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1. 【テンプレート付き】交通事故の示談書の書き方と必須項目
交通事故の被害に遭った際、治療や車の修理が終わった段階で直面するのが「示談」という手続きです。示談書は、交通事故における損害賠償の問題を最終的に解決させるための法的文書です。法律上は「和解契約」としての性質を持ち、加害者と被害者の間で「これ以上の請求を行わない」ことを約束します。
一度署名・捺印してしまうと、原則として後から内容を覆すことはできません。内容をよく理解せずに合意し、後から「本来もらえるはずの賠償金が含まれていなかった」「過失割合が不当だった」などと気づいても、手遅れになるリスクがあります。
1-1. 交通事故の示談書テンプレート(ひな型)
以下が、標準的な示談書の構成例です。
示談書
加害者(以下「甲」という)と被害者(以下「乙」という)は、後記の交通事故(以下「本件事故」という)に関し、以下の通り示談した。
(交通事故の表示)
1. 発生日時:令和○年○月○日 午前○時○分頃
2. 発生場所:鹿児島県鹿児島市○○町○丁目○番地先
3. 加害車両:鹿児島○○○ あ ○○-○○(普通乗用車)
4. 被害車両:鹿児島○○○ い ○○-○○(普通乗用車)(示談内容)
第1条(支払義務)
甲は、本件事故により乙が被った一切の損害に対する解決金として、金○○万○○円の支払い義務があることを認める。第2条(支払方法)
甲は、前条の金額を、令和○年○月○日までに、乙が指定する以下の銀行口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は甲の負担とする。
(振込先:○○銀行 ○○支店 普通 ○○○○○○○ 乙名義)第3条(清算条項)
乙は、本件示談金を受領したときは、甲に対するその余の請求を放棄し、本件事故に関し、今後名目の如何を問わず、公私一切の請求を行わない。令和○年○月○日
(甲)住所:○○県○○市○○町○-○
氏名:○○ ○○ (印)
(乙)住所:○○県○○市○○町○-○
氏名:○○ ○○ (印)
1-2. 示談書に記載すべき9つの必須項目や文例
示談書を有効に機能させるためには、以下の項目を漏れなく記載する必要があります。
【タイトル】
「示談書」のほか、「合意書」「免責証書」といった名称が使われます。相手方の任意保険会社が用意する場合は「免責証書」となっていることが多いです。これらの名称によって法的効果が変わるわけではありません。
【当事者の特定】
住所・氏名を明記します。法人の場合は会社名と代表者名を記載します。
【事故の特定】
交通事故証明書に基づき、日時、場所、車両番号を正確に記載します。これにより、どの事故についての解決なのかを明確に特定します。
【示談金額の総額】
損害賠償金の総額を明記します。既払金(治療費の立て替え分や内払金)がある場合は、「総額○○円から既払金○○円を差し引いた残額○○円」という書き方をすると、後日解釈の違いによるトラブルを避けられます。
【支払い方法と期日】
振込先口座と、いつまでに支払うかを明記します。保険会社がついていない個人間での示談の場合は、支払いが遅れた場合の遅延損害金(年3%など)を定めることも検討した方がよいでしょう。
私の経験上、例えば任意保険に入ってないような個人の場合、その性質上、支払いが遅れる可能性はそれなりにあります。したがって、支払いが遅れる場合に備えて万全の準備をしておくべきです。
【清算条項】
「今後、一切の請求を行わない」という文言です。これにより法的紛争が終結します。支払う側としては、この条項がないと後から追加で請求されるリスクが残るため、必ず確認すべき条項です。
【後遺障害の留保条項】
これは例外的なケースですが、示談時に予想できなかった後遺障害が発生した場合に備えた条項です。これがないと、後に重大な症状が出ても追加請求が困難になります。ただ、後遺障害について一定の結果が出た後に示談することがほとんどなので、この条項を入れて示談することは私の経験上ほとんどありません。
【作成年月日】
合意した日付を正確に記入します。
【署名・捺印】
双方が自署し、押印します。自署のみ、または記名押印でも法的効力はありますが、慣習上、署名・押印まで行うことがほとんどです。
2. 【ケース・状況別】示談書の注意点
事故の態様によって、盛り込むべき内容や確認すべき損害項目が異なります。
2-1. 物損事故の場合
車両の修理費、代車費用、レッカー費用、評価損(格落ち)などが主な損害として認められます。
注意したいのが、修理費が車の時価額を上回る場合の「経済的全損」の扱いです。
最高裁判所昭和49年4月15日判決(最高裁判所民集28巻3号385頁)では、修理費が車両の時価額と買替諸費用の合計を超える場合、損害賠償の範囲は原則として時価額等が限度になると示されています。
2-2. 人身事故(傷害事故)の場合
主な損害項目としては、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などがあります。特に重要なのは、「症状固定(治療を続けてもこれ以上改善しない状態)」を迎えてから示談を行うことです。治療途中で示談書にサインしてしまうと、その後の治療費が自己負担となる可能性があります。
なお、保険会社から一定期間経過後に症状固定や治療の打ち切りを提案されることがありますが、症状固定を判断するのはあくまで医師です。医師の指示に従って治療を継続するようにしましょう。
2-3. 後遺障害が残ってしまった場合
後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料に加えて、将来の収入減を補償する「逸失利益」を請求できる可能性があります。示談書を作成する前に、自賠責保険による後遺障害等級認定の結果が出ているかを必ず確認してください。等級が1つ違うだけで、賠償額が数百万円から数千万円単位で変わることもあります。
後遺障害が関係するケースでは、弁護士に相談・依頼することで結果が大きく変わる場合も少なくありません。自分や家族の保険に弁護士費用特約が付いている場合、弁護士費用を保険でまかなえることもあるため、早めに相談を検討すると安心です。
2-4. 死亡事故の場合
死亡事故では、葬儀費用、死亡慰謝料、死亡逸失利益などが主な損害項目となります。被害者本人が亡くなっているため、示談の当事者は「法定相続人全員」となる点にも注意が必要です。相続人の一人でも同意していない示談は、後にトラブルになる可能性があります。
相続人が複数いる場合は、代表者を決めて、他の相続人から委任状を取得したうえで交渉を進める方法が実務上よく取られています。
3. そもそも交通事故における示談書とは?
示談書は一度署名すると原則として撤回できない重要な書類であるため、内容を十分に理解したうえで作成することが大切です。ここでは、示談書の基本的な意味や作成する人、作成するタイミングなどについて解説します。
3-1. 示談書=損害賠償などに関する合意書
法律上、示談は「和解契約(民法第695条)」に該当します。当事者が互いに譲歩して、争いを止めることを約束するものです。
3-2. 示談書を作成するのは誰?
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社が書面を作成して送付してきます。加害者が無保険の場合や、過失割合がゼロ(もらい事故)で自分の保険会社が動けない場合は、当事者自身、または弁護士に依頼する場合は弁護士が作成します。
3-3. 示談書を作成するタイミングは?
損害の全容が確定した時です。けががある場合は「治療終了(完治)」または「後遺障害等級の確定」の直後となります。
3-4. 基本的に撤回できない
民法第696条(和解の効力)により、和解によって定められた権利関係は、たとえ後から真実と異なることが判明しても、原則として取り消すことができません。示談書への署名は後戻りができない段階であると認識してください。
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4. 交通事故の示談交渉にあたってチェックすべきポイント
保険会社から示談書(免責証書)が届いたら、署名する前に以下の項目をチェックしてください。
4-1. 損害賠償の項目に漏れはないか?
治療費などは保険会社が病院に直接支払っていることが多いため、漏れることはあまりありません。
一方で、次のような費用は被害者側から申告しなければ反映されない場合があり、見落とされやすい項目です。
通院に伴うガソリン代や駐車場代
付添看護費(親族が付き添った場合など)
主婦・主夫(家事従事者)としての休業損害
示談書に署名する前に、こうした項目がきちんと反映されているか確認しておきましょう。
4-2. 過失割合は本当に適切か?
過失割合は、賠償額を割合に応じて減額する仕組みであるため、示談金の金額に大きく影響します。
保険会社は過去の事例(判例タイムズなど)を参考に過失割合を提示してきますが、事故ごとの具体的な事情(相手の速度超過や一時停止無視など)が十分に反映されているとは限りません。
過失割合が妥当かどうかは専門的な判断が必要になることも多いため、迷った場合は弁護士に相談し、一般的にはどの程度の過失割合が想定されるのか意見を聞いてみると安心です。
4-3. 最も高額な「弁護士基準」で計算されているか?
示談金を確認するうえで、特に重要なポイントが「どの基準で計算されているか」です。交通事故の慰謝料には主に次の3つの基準があります。
自賠責保険基準:法律で定められた最低限の補償
任意保険基準:保険会社が独自に定めている基準
弁護士基準(裁判所基準):過去の裁判例に基づく基準
保険会社が最初に提示する金額は任意保険基準であることが多く、弁護士基準と比べると金額に大きな差が出ることもあります。
そのため、弁護士に相談して弁護士基準ではどの程度の金額になるのかを確認しておくだけでも、示談交渉を進めるうえで参考になります。なお、ご自身で交渉を行うのは負担やリスクもあるため、必要に応じて弁護士への依頼も検討するとよいでしょう。
4-4. 時効の完成が迫っていないか?
交通事故の請求権には時効(民法第724条、724条の2)があります。
・物損事故:事故発生日から3年
・人身事故:事故発生日から5年
時効の起算点(スタート地点)がいつからかは、厳密には傷害の内容や治療状況によって変わりますが、最も安全なのは事故発生日をスタートと考えることです。時効が迫っている場合、示談書の作成ではなく「時効の完成猶予」のための手続きを優先しなければなりません。
5. 交通事故の示談書を作成する手続きの流れ
交通事故の示談書は、保険会社が作成するケースと、当事者同士で作成するケースがあります。手続きの流れは大きく異なるわけではありませんが、どちらが作成するかによって進め方や注意点が変わります。ここでは、それぞれの場合の一般的な手続きの流れを紹介します。
5-1. 相手の保険会社が作成する場合
相手の保険会社が作成する場合の主な流れは、以下のとおりです。
示談内容の合意:電話や書面で金額の合意をします。
免責証書の送付:保険会社から書類が届きます。
署名・捺印・返送:内容を確認し、納得できれば返送します。
入金:保険会社が書類を受理してから通常1〜2週間で振り込まれます。
5-2. 保険会社を通さず、当事者同士で示談書を作成する場合
加害者が任意保険に加入していない場合など、当事者同士で示談書を作成する場合の主な流れは以下のとおりです。
合意内容の確認:双方が金額や支払い条件に同意します。
原案作成:どちらかが示談書の案を作成します。
内容確認と修正:双方が内容をチェックします。
署名・捺印:同じ内容のものを2部作成し、各自1部ずつ保管します。
6. 【重要】当事者同士で示談する際、示談金を確実に支払ってもらう方法
加害者が任意保険に加入していない場合、当事者同士で示談を行うことになります。この場合、示談金の支払いが滞るリスクが高くなるため、支払いを確実に受けられるような工夫をしておくことが重要です。
6-1. 個人間示談に潜むリスクとは
「誠意を見せる」「必ず払う」という口約束には、法的な強制力がありません。相手が支払いを止めた場合、通常の示談書だけでは改めて裁判を起こして勝訴判決を得ない限り、相手の財産(給料や預金)を差し押さえることができません。
6-2. 示談金を確実に回収するための3つの方法
【公正証書(執行認諾文言付き)を作成する】
公証役場で作成する「公正証書」に、「支払いが遅れた場合は直ちに強制執行を受けても異議がない」という文言(執行認諾文言)を入れておきます。
これにより、万が一支払いが滞った場合でも、裁判を経ることなく差し押さえなどの強制執行を行うことが可能になります。
【一括払いで受け取る】
分割払いは、回数を重ねるほど滞納のリスクが高くなります。そのため、可能な限り一括払いを求めることが望ましいでしょう。
どうしても分割払いになる場合は、期限の利益喪失条項(例:2回支払いを怠った場合は残額を一括で支払う)を設けるほか、可能であれば親族などを連帯保証人に立てるよう交渉することも検討できます。
【被害者請求を活用する】
相手が任意保険に加入していない場合でも、車が自賠責保険に加入していれば、被害者が直接自賠責保険会社に請求できます。これを「被害者請求」といい、通常の傷害事故であれば120万円を上限として、自賠責保険から確実に支払いを受けることが可能です。
7. 示談がまとまらない場合はどうすればいい?
交通事故の示談は、必ずしもスムーズにまとまるとは限りません。過失割合や慰謝料の金額などについて双方の主張が食い違い、交渉が長引くこともあります。このような場合には、いくつかの解決手段があります。ここでは示談がまとまらない主な理由と、その対処方法について解説します。
7-1. 示談がまとまらない理由
示談交渉が難航する主な理由として、次のようなものがあります。
過失割合の争い:双方が自分の主張する過失割合を譲らない場合
慰謝料などの金額の低さ:保険会社の提示額が弁護士基準と比べて大きく低い場合
因果関係の否定:保険会社が「そのけがは事故とは関係がない」と主張する場合
このような点で意見が対立すると、当事者同士の話し合いだけでは解決が難しくなることがあります。
7-2. 示談がまとまらない場合の対処法
【弁護士を介入させる】
弁護士が交渉することで、裁判になった場合の見通しを踏まえて、保険会社の態度が軟化し、裁判所基準に近い金額で合意できる可能性が高まります。
【ADR(=裁判外紛争解決手続き、交通事故紛争処理センター等)を利用する】
中立的な立場の弁護士が間に入り、和解のあっせんや裁定を行います。被害者の利用料は無料です。
【訴訟(裁判)】
話し合いでの解決が不可能な場合、裁判所に証拠を提出して判断を仰ぎます。時間はかかりますが、遅延損害金や弁護士費用相当額を上乗せして請求できるメリットがあります。
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8. 交通事故の示談について弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼することで、単に手続きを代行してもらえるだけでなく、さまざまなメリットが期待できます。
まず挙げられるのは、賠償額の増額が見込める点です。保険会社が提示する「任意保険基準」ではなく、裁判例に基づく「弁護士基準」で交渉を行うことで、多くのケースで賠償額が大きく増える可能性があります。
また、精神的な負担を軽減できる点も大きなメリットです。事故の被害で心身ともに大きな負担を抱えている中で、保険会社の担当者と直接やり取りを続けるのは大きなストレスになることがあります。弁護士が窓口となることで、治療や日常生活の回復に専念しやすくなります。
さらに、過失割合や後遺障害等級についても、専門的な知見をもとに適切な対応を期待できます。事故状況の調査や医療資料の確認、必要に応じた医師への働きかけなどを通じて、被害者にとってより適切な解決を目指すことが可能です。
なお、弁護士費用特約(弁特)に加入している場合は、多くのケースで弁護士費用を保険会社が負担します。そのため、被害者の自己負担が実質的に生じないまま依頼できることも少なくありません。まずはご自身の保険内容を確認してみるとよいでしょう。
9. 交通事故の示談書の書き方についてよくある質問
Q. 示談書は手書きでも有効?パソコンで作成しないとダメ?
手書きでも法的効力に違いはありません。ただし、判読のしやすさや後からの改ざん防止の観点から、パソコンで作成し、署名のみ自署で行うのが一般的かつ推奨される方法です。弁護士に依頼すれば弁護士が全て作成してくれます。
Q. 示談書の印鑑は認印でも大丈夫?実印でないとダメ?
認印でも法的効力はありますが、実印の方が証拠力は高いです。個人間示談や高額な賠償の場合は、本人の意思であることを明確にするため、実印での押印と印鑑証明書の添付を求めるべきです。保険会社との示談では認印(またはシャチハタ以外の印鑑)で進められることが一般的です。
Q. 示談書を作成する前に、先にお金を受け取っても問題ない?
問題ありませんが、示談書で「内払金」として差し引く必要があります。当座の生活費や治療費として受け取った分は、最終的な合意額から差し引かれます。領収書には「本件事故の損害賠償金の一部として受領した」旨を明記しておくと安心です。
Q. 加害者から「とりあえず簡単な覚書で」と言われました。応じてもいい?
非常に危険ですので、避けてください。「簡単な覚書」であっても、そこに「今後一切請求しない」という清算条項が含まれていれば、それが最終的な示談書として扱われてしまいます。すべての損害が確定するまでは、いかなる書面にも署名すべきではありません。
Q. 示談書を作らずに、口約束だけで示談を進めるとどうなる?
「言った言わない」のトラブルになり、強制執行もできません。口約束も契約として成立はしますが、相手が「そんな約束はしていない」と主張した場合、口約束での示談を立証することは困難です。また、時効の進行を止めることも難しくなります。必ず書面を作成してください。
10. まとめ 納得するまで示談書にはサインせず、疑問点は弁護士に確認すること
交通事故の示談書は、損害賠償問題を最終的に解決させる重要な法的文書であり、一度署名すると原則として撤回できません。そのため、示談書を作成する際は、事故の内容や損害項目、示談金額、支払い方法、清算条項などの必須項目を正確に記載し、内容を十分に確認することが重要です。
また、過失割合や慰謝料の計算基準、損害項目の漏れなどを見落とすと、本来受け取れるはずの賠償を受けられない可能性があります。示談内容に少しでも不安がある場合は、弁護士に相談し、適切な条件で解決できるようにすることが大切です。
(記事は2026年6月1日時点の情報に基づいています)
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