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1. 交通事故の通院日数とは?数え方は?
ここでは、通院日数の数え方や「治療期間」との違いを解説します。
1-1. 通院日数の数え方
通院日数とは、実際に医療機関へ行って診察や治療を受けた日数を意味します。リハビリのために通院した日や、薬剤の処方を受けるために診察を受けた日も通院日数に含まれます。
通院日数の対象となる期間は、治療開始日から完治または症状固定(=治療を続けても症状の改善が見込めないと医学的に判断される状態)の診断を受けた日までです。症状固定の診断後に通院しても、その日数は通院日数にカウントされません。
また、同日に2カ所以上の医療機関を受診した場合でも、その日は「1日」と数えます。
1-2. 通院日数と治療期間(治療日数)の違い
通院日数は交通事故の入通院慰謝料を算定する際に考慮されますが、それに加えて「治療期間」も考慮されます。治療期間とは、治療開始日から完治または症状固定の診断を受けた日までの期間です。
たとえば、2026年2月1日に交通事故に遭い、当日に医療機関を受診してむちうちと診断され、同年5月31日に完治の診断を受けたとします。この場合の治療期間は、2月1日から5月31日までの「120日」です。
他方で通院日数は、実際に医療機関へ通った日数を意味します。たとえば、2月1日から5月31日までの間に週2回のペースで通院した場合、通院日数は「34~35日程度」となるでしょう。
2. 交通事故の通院日数と慰謝料はどのように関係している?
交通事故の被害者は、加害者側に対して慰謝料を請求できます。慰謝料は、身体的・精神的苦痛に対する賠償金です。
交通事故の被害者が加害者に対して請求できる慰謝料は「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類です。通院日数は主に入通院慰謝料に影響しますが、場合によっては後遺障害慰謝料にも関係することがあります。
2-1. 交通事故の被害者が請求できる3種類の慰謝料
交通事故の被害者が加害者に対して請求できる慰謝料は、以下の3種類です。
【入通院慰謝料】
けがをしたことによる身体的・精神的苦痛に対する賠償金です。数十万円から数百万円程度で、通院日数や治療期間などに応じて請求できます。
【後遺障害慰謝料】
後遺症が残ったことによる身体的・精神的苦痛に対する賠償金です。110万円から2800万円程度で、損害保険料率算出機構が認定する後遺障害等級に応じて目安額が決まります。
【死亡慰謝料】
死亡したことによる身体的・精神的苦痛に対する賠償金で、遺族が加害者に対して請求できます。2000万円から2800万円程度で、被害者の家庭内における立場に応じて目安額が決まります。
2-2. 入通院慰謝料の金額には、通院日数が影響する
交通事故によってけがをした場合に請求できる入通院慰謝料の額には、通院日数が関係しています。
自賠責保険基準による入通院慰謝料の額は、入通院日数または総治療期間を用いて計算します。弁護士基準による入通院慰謝料の額は、原則として治療期間に応じて決まるものの、通院状況や頻度などが考慮されることもあります。
以下は、弁護士基準の場合の入通院慰謝料の金額表です。
入通院慰謝料の具体的な計算方法は「3. 入通院慰謝料の計算方法|基準によって通院日数の取り扱いが異なる」で解説します。
2-3. 後遺障害慰謝料は、通院日数が少なすぎると認められなくなるおそれがある
後遺障害慰謝料の目安額は、損害保険料率算出機構が認定する後遺障害等級に応じて決まります。したがって、通院日数に応じて後遺障害慰謝料の額が決まるわけではありません。
しかし、自分だけの判断で治療を中断したために通院日数が少なすぎる場合は、事故と後遺症の間の因果関係が認められにくくなります。医師が症状の経過を十分に確認できず、等級認定に必要な内容の後遺障害診断書が作成できない可能性があるためです。
後遺障害診断書の内容が不十分だと、後遺症に見合った適切な後遺障害等級の認定を受けることができません。その結果、後遺障害慰謝料の請求が認められなかったり、減額されたりするおそれがあるので要注意です。
2-4. 死亡慰謝料の金額には、通院日数は影響しない
死亡慰謝料の金額は、通院日数によって変わることはありません。死亡による苦痛の大きさは、通院日数の多さに直接関係しないと考えられるためです。
3. 入通院慰謝料の計算方法|基準によって通院日数の取り扱いが異なる
交通事故の慰謝料額の算定基準は3種類あり、どの基準を用いるかによって通院日数の取り扱いが異なります。
3-1. 交通事故の賠償金額に関する3つの算定基準
交通事故の賠償金(慰謝料を含む)の額は、以下の3つの基準によって算定されます。被害者としては、弁護士基準で損害賠償を請求することが大切です。
【自賠責保険基準】
自賠責保険から支払われる保険金額を算定する基準です。3つの基準の中で最も低額となりやすいです。
【任意保険基準】
任意保険の保険会社が独自に設けている算定基準です。自賠責保険基準よりもやや高額となるのが一般的です。
【弁護士基準(裁判所基準)】
過去の裁判例に基づき、被害者に生じた客観的な損害額を算定する基準です。3つの基準の中で最も高額であり、かつ公正な基準といえます。
自賠責保険基準と弁護士基準は公表されていますが、任意保険基準は公表されていません。公表されている自賠責保険基準と弁護士基準について、入通院慰謝料の計算方法を解説します。
3-2. 自賠責保険基準による入通院慰謝料の計算方法
自賠責保険基準では、入通院慰謝料の額を以下の式によって計算します。
入通院慰謝料=4300円×対象日数
※対象日数は、以下のいずれか短い方
①入通院日数×2
②総治療期間
入通院日数は、入院日数と通院日数を合計したものです。総治療期間は、治療開始日から完治または症状固定の診断を受けた日までの期間をいいます。
たとえば交通事故でむちうちとなり、2026年2月1日から5月31日までの間、入院せず35日間通院した末に完治したとします。「入通院日数×2=70日」「総治療期間120日」なので、短い方を採用して対象日数は70日です。したがって、自賠責保険基準による入通院慰謝料の額は「30万1000円」(=4300円×70日)となります。
3-3. 弁護士基準による入通院慰謝料の計算方法
弁護士基準による入通院慰謝料の額は、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(いわゆる「赤い本」)の別表Ⅰまたは別表Ⅱを用いて計算します。
骨折などの重傷の場合は別表Ⅰ、むちうちなどの軽傷の場合は別表Ⅱを用います(上記2-2. で掲載)。入院期間と通院期間が交差する部分の数字が、入通院慰謝料の目安額となります(1カ月に満たない日数については、日割計算を行います)。
たとえば、交通事故でむちうちとなり、2026年2月1日から5月31日までの間、入院せず35日間通院した末に完治したとします。むちうちは通常軽傷として取り扱われるため、別表Ⅱを用います。入院期間0カ月、通院期間4カ月が交差する部分を確認すると、弁護士基準による入通院慰謝料の額は「67万円」です。
自賠責保険基準では30万1000円であるのに対して、弁護士基準では67万円と大きな差が生じることが分かります。
弁護士基準による入通院慰謝料の額には、通院日数が直接反映されるわけではありません。ただし、通院期間が長いわりに通院日数が少ない場合は「3倍ルール」や「3.5倍ルール」が適用され、入通院慰謝料が減額されることがあります。
詳しくは「6-1. 「3倍ルール」や「3.5倍ルール」に注意(慰謝料が減額されるリスク)」で解説します。
4. 後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料の目安額は、損害保険料率算出機構が認定する後遺障害等級に応じて決まっています。等級が1つ違うだけでも、賠償額に大きな差が生じます。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 (弁護士基準) | 後遺障害慰謝料 (自賠責保険基準) |
|---|---|---|
要介護1級 | 2800万円 | 1650万円 |
要介護2級 | 2370万円 | 1203万円 |
1級 | 2800万円 | 1150万円 |
2級 | 2370万円 | 998万円 |
3級 | 1990万円 | 861万円 |
4級 | 1670万円 | 737万円 |
5級 | 1400万円 | 618万円 |
6級 | 1180万円 | 512万円 |
7級 | 1000万円 | 419万円 |
8級 | 830万円 | 331万円 |
9級 | 690万円 | 249万円 |
10級 | 550万円 | 190万円 |
11級 | 420万円 | 136万円 |
12級 | 290万円 | 94万円 |
13級 | 180万円 | 57万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 |
適正額の後遺障害慰謝料を受け取るためには、後遺症に見合った適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。
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5. 死亡慰謝料の計算方法
自賠責保険基準による死亡慰謝料の額は、本人分が400万円(定額)、遺族分が550万円~です。遺族分の死亡慰謝料の額は、請求権者である遺族の人数、および死亡した被害者に被扶養者がいたかどうかによって決まります。
請求権者の数 | 遺族の死亡慰謝料(自賠責保険基準) |
|---|---|
1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 |
3人以上 | 750万円 |
※被害者に被扶養者がいる場合は、上記金額に200万円を加算
弁護士基準による死亡慰謝料の目安額は、被害者の家庭内における立場に応じて以下のとおりです。
被害者の家庭内における立場 | 死亡慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000万円~2500万円 |
なお、通院日数は死亡慰謝料の額に影響しません。
6. 交通事故で通院期間が長期に及んだ場合の注意点
交通事故によるけがの治療が長引き、通院期間が長期に及んだ場合には、慰謝料や損害賠償額に影響が生じることがあるため、以下のポイントに注意が必要です。
6-1. 「3倍ルール」や「3.5倍ルール」に注意(慰謝料が減額されるリスク)
弁護士基準による入通院慰謝料の額は、原則として入院期間および通院期間を用いて計算します。
しかし通院日数が少なすぎる場合は、通院期間を実際よりも割り引いてカウントすべき旨を保険会社が主張してくることがあります。その際、保険会社が根拠として挙げてくるのが「3倍ルール」や「3.5倍ルール」です。
3倍ルールは通院日数の3倍、3.5倍ルールは通院日数の3.5倍を通院期間の上限とするもので、実務上認められることがあります。たとえば通院日数が10日、通院期間が3カ月のケースで3倍ルールを適用すると、通院期間が30日(約1カ月)として評価されてしまいます。
しかし、通院の日数(頻度)が少ない正当な理由がある場合は、必ずしも3倍ルールや3.5倍ルールを適用すべきであるとは限りません。保険会社に3倍ルールや3.5倍ルールを主張されたら、通院頻度が少なかった理由を具体的に説明して反論することが重要です。
6-2. 完治または症状固定の診断を受けるまでは、医師の指示に従って通院を続ける
交通事故によるけがの治療は、医師から完治または症状固定の診断を受けるまで続けましょう。症状固定までは改善の可能性があります。適正な慰謝料や後遺障害認定を受けるためにも、医師の指示に従って治療を継続するのが重要です。
保険会社に治療費の打ち切りを通告されたときは、まず医師に相談してください。まだ治療が必要であると医師に言われたら、健康保険を適用して治療を続けましょう。かかった治療費は、後に加害者側に請求できる可能性があります。
なお、医療機関での治療が長引くことに不安を感じて、整骨院や接骨院に通い始める人もいますが、おすすめできません。整骨院や接骨院での治療は、法的な観点から必要性が認められず、治療費や慰謝料の対象外となるおそれがあります。整骨院や接骨院に通い始める前に、必ず医師に相談してください。
6-3. 通院交通費も請求できる
けがの治療が長引いて通院回数が増えると、通院に要する交通費の負担も重くなります。
交通事故の被害者は、加害者側に対してさまざまな項目の損害賠償を請求できます。医療機関に支払った治療費だけでなく、通院に必要かつ相当な交通費も損害賠償の対象となります。
自家用車や公共交通機関を利用して通院した場合、通常は運賃の領収書までは求められませんが、通院したことを証明できる資料(診療明細書や領収書など)は保存しておきましょう。
タクシーを利用した場合は、タクシーの領収書を保存しておきましょう。ただし、公共交通機関を利用できる状況であった場合には、タクシー代の請求が認められない可能性もあるのでご注意ください。
7. 交通事故の損害賠償請求を弁護士に相談・依頼するメリット
交通事故の被害に遭ったら、なるべく早く損害賠償請求について弁護士に相談しましょう。交通事故の損害賠償請求を弁護士に相談・依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
通院日数や治療期間に応じた適正額の入通院慰謝料を弁護士基準で請求できる
治療費の打ち切りにも法的観点から対応してもらえる
賠償金の増額が期待できる
交渉を任せることで労力やストレスが軽減される
自動車保険や火災保険などには「弁護士費用特約」が付いていることがあります。弁護士に依頼する際にかかる費用が、最大300万円程度まで保険でカバーされるものです。自分が加入している保険だけでなく、家族が加入している保険の弁護士費用特約も使えることがあります。
弁護士費用特約を利用すれば、自己負担ゼロまたは少額の負担で弁護士に依頼できます。自分や家族が加入している保険の内容を確認してください。
8. 交通事故の入通院慰謝料を増額できた事例
筆者が受任した交通事故事案の一つでは、当初は依頼者の方が自分で相手方の保険会社と交渉をしていたところ、保険会社から入通院慰謝料として「40万円」を提示されていました。
けがはむちうちの軽傷で入院を要しませんでしたが、通院期間が4カ月間に及んでいたことを考慮すると、弁護士基準による適正額は「67万円」程度と考えられました。
筆者は保険会社に対し、弁護士基準による入通院慰謝料を支払うよう求めました。保険会社は、通院頻度が一般的なむちうちのケースよりもやや少なかったこと(週1、2回程度)などを理由に減額を主張しましたが、医師の指示に従ったものであると反論しました。
粘り強く交渉した結果、最終的な入通院慰謝料は67万円となり、被害者側の請求が全面的に認められました。その他の項目についても増額となったものがあり、依頼者の方としても納得できる解決が得られたようでした。
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9. 交通事故の通院日数の数え方についてよくある質問
Q. リハビリの日も通院日数にカウントされる?
完治または症状固定の診断を受ける前に、治療上必要と医師が判断したリハビリのために通院した日は、入通院慰謝料との関係で通院日数にカウントされます。
Q. 通院を中断してしまった場合、通院日数はどのように数える?
通院を中断して期間が空いた場合も、通院日数は原則として、実際に医療機関へ通院した日数を基準に数えます。ただし中断後の通院については、事故との間の因果関係が否定され、治療費や慰謝料の対象外となることがあるため要注意です。
Q. 自宅療養日は通院日数に含まれない?
医師の指示によって自宅で療養する日数は、入通院慰謝料との関係で通院日数にカウントされることがあります。実際に通院日数として認められるかどうかは、医師の指示の内容やギプス等による自由の制限の有無・程度などによって決まります。
Q. 整骨院や接骨院への通院は、通院日数にカウントされる?
医師の指示や治療上の必要性が認められない限り、入通院慰謝料との関係では通院日数にカウントされません。整骨院や接骨院に通う前に、必ず医師に相談してください。
Q. 通院先を変更したら、通院日数はどうなる?
原則として、変更前と変更後の実通院日数を合算した日数となります。
10. まとめ 交通事故の通院日数は慰謝料に影響するため、医師の指示通りに通院すること
交通事故の通院日数は、医師の診察や治療などを受けるために、実際に医療機関へ通院した日数です。主に入通院慰謝料の金額に影響します。
入通院慰謝料を含めて、交通事故の被害者が適正額の損害賠償を受けるためには、自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って継続的に通院することが重要です。損害賠償請求を見据えたけがの治療について分からないことがあるときは、弁護士に相談してください。
(記事は2026年6月1日時点の情報に基づいています)
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