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1. もらい事故の被害者が「泣き寝入り」に追い込まれる4つの理由
もらい事故が泣き寝入りになりやすい理由は、大きく分けて4つあるので、順番に紹介します。
1-1. 【最大の理由】自分の保険会社は示談交渉を代行できない|自分で交渉せざるを得ない
もらい事故とは、被害者に一切の過失がない、いわゆる過失割合0対10の事故を指します。一見すると完全な被害者であり、有利な立場にあるように思えます。しかし実務上は、この「過失ゼロ」であることが、最大の落とし穴になります。
被害者に過失がない場合、自分が加入している保険会社は法律上、相手方との示談交渉を代行することができません。これは保険業法上の制約によるものであり、保険会社の怠慢ではありません。
その結果、交通事故対応に精通した相手方保険会社と、専門知識のない被害者本人が、直接交渉する構図になります。相手方の保険会社は交渉のプロであり、過去の膨大なデータと交渉マニュアルを持っています。これに対し、被害者は初めての経験というケースがほとんどです。
この圧倒的な情報格差、経験格差により、被害者は知らないうちに不利な前提で交渉を進められ、結果として泣き寝入りに追い込まれます。
1-2. 相手の保険会社が提示する金額が、適切な金額より大幅に低い
相手方保険会社が最初に提示してくる賠償金額は、決して「適正額」ではありません。多くの場合、裁判所が採用する「弁護士基準(裁判所基準)」ではなく、保険会社が独自に定めた「任意保険基準」に基づいて算定されています。
この任意保険基準は、被害者にとって有利で公正な弁護士基準と比べると、慰謝料を中心に大幅に低額になる傾向があります。しかし、被害者がこうした基準の違いを知らない場合、「保険会社が提示しているのだから妥当なのだろう」と思い込み、そのまま合意してしまいます。
その結果、本来であればもっと高額な賠償金を受け取れるにもかかわらず、最低水準の金額で示談が成立し、後から後悔することになります。
1-3. 治療の「打ち切り圧力」と精神的疲弊で追い込まれる
相手方保険会社は一定期間が経過すると「治療費の支払いはここまでにします」と治療の打ち切りを示唆してくることがあります。これは医学的な判断ではなく、保険金支払いを抑えるための保険会社側の判断です。
しかし、被害者にとっては治療費が自己負担になる不安や、保険会社とのやり取りが続く精神的ストレスが大きな負担となります。その結果、まだ症状が残っているにもかかわらず治療を中断し、十分な補償を受けないまま示談に応じてしまうケースも少なくありません。このような精神的疲弊が泣き寝入りを加速させます。
1-4. 加害者が無保険だった
加害者が任意保険に加入していない場合、被害者は保険会社ではなく、加害者本人と直接交渉することになります。加害者に十分な支払い能力がなければ、法的には正当な請求であっても、実際に賠償金を回収できない可能性が高くなります。
このような場合、被害者は「これ以上関わりたくない」と感じ請求を断念せざるを得ず、結果として事実上の泣き寝入りに至ることがあります。
2. 泣き寝入りを避ける!もらい事故に巻き込まれた際にすべきこと・やってはいけないこと
もらい事故では、事故直後の対応次第で、その後の賠償交渉の流れがほぼ決まります。
被害者に過失がないにもかかわらず不利な状況に追い込まれるのは、多くの場合、初動対応の段階で「やってはいけないこと」をしてしまっているからです。以下では、泣き寝入りを避けるために必ず押さえるべき手順を、順番に解説します。
2-1. 【ステップ①】警察に通報する|その場で当事者間で示談するのはNG
事故の規模や見た目の損傷の程度にかかわらず、必ず警察に通報してください。「大した事故じゃない」「相手が誠実そうだから」といった理由で、その場で示談するのは厳禁です。警察を呼ばなければ交通事故証明書が作成されず、後の示談交渉や保険請求が極めて不利になります。
人身事故として届け出なければ、実況見分調書も作成されません。
交通事故証明書や実況見分調書などは、過失割合や事故態様を客観的に裏付ける重要な証拠です。泣き寝入りの第一歩は、警察を呼ばなかったことから始まります。
2-2. 【ステップ②】証拠を保全する(相手の情報、事故の状況)
次に重要なのが、証拠の確保です。相手方の氏名、住所、電話番号、車両ナンバー、任意保険の有無と保険会社名は必ず確認してください。ドライブレコーダーの映像は、事故直後に上書きされる可能性があるため、速やかに保存します。
事故現場全体の様子、信号の位置、車両の停止位置、車両の損傷箇所などを写真で残しておくことも重要です。後になって「事故状況が違う」と主張されても、証拠がなければ反論できません。
2-3. 【ステップ③】早めに医療機関を受診、適切な治療を続ける
事故後は、痛みが軽くても必ず医療機関を受診してください。受診が遅れると、事故とけがとの因果関係を否定されるリスクが高まります。
特にむち打ちは事故から数日後に症状が現れたり、悪化したりすることが少なくありません。事故直後に「問題ない」と言ってしまうと、後の交渉で不利になります。治療を続けるかどうかを決めるのは医師であり、保険会社ではありません。治療費の打ち切りを示唆されても、医師の判断を最優先してください。
2-4. 【ステップ④】後遺症が残ったら、後遺障害等級申請をする|被害者請求も検討を
治療を続けても症状が改善せず、症状固定と診断された場合は、後遺障害等級申請を検討します。ここで重要となるのが、申請の方法です。相手方保険会社に任せる「事前認定」では、必要最低限の資料しか提出されないことがあります。
これに対し、被害者自身が行う「被害者請求」であれば、診断書や検査資料の内容を確認・補足したうえで申請できるため、適切な等級認定につながりやすくなります。
2-5. 【ステップ⑤】示談交渉する|安易に保険会社の提案に合意しない
示談交渉は、治療が終了した後、または症状固定後に行います。治療中に示談を急がされても応じてはいけません。相手方保険会社が提示する金額は、あくまで最低ラインであることがほとんどです。その場で即答せず「持ち帰って検討する」と伝え、提示内容を冷静に確認してください。一度合意すると、原則としてやり直しはできません。
2-6. 【ステップ⑥】示談が決裂したらADRや訴訟
示談がまとまらない場合でも、それで終わりではありません。交通事故ADRや訴訟といった法的手段があります。これらは感情論ではなく、証拠や法的基準に基づいて解決を図る制度です。相手が強気な態度に出てきた場合ほど、第三者の関与が有効になります。
2-7. 【ステップ⑦】示談金や賠償金の受け取り
示談が成立すると、合意内容に基づいて賠償金が支払われます。支払時期や金額を必ず確認し、書面で残すことが重要です。示談書に署名・押印した後は、原則として追加請求はできません。そのため、示談に応じるかどうかは最後まで慎重に判断する必要があります。
3. もらい事故で請求できる損害賠償金や保険金
もらい事故では、被害者に過失がないため、本来は事故によって生じた損害の全額を請求できる立場にあります。にもかかわらず、どの損害が請求できるのかを正確に把握していないため、請求漏れが生じるケースが少なくありません。交通事故による損害は、大きく「物的損害」と「人的損害」に分けられます。
3-1. 物的損害|車の修理費・買い替え費用など
【車の修理代・買い替え費用】
車の修理代は、事故によって損傷した車両を修理するために必要な費用です。ただし、どのような修理でも全額認められるわけではなく、事故状況や損傷の程度に照らし、修理方法や金額に合理性が求められます。
車の買い替え費用が問題となるのは、修理費が車両の時価額を上回る、いわゆる経済的全損の場合です。この場合、修理費全額ではなく、事故時点の車両の時価額と買替諸費用の一部が賠償の対象となります。
【休車損害費用】
休車損害費用とは、営業車や業務用車両が事故により使用できなくなったことで生じる営業上の損害です。実際に業務で使用していたか、代替手段がなかったかなどを踏まえ、必要性や相当性が判断されます。裁判でも争点となりやすい項目です。
【代車費用】
代車費用には、修理期間中や買い替えまでの間に必要となったレンタカー代などが該当します。通勤や業務上の必要性が認められる場合には、一定期間について賠償対象となります。通常は大きな争点になりにくいものの、外車の場合には部品の調達に時間がかかることも多く、代車期間の相当性が問題になることもあります。
また、代車の車種の相当性もよく問題になります。レクサスなどの高級車の場合、どのクラスの代車が必要となるのかなどの点です。
3-2. 人的損害|慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益
【慰謝料】
慰謝料は、交通事故によって受けた精神的・肉体的苦痛に対する補償で、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。算定基準によって金額に大きな差が生じます。
【治療費】
治療費には、診察費、検査費、手術費、薬代、入院費などが含まれます。いずれも、医師の指示に基づく治療であることが前提となります。
【休業損害】
休業損害は、けがの治療のために仕事を休んだことで失われた収入に対する補償です。会社員だけでなく、自営業者やフリーランスも対象となります。
【逸失利益】
逸失利益は、後遺障害が残ったことにより、将来得られたはずの収入が減少した場合に認められる補償です。後遺障害等級、事故前の年収、就労可能年数を基に算定されます。
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4. もらい事故で泣き寝入りしないために弁護士に相談・依頼をするメリット
もらい事故で弁護士に依頼する最大の意義は、被害者が本来法律上持っている権利を、現実の賠償としてきちんと実現する点にあります。過失がないにもかかわらず不利な立場に置かれやすい構造を理解し、それを是正できる存在が弁護士です。
4-1. 保険会社との交渉ストレスから解放される
弁護士が代理人に就くことで、被害者は相手方保険会社との直接交渉から完全に解放されます。保険会社は専門用語や経験則を前提に話を進めてきますが、被害者がそれに一人で対応するのは大きな負担です。
弁護士が窓口になることで、被害者は精神的な消耗から解放され、治療や生活の立て直しに専念できます。
4-2. 過失割合を適正に主張できる
もらい事故であっても、相手方保険会社が「動いていた」「避けられたはずだ」などとして、過失を主張してくることは珍しくありません。弁護士は、事故態様、実況見分調書、ドライブレコーダー映像などの証拠を基に、過失ゼロであることを法的に整理し、不当な過失主張を排除します。
感覚的な反論ではなく、基準と証拠に基づく主張が可能になります。
4-3. 慰謝料・賠償金が増額しやすい
弁護士が交渉する場合、裁判所が基準とする弁護士基準を前提に賠償額を算定します。相手方保険会社が提示する任意保険基準と比べると、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は大きく差が出ることがあります。
実際に、弁護士が介入することで、提示額が大幅に増額するケースは少なくありません。
4-4. 後遺障害等級認定へのサポートを受けられる
後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の結果が賠償額に大きく影響します。弁護士は、後遺障害診断書の記載内容を事前に確認し、記載不足や内容の不整合があれば、医師に対して修正や補足を依頼します。
また、必要な検査資料や意見書を整理し、適正な等級認定を受けるためのサポートを行います。こうした対応により、認定結果そのものが変わることもあります。
4-5. 無保険・ひき逃げ事故でも適切な救済を受けられる
加害者が無保険だったり、ひき逃げで特定できなかったりする場合でも、泣き寝入りする必要はありません。政府保障事業や人身傷害保険など、利用可能な制度を整理し、最も回収可能性の高い手段を選択できます。制度を知らなければ使えない救済策を、現実に活用できる点が大きなメリットです。
4-6. 弁護士費用特約があれば費用負担を抑えられる
弁護士費用特約が付いていれば、原則として弁護士費用を自己負担する必要はありません。そのため、費用倒れを心配することなく、適切な賠償額を目指した交渉が可能になります。もらい事故では、早い段階で弁護士特約の有無を確認しておくことが重要です。
5. こんなときどうする? ケース別「泣き寝入り」回避策
もらい事故では、相手方の対応次第で被害者が不利な立場に追い込まれることがあります。ここでは、実務上よくある二つの典型的なケースについて、泣き寝入りを回避するための考え方と対応策を解説します。
5-1. 加害者側が「あなたにも過失がある」と主張してきた
もらい事故であっても、相手方保険会社が過失割合を争ってくることは珍しくありません。過失割合を下げることができれば、その分支払う賠償金を減らせるからです。被害者としては「こちらは止まっていただけだ」「完全にもらい事故だ」と感じていても、相手は事故態様の一部を切り取って過失を主張してきます。
このような場合、感情的に反論するのではなく、実況見分調書やドライブレコーダー映像、事故現場の写真など、客観的証拠に基づいて冷静に対応することが重要です。根拠のない過失主張に安易に同意してしまうと、その後の修正は困難になります。少しでも疑問を感じた時点で、弁護士に相談することで、不当な過失割合を排除できる可能性が高まります。
5-2. 加害者が逃げて見つからない、無保険だった
加害者が事故後に逃げてしまった場合や、任意保険に加入していなかった場合、被害者は強い不安を感じがちです。しかし、このような場合でも泣き寝入りする必要はありません。ひき逃げや無保険事故では、政府保障事業を利用することで、自賠責基準の範囲内ではあるものの、一定の補償を受けられます。
また、自分の保険に人身傷害保険が付いていれば、加害者の有無や資力に関係なく、補償を受けられる可能性があります。これらの制度には手続きや期限があり、放置すると時効にかかるおそれもあります。早い段階で専門家に相談し、利用できる制度を整理することが、泣き寝入りを防ぐ鍵となります。
6. もらい事故で泣き寝入りに関してよくある質問
Q. もらい事故は、なぜ自分の保険会社が示談交渉してくれない?
もらい事故では被害者に過失がないため、自分の保険会社は法律上、相手方との示談交渉を代行できません。示談代行は、自社が保険金を支払うことを前提に行われる業務ですが、過失がゼロの場合は保険会社が支払う保険金がなく、その前提が成り立たないためです。
Q. もらい事故で、弁護士にいつ相談すればいいですか?
弁護士への相談は、違和感や不安を覚えた時点で、できるだけ早く相談するのが有利です。具体的には、治療費の打ち切りを示唆されたとき、提示された賠償金額が低いと感じたとき、過失を主張されたときなどが相談の目安です。早期に相談することで、証拠の確保や交渉方針を誤らずに進められます。
7. まとめ もらい事故での泣き寝入りは、弁護士に依頼することで防ぎやすくなる
もらい事故は過失ゼロでも、示談交渉を自分で行う必要があります。その結果、相手方保険会社との情報格差から、不利な条件で合意してしまうことがあります。泣き寝入りを防ぐには、警察への通報と証拠保全を徹底し、早期受診と治療継続、後遺障害申請の方法、示談金額の基準を押さえることが重要です。
請求できる損害は物損・人損に幅広く、無保険やひき逃げでも利用できる制度があります。不安や違和感を覚えた時点で弁護士に相談すれば、交渉のストレス軽減や過失主張の排除、賠償額の増額も期待できます。
(記事は2026年2月1日時点の情報に基づいています)
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