです。裁判では事故発生日からの遅延損害金を請求できる場合がありますが、センターの和解あっせん・審査・裁定手続きでは、遅延損害金を請求することができません。

賠償額が高額になるケースや、事故から解決までの期間が長引いているケースでは、裁判を選択したほうが最終的な回収額が高くなる場合もあります

7. ADRと示談はどっちがいい?

交通事故紛争処理センターでの「ADR」と当事者間での「示談交渉」のどちらが適しているかは、状況によって異なります。保険会社との示談交渉が順調に進んでいるのであれば、わざわざセンターでのADRを利用する必要はありません。一方、保険会社が低額の示談金を提示したまま交渉が進まない場合や、過失割合をめぐって折り合いがつかない場合は、ADR手続きを利用することで解決の糸口が開けることがあります。

センターの嘱託弁護士が間に入ることで、保険会社も交渉姿勢を改めるケースは少なくありません。ただし、ADRはあくまで中立的な解決手段であり、被害者に有利な結果が保証されるわけではありません。示談金の大幅な増額や、複雑な過失割合の争いを有利に進めたいのであれば、自分で弁護士に依頼したうえでADRを活用するか、裁判を選択することも視野に入れるべきでしょう。

8. ADRと訴訟(裁判)はどっちがいい?

ADRと訴訟のどちらを選ぶかは、解決までにかけられる時間と費用、そして求める結果の内容によって判断することになります。ADRは費用がかからず、3カ月から半年程度で解決できる点が大きな利点ですが、遅延損害金の請求ができないこと、担当弁護士が中立であることなど、被害者にとって必ずしも有利とはいえない面もあります。

一方、訴訟は時間と費用がかかりますが、遅延損害金の請求が可能で、弁護士基準による損害賠償額が認められやすく、強制執行力のある判決を得られる点で実効性が高いといえます。

賠償額が高額になるケースや、相手方が裁定に従わないリスクが懸念される場合は、訴訟のほうが最終的に有利な結果につながることもあります。いずれの手続きを選ぶにしても、まずは弁護士に相談して見通しを確認したうえで判断することをおすすめします。

9. 交通事故紛争処理センターを利用する場合でも、弁護士に依頼したほうがよい理由

交通事故紛争処理センターは無料で利用できる便利な機関ですが、センターを利用する場合でも、別途弁護士に依頼することには大きな意味があります。センターの嘱託弁護士はあくまで中立の立場であるため、被害者の利益を最大化するために動いてくれるわけではありません。

自分で弁護士に依頼すれば、申し込みや必要書類の準備、期日への立会いといった煩雑な手続きを代行してもらえるうえ、被害者に有利な解決を目指して積極的に主張してもらえます。また、弁護士が介入することで、保険会社との交渉力が格段に上がり、センターの手続きをより有利に進められる可能性が高まります

なお、自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用の大部分を保険でまかなえるため、実質的な自己負担なく依頼できるケースがほとんどです。まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

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10. 交通事故紛争処理センターを利用して、交通事故トラブルを解決できた事例

実際に交通事故紛争処理センターを利用して解決に至った事例を紹介します。40代の男性が交差点で直進中に対向車線から右折してきた車と衝突し、むちうちの診断を受けました。加害者側の保険会社は当初40万円の示談金を提示しましたが、男性はこれを不服として交渉を続けたものの、保険会社は増額に応じませんでした。

そこでセンターに申立てを行ったところ、嘱託弁護士が双方の主張と医療記録を精査したうえで和解案を提示し、最終的に当初提示額を大きく上回る金額での和解が成立しました

別の事例では、追突事故で後遺障害等級14級の認定を受けた50代女性が、保険会社の提示額に納得できずセンターを利用しました。保険会社は任意保険基準による算定額を主張しましたが、嘱託弁護士が弁護士基準を参考に和解案をまとめた結果、慰謝料を中心に賠償額が増額され、4回の期日を経て和解が成立しています。いずれのケースも、当事者だけでは行き詰まっていた交渉が、センターの介入によって解決に至った例です。

11. 交通事故紛争処理センターについてよくある質問

Q. 物損事故でも、交通事故紛争処理センターを利用できる?

利用できます。センターは人身事故だけでなく物損事故も取り扱っています。ただし、物損事故の場合は法律相談を経ずにそのまま和解あっせんに移行することがあります。

Q. 交通事故紛争処理センターを利用すると、加害者側の保険会社は嫌がる?

保険会社がセンターの利用を嫌がること自体はありますが、利用を拒否することはできません。加害者側の保険会社はセンターの審査・裁定の結果に拘束されるため、交渉を有利に進めるうえで一定の効果が期待できます。

Q. 事故の加害者側は交通事故紛争処理センターの利用を申し込める?

原則として、申立てができるのは被害者側に限られます。加害者側からの申立ては認められていません。ただし、被害者が申し立てた手続きに加害者側が参加することは当然に認められています。

Q. 交通事故紛争処理センターを利用すると、示談金は増額される?

必ずしも増額されるとは限りませんが、嘱託弁護士が弁護士基準を参考に和解案を提示するため、保険会社が当初提示した任意保険基準の金額よりも高額になるケースは少なくありません。増額の幅は事案の内容によって異なります。

Q. 交通事故紛争処理センター以外にも、ADR機関はある?

交通事故紛争処理センター以外では、「日弁連交通事故相談センター」も交通事故に特化したADR機関として全国に相談窓口を設けており、同様に無料で利用できます。どちらを利用するかは、事案の内容や管轄の窓口へのアクセスなどを考慮して選ぶとよいでしょう。

12. まとめ 交通事故紛争処理センターは「無料で解決を目指せるが万能ではない」選択肢

交通事故紛争処理センターは、保険会社との示談交渉が進まない場合に、無料で弁護士のサポートを受けながら解決を目指せる有効な手段です。短期間での解決や弁護士基準に近い賠償が期待できる一方で、利用条件があることや、担当弁護士が中立である点には注意が必要です。

また、遅延損害金を請求できないなどのデメリットもあります。状況によっては、弁護士への依頼や裁判を選択した方が有利になる場合もあるため、まずは専門家に相談し、自分に適した解決方法を見極めることが重要です。

(記事は2026年6月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

加藤高明(弁護士)

加藤高明(弁護士)

Adam法律事務所 代表弁護士
2008年関西学院大学大学院情報科学専攻修了。法科大学院を経て、2011年司法試験合格、2012年弁護士登録、2022年Adam法律事務所設立。現在は、青年会議所や商工会議所青年部を通じた人脈による企業法務、交通事故、太陽光問題、相続問題、男女問題に従事し、筋トレやスニーカー収集に興味を持つ。岡山弁護士会所属、登録番号47482。
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