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1. 当て逃げ後、警察から連絡が来たり逮捕されたりすることはある?
「当て逃げ」とは一般的に、交通事故によって車やガードレール、塀や電柱などに損害を与えた際、警察への報告や被害者への対応などの必要な措置をせず、事故現場から立ち去る行為を言います。当て逃げは死傷者のいない物損事故からの立ち去りを指し、死傷者がいた場合の逃げ去り行為は「ひき逃げ」と呼びます。
当て逃げをすると、その後、警察から連絡がくることがあります。場合によっては逮捕される可能性もゼロではありません。
接触事故による損害が無視できない程度である場合、接触の被害者が警察に通報して被害届を提出する可能性が高いです。警察は被害者の証言を手始めに、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像などを順次確認して、接触した車を特定するための捜査をします。目撃者を探して証言を得たり、「Nシステム」と呼ばれる自動車ナンバー自動読取装置の記録によって車を特定したりすることもあり得ます。
車が特定されれば運転者が判明するのは時間の問題です。刑事責任や行政上の責任を追及するため、警察から出頭や同行を求められ、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば逮捕されてしまうかもしれません。
2. 当て逃げは何日後にバレる? 警察に特定されて連絡がくるまでの期間
事故後に被害者がすぐに警察に通報し、車のナンバーも判明しているという場合には、盗難車でもない限り運転者を特定することは容易です。事故当日に警察から連絡がくることもあります。
事故の発覚が遅く、時間が経ってから通報された場合には、そこから捜査が始まるため車や運転者の特定は遅くなります。接触した車がすぐに特定できない場合には、周囲の防犯カメラの映像の解析、Nシステムなどの記録の精査、目撃者の探索などで時間がかかります。被害の大きさによって警察が捜査をする際の優先順位が異なることもあります。
そのため、事故から数日経っても警察から連絡が来ないからといって、もう検挙されないということにはなりません。捜査の状況次第で1カ月以上経ってから連絡がくるケースもあります。放置して不安を抱えながら待つより、少しでも影響を軽減するため自ら警察に報告することを検討するのが得策です。
3. 「当て逃げしてしまったかも」と思ったとき、今すぐとるべき行動は?
「当て逃げをしてしまったかもしれない」と思ったら次のような行動をとることが大切です。
状況の整理と把握、証拠の保存
弁護士に相談する
警察への事故報告
保険会社への連絡
相手への謝罪
3-1. 状況の整理と把握、証拠の保存
事故の状況を正確に把握することがその後の対応の基礎になります。
まず、当て逃げをした可能性のある日時、場所、車の接触部分、当ててしまった対象物を把握しましょう。なぜ接触したとわかったのか、どんな不注意があったのかも忘れないようにメモなどをとります。車の接触部分には傷がついていることが多いので傷があれば撮影して保存します。
3-2. 弁護士に相談する
当て逃げによる処罰や損害賠償が心配な場合、弁護士に相談することをお勧めします。状況を検討して影響を少なくするにはどうすべきか、アドバイスを受けることができます。
検討の結果、必要であれば警察署へ同行して状況を的確に伝え、事故の報告をすることも可能です。真摯に反省している姿勢を示すことによって処罰を軽減できる可能性があります。被害者との間で行う必要がある示談交渉も弁護士に依頼できます。
3-3. 警察への事故報告
当て逃げした可能性があるのであれば、そのことを警察へ報告するのが最善です。当て逃げしたことや自分が運転者であることが警察に発覚する前に報告すれば「自首」として扱われ、刑事処分が軽くなります。
警察に発覚していたあとであっても、早期に自分から出向いて報告することで反省の態度を示せば、処分を軽くできる可能性があります。
3-4. 保険会社への連絡
警察への報告後、自分が加入している任意保険の保険会社へ連絡します。車で物を壊し、損害賠償責任を負った際に修理費などを補償する対物賠償責任保険が使用できれば、保険会社から被害者へ損害の賠償金が支払われます。任意保険の示談代行サービスが使えれば示談交渉も保険会社が対応してくれます。
ただし、警察への報告をしていないと交通事故証明書が発行されず、交通事故証明書がないと保険が使えません。その場合、損害賠償や示談を自分でしなければならなくなります。
3-5. 相手への謝罪
接触の相手、つまり被害者がわかったら謝罪し、誠実に対応するようにします。
被害者が被った損害については賠償しなければなりませんが、賠償の対象や金額は無制限ではなく、法的観点から検討しなければなりません。金額など具体的な話については保険会社や弁護士に任せるべきです。可能であれば謝罪のタイミングや内容についても事前に弁護士に相談するのがよいでしょう。
4. そもそも「当て逃げ」の罪とは?
「当て逃げ」とは、物損事故を起こしたにもかかわらず、危険防止措置や警察への報告をせずに現場から立ち去ってしまう行為を言います。人身事故を起こし、負傷者を救護せずに逃げてしまった場合は「ひき逃げ」とされ、当て逃げより格段に重い処罰があります。
当て逃げの対象となる「物」に制限はありません。「人」を除くすべての物への被害が物損事故になり、何もせずにその場を離れると当て逃げになってしまいます。ほかの車だけでなく、ガードレール、電柱、街路樹、動物などに接触して損傷させた場合にも物損事故となり、適切な対応をしなければ法的責任を問われることになります。
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5. 当て逃げをした人が問われる法的責任
当て逃げをした場合、刑事、行政、民事の3つの法的責任が生じます。
5-1. 刑事責任|拘禁や罰金の刑事罰
物損事故を起こした場合、道路交通法によって運転者は危険防止措置と警察への報告をしなければならないとされています。違反すると刑事裁判で刑事罰が科される可能性があります。
【危険防止措置義務】
事故を起こしたらただちに運転を停止して、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければなりません。車を路肩などの安全な場所にすぐ停める、物が散乱した場合には道路脇に片づける、発煙筒や三角表示板を使って後続車に知らせてさらなる事故を防ぐといった措置をとる必要があります。
【報告義務】
ただちに警察官に、事故の日時、場所、損壊した物とその程度などを報告しなければなりません。
危険防止措置義務の違反の刑事罰は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金、報告義務の違反の刑事罰は3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科されます。
物損事故の場合、ただちに危険防止措置と警察官への報告を行っていれば、器物損壊罪にもならずに刑事責任は問われません。反対に2つの義務を果たさないと、それによって刑事罰を科されるため、当て逃げの結果はとても重いと言えるでしょう。
違反した場合でも、自首や出頭などによって情状酌量が認められれば不起訴とされ、裁判にもならず、刑事罰を回避できる可能性がありますが、当て逃げの場合、略式起訴で罰金刑を科されるケースが比較的多いです。
5-2. 行政上の責任|免許停止や免許取り消し
当て逃げをすると、運転免許の違反点数が加算されます。物損事故を起こし、危険防止措置をとらなかった場合には、安全運転義務違反として2点、危険防止措置義務違反として5点、合計7点が加算されます。
そうすると過去3年以内に免許停止や取り消しの行政処分を受けた前歴のない人でも、その当て逃げだけで30日間の免許停止の処分を受ける結果になります。前歴や点数の累積がある人だと、免許取り消しの処分もあり得ます。
5-3. 民事責任|被害者に対する損害賠償
当て逃げの加害者は、壊した被害者の物について、金銭で賠償する責任を負います。車であれば修理費や代車の費用、修理できない物であれば時価相当額などが賠償の対象になります。
被害者との示談交渉で賠償の対象や金額を決めることになりますが、示談が成立しない場合には被害者が民事裁判を起こすことが多く、そうすると裁判所が決める流れになります。
6. 「当て逃げしてしまったかも」と気づいたら、後日でも警察に行くべき?
当て逃げの心当たりがあれば、後日であっても警察へ行って報告したほうがよいです。
当て逃げしたことや運転者が誰かということが警察に発覚する前に報告すれば「自首」として扱われ、刑事処分が軽くなります。警察に発覚していたあとであっても、早期に自分から出向いて報告し、反省の態度を示すことで、不起訴や、罰金の額が低くなる可能性が高まります。
また、任意保険を使って損害賠償や示談をする場合、交通事故証明書が必要です。交通事故証明書は警察に事故の報告をしないと発行されないため、そういった意味でも警察への報告は必須です。
7. 当て逃げをした人が警察署へ行く前に、弁護士へ相談や依頼をするメリット
弁護士に相談することで、今置かれている状況を整理し、どのように対処すればよいかアドバイスを受けることができます。
警察への出頭に際しても弁護士が同行して的確に状況を伝え、反省の態度を明らかにすることで情状をよくできる可能性があります。不当に厳しい取り調べを抑止する効果も期待できます。
また、任意保険に入っていない場合や交通事故証明書が発行されない場合には保険会社の示談代行が利用できないため、被害者との示談交渉は自分でするか弁護士に依頼するしかありません。
不安のなかでこれらの対応を一人で行うのは簡単ではありません。弁護士の力を借りながら進めていくのが安心でしょう。
8. 当て逃げしたかもしれない場合の対応に関してよくある質問
Q. 当て逃げから数日が経過しているが、今さら警察に連絡しても「自首」にはならない?
当て逃げしたことや運転者が誰かということを警察が把握していない段階で警察に連絡すれば「自首」が成立します。そのため、何日か経過していても自首になる可能性があります。自首として扱われれば刑事罰が軽くなり、また不起訴となる可能性も出てきます。
Q. 警察署に行ったら、その場で逮捕されて会社に行けなくなる?
当て逃げだけで、しかも自分から警察署に出頭した場合、逃亡や証拠隠滅の可能性があるとは考えにくいため、その場で逮捕される危険性はきわめて低いと言えます。会社に行けなくなることもないでしょう。新たに逃亡のおそれが生じるなどの事情がない限り、後日あらためて逮捕される展開も考えにくいです。
Q. 被害車両のナンバーを覚えていないけれど、それでも警察署に行くべき?
被害車両のナンバーや被害者の情報がわからなくても、警察には報告したほうがよいと考えられます。被害者からの通報によって捜査が始まっている可能性があります。警察から追及を受ける前に自分から出頭して説明することで有利になる可能性があります。
Q. 当て逃げについて、警察官に報告しないままだとどうなる?
警察による捜査が進むと運転者が特定され、後日、出頭や同行を求められることがあります。自分から警察に報告した場合に比べて刑事罰を受けるリスクは高まります。
Q. 当て逃げに気づいていない場合はどうなる?
当てたことに気づいていない、つまり接触したという認識がない場合は、危険防止措置義務違反や報告義務違反の故意がないため刑事責任は問われません。ただし、接触の衝撃や接触音などによって、普通は気づくような状況があったのであれば、気づかなかったという主張はなかなか通らないと考えられます。
危険防止措置義務違反の「罪にあたる行為をしたとき」に違反点数が5点加算されるとされているため、接触の認識がなく危険防止措置義務違反にならない場合には、少なくとも違反点数のうちの5点は加算されない可能性があります。もっとも、明確な判例や実際の運用の公示もないため、予想は難しいところです。
一方、気づいていなくても過失(落ち度)によって車を含む物を壊した場合には民事上の損害賠償責任が生じるため、示談交渉をして賠償をする必要があります。
9. まとめ 当て逃げをした際は弁護士とともに最善の対応を
当て逃げは道路交通法に違反する罪であり、人身事故ではなくても、刑事罰、行政処分、損害賠償責任を発生させる違法行為です。近年はドライブレコーダーや防犯カメラの普及によって検挙される可能性も高まっており、重い責任を負うリスクは無視できません。
死傷者のいない物損であっても、もし事故を起こしてしまえば警察への報告や被害者への示談交渉など、さまざまな対応をする必要があります。
万が一当て逃げをしてしまったら、一人で悩むのではなく、最善の対応ができるように弁護士に相談してサポートを受けることをお勧めします。警察への出頭に際して弁護士が同行して的確に状況を伝え、反省の態度を明確にすることで情状をよくできる可能性があります。不当に厳しい取り調べを抑止する効果も期待できます。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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