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1. 交通事故で弁護士特約が使えないケース
「弁護士特約」とは、弁護士に相談や依頼をする際の費用を保険会社に支払ってもらえる特約です。自動車保険や火災保険などに付いていることがあります。
交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼する際にも、原則として弁護士特約を使うことができます。ただし、以下のようなケースでは弁護士特約を使えないことがあるので注意してください。
1-1. 自分に故意または重大な過失がある場合
自分の故意または重大な過失(落ち度)による行為が原因で交通事故が発生した場合は、弁護士特約を使えません。たとえば以下のような行為です。
危険運転
あおり運転
飲酒運転
無免許運転
大幅なスピード違反
1-2. 天災地変などの異常事態によって事故が発生した場合
通常時では想定できないような異常事態によって交通事故が発生した場合には、弁護士特約を使えません。たとえば以下のようなケースです。
戦争
暴動
地震
噴火
津波
原子力発電所事故
1-3. 事故が労働災害に当たる場合
「労働災害」とは、業務中・通勤中の事故や出来事によって労働者がけがをしたり、病気にかかったり、死亡したりすることを意味します。業務の一環としての運転中や、通勤中に発生した事故でけがをした場合などは労働災害に当たります。
労働災害に当たる交通事故について、弁護士特約が使えるかどうかは保険会社によって異なります。一部の保険会社では、労働災害が弁護士特約の対象外となっているので注意してください。
1-4. 事故の相手方が親族の場合
交通事故の相手方が被保険者の配偶者・父母・子のいずれかである場合は、一般的に弁護士特約の対象外となります。家族同士のなれ合いにより相場と大きく異なる損害賠償額になってしまうと、弁護士費用の額にも影響する可能性があるためです。
1-5. 自動車が関与しない事故の場合
弁護士特約を利用できるトラブルの種類は、保険契約の内容によって決まります。たとえば「自動車事故」「日常事故」などの限定が付されているケースがよく見られます。
特に「自動車事故」タイプの弁護士特約は、自動車が関与しない交通事故には適用できないことがよくあります。たとえば、自転車と歩行者の接触事故などは対象外となることが多いです。
1-6. 事故発生後に弁護士特約を付けた場合
弁護士特約は、交通事故の発生前から有効なものでなければ利用できません。交通事故が発生した後に、慌てて弁護士特約を付けても、その弁護士特約は使えません。
2. 弁護士特約が使えないと勘違いされがちなケース
通常の交通事故であれば、ほとんどの場合で弁護士特約を使うことができます。たとえば以下に挙げるようなケースでは、弁護士特約を使えないと思われがちですが、実際には使えます。
2-1. もらい事故|自分の過失がゼロでも使える
被害者側に全く過失がなく、加害者に全責任がある交通事故は、被害者側から見て「もらい事故」と呼ばれることがあります。もらい事故の場合でも弁護士特約は使えます。
もらい事故で利用できなくなるのは、保険会社による示談交渉代行サービスです(弁護士法の非弁行為規制に抵触するため)。
2-2. 物損事故|けがをしていなくても使える
当事者にけががなく、車両などの物が壊れただけの交通事故は「物損事故」と呼ばれます。これに対して、当事者がけがをしている交通事故は「人身事故」と呼ばれています。
弁護士特約が使えるのは人身事故の場合に限りません。被害者がけがをしていない物損事故でも、弁護士特約は使えます。
特に物損事故の場合は、損害賠償が人身事故よりも低額になりがちなため、弁護士に依頼すると「費用倒れ」になる可能性もあります。弁護士特約によって弁護士費用を抑えるメリットが大きいと言えるでしょう。
2-3. 事故の相手方と保険会社が同じ場合|問題なく使える
交通事故の当事者同士が、同じ保険会社の任意保険に加入しているケースは珍しくありません。特に大手保険会社の任意保険に加入している場合は、事故の相手方と保険会社が同じである可能性も高くなります。
事故の相手方と保険会社が同じでも、弁護士特約は問題なく使えます。
2-4. 保険会社が弁護士特約の利用を拒否した場合|実は使えることがある
保険会社は弁護士特約の利用を拒否することがあります。弁護士特約には使えないケースが定められており、そのいずれかに該当すると保険会社が判断しているためです。
しかし、弁護士特約が使えないケースを定めた条文は、定義がはっきりせず多様な捉え方ができる場合があります。保険会社が弁護士特約の対象外と判断していても、さまざまな資料を示しながら説得すれば、判断を変更して保険金を支払ってもらえることがあります。
弁護士特約の利用を拒否されたことに納得できないときは、弁護士と協力して保険会社の説得を試みましょう。
3. 保険会社から「弁護士特約は使えない」と言われたらどうすべき?
保険会社に弁護士特約の利用を申請したところ、「使えない」と断られてしまったときは、以下の方法で対処しましょう。
3-1. 弁護士特約の利用を拒否する理由を聞く
まずは保険会社の担当者に問い合わせて、弁護士特約が使えないと判断した理由を確認しましょう。拒否の理由を明確化するため、書面で提示してもらうことが望ましいです。
3-2. 保険契約の内容を確認する
拒否された理由を踏まえたうえで、反論の方針を検討しましょう。
保険会社の判断を覆すためには、保険契約の内容に従い、弁護士特約を使えない場合に当たらないと示すことが求められます。保険契約の内容を慎重に確認・検討したうえで、保険会社を説得できるだけの反論を組み立てましょう。
3-3. 保険会社のカスタマーセンターに連絡する
保険会社の担当者は、現場限りで弁護士特約が使えないと判断しているのかもしれません。この場合、カスタマーセンターを通じて別の部署へ案件を回してもらえば、判断が変わる可能性があります。念のため、カスタマーセンターに連絡してみましょう。
3-4. 弁護士に相談して、保険会社と交渉してもらう
自分で保険会社を説得するのが難しいときは、弁護士に交渉を代行してもらうことも選択肢の一つです。弁護士特約の利用に限れば、正式な依頼前でも保険会社との交渉を代行してもらえることがあります。
4. 自動車保険の弁護士特約が使えない場合の対処法
加入している自動車保険に弁護士特約が付いていない場合や、保険会社に弁護士特約の利用を断られてしまった場合は、以下の方法によって対処しましょう。
4-1. 他の保険に弁護士特約が付いていないか確認する
弁護士特約は、自動車保険以外の保険などにも付いていることがあります。
たとえば火災保険や個人賠償責任保険には、弁護士特約のオプションを付けられるケースが多いです。また、クレジットカードにも弁護士特約が付いていることがあります。これらの弁護士特約は、交通事故についても使える場合があります。
自動車保険の弁護士特約を使えないときは、他の保険やクレジットカードの弁護士特約が使えるかどうかを確認してみましょう。
4-2. 家族の保険の補償内容を確認する
事故の本人が加入している保険以外に、家族が加入している保険の弁護士特約も使える場合があります。具体的には、配偶者・同居の親族・別居中の未婚の子が加入している保険に弁護士特約が付いていれば、それを使える可能性が高いです。
自分の保険に弁護士特約が付いていない場合や、保険会社に弁護士特約の利用を断られた場合は、家族の保険の弁護士特約を使えないか調べてみましょう。
4-3. 複数の弁護士を比較して、安く依頼できる弁護士を選ぶ
弁護士特約を使えない場合、弁護士費用は自己負担となります。
費用を安く抑えたいなら、複数の弁護士を比較するのがおすすめです。弁護士費用の額は依頼する弁護士によって異なるので、相見積もりを取って比較すれば、安く依頼できる弁護士が見つかります。
ただし、交通事故では依頼する弁護士の交渉力によって獲得できる賠償額が変わることもあります。費用の安さだけでなく、交通事故案件の実績や説明の丁寧さなども考慮し、信頼できる弁護士を選ぶことが大切です。
弁護士の無料相談を利用しても、必ず依頼しなければならないわけではありません。何人か候補をリストアップして、無料相談で相性や人柄を確認したうえで見積もりを提示してもらいましょう。
4-4. 法テラスを利用する
収入と資産がいずれも一定水準以下であれば、法テラスの「民事法律扶助」を利用できます。民事法律扶助を利用すると、30分の無料法律相談を3回まで利用できるほか、弁護士費用を法テラスに立て替えてもらえます。
法テラスが立て替えた弁護士費用は、毎月5000円から1万円程度の分割で返済します。法テラスを通じて依頼する場合の弁護士費用は、一般的な水準よりも安くなる傾向にあるので、総返済額の負担も抑えることができます。
ただし、法テラスを通じて依頼できるのは、法テラスと契約している弁護士のみです。また、弁護士を自分で選びたい場合は、法テラスの窓口に相談するのではなく、依頼したい弁護士へ先に相談する必要があります。
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5. 交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット
交通事故の被害者が損害賠償請求を弁護士に依頼することには、主に以下のメリットがあります。
5-1. 弁護士基準によって損害賠償を請求できる
加害者側の保険会社が提示してくる示談金額は「任意保険基準」という保険会社独自の基準によって算出したものです。任意保険基準には、支払額を抑えたいという保険会社の意図が反映されているため、適正な損害賠償額には遠く及びません。
交通事故の被害者が正当な損害賠償を受けるためには、「弁護士基準(裁判所基準)」によって損害額を算出する必要があります。弁護士基準は過去の裁判例に基づき、被害者に生じた客観的な損害額を算出する基準です。
弁護士に依頼すれば、保険会社との示談交渉や訴訟を通じて、弁護士基準による損害賠償を請求してもらえます。弁護士が法的な根拠を示しながら請求を行うことで、損害賠償の増額が期待できます。
5-2. 後遺障害等級認定の申請サポートを受けられる
交通事故のけがが完治せず後遺症が残ったときは、後遺障害等級の認定を申請する必要があります。認定される等級によって損害賠償の額が大きく変化するので、後遺症の内容に見合った適正な等級の認定を受けることが大切です。
後遺障害等級認定の申請方法には、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」と、被害者自ら申請する「被害者請求」の2つがあります。納得できる形で申請を行うためには被害者請求が推奨されますが、手間がかかるのが難点です。
弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の被害者請求をサポートしてもらえます。手間が大幅に省けるうえに、後遺障害診断書をはじめとする申請書類を適切にそろえてもらえるので、適正な等級が認定される可能性が高まります。
5-3. 示談交渉を代行してもらえる
示談交渉とは、交通事故の被害者側と加害者側が話し合い、損害賠償額などを決める手続きです。加害者が任意保険に加入している場合は保険会社、加入していない場合は加害者本人との間で示談交渉を行います。
保険会社は日々大量の交通事故案件を処理しており、知識や経験が豊富なので、被害者が自力で対等に交渉するのはかなり大変です。また加害者本人と示談交渉をする場合も、理不尽な主張を続けられたり、賠償金の不払いが生じたりするなど、保険会社との示談交渉とは違った難しさがあります。
弁護士に依頼すれば、保険会社や加害者本人との示談交渉を代行してもらえます。相手の出方に応じて適切に交渉を進めてもらえるので、適正額の損害賠償を引き出せる可能性が高まります。労力やストレスが大幅に軽減される点もメリットの一つです。
5-4. ADRや訴訟の対応も任せられる
示談交渉がまとまらないときは、ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟(裁判)を通じて損害賠償を請求することになります。これらの手続きでは専門的な対応が必要で、一般の方が適切に対応するのはかなり大変です。
弁護士に依頼していれば、示談交渉からADRや訴訟に移行する場合も、スムーズに対応してもらえます。弁護士の法的な知識や経験に基づく対応により、有利な解決を得られる可能性が高まります。
6. 弁護士特約が使えないケースに関してよくある質問
Q. 弁護士特約が使えるかどうかは、保険会社によって変わりますか?
弁護士特約の内容は保険会社ごとに異なるので、使えるかどうかも保険会社によって変わることがあります。
Q. 軽いもらい事故では、弁護士特約は使えない?
軽いもらい事故(=被害者側に全く過失がない事故)でも、弁護士特約は使えます。
Q. 弁護士特約を使わない方がいいケースはある?
保険会社とのやり取りが面倒なので避けたい場合などを除けば、弁護士特約を使うことのデメリットは特にありません。弁護士特約を使えるなら、使うことをおすすめします。
7. まとめ 弁護士費用特約は使えないケースもあるが、なるべく使うのがおすすめ
交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼する際、弁護士特約を使えば費用の負担を抑えられます。
ただし、自分に故意または重大な過失がある場合や事故が労働災害に当たる場合などでは、弁護士特約を使えないことがあるので注意が必要です。弁護士特約を使えないときに費用の負担を抑えたいなら、「複数の弁護士を比較する」「法テラスを利用する」などの方法を検討しましょう。
弁護士に依頼することで損害賠償の増額が期待できるうえ、精神的ストレスの軽減にもつながります。交通事故に遭ったら、早い段階で弁護士に相談しましょう。
(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)
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