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1. 交通事故における軽傷とは
交通事故で生じる軽傷として、主に次のものが挙げられます。
擦過傷(すり傷)
打撲(打ち身)
ねん挫
医師などによる客観的な所見の見られない、けいついねん挫(むち打ち)
交通事故においては、治療期間が1カ月(30日)以内であれば軽傷、それを超えると重傷とされるのが一般的です。ただし、この判断基準は実はそれほど明確なものではなく、けがの状況から個別に判断されるケースも少なくありません。
たとえば、けいついねん挫(むち打ち)のうち、医師などにより客観的な所見が確認できないものについては、交通事故におけるほかのけがと比較して軽微なもの(軽傷)と判断されます。そのため、ほかのけがよりも慰謝料金額は低く見積もられるケースが多く見られます。
2. 交通事故で被害者が請求できる慰謝料
交通事故によりけがを負った被害者が請求できる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つです。
2-1. 入通院慰謝料
交通事故のけがで入通院したことによる肉体的および精神的苦痛を慰謝するための慰謝料を「入通院慰謝料」と言います。けがの種類および入通院の期間などに応じて計算されます。たとえば、軽傷のむち打ちと重傷の骨折では入通院慰謝料の金額が異なります。
2-2. 後遺障害慰謝料
交通事故により後遺症が残ったことに伴って生じる肉体的および精神的苦痛を慰謝するための慰謝料を「後遺障害慰謝料」と言います。
交通事故における後遺症とは、治療をしても症状がそれ以上完治せず、症状が残った状態を指します。具体的には、身体の痛みやしびれ、めまい、関節の可動域の制限(動きにくさ)、瘢痕(はんこん=傷跡)に加えて、精神的な変調など、身体や精神に残るさまざまな症状が後遺症として挙げられます。
後遺症のうち一定の基準を満たす場合は後遺障害として認定され、等級(重さ)に応じた賠償金を受け取れます。後遺障害等級は症状に応じて第1級から第14級までの等級があり、症状が重いほど等級の数字は低くなります。
なお、軽傷だからといって必ずしも後遺障害等級認定をあきらめる必要はありません。むち打ちなどの軽傷であっても、MRIなどの画像検査による異常所見が確認されたなどのケースで第12級や第13級、頑固な症状や長期間継続的な通院の事実をもとに第14級が認定された事例もあります。
3. 交通事故の慰謝料の計算方法
慰謝料の計算で用いられる3つの基準や具体的な計算方法について説明します。
3-1. 【重要】慰謝料額の3つの算定基準
慰謝料を含む損害賠償額の算出にあたって、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの基準があります。
【自賠責基準】
「自賠責基準」とは、自賠責保険(自動車損害賠償保険)における支払い基準です。交通事故による傷害と後遺障害、死亡に対するそれぞれの損害額の算定基準が明確に定められています。
自賠責保険は被害者救済を目的とした強制保険であり、原動機付自転車(原付)を含むあらゆる自動車に加入が義務づけられています。自賠責保険に未加入の自動車の運転をすると、行政罰として違反点数6点で即免許停止処分、刑事罰として1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という厳しい処分が科されます。
自賠責保険は、被害者救済の強制保険という性格から、補償内容は対人賠償に限られ、限度額があるほか、補償金額も必要最低限度のものとなっています。そのため、被害に対する補償が十分とは言えないケースが少なくありません。
【任意保険基準】
任意保険会社がそれぞれ独自に定めている支払い基準を「任意保険基準」と言い、保険会社によってその基準は若干異なります。
任意保険基準は一般に公開されていないため、実際にどのような補償額が提示されるかは任意保険会社の提示を見るまでわからないケースが多いでしょう。
任意保険基準による算定額は、自賠責基準よりは高くなっていることも多いものの、弁護士基準(裁判所基準)よりは低額に抑えられているのが一般的です。
【弁護士基準(裁判所基準)】
「弁護士基準(裁判所基準)」は、過去の交通事故裁判の裁判例などをふまえて算出した基準です。その詳細は公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京本部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)で公開されています。
慰謝料の3つの算定基準のなかでは、弁護士基準の補償水準が最も高くなっています。
ただし、弁護士基準は法的拘束力を持つものではないため、被害者自身でこれを活用して任意保険会社と交渉しようとしてもうまくいかないケースがほとんどです。弁護士水準を使って任意保険会社と交渉したい場合は、弁護士に交渉を依頼することをお勧めします。
3-2. 入通院慰謝料の計算方法|「4300円×治療日数」
自賠責基準を用いる場合、入通院慰謝料は「4300円×治療日数」で算出します。
治療日数とは「治療期間(入院期間+通院期間)」または「実際に入通院した日数×2」のうち、どちらか少ないほうの日数です。
弁護士基準によって入通院慰謝料を計算する場合は、下図の早見表が用いられます。被害者の通院期間と入院期間が交差するマスの数字が入通院慰謝料の金額となります。
3-3. 後遺障害慰謝料の算定方法
後遺障害慰謝料は次表のとおり、自賠責基準と弁護士基準がそれぞれ公表されています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準(裁判所基準) |
|---|---|---|
第1級 | 1150万円 | 2800万円 |
第2級 | 998万円 | 2370万円 |
第3級 | 861万円 | 1990万円 |
第4級 | 737万円 | 1670万円 |
第5級 | 618万円 | 1400万円 |
第6級 | 512万円 | 1180万円 |
第7級 | 419万円 | 1000万円 |
第8級 | 331万円 | 830万円 |
第9級 | 249万円 | 690万円 |
第10級 | 190万円 | 550万円 |
第11級 | 136万円 | 420万円 |
第12級 | 94万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
4. 軽傷時の交通事故の慰謝料相場
交通事故による軽傷には、主にすり傷、軽い打撲やねん挫、むち打ちなどの症状があります。それぞれの事例別に自賠責基準と弁護士基準で慰謝料の相場を比較します。
4-1. すり傷(通院2週間、実通院日数4日)の場合
すり傷で通院期間2週間、実際の通院日数が4日の場合、入通院慰謝料を請求できます。
自賠責基準では、通院期間2週間(=14日)よりも実通院日数×2(=8日)のほうが短いため、対象日数は8日となります。したがって、自賠責基準での入通院慰謝料額は「4300円×8日=3万4400円」です。
弁護士基準では先ほどの入通院慰謝料早見表の「入院期間0カ月」「通院期間1カ月」が交差する「19万円」を参考にして、日割りで計算します。したがって、弁護士基準での入通院慰謝料額は「19万円×14日/30日(0.46)=約8万8000円」と算出できます。
4-2. 軽い打撲やねん挫(通院1カ月、実通院日数10日)の場合
軽度のねん挫や打撲では、1週間から2週間程度、軽症と重症の間とされる中等症の場合で2週間から1カ月程度通院するケースが多いようです。軽いねん挫や打撲で通院期間1カ月間、実際の通院日数が10日の場合、入通院慰謝料を請求できます。
自賠責基準では、通院期間1カ月(=30日)よりも実通院日数×2(=20)のほうが少ないため、対象日数は20日となります。したがって、自賠責基準における入通院慰謝料額は「4300円×20日=8万6000円」です。
弁護士基準では先ほどの入通院慰謝料早見表の「入院期間0カ月」「通院期間1カ月」が交差するマスの数字を見ます。「19」となっているため、入通院慰謝料額は19万円と算出できます。
4-3. むち打ち(通院3カ月、実通院日数24日)の場合
軽度のむち打ちでは1カ月から2カ月程度、中等症の場合は3カ月から6カ月程度通院するケースが多いようです。むち打ちで通院3カ月間、実際の通院日数が24日の場合、入通院慰謝料を請求できます。
自賠責基準では通院期間3カ月(=90日)よりも実通院日数×2(=48日)のほうが少ないため、対象日数は48日です。したがって、自賠責基準における入通院慰謝料額は「4300円×48日=20万6400円」となります。
弁護士基準では先ほどの入通院慰謝料早見表の「入院期間0カ月」「通院期間3カ月」が交差するマスを見ます。「53」となっているため、入通院慰謝料額は53万円と算出できます。
4-4. むち打ち(通院6カ月、実通院日数48日)のあと、痛みやしびれなどの後遺症が残った場合
むち打ちでは症状が長引く場合も多く、重症の場合は半年以上の通院が必要となるケースもあります。むち打ちで通院6カ月間(実通院日数48日)の後、後遺障害等級が認定された場合は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求できます。それぞれ計算します。
【入通院慰謝料】
自賠責基準では通院期間6カ月(=180日)よりも実通院日数×2(=96日)のほうが少ないので、対象日数は96日です。したがって、入通院慰謝料額は「4300円×96日=41万2800円」となります。一方、弁護士基準では先ほどの入通院慰謝料早見表の「入院期間0カ月」「通院期間6カ月」が交差するマスの数字を見ます。「89」となっているので、入通院慰謝料額は89万円です。
【後遺障害慰謝料】
むち打ちは後遺障害等級の第14級と第12級に認定されるケースが多く見られます。「3-3. 後遺障害慰謝料の算定方法」の表を見ると、第14級の場合の後遺障害慰謝料額は、自賠責基準では32万円、弁護士基準では110万円です。第12級の場合は自賠責基準で94万円、弁護士基準で290万円となっています。
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5. 軽傷の慰謝料が増減するケース
交通事故によるけがが軽傷であっても、具体的なケースにより慰謝料額が増減する可能性があります。慰謝料額が増減されるケースを紹介します。
5-1. 慰謝料額が増額される場合
慰謝料の増額が認められる代表的な理由として、まず交通事故の状態や加害者側の態度といった要素が挙げられます。
具体的には、加害者が故意に事故を起こした場合のほか、無免許やひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反などの重過失が加害者にある場合が該当します。事故発生時に被害者を救護しなかった、被害者に謝罪しない、証拠隠滅を図ったなど、加害者側に著しく不誠実な態度があった場合も、慰謝料を増額すべき事由として考慮されます。
また、被害者の事情が慰謝料額を増大させるケースもあります。たとえば、交通事故の被害によって被害者が流産してしまった場合や、顔に消えない傷跡が残ってしまった場合などです。
5-2. 慰謝料額が減額される場合
一方、被害者側の事情で慰謝料額が減額されてしまう場合もあります。
たとえば、被害者側にも事故の発生について過失がある場合や、被害者がもともと持っていた身体的特質や既往症が交通事故による損害の発生に影響している場合などです。任意保険会社はこのような事情を理由として必要以上に慰謝料額の減額を求めてくる可能性があるため、注意が必要です。
6. 交通事故被害者が慰謝料以外にもらえるお金とは?
交通事故の被害者が加害者や任意保険会社から受け取れるお金は慰謝料だけではありません。慰謝料以外にもらえるお金の具体的な内容は次のとおりです。
6-1. 積極損害|治療費など
積極損害とは、交通事故で負傷したことによって支出せざるを得なくなった費用(損害)です。積極損害として、次のものが挙げられます。
【治療関係費(治療費や施術費、入院費用、リハビリ費用、薬の処方代)】
けがの治療にかかる費用です。整骨院の施術費は、医師の指示がある場合や症状内容により有効と認められる場合に請求できます。
【通院交通費】
病院やクリニックへの通院に必要な交通費で、電車やバスなどの公共交通機関の利用料金が基準となります。自家用車での通院の場合、病院やクリニックなどへの往復距離に応じて一定のガソリン代が請求できるのが一般的です。
【付添看護費】
医師などの指示により必要と認められた場合に、職業付添人については実費、一般の付添人については付添日数に応じた定額の請求が認められます。
【装具や器具の購入費】
治療や後遺障害により装具などが必要となった場合に請求が認められます。
【家屋や自動車の改造費】
治療や後遺障害により家屋のリフォームや自動車の改造が必要となった場合に請求が認められます。
これらの費用は「交通事故による負傷との因果関係」および「その必要性と相当性」が認められれば、積極損害として賠償の対象となります。
6-2. 消極損害|休業損害と逸失利益
消極損害とは、本来交通事故に遭わなければ得られたはずの将来の収入や利益が失われたことに伴い発生する損害です。具体的には「休業損害」と「逸失利益」があります。
【休業損害】
交通事故によるけがで勤務や家業(業務)を休まざるを得なくなったことによる収入の減少分は、休業損害として請求できます。
【逸失利益】
逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」があります。
後遺障害逸失利益とは、被害者に交通事故のけがによる後遺障害が残ったことで、労働能力が低下または喪失し、将来働いて得られるはずだった収入が減ってしまうことによる損害です。
死亡逸失利益とは、交通事故で被害者の方が亡くなったことによって、本来働いて得られたはずの将来の収入が失われてしまうことによる損害です。
7. 交通事故の被害者が慰謝料などをもらうまでの流れ
交通事故の被害者が慰謝料などをもらうまでの流れは、主に以下のとおりです。
7-1. 【STEP1】事故直後の対応
交通事故が発生した直後は、負傷者の救護、危険防止の措置、警察官への報告、相手の連絡先の確認、保険会社への連絡などに努めましょう。
事故の発生状況が自身に不利と考えられるからといって、事故の相手や巻き込まれた人に対する救護を怠ったり、警察官への報告を怠ったりすることは道路交通法に違反する行為でもあり、禁物です。
7-2. 【STEP2】医療機関の受診、けがの治療
医師の指示に従い、完治または「症状固定」の診断を受けるまで治療を続けましょう。症状固定とは、「これ以上治療を続けても症状が改善する見込みがない」と判断される状態です。
仕事の都合などで、まだ完治していないのに自身の判断で勝手に治療をやめると、あとで十分な損害賠償を受けられない事態につながりかねないため注意しましょう。
7-3. 【STEP3】後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請
後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定を申請します。認定される等級によって、請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益の額が変わります。
後遺障害等級の申請のためには、医師から症状固定の診断を受け、後遺障害診断書を作成してもらいます。これを損害保険料率算定機構に提出し、後遺障害等級認定を受けます。
具体的な申請方法には、加害者側の保険会社に申請を代行してもらう「事前認定」と被害者自身が申請を行う「被害者請求」があります。事前認定は被害者が自分で必要書類を集めたりする手間が省けるメリットがある一方、認定手続きの過程が不透明で、被害者自身が関与できないデメリットもあります。
納得できるかたちで申請をしたいなら、弁護士に相談のうえ、被害者請求で手続きをすることをお勧めします。
7-4. 【STEP4】加害者側と示談交渉
けがの完治後または後遺障害等級の認定後、損害額が確定した時点で、加害者側の任意保険会社または加害者本人との間で、損害賠償の内容や金額について交渉します。交渉が無事成立したら示談書を取り交わします。
相手方から示談の条件を提示された場合には、「項目は十分か」「それぞれの項目の賠償基準は十分なものか」というチェックが欠かせません。条件提示を受けても決してすぐに応じず、弁護士に一度相談することが重要です。
7-5. 【STEP5】示談が決裂した場合は、交通事故ADRや訴訟を利用
加害者側の任意保険会社または加害者本人との示談が決裂した場合は、「交通事故紛争処理センター」「そんぽADRセンター」などによる交通事故ADR(裁判外紛争解決手続)に進みます。交通事故ADRとは、裁判によらずに交通事故に関する紛争を解決するための手続きです。
交通事故ADRでも解決に至らない場合は民事調停手続き、それでも合意に達しなければ民事訴訟(裁判)手続きに進むことになります。
7-6. 【STEP6】損害賠償金の支払い
最後に損害賠償金が被害者に支払われ、民事事件としては終結となります。一括払いの場合、損害賠償金は示談した日の属する月の月末かその翌月の入金となるケースが多いでしょう。被害者本人との示談で支払い条件が分割払いとなった場合は、3年から5年程度が支払期間に設定されるケースが多いでしょう。
8. 軽傷でも適正な慰謝料額を受け取るためのポイントは?
軽傷であっても適正な額の慰謝料を受け取るためには、次の4点に留意しましょう。
事故後すぐに医療機関を受診する
人身事故として警察官に報告する
加害者側の提示を安易に受け入れない
交通事故に強い弁護士に依頼する
8-1. 事故後すぐに医療機関を受診する
交通事故の発生後は、すぐに医療機関を受診しましょう。受傷から初受診までの期間が空いてしまうと、交通事故とけがとの因果関係の立証が難しくなります。その結果、慰謝料請求が認められにくくなる可能性があります。
特に追突事故のむち打ちなどに代表される神経系の症状では、事故発生当初は自覚症状が見られず、あとになって首などが急に痛み始めるケースもあります。事故発生当初には自覚症状が見られなくても、必ず一度は事故直後の段階で医療機関を受診することが大切です。
8-2. 人身事故として警察官に報告する
車や建物、標識などの物だけが損傷する物損事故では、原則として慰謝料を請求できません。交通事故でけがをしている場合は、必ず人身事故として警察官に報告しましょう。
ただし、最初は自身のけがに気づかず、あとになって首などに痛みを覚える被害者も一定数います。こうした場合、警察に対する物損事故の届け出を人身事故へと切り替える必要があります。
手続きとしては、まず医療機関を受診して診断書を取得したうえで、診断書を警察に提出して人身事故への切り替えを申請します。人身事故への切り替えができたら、加害者側の任意保険会社に報告しましょう。
8-3. 加害者側の提示を安易に受け入れない
示談交渉の際に加害者側は「損害項目を少なく見積もる」「損害額を安く見積もる」「被害者側の身体特性や既往症などが事故の原因だと主張する」などの方法で適正額よりも低い示談金額を提示してくるケースが多いと言えます。被害者側にも事故発生の責任があるとして賠償額を減額する「過失相殺」を主張するケースもあります。
加害者側からの提示金額が適正かどうかは事故の状態や、加害者側の対応、損害の内容や程度、証拠の有無、過去の裁判例などをベースにして慎重に判断することが必要です。加害者側の提示を安易に受け入れることなく、少なくとも一度は弁護士に相談することをお勧めします。
8-4. 交通事故に強い弁護士に依頼する
弁護士に相談または依頼する際は、交通事故の取り扱い経験が豊富な弁護士を選びましょう。
弁護士が代理人として活動することで、加害者側に対して弁護士基準に基づく損害賠償を請求してもらえるため、賠償金額の増額を期待できます。弁護士との契約内容によっては、後遺障害等級認定の申請もサポ―トしてもらえます。
なお、自動車保険などに「弁護士費用特約」が付いていれば、自分の保険会社から弁護士費用を支払ってもらうこともできます。補償される弁護士費用には上限があり、上限を超える金額については被害者の自己負担となる点に注意が必要です。
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9. 交通事故で軽傷を負い、弁護士に依頼したことで慰謝料を増額できた事例
入通院慰謝料は、入通院期間を基礎として入通院慰謝料早見表を使用して算定されます。ただし例外として、加害者が故意や重過失によって事故を発生させた場合には、慰謝料が増額されるケースがあります。
この点について、高取真理子裁判官は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)2005年版の下巻において、以下のようなケースで慰謝料が増額がされるとしています。
飲酒運転やひき逃げ
速度超過
信号無視
居眠り
無免許
脇見運転
弁護士である筆者が担当した交通事故で、加害者が居眠り運転で反対車線に飛び出し、これを回避しようとした被害者の車両と衝突した事案がありました。この事案では、裁判官の報告を根拠として訴訟にまで進みました。赤い本の基準だと入通院慰謝料は50万円程度ですが、筆者がその2倍の100万円を請求した結果、裁判官の勧めもあって80万円で和解に至りました。
10. 交通事故で軽傷を負った場合の慰謝料に関してよくある質問
Q. 数日の通院でも慰謝料はもらえる?
通院日数や通院期間に応じて、決して高くはないものの、慰謝料を請求することは可能です。入通院慰謝料の早見表では入通院期間が1カ月刻みで記載されています。しかし、通院日数や通院期間が1カ月に満たない場合に入通院慰謝料の請求が認められないというわけではないため、あきらめずに請求してください。
Q. 軽傷のむち打ちでも後遺障害慰謝料がもらえることはある?
後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料を請求できます。むち打ちは後遺障害等級のうち第12級や第14級に認定される可能性があります。ただし、後遺障害が認定されるのは客観的な異常が認められた場合や、生活や仕事に支障が出るほどの頑固な痛みが継続している場合などが多いと言えます。
Q. 軽傷だから整形外科ではなく整骨院で治療を受けてもよい?
まずは必ず整形外科を受診し、主治医の指導を受けて整骨院へ通うことをお勧めします。あとで整骨院への通院の必要性について相手側の保険会社から疑問を呈された場合、整骨院での治療費や通院交通費が賠償金として否認される事態にもなりかねないからです。
また、整骨院へ通う場合も必ず整形外科へは並行して通院し、専門家である医師に整骨院へ通う必要性を判断してもらうのがよいでしょう。
11. まとめ 交通事故での軽傷に対する慰謝料を請求したい場合は弁護士に相談を
交通事故で軽傷を負った場合、けがの治療にかかる入通院慰謝料のほか、後遺症が残った場合には後遺障害慰謝料を請求できます。慰謝料を算定するための基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあり、弁護士が用いる弁護士基準が最も高額な慰謝料額を算出できます。
また、交通事故に関する加害者側との交渉に被害者が一人で立ち向かうことは簡単ではありません。もし交通事故の被害に遭った際は、適正な額の慰謝料を請求するためにも、交通事故の取り扱い経験が豊富な弁護士に相談または依頼することをお勧めします。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
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