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1. 後遺障害3級とは?|3番目に重い等級
後遺障害3級とは、交通事故で後遺症が残った場合に認定される後遺障害等級のうちの一つです。後遺障害等級は、保険料率算出や自賠責損害調査などを通して損害保険を支援している「損害保険料率算出機構」により認定されます。
後遺障害等級は要介護1級、要介護2級と1級から14級の計16段階からなります。後遺障害3級は、要介護でこそないものの、後遺障害等級のなかで3番目に重い等級となります。片目の失明や、咀嚼(そしゃく)機能、または言語機能の障害、高次脳機能障害といった非常に重い障害を含む等級に属しています。
2. 後遺障害3級の症状と認定基準は?
後遺障害3級は、症状によって次のように区分されています。
3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
|---|---|
3級2号 | 咀嚼または言語の機能を廃したもの |
3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、 |
3級4号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 終身労務に服することができないもの |
3級5号 | 両手の手指の全部を失ったもの |
併合3級 | 後遺症が複数ある場合に認定され得るもの |
2-1. 3級1号|1眼失明、他眼視力0.06以下
3級1号とは、後遺障害のうち「両眼の視力を著しく失ったものの、後遺障害2級に相当する完全失明まではいかない状態」をいいます。具体的には、片方の眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.06以下になった状態です。
日本における後遺障害等級の認定では、視力とは眼鏡やコンタクトレンズで矯正した状態の矯正視力を基準に評価されるのが原則です。たとえ裸眼の視力がどれほど悪くなったとしても、矯正により一定以上見える場合は、視力障害については軽く、あるいはどの等級にも該当しないと評価されます。
なお、片方の眼を失明したものの、もう片方の眼に視力が残っている場合は、後遺障害2級、3級、5級、7級、8級のいずれかが認定されます。ただし、どの等級に認定されるかは、視力が残っているほうの眼の視力次第となります。
2-2. 3級2号|咀嚼機能または言語機能の喪失
3級2号とは、後遺障害のうち「咀嚼または言語の機能を廃したもの」を言います。
咀嚼機能とは、歯や顎、顎関節、咀嚼筋などの機能によって「食物を噛み砕けること」や「飲み込めること」という実用的な噛む能力をいいます。これを「廃したもの」とは、咀嚼機能が事故による外傷によって失われ、回復しないことを言います。交通事故では、頭部外傷やけいつい固定術後の嚥下(えんげ)障害が原因となり、このような咀嚼機能の障害が起こる場合があります。
咀嚼機能が失われるような障害となると、みそ汁やスープといった流動食以外はほとんど受け付けない状態となるのが一般的です。
次に、言語機能とは発声や発音、発語を通じて他人に意思を伝える能力を言います。つまり、単に「声が出るかどうか」だけでなく、日常会話がどの程度成立するかという実用的なコミュニケーション能力が基準となります。言語機能を「廃したもの」とは、次の4種の語音のうち、3種以上が発音不能となった状態を言います。
口唇音:ま、ぱ、ば、わ行音、ふ
歯舌音:な、た、だ、ら、さ、ざ行音、しゅ、じゅ、し
口蓋音:か、が、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
咽頭音:は行音
交通事故では、舌の欠損やまひ、口唇や口蓋が裂けたことによる後遺症のほか、喉や声帯の損傷、顎骨骨折後の発音障害、顔面や舌下の神経損傷が原因となり、こうした言語機能の障害が起こる場合があります。
言語機能が失われるような障害となると、発音は著しく不明瞭となり、日常会話はかなり困難な状態となるのが一般的です。
なお、3級認定の要件は、咀嚼機能または言語機能のうちいずれか一つを失っていることであり、両方を失っている場合は1級に認定されます。
2-3. 3級3号|著しい神経障害による終身労務不能
3級3号とは、後遺障害のうち「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」を言います。3級3号の認定にあたっては、高次脳機能障害の認定が重要なカギを握っています。
実際の手続きでは、高次脳機能障害の認定には次の3要件が存在するものとされています。
【器質性脳損傷の存在(客観的に脳の損傷が確認できること)】
MRIやCT、SPECTなどの画像診断で、脳挫傷やびまん性軸索損傷などの存在を証明できることが条件として必要です。
【高次脳機能障害に由来する典型的な症状(認知障害や行動障害)が見られること】
記憶障害や注意・集中力障害、遂行機能障害、感情コントロール障害、易怒性や衝動性を伴う社会的行動障害があることが必要です。単なる精神的ショックやうつ病の発症などは要件として不十分とされています。
【事故による受傷と発生した症状との因果関係】
交通事故による外傷と症状発現に関する時間的、医学的整合性が必要とされます。具体的には次の3点が認められなければなりません。
事故直後の意識障害
症状の連続性
事故以前に同様の症状が見られないこと
そのため、事故直後の意識障害については、意識障害の程度や時間を点数化、計数化する必要があります。
3級における「終身労務に服することができないもの」とは、日常生活は自力で何とか送れるものの、仕事を行うこと(労務)が生涯にわたって不可能な状態を言います。
2-4. 3級4号|胸腹部臓器の著しい障害による終身労務不能
3級4号とは、後遺障害のうち「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」を言います。
具体的には、生命維持にとって重要な心臓や肺、肝臓、腎臓、消化管などの胸腹部の内臓を負傷したことにより重大な機能障害が残り、日常生活や就労に著しい制限が生じているものの、常時の介護までは不要な状態を言います。認定においては、腹部や胸部の外見や手術歴そのものではなく、内臓機能がどの程度失われたか(実用性)が評価の中心となります。
後遺障害3級4号に認定され得る典型的な症状について、臓器ごとに見ていきましょう。
【心臓】
・重度の心機能低下(いわゆる心不全)がある
・作業時に強い息切れや動悸が生じる
・NYHA分類(心不全重症度の分類)Ⅲ類以上に該当する
【肺】
・重度の呼吸機能障害がある
・肺活量が著しく低下している
・階段の昇降や軽作業でも著しく呼吸困難になる
【肝臓】
・広範な肝切除を伴う
・肝硬変レベルの機能低下が見られる
・黄疸や腹水、易疲労性の症状がある
【腎臓】
・両腎機能が著しく低下している
・人工透析導入前後の状況にある
・日常生活や就労に大きな制約がある
【消化管(胃や腸など)】
・広範な切除による吸収障害がある
・重度なダンピング症候群が見られる
・栄養管理が常時必要である
認定にあたっては、心機能分類や肺機能検査、血液データといった検査結果が重視される傾向があります。数値が低く、自覚症状も少ない場合は、事故前の持病との関係が問題になりやすいでしょう。
2-5. 3級5号|両手の指の全部喪失
3級5号とは、後遺障害のうち「両手指の全部を失ったもの」を言います。あくまで手指の欠損であり、足指の欠損は含まれません。
「両手指の全部を失う」とは、母指(親指)については指節間関節、そのほかの指については近位指節間関節をいずれも失っている状態を言います。イメージで言うと、親指の第一関節と、そのほかの指の第二関節のどちらもない状態です。
両手指のうち一部が残っている場合や機能が失われていない場合は、4級より数字が大きい等級に認定されることになります。
2-6. 併合3級|後遺症が複数ある場合に認定され得る
自賠法施行令2条1項によれば、後遺障害等級認定表に該当する障害が2つ以上ある場合、最上位の障害等級を最大3級上位に繰り上げることとされています。これを「併合」と言います。
最上位の等級が1級から5級の場合、次順位の等級が1級から5級であれば、最上位の等級+3級が認定されます。たとえば、4級相当の障害と5級相当の障害がある場合、最上位の4級+3級の1級が併合で認められることになります。
また、最上位の等級が1級から5級の場合、次順位の等級が6級から8級であれば、最上位の等級+2級が認定されます。たとえば、5級相当の障害と8級相当の障害がある場合、最上位の5級+2級の3級が併合で認められることになります。
なお、併合は被害者ごとに一度しか行われません。たとえば、一度の事故で顔に目立つ傷跡や変形が残った(9級16号)、片目の眼球に著しい運動障害が残った(12級1号)、片足の足指の全部を失った(8級10号)という場合を考えてみましょう。9級16号と12級1号を併合して「併合8級」にして、その「併合8級」にさらに8級10号を併合して併合6級になることはありません。この例では13級以上のものが2つ以上あるため、最も高い等級の8級を1級繰り上げて併合7級となるにとどまります。
3. 後遺障害3級の認定を受けた場合に、請求できる慰謝料の種類と相場は?
後遺障害等級認定の申請を行い、後遺障害3級に認定された場合、入通院慰謝料のほかに後遺障害慰謝料を加害者に請求できます。それぞれの計算方法についても解説します。
3-1. 後遺障害3級の被害者がもらえる慰謝料の種類
後遺障害3級に認定された被害者が受け取れる慰謝料には「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」の2種類があります。
【入通院慰謝料】
入通院慰謝料とは、交通事故によるけがで入院や通院を強いられた精神的苦痛に対する賠償金です。後遺障害の有無にかかわらず、被害者の入院または通院の期間に応じて請求できます。
【後遺障害慰謝料】
後遺障害慰謝料とは、事故により後遺障害を負った被害者が請求できる慰謝料です。認定される後遺障害の等級に応じて金額が異なります。
3-2. 慰謝料を算定する3つの基準|弁護士基準で請求を
交通事故の損害賠償額は、事故ごとに具体的な事実関係をふまえて個別に算出すべきものです。つまり、被害者が負った傷害の内容と程度や入通院期間、後遺障害の内容や程度、休業損害の有無や程度、被害者の年齢と職業、加害者側の対応、被害者や遺族の受けた精神的な苦痛の程度などが考慮されなければなりません。
もっとも、交通事故は元来発生数も比較的多く、過失割合(事故における加害者と被害者の落ち度の割合)や損害の算出にあたって類型化しやすい分野です。そのため、損害賠償額の算出にも有力な基準が生み出されてきました。具体的には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つが存在します。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準とは、自賠責保険における損害賠償金の支払基準です。交通事故による傷害や後遺障害、死亡に対するそれぞれの損害額の算定基準が明確に定められています。
自賠責保険は被害者救済を目的とした強制保険であり、原動機付自転車(原付)を含むあらゆる自動車に加入が義務づけられています。自賠責保険は被害者救済の強制保険という性格から、補償内容は対人賠償に限られます。また、支払限度額があるほか、その金額も必要最低限度のものとなっていて、補償額としては十分とはいえないケースが少なくありません。
【任意保険基準】
任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準を任意保険基準と言い、保険会社によってその基準は異なります。
任意保険基準は、その名のとおり任意保険会社の内部で運用されている基準であることから、外部に公開はされていません。そのため、実際にどのような補償額が提示されるかは任意保険会社の提示を見るまでわからないケースが多いと言えます。自賠責保険基準よりは高い場合が多いものの、弁護士基準(裁判所基準)よりは低額に抑えられているのが一般的です。
【弁護士基準(裁判所基準)】
弁護士基準は裁判所基準とも呼ばれ、過去の交通事故の裁判例などをふまえて算出された基準です。その詳細は公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤本」)に掲載されています。
3つの基準のなかでは、弁護士基準による算定額が最も高額になりやすいです。
もっとも、弁護士基準は法的拘束力を持つものではないため、被害者自身でこれを活用して任意保険会社と交渉しようとしてもうまくいかないケースがほとんどです。そのため、弁護士基準を使って任意保険会社と交渉したい場合は、弁護士に交渉を依頼することをお勧めします。
3-3. 入通院慰謝料の計算方法
例として、事故によるけがで1カ月入院した後、3カ月間通院(実際に通院した日数30日)の場合で、自賠責保険基準と弁護士基準の入通院慰謝料額がどれだけ違うのか、比較してみましょう。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準では治療日数を1日あたりの基準額(4300円)にかけ合わせて算出します。ここでの治療日数とは、「入院期間+通院期間」または「実際に入通院した日数×2」のうち、どちらか少ないほうの日数です。
今回の例では、「入院期間1カ月(30日)+通院期間3カ月(90日)=120日」と「実際に入通院した日数(60日)×2=120日」のうち、少ないほうの120日が治療日数となります。したがって、自賠責保険基準における入通院慰謝料額は「4300円×120日=51万6000円」となります。
【弁護士基準】
弁護士基準での入通院慰謝料は、事故のけがが軽傷の場合と重傷の場合で金額が異なります。以下は、重傷を負った場合の早見表です。
表の見方を説明します。今回の例では、入院期間1カ月と通院期間3カ月が交差する部分の数字が慰謝料額となります。「115」となっているため、弁護士基準における入通院慰謝料額は115万円です。
これらの数字を見比べると、いかに自賠責保険基準と弁護士基準の金額差が大きいかが理解できるはずです。
3-4. 後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級を早見表に当てはめて算出します。
後遺障害慰謝料の目安額については、弁護士基準と自賠責保険基準で大きな差が生じます。
弁護士基準 | 自賠責保険基準 |
|---|---|
1990万円 | 861万円 |
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4. 後遺障害3級の被害者が請求できる逸失利益の相場
逸失利益とは、交通事故による後遺症のために働けなくなった場合に、事故がなければ本来得られたはずの収入を言います。逸失利益も加害者に請求できる賠償金の一つです。
逸失利益の金額は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で算出できます。
それぞれの項目について、以下で説明します。
【基礎収入】
基礎収入とは、被害者が事故前に実際に得ていた、あるいは得られると見込まれる収入を言います。基礎収入の算定にあたっては、職種に応じて以下の金額をベースとするのが基本です。
給与所得者:事故前年の年収
自営業者:申告所得
会社役員:労務対価部分
学生、主婦または主夫、無職者:賃金センサスにおける平均賃金を使用
なお、賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」に基づく統計資料です。また、すでに就職、または昇給や昇進が確実に見込まれていた場合は、将来得られたはずの収入を考慮する場合もあります。
【労働能力喪失率】
労働能力喪失率とは、後遺障害によって働く能力がどの程度失われたかを示すものです。後遺障害の等級ごとに1級の100%から14級の5%まで定められており、1級から3級までの労働能力喪失率は100%です。
【労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】
後遺障害により、将来にわたり働く能力が低下する期間を「労働能力喪失期間」と言います。労働能力喪失期間は、症状固定(これ以上治療を続けても改善が見込めない状態)を診断された日から原則67歳までとされています。ただし、将来の収入を現在にさかのぼって受け取ると利息収入が見込めることになるため、この分をライプニッツ係数を使って減価する必要があります。
たとえば、被害者が年収800万円の会社員で、症状固定時に50歳であり、3級の後遺障害等級認定を受けた場合、逸失利益の総額は以下のとおり1億円を超えます。
基礎収入(800万円)×労働能力喪失率(100%)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(13.1661)=1億532万8800円
平均年収をもとに性別と年齢別に算出すると、後遺障害3級の逸失利益の目安は次のようになります。
25歳 | 35歳 | 45歳 | 55歳 | 65歳 |
|---|---|---|---|---|
1億4002万円 | 1億2025万円 | 1億897万円 | 8180万円 | 3550万円 |
25歳 | 35歳 | 45歳 | 55歳 | 65歳 |
|---|---|---|---|---|
9941万円 | 8837万円 | 7377万円 | 5092万円 | 2769万円 |
5. 慰謝料と逸失利益以外の賠償金は?
後遺障害3級に認定された被害者が請求できる慰謝料および逸失利益以外の項目としては、「休業損害」「将来の介護費用」などが挙げられます。
5-1. 休業損害
休業損害とは、交通事故による負傷で家業を含めた仕事を休まざるを得なくなったために生じた減収分を言います。
自賠責保険基準では原則「日額6100円 × 休業日数(治療実日数)」で計算されます。しかし、1日あたりの収入が6100円を超えることを証明できれば、最大1万9000円を上限に実際の損害額が認められます。給与所得者は源泉徴収票などで、自営業者は確定申告書などで自身の収入額を証明し、休業損害証明書を提出して請求することになります。
ただし、休業損害の補償は自賠責保険の傷害部分の総限度額120万円に含まれるため、治療費や慰謝料との兼ね合いで満額が支払われない場合がある点に注意が必要です。
一方、弁護士基準を用いた場合、事故以前の被害者の収入が適切に証明できれば、その満額が補償されるうえ、補償額にも上限がありません。この点は交通事故後の対応を弁護士に依頼するメリットと言えるでしょう。
5-2. 将来の介護費用
交通事故により介護が必要になった場合の将来の介護費用は、通常1級や2級で認められる損害です。ただし、高次脳機能障害などで3級に認定された場合でも将来の介護費用が認められる可能性があります。平均余命に1日あたり3000円から5000円をかけた金額が認定されるケースが多く見られます。
5-3. そのほかの費用
後遺障害3級認定の被害者が請求できるそのほかの賠償金として、次のようなものが挙げられます。
治療費:治療のための通院費や入院費、薬代など
付添看護費:けがにより介助や介護が必要な場合にかかる費用
入院雑費:入院に必要な日用品や通信費など
通院交通費:通院にかかる交通費
物損:車の修理費や代車費用など
6. 後遺障害3級の賠償金は、総額でいくらになる?
後遺障害3級に認定された場合の賠償金総額を見てみましょう。次の状況をモデルケースとします。なお、すべて弁護士基準で算出するものとします。
男性
年収800万円
交通事故で3カ月間休業
交通事故で片目を失明、もう片目の視力も0.03に低下したため、後遺障害等級3級1号の認定
事故による入通院期間は入院2カ月間、通院6カ月間
【後遺障害慰謝料(3級)】
1990万円
【入通院慰謝料(入院2カ月間、通院6カ月間)】
181万円
【逸失利益】
基礎収入(800万円)×労働能力喪失率(100%)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(13.1661)=1億532万8800円
【休業損害】
800万円×3カ月/12カ月=200万円
【合計金額】
1990万円+181万円+1億532万8800円+200万円=1億2903万8800円
7. 後遺障害3級の被害者が損害賠償金を受けるまでの流れ
後遺障害3級の被害者が損害賠償を受けるまでの手続きの流れは下図のとおりです。
7-1. 入通院による治療と症状固定の診断
まず医師の指示に従って入通院をし、必要な治療を受けます。「これ以上治療を続けても医学的に症状の改善が見込めない」と判断される時点で、医師により「症状固定」の診断がなされます。
症状固定の診断を受けるまでは、自身の判断で勝手に治療を打ち切ることがないようにしましょう。
7-2. 後遺障害等級認定の申請
症状固定後、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級認定を申請します。後遺障害等級認定の申請手続きには、任意保険会社に任せる「事前認定」と、被害者自らが自賠責保険に直接申請する「被害者請求」の2種類があります。
被害者請求は事前認定と比べて手間や時間がかかる一方、認定に有利な資料を添付できるため納得のいく形で申請しやすいメリットがあります。後遺障害等級が認定される可能性を少しでも高めたい場合は、被害者請求での申請をお勧めします。
7-3. 示談交渉
後遺障害等級認定を受けたあと、加害者または加害者側の保険会社と示談交渉を行います。この際、加害者側が最初に提示する金額は不当に低いケースが少なくありません。提示金額が妥当であるか、あるいは増額の可能性があるかについて弁護士に相談することをお勧めします。
7-4. 交通事故ADRまたは民事訴訟
示談交渉で合意に至らないときは、交通事故ADRや民事訴訟(裁判)を検討することになります。交通事故ADRは「公益財団法人交通事故紛争処理センター」や「公益財団法人日弁連交通事故相談センター」などが運営する訴訟前の示談和解あっ旋手続きです。弁護士などの専門家に間に入ってもらうことで、裁判によらずに和解をめざせます。
交通事故ADRでも示談和解に至らず当事者に不服がある場合は、民事訴訟手続きへと進むことになります。
7-5. 損害賠償の受け取り
示談交渉や交通事故ADR、民事訴訟などで決まった内容に従い、損害賠償(示談金)が支払われます。
8. 後遺障害3級の認定を受けるためのポイントは?
後遺障害3級の認定を受けたい場合、次の4点に留意しましょう。
医師の指示に従って治療を続ける
認定基準をふまえた後遺障害診断書を作成してもらう
保険会社任せにせず、被害者請求を行う
弁護士に依頼する
8-1. 医師の指示に従って治療を続ける
治療の際は医師の判断に従うようにしましょう。自身の判断で勝手に治療をやめることは、事故とけがとの因果関係が疑われ、正しい後遺障害等級が認められにくくなる要因ともなりかねません。十分な損害賠償を勝ち取るためには、医師の指示に従って、症状固定の診断を受けるまで治療を続けることが大切です。
8-2. 認定基準をふまえた後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害等級は、医師が作成する「後遺障害診断書」に基づいて認定されます。後遺障害診断書には、後遺症の等級別の認定基準を満たしている事実がわかる記載が必要です。医師に作成してもらった後遺障害診断書の記載内容が不十分と思われる場合、または十分かどうかわからない場合は、弁護士に相談し、必要に応じて医師に修正を依頼してもらうことも検討したほうがよいでしょう。
8-3. 保険会社任せにせず、被害者請求を行う
後遺障害認定を申請する場合、任意保険会社任せの事前認定ではなく、自賠責保険に対して被害者自身が申請する被害者請求の手続きをとったほうが、納得できる結果につながりやすいと言えます。被害者請求の手続きでは、後遺障害等級認定に必要な資料を被害者自身で収集して提出でき、適切な後遺障害等級に認定される可能性を高められるというメリットがあるためです。
8-4. 弁護士に依頼する
後遺障害等級認定の手続きでは、弁護士への依頼を検討することをお勧めします。弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定の申請にあたって事前に後遺障害診断書の内容をチェックしてもらえるほか、必要に応じて医師ともコミュニケーションをとってもらえます。これにより、適切な後遺障害等級に認定される可能性を高められます。被害者請求の書類を適切に作成してもらえるため、被害者本人の手間の削減が期待できます。
また、後遺障害等級の認定結果に不満がある場合は、異議申立ての手続きも弁護士に依頼できます。
損害賠償についても、弁護士基準に基づいた適切な金額で交渉してくれるため、自分で対応するよりも賠償金が増額される可能性があります。
なお、弁護士費用特約の付帯する自動車保険に加入している場合、弁護士費用を被害者側の任意保険会社から支払ってもらえます。そのため、自己負担なし、または少ない費用負担で弁護士に手続きを依頼することが可能です。特約を利用しても、翌年の保険等級や保険料に影響は出ません。
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9. 後遺障害3級の被害者が、賠償金以外に受けられる支援や給付は?
交通事故による後遺障害が生じた場合、障害年金を受けることも可能です。後遺障害等級認定3級であれば、障害年金1級から3級のうちいずれかに該当するのが一般的です。ただし、交通事故による後遺障害と障害年金はそれぞれ認定する機関と要件が異なる点には注意が必要です。
また、仕事中や通勤中の交通事故では、労働災害(労災)として労災保険が適用され、治療費や休業補償、後遺障害などに対する給付を受けられます。これらの給付は加害者の自賠責保険や任意保険と併用できるため、自賠責保険でカバーされない慰謝料などを労災の特別支給金と合わせて請求可能です。これにより、自賠責保険に任意保険のみの場合よりも最終的に受け取れる給付額が増えるメリットがあります。
なお、交通事故による後遺障害と労災給付もそれぞれ認定する機関と要件が異なり、労災給付を受けるためには労災保険の「第三者行為災害」として申請が必要です。
10. 後遺障害3級に関してよくある質問
Q. 後遺障害3級の認定を受けたら、障害者手帳はもらえる?
後遺障害等級と身体障害の等級は認定機関も認定要件もそれぞれ別物ですが、後遺障害3級相当であれば身体障害者手帳ももらえるケースが多いと言えます。
Q. 医師に「後遺障害3級」が認定される可能性があると言われたが、5級が認定された。再申請はできる?
認定された後遺障害等級に納得できない場合、損害保険料率算出機構に対する異議申立てのほか、自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、あるいは損害賠償請求訴訟を提起することによって不服を申し立てることが可能です。弁護士に一度相談することをお勧めします。
11. まとめ 後遺障害3級の認定をめざす場合は弁護士に相談を
後遺障害3級の認定要件は複雑かつ多岐にわたるため、認定に向けた作業もまた地道で複雑なものとなります。症状を裏づける医学的証拠が必要になるほか、事故によるけがとの因果関係について整合性がとれていることも求められます。
こうした後遺障害等級認定を勝ち取るためには、交通事故の専門家である弁護士の実績と経験がものを言います。被害者自身が後遺障害に関する資料を用意し、申請することは簡単ではありません。また、後遺障害等級の認定後に加害者側と交渉を行う場合も、弁護士に対応を依頼することで適正な金額の賠償金を請求できるようになります。
「後遺障害等級認定の内容に不満がある」「認定は受けたものの、適正かどうか自信がない」「これから後遺障害等級認定を受ける」などの場合は、ぜひ一度弁護士に相談してください。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
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