依頼者様は会社員として勤務されていた男性で、自転車運転中に交通事故に遭われ、腰椎椎体骨折を負傷しました。治療を継続したものの、椎体の圧潰による脊柱の変形が残存し、自賠責の後遺障害等級は11級(脊柱に変形を残すもの)と認定されました。依頼者様は、事故後に勤務先を退職して新たに起業し、結果的に事故前を上回る収入を得るに至っていました。もっとも、これはご本人の並々ならぬ努力の結果であり、後遺障害が将来の就労に影響しないことを意味するものではありません。 本件で問題となったのは、保険会社が逸失利益を強く争ってきた点です。保険会社側は、骨癒合は良好で脊柱の安定性・保持性に支障はないことを根拠に、労働能力喪失期間を10年に限定すべきと主張するとともに、事故後に減収どころか増収となっている事情を取り上げ、逸失利益自体の発生を否定する論陣を張ってきました。交渉では決着せず、訴訟に移行することとなりました。
訴訟では、後遺障害11級の脊柱変形に関する逸失利益が中心争点となりました。保険会社側は顧問医による意見書を提出し、「脊柱の安定性は十分に確保されており、将来的な就労への影響は限定的」と主張。これに対し当方は、提携する整形外科医と連携し、依頼者様の椎体圧潰の程度が11級の中でも重い部類に属することを医学的に立証しました。提出した意見書では、加齢に伴い脊椎の支持機能・保持機能が低下する可能性が客観的所見から高いこと、将来的に重量物の取扱いや長時間の同一姿勢保持に支障が生じる蓋然性が高いことを丁寧に論証しました。 また、事故後の増収についても、これは退職・起業というご本人の自助努力によるものであり、後遺障害による労働能力喪失の有無とは別次元の事象であることを強調。加えて、起業後の業務には体力的負荷が伴うものが含まれており、後遺障害による将来的な制約は確実に存在することを主張しました。 最終的に裁判所は、当方の医学的意見書をベースに労働能力喪失率14%、喪失期間34年(67歳までの全期間)を前提とした逸失利益約1,500万円を認定。脊柱変形による逸失利益の争いにおいて、賠償実務に即した充実した結論を得ることができました。 脊柱変形や減収なしの事案では、保険会社から逸失利益を強く争われる傾向が顕著です。医学的根拠と将来予測を、認定基準と裁判実務に即した形で立証できるかが鍵となります。
※事例の内容はご相談当時の状況や条件等によります。
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