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1. 交通事故の示談金とは?
まず、交通事故の示談金とは何かを解説します。
1-1. 示談金=示談交渉で合意して支払いを受ける賠償金
交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できます。この損害賠償の金額などは加害者側と話し合いをして決めます。これを「示談交渉」と呼びます。
示談交渉を経てお互いが合意し、支払われる賠償金を「示談金」と呼びます。
1-2. 示談金の主な内訳
示談金の具体的な内訳は、大きく分けると以下の項目に分類されます。
【積極損害】
「積極損害」とは事故に遭ったために発生する費用を指します。治療費や付添費、通院交通費、介護費用のほか、車椅子や杖、義手、義足などの装具代などが該当します。
【消極損害】
消極損害とは事故に遭ったために失うことになった、本来得られたはずの利益を指します。休業損害、後遺障害による逸失利益、死亡による逸失利益がこれに該当します。
休業損害とは事故によるけがで仕事を休んで減少した収入を、加害者側に請求できる損害賠償です。
また、逸失利益とは事故に遭わなければ得られたはずの収入や利益を指します。事故によって後遺障害が残った場合は「後遺障害逸失利益」、死亡した場合は「死亡逸失利益」を請求できます。
【慰謝料】
交通事故の慰謝料は、事故によって生じた精神的苦痛に対する賠償を指します。慰謝料には「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」「後遺障害慰謝料」の2種類があります。
入通院慰謝料は、けがの治療のために入院や通院を余儀なくされたことなどに対する慰謝料です。入通院の期間やけがの程度などによって金額が異なります。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に認定されるような後遺症が残ったことに対する慰謝料です。後遺障害等級は第1級から第14級までの等級が存在し、等級によって慰謝料の金額が異なります。
また、事故によって被害者が死亡した場合には、亡くなった被害者本人自身の「死亡慰謝料」を請求できるほか、その遺族の精神的苦痛に対する補償として遺族固有の慰謝料を請求できます。
2. 交通事故の示談金の相場は?
交通事故の内容ごとに、示談金のおおまかな相場について解説します。記載の数字はすべて、弁護士が交渉の際に使う「弁護士基準(裁判所基準)」での相場です。実際の金額は被害の内容や程度によって大きく異なる場合もあるため、あくまでも目安としてください。
交通事故の種類 | 示談金の相場 |
|---|---|
物損事故 | 数万円~100万円程度 |
人身事故で後遺症が残らない場合 | 数十万円~数百万円 |
人身事故で後遺症が残った場合 | 数百万円~数千万円 |
死亡事故 | 2000万円~1億円以上 |
2-1. 物損事故|数万~100万円程度
人間に被害がなく、車や建物などの物品だけが損壊する「物損事故」の場合は、車やバイクの修理費や買換費用が最も大きな損害項目になるのが一般的です。そのほか、レッカー代や代車費用なども損害として含まれます。
修理費の金額は、車両の傷や損壊の程度によって数万円の場合もあれば、数十万円から100万円程度になるケースもあります。
また、修理費がさらに高額になったり、そもそも修理が不可能で車両の買い換えが必要になったりするケースでは、車の時価相当額が損害となるため、車の車種や年式などによっては数百万円の損害になる可能性もあります。
2-2. 人身事故で後遺症が残らない場合|数十万~数百万円
人身事故で後遺症が残らず、けがが完治した場合は、入通院慰謝料の金額が示談金のなかで最も高額になるケースが多いです。金額は数十万円から150万円程度になるのが一般的です。後遺症は残らなかったものの、けがが重傷で長期間の入院を要したケースでは、慰謝料自体が数百万円になる場合もあります。
また、けがの入院や通院で仕事を休んだり、療養したりしていた期間に応じて、休業損害も請求できます。その期間が長ければ、100万円以上の請求となる場合もあります。
2-3. 人身事故で後遺症が残った場合|数百万~数千万円
事故によって後遺症が残った場合は、後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益が賠償の項目として加わります。後遺障害慰謝料は、最も等級が低い第14級で110万円、等級が最も高い第1級の場合は2800万円となります。
また、逸失利益については、後遺障害等級の重さと症状固定時の年齢や年収に応じて、数百万円から数千万円になることがあります。被害者の年齢が若い場合やもともとの年収が高い場合などは1億円を超える可能性もあります。
2-4. 死亡事故|2000万~1億円以上
死亡事故の場合、死亡に伴う慰謝料が2000万円から3000万円ほどになるのが通常です。金額は被害者の年齢や扶養家族の有無、家族構成などによって異なります。
また、死亡による逸失利益としては、被害者の死亡時の年齢や収入などにもよりますが、数千万円から1億円以上の金額になる場合もあります。
3. 示談金に含まれる損害の計算方法と金額相場
示談金に含まれるそれぞれの損害について、計算方法と金額の相場を実例を挙げながら解説していきます。
3-1. 【重要】損害額の算定基準|自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準
交通事故の損害を算定する基準として、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあります。
【自賠責基準】
自賠責保険が賠償額を算定する際に用いる基準です。「最低限度の補償」であり、補償金額の上限があるなど、補償の範囲も限定されています。
【任意保険基準】
各保険会社が独自に定めている補償基準です。自賠責基準と違い、補償範囲や上限の明確な決まりはありません。具体的な基準は一般には公開されていません。
【弁護士基準(裁判所基準)】
過去の裁判例などをもとに、裁判所の考え方などをふまえた基準です。3つの基準のなかで最も高額になります。弁護士が通常、示談交渉や裁判で参考にするのがこの基準です。仮に裁判になった場合、裁判所も基本的にはこの基準を参考にして判断します。
通常は弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準の順に示談金が高額になります。弁護士が依頼を受けた場合、損害の金額を算定して保険会社と交渉する際には、弁護士基準で算定した金額で交渉を行います。
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3-2. 慰謝料の計算方法と金額相場
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料について、実例を挙げながら計算方法と金額の相場を解説します。なお、自賠責基準は2020年4月1日以降に発生した交通事故に対する基準を用いて計算しています。
【入通院慰謝料】
自賠責基準では、入通院慰謝料は「日額4300円×対象日数」の計算式で算出されます。対象日数は「治療開始から終了までの入通院期間」と「実際に入通院した日数×2」のうち、どちらか少ないほうが採用されます。
一方、弁護士基準では「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)の別表Ⅰ・別表Ⅱを使って計算するのが一般的です。けがが重傷の場合は別表Ⅰ、軽傷の場合は別表Ⅱを用います。下表は別表Ⅱ(軽傷用)の一部を抜粋したものです。
例として、けがが軽症で入院0カ月・通院3カ月、実際の入通院日数10日間の場合で、自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料の金額を算出してみます。
自賠責基準の場合、入通院期間3カ月(=90日)よりも実際の入通院日数×2(=20日)のほうが少ないため、対象日数は20日となります。したがって、入通院慰謝料額は「4300円×20日=8万6000円」です。
一方、弁護士基準では上記の別表Ⅱを参考にします。「入院期間0カ月」と「通院期間3カ月」が交差するマスの数字は「53」となっているため、入通院慰謝料額は53万円です。
【後遺障害慰謝料】
後遺障害慰謝料は自賠責基準、弁護士基準のいずれにおいても、設定された等級ごとに金額の目安が定められています。金額の目安は下表のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
要介護1級 | 1650万円 | 2800万円 |
要介護2級 | 1203万円 | 2370万円 |
第1級 | 1150万円 | 2800万円 |
第2級 | 998万円 | 2370万円 |
第3級 | 861万円 | 1990万円 |
第4級 | 737万円 | 1670万円 |
第5級 | 618万円 | 1400万円 |
第6級 | 512万円 | 1180万円 |
第7級 | 419万円 | 1000万円 |
第8級 | 331万円 | 830万円 |
第9級 | 249万円 | 690万円 |
第10級 | 190万円 | 550万円 |
第11級 | 136万円 | 420万円 |
第12級 | 94万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
弁護士基準は各等級とも自賠責基準よりも高い金額に設定されています。また、第1級、第2級において要介護かどうかは問いません。
【死亡慰謝料】
死亡慰謝料は自賠責基準、弁護士基準ともに、被害者の家庭内での立場に応じて金額が定められています。自賠責基準による死亡慰謝料額の目安は下表のとおりです。
本人の死亡慰謝料 | 400万円 |
|---|---|
遺族の死亡慰謝料 | 請求権者(被害者の配偶者・父母・子)の数に応じて以下の金額 1人:550万円 ※被扶養者がいる場合は、上記の額に200万円を加算します。 |
一方、弁護士基準による死亡慰謝料額の目安は下表のとおりです。
被害者の家庭内における立場 | 死亡慰謝料(本人と遺族の合計) |
|---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000万円~2500万円 |
例として、一家を扶養していた父が事故で亡くなり、被扶養者3名(妻と子ども2人)の場合で、自賠責基準と弁護士基準の死亡慰謝料額を計算してみます。
自賠責基準では「400万円(本人の死亡慰謝料)+750万円(請求権者3人)+200万円(被扶養者の加算)=1350万円」となります。一方、弁護士基準では一家の支柱が亡くなった場合の死亡慰謝料額は2800万円です。あくまでも目安なので、実際には個別の事情により増減する場合があります。
3-3. 積極損害の計算方法と金額相場
積極損害のそれぞれの項目について、自賠責基準と弁護士基準の計算方法と金額相場を解説していきます。
【治療費、付添看護費、通院交通費、診断書作成費】
自賠責基準、弁護士基準のいずれも実費支給となります。ただし、支給の対象となるのは必要かつ相当な範囲に限られます。また、自賠責基準の傷害部分においては総額120万円が上限です。
【入院雑費】
自賠責基準は、入院1日につき1100円です。ただし、1日につき1100円を超えることが明らかな場合は必要かつ妥当な実費が支給されます。ただし、傷害部分においては総額120万円が上限です。
一方、弁護士基準は入院1日につき1400円から1600円です。
【葬儀関係費】
自賠責基準では100万円が認められます。 一方、弁護士基準では実費額を請求できます。150万円程度の上限がありますが、上限を超えて認められるケースもあります。
3-4. 消極損害の計算方法と金額相場
消極損害に該当する休業損害と逸失利益について、自賠責基準、弁護士基準それぞれの計算方法と金額の相場について解説します。
【休業損害】
休業損害の自賠責基準は「6100円×実際に休業した日」です。ただし、1日あたり6100円を明らかに超える場合は、日額1万9000円を上限に実額が支給される場合があります。傷害部分の合計額において総額120万円が上限です。
一方、弁護士基準は職業などによって計算方法が異なります。たとえば、会社員の場合は「(事故前3カ月間の給与総額÷実際に働いた日数)×休業日数」という計算式で算出します。
【逸失利益】
逸失利益は事故に遭わなければ将来得られたはずの収入です。本来であれば長期的に発生する収入を賠償金として前倒しで受け取ることになるため、その分の利息を差し引いて算定する必要があります。これを中間利息控除と言い、「ライプニッツ係数」という数値を使用して計算できます。
事故によって後遺症が残った場合の後遺障害逸失利益は、下記の計算式で算出します。
自賠責基準:基礎収入額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
弁護士基準:基礎収入額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
ただし、自賠責基準における後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額には上限があり、第14級で75万円、第13級で139万円など、後遺障害等級ごとに上限額が定められています。
事故によって死亡した場合の死亡逸失利益は、下記の計算式で算出します。
自賠責基準:1年あたりの基礎収入額 × (1 – 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
弁護士基準:1年あたりの基礎収入額 × (1 – 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
自賠責基準の場合は、主に死亡慰謝料や葬儀費とあわせて総額3000万円が上限となります。
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4. 過失割合が交通事故の示談金に大きな影響を与える
「過失割合」とは、事故について当事者のどちらがどのくらい原因を作ったのか、責任があるのかを表した割合を指します。
たとえば加害者側に80%、被害者側に20%の責任があるとされる場合、被害者側が請求できる賠償金は、損害総額の80%に限られます。損害の総額が200万円と算定された場合、加害者に実際に請求できるのは80%分の160万円になります。
過失割合は事故時の状況をふまえて判断されますが、示談交渉の場面でも当事者の争いの大きなポイントとなり、話し合いが難航するケースも少なくありません。そのため、事故状況をふまえた適切な過失割合を主張する必要があります。
5. 交通事故の示談金を受け取るまでの流れは? いつ振り込まれる?
交通事故の被害に遭い、加害者側から示談金を受け取るまでの大まかな流れは以下のようになります。
5-1. 【STEP1】負傷者の救護や警察への通報
交通事故が発生した際に真っ先に求められるのは、負傷者の救護、車を安全な場所に避難させるなどの危険防止措置、警察への通報です。
また、加害者の情報を必ず確認しましょう。口頭だけではなく、必ず運転免許証を確認して写真を撮ったり、メモを書き記したりして、加害者の氏名や住所などを控えるようにしてください。
ドライブレコーダーを搭載している場合は、事故時の映像データを取り出して保存しておきましょう。
5-2. 【STEP2】医療機関の受診
事故後はすみやかに医療機関を受診しましょう。その場で痛みや目立ったけががないと思っても、必ず病院に行って医師の診察や検査を受けてください。あとになって体に違和感や痛み、しびれを感じた場合も、すぐに医療機関を受診してください。
治療は必ず医師の指示に従い、完治もしくは症状固定(治療を続けても現状以上の回復が見込めないと医学的に判断される状態)になるまで通院し、自己判断で通院を中止しないようにしてください。症状があるのにもかかわらず治療を受け続けていないと、事故とけがの関連性がないと判断され、加害者側にけがの治療費や慰謝料などの請求ができなくなってしまうリスクがあります。
5-3. 【STEP3】後遺障害等級認定の申請
治療を続けた結果、後遺症が残った場合は「症状固定」という診断となります。症状固定の診断を受けた場合、後遺障害等級の認定申請を検討します。後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益の請求が可能になります。
申請方法は、加害者側の保険会社を通して申請を行う「事前認定」と、被害者側が自ら申請をする「被害者請求」の2種類があります。どちらの方法をとるべきかは、後遺症の内容や提出書類の収集状況、加害者側の保険会社との治療中の交渉経過、意見の相違の有無などによって、慎重な判断が必要となります。そのため、交通事故の取り扱いをしている弁護士への早期の相談をお勧めします。
5-4. 【STEP4】加害者側との示談交渉
後遺症が残っていない場合は、治療の完了後に治療費や慰謝料などの損害を算定します。後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定申請の結果をふまえて、後遺障害に伴う慰謝料や逸失利益なども加えて金額を算定します。
そのうえで、加害者側の保険会社に対して賠償請求を行い、示談交渉をします。
5-5. 【STEP5】保険会社の提示に納得できない場合は、交通事故ADRや民事訴訟
相手の保険会社との示談交渉がまとまらないときは、交通事故ADR(裁判外紛争解決手続)や裁判(民事訴訟)によって解決をめざします。
【交通事故ADR】
「ADR」は、裁判をせずに紛争を解決する手段の総称です。交通事故ADRでは、交通事故の損害賠償に関する紛争に対して弁護士が調停委員や審査委員として関与し、公正かつ中立な立場から迅速な解決をめざします。
【裁判】
証拠や証言などをもとに裁判所が最終的な判決を下し、強制的に解決の結論を示します。ただし、途中で和解が成立することもあります。
5-6. 【STEP6】示談金(損害賠償金)の受け取り
保険会社との交渉で合意ができたら、保険会社が作成する示談書に署名押印して示談が成立となります。訴訟やADRなどの場合は、それぞれの手続きの結果に従って、保険会社へ支払いを請求します。その際に、保険会社に対して示談金、または損害賠償金の振込先の口座を指定します。
保険会社に署名押印済みの示談書を提出してから、通常、2週間から1カ月程度で示談金が支払われます。その支払いの完了をもって示談交渉は完了となります。ADRや訴訟の場合も、保険会社へ請求してからスムーズに支払いが行われれば同程度の期間で支払いを受けることができます。
6. 交通事故の示談金を増額させるコツは?
交通事故の示談金を増額させたい場合は、特に以下の3つのポイントに留意してください。
6-1. 保険会社の提示額に安易に同意せず、弁護士基準で請求する
加害者側の保険会社は、自賠責基準や任意保険基準に基づいた示談金を提示してくるのが一般的です。そのため、保険会社の提示額を弁護士基準で適切に計算し直すと、多くの場合で示談金を増額できます。保険会社の提示額をうのみにせず、弁護士基準での請求をめざしましょう。
計算方法がわからなかったり、保険会社とどのように交渉すればよいか迷ったりする場合は、弁護士に依頼すれば適切な金額の計算や保険会社との交渉を一任できます。
6-2. 自分だけの判断で通院をやめず、完治または症状固定まで治療を続ける
けがの治療を自己判断で途中でやめてしまうと、けがとの因果関係が認められにくくなります。また、後遺障害等級の認定を受けられたはずの後遺症が認められず、本来請求できたはずの示談金が大幅に減額される危険性があります。
「症状がよくなった」「仕事などで通院が難しい」と感じたとしても、完治または症状固定の診断を受けるまでは、医師の指示に従って通院を続けましょう。
なお、保険会社から「治療費の打ち切り」を打診される場合もありますが、医師が治療を続ける必要があると判断している限りは応じる必要はありません。医師の指示に従って治療を続けてください。
6-3. 適切な後遺障害等級の認定を受ける
後遺症が残った場合に請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益の額は、認定される等級によって大きく変わります。そのため、適切な後遺障害等級の認定を必ず受けるようにしてください。
認定のための審査では、医師が作成する後遺障害診断書の内容や、レントゲンやCTなどの検査結果をはじめとした医療記録などの客観的な資料が重視されます。適切な記録の収集と準備が非常に重要です。
7. 交通事故の示談金を早く受け取る方法は?
交通事故の示談金を早めに受け取る方法について解説していきます。
7-1. 任意保険会社に内払いを請求する
「内払い」とは、示談が成立する前の交渉中の段階で、交通事故の損害賠償金(示談金)の一部を保険会社に支払ってもらう方法です。休業損害や休業補償に関しては、治療継続中であっても内払いを受けられるケースがあります。
内払いは保険会社が同意した場合に限って可能なため、保険会社との間で損害の項目や金額などに争いがある場合には内払いに応じてもらえない可能性が高くなります。
7-2. 自賠責保険の被害者請求を行う
加害者側の任意保険ではなく、自賠責保険の保険会社に対して賠償を請求する方法もあります。ただし、自賠責保険の補償は最低限度で上限額も設定されているため、十分な補償が受けられないケースが多くあります。
7-3. 自分が加入している任意保険の保険金を請求する
加害者側の保険ではなく、自身で契約していた人身傷害保険や搭乗者保険、車両保険などを利用すれば、示談成立前でも補償を受けられます。
ただし、保険の内容によっては十分な補償にならないおそれがあるうえ、保険の利用によって保険等級が下がり、保険料が上がる可能性がある点には注意が必要です。
また、自身の保険で補償を受けた場合、補償を受けた部分に関して加害者側に賠償を請求できなくなる可能性もあるため、利用を検討する際は慎重さが求められます。
7-4. 労災の場合は、労災保険給付を請求する
仕事中や通勤途中に遭った交通事故の場合は、保険会社との示談成立前でも、労災保険給付として休業補償給付などを受け取れるケースがあります。仕事中の事故は「業務災害」と呼ばれ、業務中の事故を指します。通勤中の事故は「通勤災害」と呼び、住居と就業場所との間の往復や、就業場所からほかの就業場所への移動など、通勤の途中での事故を指します。
ただし、治療費や休業損害などに関して労災保険で補償を受けると、補償内容が重複する部分については、加害者側に対して請求ができなくなるので注意が必要です。
8. 交通事故の示談金について弁護士に相談や依頼をするメリット
交通事故の示談に関して弁護士に相談や依頼をするメリットは、主に以下のとおりです。
後遺障害等級認定の申請をサポートしてもらえる
示談交渉、ADR、訴訟などを一任できる
労力やストレスが軽減される
示談金の増額が期待できる
8-1. 後遺障害等級認定の申請をサポートしてもらえる
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定申請を行います。
事前認定・被害者請求のいずれの場合でも、必要な書類の収集や準備などに関して経験のある弁護士が適切なサポートを行えば、適切な等級認定がなされる可能性が高くなります。
8-2. 示談交渉、ADR、訴訟などを一任できる
弁護士に依頼すると、加害者側との示談交渉をすべて任せられます。また、仮に交渉がまとまらない場合には、交通事故ADRや訴訟の手続きも一任できるため複雑な手続きから解放されます。
8-3. 労力やストレスが軽減される
交通事故のけがの痛みや入通院の負担で日常生活や仕事が犠牲になるうえ加害者側と示談交渉をするとなると、大きなストレスや労力がかかります。
弁護士に交渉を任せることで、こうしたストレスや労力の軽減が期待できます。
8-4. 示談金の増額が期待できる
保険会社から示談交渉で示されるのは、基本的に自賠責基準や任意保険基準で算出された金額である場合がほとんどです。弁護士に依頼をした場合、相手の保険会社と交渉する際には弁護士基準で算定した金額で交渉を行うため、賠償額の増額が期待できる可能性が高くなります。
なお、自身が契約している自動車保険や火災保険に「弁護士費用特約」が付帯されている場合は、自身の保険会社が弁護士への依頼費用を負担してくれるため、自己負担なく弁護士に依頼できる可能性があります。弁護士特約の有無や利用の可否などは自身の保険会社に確認しましょう。
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9. 弁護士の示談交渉の結果、示談金を大幅に増額できた事例
筆者が弁護士として交通事故の被害者から実際に依頼を受け、示談金を大幅に増額できた事例を紹介します。なお、個人情報保護の観点から、事案の内容を修正しているのでご了承ください。
【事故の状況】
50代男性が、青信号で横断歩道を歩行中に一時停止を無視した自動車に衝突された。
【けがの状況】
右大腿骨の骨折や右肩の腱板損傷などにより長期の入院治療を強いられ、手術とリハビリののちに退院。その後は通院治療やリハビリなどを1年間続けたが完治せず、症状固定となった。診断名は右大腿骨骨折、右肩腱板断裂など。
【生活への影響】
自営業で飲食店を経営していたが、事故の後遺症で右肩が上がらず、また右手が思うように動かなくなり、店を長期間休業せざるを得ない状況になった。
【示談交渉の経緯と結果】
加害者側の保険会社による事前認定では被害者の後遺障害について「後遺障害等級14級9号」と認定していました。これは「局部に神経症状を残すもの」を指し、むち打ち症など比較的、症状が軽いものに対して認定されるもので、慰謝料の相場は110万円となります。
筆者が依頼を受けた時点では、店の休業補償の金額や「後遺障害等級14級9号」という認定結果について、被害者と加害者側の保険会社の間で大きな争いが生じていました。
筆者が医師の診断内容や医療記録の内容を確認して検討したところ、右大腿骨の骨折に関しては画像検査により痛みの原因となる異常所見が存在するのではないかということや、右肩の可動域制限もあるため、14級9号よりも重い後遺障害等級に該当するのではないかと判断しました。
また、休業損害に関しては、保険会社が前提としていた年収の金額が低すぎたため、休業損害や逸失利益の基礎収入を適正額で主張する必要があると判断しました。
そこで、医師にあらためて検査や後遺障害診断書の作成を依頼したうえで、画像鑑定医に意見書を依頼したり医学文献を収集したりして、後遺障害の等級認定の異議申立てをしました。
最終的には「後遺障害等級併合11級」という認定を受けるに至りました。これは12級に該当する2つ以上の後遺障害が一つの事故で認定された場合に等級が繰り上がる「併合繰り上げ」によるもので、もともとの等級が「14級9号の神経症状」という認定であったため、この点で大きく等級が上がる結果になりました。
また、休業補償や逸失利益に関しても、各種の資料から収入の適正額を示すとともに、認定された等級に応じた逸失利益を請求しました。
結果として、全体で3000万円ほどの金額で合意に至り、保険会社の当初提示額であった1000万円に満たない金額から大幅に増額したかたちでの決着となりました。
10. 交通事故の示談金が振り込まれない場合の対処法
加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者自身が示談金を支払います。しかし、加害者が支払いを拒否するケースや、資力がなく支払えないケースも存在します。その場合、まずは相手側に連絡をして督促し、それでも支払われなければ法的措置を検討します。
具体的には、相手に対する訴訟を提起して支払いを命じる判決を取得し、相手の財産を差し押さえるための強制執行手続きを裁判所に申し立てます。
なお、示談書を強制執行認諾文言付きの公正証書の形式で作成していた場合は、訴訟を経ずに裁判所への強制執行の申立てが可能です。
11. 交通事故の示談金に関して、よくある質問
Q. 交通事故の示談金はいつ振り込まれる?
通常、示談が成立してから2週間から1カ月程度で振り込まれます。示談書に具体的な振り込みの期限が記載されている場合は、その期限までに支払われます。
もし、期限を過ぎても一向に振り込まれない場合や、特に期限の指定がなく1カ月以上経っても振り込まれない場合は、保険会社に確認しましょう。
Q. 示談金額に納得できない場合、示談交渉をやり直せる?
特段の事情がない限り、示談交渉のやり直しは認められません。示談の金額に納得できないのであれば、示談書に署名をしないように注意しましょう。
Q. 交通事故の示談金に税金はかかる?
交通事故の示談金は被害に対する賠償のため、原則として非課税で税金はかかりません。
ただし、きわめて例外的ではありますが、賠償金が不当に高額で、実質的に賠償金の範囲を超えていると評価された場合は、課税が発生する可能性があります。
Q. 交通事故の示談金は誰が払う?
加害者が任意保険に加入していれば保険会社が支払います。加害者が保険に加入していなければ加害者本人が支払いの義務を負います。
Q. 交通事故で骨折した場合の慰謝料の相場は?
慰謝料の金額は入通院の期間や後遺症の有無によって変わります。骨折の場合は、部位や骨折の程度によって通院期間が長くなる可能性があります。また、場合によっては後遺症が残るケースもあります。
具体的な状況によって変わるため、正確な相場を知りたい場合は弁護士への相談をお勧めします。
12. まとめ 交通事故の示談金について不明点がある場合は弁護士に相談を
交通事故の被害に遭った場合は、加害者側に損害賠償を請求し、交渉が成立すれば示談金が支払われます。示談金には治療費や通院交通費などの「積極損害」、事故に遭ったことで失われる将来の利益を指す「消極損害」、精神的苦痛への補償となる「慰謝料」があります。
適切な金額を算出するためには、けがの状態や後遺症の有無、事故前の収入状況などに応じた詳細な検討が必要になります。
弁護士に依頼をすればこうした検討のサポートを受けられるだけでなく、示談交渉を一任できるため労力やストレスが軽減されます。また、弁護士基準で損害の金額を算出してくれるため、示談金の増額が期待できます。交通事故の被害に遭った場合は、弁護士への早急な相談をお勧めします。
(記事は2026年2月1日時点の情報にもとづいています)
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