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1. 賠償金の増額や示談交渉の代行を希望するなら、弁護士に依頼するのが安心
交通事故の損害賠償請求を取り扱う専門家としては、主に弁護士と行政書士が挙げられます。
弁護士は法律事務全般に対応できる専門家で、特に紛争の解決を取り扱っているのが大きな特徴です。交通事故に関しては、弁護士は示談交渉や訴訟などを含めたすべての業務を取り扱うことができます。
一方、行政書士は法律文書や官公庁に提出する文書などの作成を取り扱っています。交通事故において、行政書士は書類の作成やその相談には対応できるものの、業務範囲が狭く限定されています。
特に損害賠償の増額を求める被害者の代理人として、加害者やその保険会社と交渉することは、行政書士には法律上認められていません。賠償金の増額や示談交渉の代行を希望するなら、行政書士ではなく弁護士に依頼しましょう。
2. 【比較表】交通事故における行政書士・弁護士・司法書士の違い
行政書士・弁護士・司法書士が、交通事故に関して取り扱うことのできる業務を下表にまとめました。
行政書士 | 弁護士 | 司法書士 | |
|---|---|---|---|
請求書(内容証明郵便など)の 作成 | △※1 | 〇 | △※2 |
後遺障害等級認定の 申請・異議申立て | △※1 | 〇 | × |
自賠責保険金の請求 | △※1 | 〇 | △※2 |
任意保険会社との 示談交渉・ADR・訴訟 | × | 〇 | △※2 |
加害者本人との 示談交渉・訴訟 | × | 〇 | △※2 |
示談書の作成 | △※1 | 〇 | △※2 |
弁護士は、交通事故に関してすべての業務を制限なく取り扱うことができます。
行政書士が取り扱える業務は、書類の作成やそれに関する相談に限定されています。書類の作成に関連する事項であっても、高度な法律的判断が必要になる場合は相談に応じることができません。また、行政書士は被害者の代理人として請求を行うことができません。自賠責保険金の請求や加害者側との示談交渉などは、被害者自身の名義で行うことになります。
司法書士は、法務大臣が指定する課程を修了して試験に合格した「認定司法書士」に限り、140万円以下の損害賠償請求に関する相談や代理業務を行うことができます。ただし、交通事故の損害賠償請求の金額は140万円を超えるケースが多いです。そのため、交通事故案件を取り扱っている司法書士は少ないように思われます。
3. 交通事故の被害者が行政書士に依頼できることは?
交通事故の被害者が行政書士に依頼できる業務としては、主に次のとおりです。
3-1. 内容証明郵便の作成
交通事故の示談交渉を始める際には、加害者本人または加害者の保険会社に対し、内容証明郵便を送付して請求するケースがよくあります。内容証明郵便を送付すれば、いつ、どのような内容の請求をしたのかを証拠として残せます。
また、内容証明郵便による請求には、損害賠償請求権の消滅時効の完成を6カ月間猶予させる効果があります。ただし、時効期間がリセットされるわけではないため、猶予期間中に訴訟の提起など必要な手続きを行う必要があります。
内容証明郵便の作成は、行政書士に依頼できます。ただし、行政書士名義で内容証明郵便を送付することはできません。あくまでも被害者本人の名義で送付する書面の作成を依頼することになります。
3-2. 自賠責保険の被害者請求に関する書類の作成・提出代行
自動車や原動機付自転車の運転者には「自賠責保険」への加入が義務付けられています。自賠責保険は、交通事故の被害者に対して、けがや後遺障害、死亡による損害について最低限の補償を提供するものです。
被害者が加害者側の自賠責保険会社に対し、保険金を直接請求する手続きを「被害者請求」といいます。被害者請求では請求書など所定の書類を提出する必要があり、その書類作成を行政書士に依頼できます。また、書類の提出を行政書士に代行してもらうことも可能です。
3-3. 後遺障害等級認定の申請や異議申立てに関する書類の作成・提出代行
交通事故によるけがが完治せず後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請します。後遺障害等級は症状に応じて1級から14級に分かれており、症状が重いほど小さい数字の等級が認定されます。後遺障害等級の審査は「損害保険料率算出機構」という公的機関が行います。
等級が認定されると、加害者側に対して「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の損害賠償を請求できます。
【後遺障害慰謝料】
事故のけがが完治せず症状が残ったことによる身体的・精神的損害の賠償金です。後遺障害等級に応じて、110万円(14級)~2800万円(1級)程度が目安とされています。
【逸失利益】
後遺症によって労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が失われたことに対する賠償金です。事故当時の収入や年齢、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率(後遺障害によって失われた労働能力の割合)を用いて計算します。重い後遺症が残った場合や、被害者の収入が高い場合には、数千万円以上の逸失利益が認められることもあります。
認定される後遺障害等級によって、後遺障害慰謝料と逸失利益の金額が大きく異なるため、適切に書類を作成して申請することが大切です。
後遺障害等級認定の申請書類の作成や提出代行は、行政書士に依頼できます。認定結果につき不服がある場合は異議申立てができますが、それに関する書類の作成や提出代行も行政書士に依頼可能です。
3-4. 示談書(和解合意書)の作成
加害者側との間で損害賠償の条件に合意したら、その内容をまとめた示談書(和解合意書)を作成します。
相手方の保険会社と示談をする場合は、保険会社側が示談書の草案を作成するのが一般的です。一方、相手方本人と示談をする場合は、被害者側が示談書の草案を作成するケースもあります。
示談書の作成は、行政書士に依頼できます。ただし、損害賠償額や支払方法などの示談条件について、すでに当事者間で合意していることが前提です。示談書の内容について高度な法律的判断を含むアドバイスを受けたり、相手方との示談交渉の進め方について相談したりすることはできません。
4. 交通事故の被害者が行政書士に依頼できないことは?
交通事故について次に挙げる業務は、行政書士には依頼できません。これらの業務は弁護士に依頼してください。
4-1. 請求や示談の内容に関するアドバイス
交通事故の損害賠償請求を行う際には、事故状況に基づく適切な過失割合の分析や、発生した損害の把握・計算などが必要になります。また、相手方やその保険会社との間で示談交渉を行う際にも、法律のルールや相手方の姿勢などを踏まえたうえで、方針を慎重に検討しなければなりません。
これらの事項には高度な法律的判断を伴うため、行政書士はアドバイスをすることができません。請求内容や示談条件についてアドバイスを受けたいなら、弁護士に相談する必要があります。
4-2. 示談交渉の代理
交通事故の賠償金額は、相手方やその保険会社との示談交渉によって決まるケースが多くあります。示談交渉では、当事者双方が金額やその根拠を提示し合い、歩み寄りながら合意を目指します。
交通事故の示談交渉のように、当事者間で利害対立が顕在化している状況を解決へと導く業務は、原則として弁護士しか取り扱うことができません。行政書士は、被害者の代理人として示談交渉をすることは法律上認められていません。
4-3. ADR・民事調停・訴訟などの代理
加害者側との示談交渉がまとまらない場合は、ADR・民事調停・訴訟などの手続きによって解決を図ります。これらの手続きにおいて被害者の代理人になれるのは、原則として弁護士のみです。行政書士には代理人として対応してもらうことができません。
【ADR(裁判外紛争解決手続)】
裁判所以外の機関が取り扱う紛争解決手続きです。弁護士などの有識者が和解のあっせんや審査を行います。
【民事調停】
簡易裁判所で行われる手続きです。中立の立場にある調停委員2名が間に入り、当事者双方の言い分を聞いたうえで、歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。
【訴訟】
裁判所で行われる紛争解決手続きです。当事者双方が主張・立証を行い、最終的に裁判所が判決を言い渡します。訴訟の途中で和解が成立するケースもあります。
5. 交通事故における行政書士と弁護士の違い|弁護士に依頼するメリットは?
行政書士と弁護士では、交通事故について対応できる業務の範囲に大きな違いがあります。特に損害賠償請求を代理人として対応できるかどうかは、両者の大きな違いです。
行政書士には相手方との示談交渉・ADR・訴訟などを依頼できない一方、弁護士にはこれらの手続きを依頼できます。
賠償金の算定には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、どの基準を使って算定するかで金額が異なります。自賠責保険基準は、すべての車に加入が義務付けられている自賠責保険の支払い基準で、最低限の金額となります。任意保険基準は任意保険会社が独自に定める支払い基準で、金額は自賠責保険基準と弁護士基準の中間程度です。
一方、弁護士基準は過去の裁判例に基づいた支払い基準で、3つの基準の中で最も高額となります。相手方の保険会社が提示する示談金額は自賠責保険基準や任意保険基準に基づいていることが多いため、被害者としては弁護士基準で算定・請求することが大切です。弁護士に依頼すれば、事故の客観的状況や法的根拠を踏まえながら、弁護士基準で賠償額を算定し、交渉や法的手続きを進めてもらえます。
自賠責保険の被害者請求だけを行う場合や、すでに示談条件について合意が成立しており、示談書の作成だけを任せたい場合は、行政書士への依頼も選択肢の一つです。しかし、実際にはこのようなケースは少数で、相手方との示談交渉や難しい問題への対応が控えているケースが大半です。
行政書士が対応できる範囲を超えてしまうと、途中から弁護士へ依頼し直さなければなりません。その結果、時間や手間が余計にかかる可能性があります。
最初から弁護士に依頼すれば、示談交渉からADR・訴訟まで一貫して対応してもらうことが可能です。交通事故の損害賠償請求をスムーズに進め、適正な賠償金を受け取りたい場合は、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
6. 交通事故の被害者が、行政書士ではなく弁護士に依頼すべきケースは?
特に次に挙げるケースでは、交通事故に関する対応を行政書士ではなく弁護士に依頼することをおすすめします。
6-1. 保険会社に提示された賠償金額に納得できず、増額を求めたい場合
加害者側の保険会社は、本来受け取れる額よりも低い賠償金を提示することがあります。原因としては、計上すべき損害が漏れていることや、損害額の算定基準が適切でないこと、過失割合が事故の客観的状況に見合っていないことなどが考えられます。
保険会社に対して賠償金の増額を求めるためには、これらの問題点を指摘し、法的根拠を示しながら交渉する必要があります。行政書士は示談交渉を代理できませんが、弁護士に依頼すれば、被害者の代理人として、適正な金額への修正を求めて保険会社と交渉してもらえます。
6-2. 提示された賠償金額が妥当かどうか判断できない場合
加害者側の保険会社が提示する示談金額が妥当かどうかを判断するには、法律や交通事故実務に関する専門的知識が必要です。被害者自身が、その金額が適正かどうかを判断するのは容易ではありません。
交通事故の損害賠償請求の内容や金額については、高度な法律的判断が伴うため、行政書士の資格ではアドバイスができません。
弁護士に相談すれば、法的知見や実務経験を踏まえて、相手方の提示額が妥当かどうかや、増額の余地があるかどうかについてアドバイスを受けられます。弁護士のアドバイスを参考にすることで、示談交渉の方針が明確になるでしょう。
6-3. 被害者が重傷を負った場合や死亡した場合
交通事故の被害者が重傷を負った場合や死亡した場合は、損害賠償が高額になる傾向があります。
このようなケースでは、示談交渉の進め方によって賠償金額が数百万円以上変わることも少なくありません。弁護士に示談交渉を依頼し、適正額の賠償金の獲得を目指しましょう。
6-4. 相手方が任意保険に加入していない場合
交通事故の相手方が任意保険に加入していない場合は、原則として相手方本人に対して損害賠償を請求します。しかし、相手方に十分な支払能力がないケースも多く、その場合はほかに補償を受ける方法があるかどうかを検討しなければなりません。
交通事故を取り扱う弁護士は、相手方が無保険であっても受けられる補償について、幅広い知識を有しています。相手方が無保険であることが分かったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、アドバイスを受けましょう。
7. 交通事故の被害者が行政書士への依頼を検討してもいいケースは?
次のようなケースであれば、行政書士への依頼も選択肢の一つになります。
・すでに相手方との間で合意をしていて、あとは示談書を作成するだけのケース
・相手方に対する損害賠償請求は行わず、自賠責保険の保険金だけを請求するケース
ただし手続きを進める中で、示談交渉などの行政書士では対応できない業務が発生することもあります。その場合は、改めて弁護士に依頼しなければならず、行政書士費用と弁護士費用の両方がかかるおそれがあります。
8. 交通事故に関する行政書士費用と弁護士費用の相場は?
交通事故に関する対応を行政書士や弁護士に依頼する場合の費用相場を紹介します。実際の費用は依頼先によって異なるので、正式に依頼する前に必ず見積もりを確認しましょう。
8-1. 行政書士費用の相場
交通事故に関する行政書士費用には明確な基準はありませんが、業務の内容によって金額が異なります。
日本行政書士会連合会が公表する「令和7年度報酬額統計調査の結果」によると、内容証明郵便作成・電子内容証明作成・契約書作成に関する費用は、いずれも3万3000円と回答した行政書士が最も多い結果となっています。
交通事故についても、内容証明郵便や示談書の作成を行政書士に依頼する場合は、3万3000円程度が一つの基準となるでしょう。
自賠責保険の被害者請求や後遺障害等級認定の申請などは、1通の書面の作成よりも手間がかかるので、さらに高額の費用がかかることが多いです。
8-2. 弁護士費用の相場
弁護士費用の主な内訳は、依頼時にかかる「着手金」、案件終了時に支払う「報酬金」です。そのほかにも法律相談料や実費、日当などがかかる場合があります。
弁護士費用にも明確な基準はないものの、かつては弁護士会による報酬基準が定められていました。廃止された現在でも、旧報酬基準をベースに報酬を定めている弁護士事務所も多くあります。
日本弁護士連合会の旧報酬基準を参考にした、交通事故の弁護士費用(着手金・報酬金、税込)の相場は下表のとおりです。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
|---|---|---|
300万円以下 | 経済的利益の額の8.8% | 経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え 3000万円以下 | 経済的利益の額の5.5%+9万9000円 | 経済的利益の額の11%+19万8000円 |
3000万円を超え 3億円以下 | 経済的利益の額の3.3%+75万9000円 | 経済的利益の額の6.6%+151万8000円 |
3億円超 | 経済的利益の額の2.2%+405万9000円 | 経済的利益の額の4.4%+811万8000円 |
経済的利益とは、着手金の計算においては加害者側に請求する金額、報酬金の計算においては実際に獲得した賠償額を指します。
なお相談料については、初回無料としている弁護士が多く見られます。気軽に無料相談を利用してみましょう。
9. 弁護士費用特約を利用する際の注意点
自動車保険や火災保険などには「弁護士費用特約」が付いていることがあります。
弁護士費用特約を利用すると、弁護士費用のほか、保険会社が補償対象としている行政書士費用などについても、全部または一部が保険で補償される場合があります。
一般的に、弁護士費用特約によって補償される費用は次の2つに分類されます。
・法律相談、書類作成費用:10万円程度が上限
・弁護士費用:300万円程度が上限
行政書士への依頼費用は「法律相談・書類作成費用」の枠内でしか補償されないことが多いです。行政書士費用が10万円程度を超える場合は自己負担が生じることがあるので注意してください。
行政書士費用が補償対象となるかどうかや、補償される上限額は、保険会社や保険商品によって異なります。また、自分が加入している保険だけでなく、家族が加入している保険の弁護士費用特約を利用できることもあります。
弁護士費用特約を利用すれば自己負担を大幅に抑えられる可能性があるため、行政書士や弁護士への依頼を検討している場合は、事前に保険会社へ補償内容を確認しておきましょう。
10. 交通事故と行政書士についてよくある質問
Q. 交通事故について行政書士に依頼した後、改めて弁護士に依頼してもいい?
行政書士から弁護士に依頼先を切り替える、あるいは行政書士と弁護士に重複して依頼することは可能ですが、行政書士費用と弁護士費用の両方がかかります。相手方との合意がすでに得られているなどの事情がない限り、最初から弁護士に依頼することをおすすめします。
Q. 行政書士には、後遺障害等級認定の被害者請求の代行を依頼できる?
後遺障害等級認定の被害者請求は、行政書士と弁護士のどちらにも依頼できます。ただし、相手方に対する損害賠償請求は弁護士にしか依頼できないので、後遺障害等級認定の被害者請求も併せて弁護士に依頼した方がよい場合が多いでしょう。
11. まとめ 交通事故ははじめから弁護士に依頼しておくのがおすすめ
行政書士は交通事故について、内容証明郵便や示談書の作成、自賠責保険の被害者請求、後遺障害等級認定の申請書類の作成・提出代行などの業務を取り扱っています。
しかし、行政書士は相手方との示談交渉・ADR・民事調停・訴訟などを代理することができません。賠償金の増額を求めたい場合や、すべての手続きを代行してもらいたい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)
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