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1. 内臓破裂とは?
内臓損傷の一種である内臓破裂とは、臓器が破れたり、裂けたりしている状態を言います。内臓破裂によって生じる症状のほか、「内臓損傷」との違い、どのようなケースで内臓破裂が起きるかについて説明します。
1-1. 内臓破裂の初期症状
交通事故で内臓破裂が起こると、多くの場合、激しい腹痛や胸の痛み、吐き気、嘔吐、冷や汗、めまいなどの初期症状が現れます。また、内出血による貧血症状や血圧の低下が見られるケースもあります。
しかし、事故直後には自覚症状がなく、内臓破裂に気づかないケースもあるという点に注意しなければなりません。事故直後は脳がパニック状態に陥り、アドレナリンが大量に分泌されているため、痛みを感じにくくなっています。
「少しおなかを打ったけれど大丈夫だろう」と自己判断すると、内臓破裂による体内での出血がじわじわと進み、数時間後や翌日になって急激に症状が悪化する危険性があります。
1-2. 内臓破裂と内臓損傷の違い
「内臓破裂」と「内臓損傷」は言葉としては似ているものの、厳密には意味が異なります。
内臓が傷ついている状態は、軽く打撲して血腫ができている状態なども含めて広く「内臓損傷」に当たります。一方、内臓破裂は内臓損傷の一種ではあるものの、臓器が完全に破れたり、裂けたりしたきわめて重篤な状態を意味します。
つまり、内臓損傷のなかでも最も危険で深刻な状態が内臓破裂です。内臓損傷と診断された場合でも、その程度によっては内臓破裂に準じた治療が必要になるケースがあるため、軽く見てはいけません。
1-3. 内臓破裂はどのくらいの衝撃で起こる?
「どのくらいのスピードでぶつかれば破裂するのか」といった具体的な強度(数値)は一概には言えません。被害者の体格や衝突の角度などによって異なるためです。
しかし、交通事故で胸腹部に強い衝撃が加わったときは、内臓破裂が起こる可能性も十分考えられます。
たとえば、以下のようなケースです。
正面衝突により、ダッシュボードやハンドルに腹部や胸部を強く打ちつけた
強い衝突の勢いでシートベルトが腹部を急激に圧迫し、内臓に強い負荷がかかった
歩行中や自転車乗車中に車にはねられ、直接おなかに強い衝撃を受けた
腹部には骨がないため、外部からの衝撃がダイレクトに内臓に伝わりやすく、予想以上に簡単に内臓破裂に至る危険性があります。「大した事故ではなかった」と感じた場合でも、胸腹部に何らかの衝撃を受けたのであれば、念のため医療機関を受診して検査を受けることを強くお勧めします。
2. 内臓破裂を起こしたらどうなる?
交通事故で内臓破裂を起こした場合、被害者の身体には非常に重大な影響が及びます。内臓破裂は数あるけがのなかでもきわめて重傷であり、破裂した臓器を修復したり止血したりするための緊急手術が必要になるケースがほとんどです。
手術後も厳重な管理が必要となり、集中治療室(ICU)での治療など、長期入院を強いられることになります。また、退院できたとしても、臓器の一部を切除したり機能が完全に回復しなかったりと、その後の生活に大きな支障をきたす後遺症が残るおそれがあります。
さらに、心臓や大動脈、肝臓といった重要な臓器や太い血管が破裂した場合は、急速な大量出血により死に至るケースも少なくありません。内臓破裂が起こった場合、身体的な苦痛だけでなく、長引く治療や後遺症に対する精神的なショックも大きいため、早期から専門家のサポートを受けることが重要です。
3. 内臓破裂後の後遺症について認定され得る後遺障害等級
内臓破裂は、事故直後の激しい痛みに加えて体内での大量出血を伴うため、一歩間違えれば命に関わる非常に危険な状態です。緊急手術によって破裂した臓器を縫合したり、場合によっては臓器の一部または全部を摘出したりするのが一般的です。しかし、一命を取り留めたとしても、その後の人生において、もとの健康な状態には戻らないケースが多々あります。臓器が失われたり、機能が著しく低下したりすることで生じるさまざまな不調は、生涯にわたって付き合っていかなければならない後遺症となりえます。
交通事故の損害賠償を請求する際の実務において、内臓の機能低下や喪失は「胸腹部臓器(きょうふくぶぞうき)の障害」として扱われ、自賠責保険における「後遺障害等級」の認定対象となります。認定された等級は、加害者側に請求できる「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」の金額を決定する最も重要な土台となります。
「後遺障害慰謝料」は後遺症を負ったことで生じた精神的苦痛に対する賠償、「後遺障害逸失利益」は後遺症がなければ将来得られたはずの収入が減少した分に対する賠償です。
胸腹部臓器、いわゆる内臓の後遺障害は、人間の生命維持に直結する重要な機能を損ないます。そのため、内臓損傷の評価は臓器の種類や機能低下の程度によって非常に細かく規定されています。具体的には、大きく以下の五つの系統に分類して評価が行われます。
呼吸器(肺、気管支など:呼吸をするための器官)
循環器(心臓、大動脈など:血液を全身にめぐらせる器官)
腹部臓器(胃、腸、肝臓、膵臓、脾臓など:食べ物を消化吸収し、代謝や免疫を担う器官)
泌尿器(腎臓、膀胱、尿道など:尿を作り、排出するための器官)
生殖器(睾丸、卵巣など:子孫を残すための器官)
これらの胸腹部臓器全体を通した、認定され得る後遺障害等級の全体像(目安)を以下の表にまとめました。数字が小さい(1級に近い)ほど、障害の程度が重いことを意味します。
等級 | 障害の程度 (自賠責保険の認定基準における表現) | 主な状態のイメージ |
|---|---|---|
第1級 (1級2号) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、 常に他人の介護が必要な状態 |
第2級 (2級2号) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、 随時(時々)他人の介護が必要な状態 |
第3級 (3級4号) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 終身労務に服することができないもの | 介護は不要だが、障害のため一生涯働くことができない状態 |
第5級 (5級3号) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 座ってできるような、 きわめて負担の少ない仕事しかできない状態 |
第7級 (7級5号) (7級13号) | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの ※生殖器については「両側の睾丸を失ったもの」など | ・一般的な仕事は難しく、負担の軽い仕事しかできない状態 ・生殖機能を完全に喪失した状態 |
第9級 (9級11号) (9級17号) | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの ※生殖器については「生殖機能に著しい障害を残すもの」など | 就労は可能だが、就ける職種が制限されたり、 仕事中にかなりの配慮が必要となったりする状態 |
第11級 (11級10号) | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、 労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | 一般的な就労は可能だが、激しい肉体労働ができないなど、 仕事に一定の支障が出る状態 |
第13級 (13級11号) | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | 臓器の一部または全部を失っているものの、 もう片方の臓器などで機能が補われており、 日常生活への直接的な支障が少ないとされる状態 (脾臓の喪失、片方の腎臓の喪失など) |
上記はあくまで法律上の基準に基づく全体的な目安です。実際の認定は、それぞれの臓器ごとに定められた厳密な医学的検査の数値や症状の有無によって判断されます。
3-1. 呼吸器破裂の後遺障害等級
呼吸器とは、人間が生きていくために欠かせない酸素を空気中から体内に取り込み、体内で発生した不要な二酸化炭素を外へ排出するガス交換を行うための器官です。具体的には、空気の通り道である鼻腔、気管、気管支、そして実際にガス交換を行う左右の肺、さらには呼吸を助ける筋肉である横隔膜(おうかくまく)などが含まれます。
交通事故において、胸部をハンドルやシートベルトで強打したり、車外に投げ出されて胸を地面に打ちつけたりすると、肋骨が折れて肺に突き刺さる場合があります。これにより、肺の外側に空気が漏れ出す気胸(ききょう)や、血液がたまる血胸(けっきょう)が引き起こされます。さらに衝撃が強い場合、肺そのものの組織が裂ける肺破裂に至るケースもあります。肺破裂とは、強い衝撃によって肺を損傷する肺挫傷のうち、きわめて重篤な部類に入ります。また、気管や気管支が断裂するケースもあります。
これらの重篤な損傷に対しては、胸を切り開いての止血や、損傷した肺の一部を切り取る肺葉切除術などの緊急手術が行われます。しかし、一度損傷し、あるいは切り取られてしまった肺の組織はもとには戻りません。その結果、肺活量が著しく低下したり、少し動いただけで息切れがして苦しくなる「呼吸困難」といった後遺症が残ったりするケースが少なくありません。
呼吸器の後遺障害は、単に「息苦しい」「走るとすぐ疲れる」という被害者本人の自覚症状だけでは認定されません。目に見えない機能の低下を、客観的な医学的検査の数値によって証明する必要があります。
自賠責保険においては、主に以下の三つの検査結果を組み合わせて等級が判定されます。
【動脈血ガス分析(最も重視される検査)】
血液の中にどれくらい酸素が溶け込んでいるか(動脈血酸素分圧:PaO2)、逆に二酸化炭素がどれくらいたまってしまっているか(動脈血炭酸ガス分圧:PaCO2)を調べる検査です。手首などの動脈から血液を採って調べます。肺が正常に機能していなければ、酸素の数値が下がり、二酸化炭素の数値が上がります。この数値の悪化具合によって、等級が直接的に決定される、最も重要な指標です。
【スパイロメトリー(肺活量などの検査)】
健康診断などで、筒のようなものをくわえて息を思い切り吸い込み、一気に吐き出す検査をしたことがあるかもしれません。「スパイロメーター」という機器を使ったこの検査では、肺の容量(%肺活量)や、最初の1秒間でどれだけの空気を勢いよく吐き出せるか(%1秒量)を測定します。肺が硬くなったり、気道が狭くなったりしていると、この数値が低下します。
【運動負荷試験(呼吸困難の程度を評価する検査)】
実際に階段を上り下りしたり、一定の距離を歩いたりした際に、どの程度呼吸が苦しくなるかを評価します。「平地なら普通に歩けるか」「健常者と同じペースで歩けるか」といった日常生活の動作ができるかどうかに応じて、呼吸困難の程度を「高度障害」「中等度障害」「軽度障害」の3段階で評価します。
後遺障害等級の決定手順としては、まず「動脈血ガス分析」の数値で等級の目安をつけます。もしその数値だけでは低い等級、あるいは非該当と認定される場合でも、「スパイロメトリー」の数値が悪かったり、「呼吸困難の程度」が強かったりする場合は、より上位の(=重い)等級に引き上げて認定されるルールになっています。
等級 | 検査数値や症状の目安 | 生活や仕事への影響 |
|---|---|---|
第1級 (1級2号) | 動脈血酸素分圧がきわめて低く(50Torr以下など)、 呼吸機能の低下により常に介護が必要なもの | 在宅酸素療法などが欠かせず、自力での生活が困難。 就労は不可能 |
第2級 (2級2号) | 動脈血酸素分圧がきわめて低く、 呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの | 常にではないが、 日常生活で頻繁に家族などのサポートが必要 |
第3級 (3級4号) | 介護は不要だが、動脈血酸素分圧が低い(50Torr以下など)、 または高度の呼吸困難(連続して100m以上歩けない)があるもの | 身の回りのことはできるが、 息苦しさのため一生涯働くことができない |
第5級 (3号) | 動脈血酸素分圧がやや低い(60Torr以下など)、または スパイロメトリーの数値が著しく低く、高度の呼吸困難があるもの | 座ったままの短時間の作業など、 特に軽易な仕事以外はできない |
第7級 (5号) | 動脈血酸素分圧が基準を下回る(70Torr以下など)、または 中等度の呼吸困難(平地でも自分のペースでしか歩けない)があるもの | 身体的負担の少ないデスクワークなど、 軽易な仕事以外はできない |
第9級 (11号) | 動脈血酸素分圧がやや低下している、または 軽度の呼吸困難(階段の上り下りが困難)があるもの | 一般的な就労は可能だが、肉体労働や外回りなど、 就ける職種が相当程度制限される |
第11級 (10号) | 動脈血酸素分圧が正常範囲に近いが、スパイロメトリーの数値が低く、 軽度の呼吸困難が認められるものなど | 仕事はできるが、 重い物を持つなどの激しい労働には一定の支障が出る |
保険会社との示談交渉において最も争いになりやすいのが、将来の収入減少分を補償する「逸失利益」の計算です。たとえば、9級や11級に認定された場合、保険会社が「デスクワークなら今までどおりできるのだから、収入は減らないはずだ」と主張し、逸失利益はない、あるいは低く見積もってくるケースも少なくありません。
しかし、通勤で階段を上るだけで息が上がる、少しの荷物を運ぶだけで休憩が必要になるといった状態であれば、仕事の効率は確実に落ち、昇進や転職にも著しい悪影響を及ぼします。弁護士は、被害者の具体的な仕事内容や日常生活の様子を丁寧にヒアリングし、医学的な検査数値と結びつけて「いかに労働能力が失われているか」を論理的に主張し、正当な賠償金を勝ち取る役割を担います。
保険会社の主張に納得できない場合は、弁護士に相談、または依頼することをお勧めします。
3-2. 循環器破裂の後遺障害等級
循環器とは、血液を全身に送り出す強力なポンプの役割を果たす心臓や、心臓から送り出された血液が通る太い血管である大動脈などのことを指します。
交通事故において、胸部(特にハンドルに近い位置)を強打すると、肋骨などの骨折を伴わなくても、その衝撃がダイレクトに心臓に伝わることがあります。これを「心挫傷(しんざしょう)」と呼びます。心臓の筋肉である「心筋」がダメージを受けて壊死したり、心臓の部屋を隔てる「弁」が壊れたり、最悪の場合は心臓そのものが破裂することもあります。
また、急激な減速の衝撃によって、心臓から伸びる最も太い血管である大動脈が引きちぎられるように裂ける「大動脈破裂」や「大動脈解離」が起こることもあります。これらは、事故現場や搬送中に命を落とすことも多い、きわめて重篤な損傷です。
人工心肺を使った開胸手術などの緊急手術によって奇跡的に救命されたとしても、心臓のポンプ機能がもとどおりに回復しなかったり、不整脈が残ったり、損傷した弁や血管を「人工物」に置き換えたことによるリスクを抱えて生きていくことになります。
循環器の後遺障害は、大きく分けて以下の三つの観点から等級が評価されます。
【心機能の低下(運動耐容能の低下)による評価】
心臓のポンプ機能が落ちると、全身に十分な酸素が供給されず、少し動いただけで激しい疲労感や息切れ、動悸を感じるようになります。これを医学的に「運動耐容能の低下」と呼び、「METs(メッツ)」という単位を使って客観的に評価します。METsとは、安静に座っている状態を1としたときに、その運動が何倍のエネルギーを消費するかを示す指標です。
【人工物(ペースメーカー、除細動器、人工弁など)の植え込みによる評価】
心臓の動きを助けたり、突然死を防いだりするために体内に機械を植え込んだり、壊れた組織を人工物に置き換えた場合は、それ自体が後遺障害として評価されます。
【大動脈の異常(解離など)による評価】
大動脈破裂が起こった場合、本来血液が流れない壁の中に血液が流れ込む隙間(偽腔)が残ってしまった状態(大動脈解離)において、その偽腔に血流が残っている(偽腔開存型)と、後遺障害として評価されます。
等級 | 検査数値や症状の目安 | 生活や仕事への影響 |
|---|---|---|
第7級 (5号) | 致死的な不整脈を感知して電気ショックを与える 「除細動器(ICD)」を体内に植え込んだもの | 電化製品の一部、公共の設備環境 また医療施設における特定の検査や治療などで 注意が必要が生じる可能性がある |
第9級 (11号) | 中等度の運動耐容能の低下。 おおむね「6 METs」を超える強度の活動が制限される状態 | 平地を健康な人と同じ速度で歩くことはできるものの、 急いで歩いたり、階段を上り下りしたりすると苦しくなる |
第9級 (11号) | 心拍数を一定に保つための「ペースメーカー」を 体内に植え込んだもの | ペースメーカーを植え込んだことによる影響として、 事故後の治療において電気治療が禁止される可能性がある |
第11級 (10号) | 軽度の運動耐容能の低下。 おおむね「8 METs」を超える強度の活動が制限される状態 | 平地を急いで歩いたり、 健康な人と同じ速度で階段を上ったりすることはできるものの、 ジョギングなどの急激な身体活動が制限される |
第11級 (10号) | 大動脈の壁が裂けて、 本来血液が流れない壁の中に血液が流れ込む隙間(偽腔)が 残ってしまった状態(大動脈解離)において、 その偽腔に血流が残っている(偽腔開存型)もの | 常に再破裂のリスクを伴う |
大動脈が破裂し、手術でその部分を「人工血管」に置き換えた場合、人工血管自体は非常に丈夫であるため、それだけで後遺障害等級に認定されることは原則としてありません。ただし、手術の影響でほかの臓器に障害が出た場合は、その障害に対する評価が行われます。
また、損傷した心臓弁を人工弁に置き換えた場合、血中の血の塊である「血栓」ができやすくなります。その場合、血液をサラサラにする抗凝血薬を一生飲み続けなければならない場合は第9級(11号)、薬が必要ない場合は第11級(10号)に認定される可能性があります。
また、ペースメーカーや除細動器を体内に植え込んでいる場合、IH調理器や特定の医療機器、空港の金属探知機などの強い電磁波を発する機器に近づけないといった、日常生活上の具体的な制限も生じます。
賠償金請求の実際の手続きにおいて、たとえば「人工弁を置換して9級が認定されたが、デスクワークの仕事には復帰できている」といったケースでは、保険会社が「実際の収入は減っていないのだから、労働能力の喪失(逸失利益)は認められない」と強く主張してくることがあります。
これに対し、弁護士は、抗凝血薬を飲み続けることによる出血リスクの増大(けがをすると血が止まりにくい)や、定期的な通院の必要性、将来の再手術のリスク、そして何より「突然死の恐怖」という計り知れない精神的ストレスが、仕事への集中力やキャリア形成にどれほどの悪影響を与えているかを裁判例などを引用しながら主張し、適正な逸失利益や慰謝料の増額を求めて闘います。
3-3. 腹部臓器破裂の後遺障害等級
腹部臓器とは、おなかの中にあるさまざまな役割を持った臓器の総称です。主に、口から食べたものを消化、吸収して便として排出する「消化器(食道、胃、小腸、大腸)」、栄養素の代謝や有害物質の解毒を行う「肝臓」、消化液(胆汁)を溜めておく「胆のう」、血糖値をコントロールするホルモンや消化酵素を出す「膵臓(すいぞう)」、古くなった血液を壊したり免疫に関わったりする「脾臓(ひぞう)」などがあります。
交通事故でハンドルにおなかを強く打ちつける、タイヤにひかれる、シートベルトで強く締めつけられるなどの衝撃を受けると、これらの臓器が破裂したり、周囲の血管が引きちぎられたりして大出血を起こしたりします。これを「腹部鈍的損傷」と言います。特に、肝臓や脾臓は血流が豊富であるため、破裂するとおなかの中に大量の血がたまり、ショック状態に陥る危険性が高いです。また、胃や腸が破裂すると、中の食べ物や便がおなかの中に散らばり、腹膜炎などの重篤な感染症を引き起こします。
治療においては、出血を止めるため、あるいは感染を防ぐために、破裂した臓器を部分切除したり、臓器そのものを全摘出したりする手術が頻繁に行われます。
腹部臓器の後遺障害は、損傷した臓器の種類や、切除した範囲、そしてその結果として生じている「機能障害(消化不良、排泄障害など)」の程度によって、非常に多岐にわたる等級が定められています。
【胃の障害】
胃の大部分を切除すると、食べ物を一時的に溜めておけなくなります。そのため、食べ物が急激に腸に流れ込むことで、食後に冷や汗、めまい、動悸、吐き気などが起こる「ダンピング症候群」に悩まされる可能性があります。また、胃液の逆流を防ぐ機能が失われ、「逆流性食道炎」になる可能性もあります。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第11級 (10号) | 胃の大部分を切除した結果、 消化吸収障害(体重が事故前より著しく減少するなど)、 ダンピング症候群、胃切除後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの |
第13級 (11号) | 胃の一部を切除したもの(上記の顕著な症状がない場合) |
【小腸または大腸の障害】
腸の障害で最も生活に影響を与えるのが、人工肛門の装着による排泄経路の変更と、腸が短くなることによる吸収障害です。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第5級 (3号) | 小腸や大腸を損傷し、おなかに「人工肛門(ストーマ)」を造設したが、 腸の内容物が漏れ出して皮膚がひどくただれてしまい、便を溜める袋(パウチ)を装着できないという非常に過酷な状態 |
第7級 (5号) | ・人工肛門を造設したもの(パウチの装着は可能な状態) ・肛門の括約筋が損傷し、自分の意志でまったく便を止められない「完全便失禁」を残すもの |
第9級 (11号) | ・小腸を大量に切除し、残りの長さが100cm以下になったもの(深刻な栄養障害のリスクがある) ・大腸の大部分を切除した結果、頻繁に便が漏れてしまい、常に紙おむつなどが必要な状態 |
第11級 (10号) | ・小腸を大きく切除し(残りが100cm~300cm)、消化吸収障害が認められるもの ・大腸の大部分を切除したもの ・明らかな便失禁があるもの(おむつは不要だが、下着が少し汚れる程度) |
【肝臓の障害】
事故による直接的な肝臓破裂だけでなく、治療のための輸血などで肝炎ウイルスに感染した場合も、事故との因果関係が認められれば後遺障害の対象となります。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第9級 (11号) | ウイルス感染などが原因で、 肝臓が硬く小さくなり機能が著しく低下する「肝硬変」になったもの |
第11級 (10号) | ウイルス感染などが原因で、 肝臓の炎症が長期間続く「慢性肝炎」になったもの |
【膵臓(すいぞう)の障害】
膵臓は、消化酵素を含む「膵液(すいえき)」を十二指腸へ送る外分泌(消化)と、インスリンなどのホルモンを血液中へ放出する内分泌(血糖調節)の二つの重要な機能を持つ臓器です。事故により膵臓に障害が生じた場合、外分泌・内分泌機能障害の程度に応じて後遺障害等級の評価が行われます。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第9級 (11号) | 膵臓の一部を失ったことで、消化酵素を出す外分泌機能と、 インスリンなどのホルモンを出す内分泌機能の両方に障害が生じたもの |
第11級 (10号) | 上記の外分泌機能、または内分泌機能のどちらか一方に障害が生じたもの (インスリンが出なくなると、糖尿病と同じように食事制限やインスリン注射が必要になる) |
【脾臓(ひぞう)または胆のう喪失】
脾臓は血液を貯蔵したり免疫に関わったりする臓器であり、胆のうは消化液(胆汁)を一時的に溜めておく袋です。これらは、人間が生きていくうえで「絶対にないと死んでしまう」という臓器ではないため、事故で破裂して摘出手術を受けた場合、手術後は比較的普通の生活に戻れるケースが多いです。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第13級 (11号) | 脾臓を失ったもの、または胆のうを失ったもの |
腹部臓器の障害において、実際に損害賠償を請求する際に激しい争いになりやすいのが「脾臓の喪失に対する逸失利益が認められるかどうか」という点です。
保険会社は過去の裁判例などに基づき、「脾臓がなくても、体力的な制約はなく、今までどおりの仕事ができるはずだ。だから労働能力の喪失(逸失利益)はゼロである」と主張してくる傾向があります。
確かに、脾臓を失ってもすぐに目に見える障害が出るわけではありません。しかし、医学的には脾臓を失うと免疫力が低下し、肺炎などの感染症にかかりやすくなったり、重症化しやすくなったりすることがわかっています。
弁護士は、被害者の職種や年齢を考慮し、「風邪をひきやすくなり、欠勤が増える可能性がある」「免疫力低下に対する不安から、過酷な業務を避けざるを得ない」といった具体的な不利益を主張し、逸失利益を認めさせるか、あるいはその分を慰謝料の増額というかたちで補填するよう強く求めていきます。
3-4. 泌尿器破裂の後遺障害等級
泌尿器とは、体内の水分や塩分を調整し、血液中の老廃物をろ過して尿を作る「腎臓(じんぞう)」、作られた尿を膀胱へ運ぶ「尿管」、尿を一時的に溜めておく袋である「膀胱(ぼうこう)」、そして尿を体外へ排出する「尿道」までの一連の器官を指します。
交通事故でバイクや自転車から投げ出されて腰や背中を強く打ちつける、あるいは車にひかれて骨盤を骨折するような大事故に遭うと、背中側にある腎臓が破裂したり、骨盤に守られているはずの膀胱が破裂したり、尿道が引きちぎられたりする可能性があります。
これらの損傷は、命に関わる大出血を引き起こすだけでなく、救命後も「尿を正常に作れない」「尿を溜められない」「自力で尿を出せない」といった、人間の尊厳に関わる非常にデリケートでつらい後遺症を残すことになります。
泌尿器の後遺障害は、大きく分けて「腎臓の機能低下または喪失」と「排尿経路の変更または排尿障害」の二つの観点から評価されます。
【腎臓の障害】
人間は左右に一つずつ、合計二つの腎臓を持っています。評価にあたっては、腎臓が血液をろ過する能力を示す「GFR(糸球体ろ過量)」という数値を測定し、機能がどれくらい残っているかを判定します。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第7級 (5号) | ・両側の腎臓が残っているが、GFRが著しく低下している(30ml/分未満)もの ・片方の腎臓を失い、残った腎臓のGFRが低下している(50ml/分以下)もの ※いずれも人工透析が必要になるリスクが高い |
第9級 (11号) | ・両側の腎臓のGFRが低下している(50ml/分以下)もの ・片方の腎臓を失い、残った腎臓のGFRがやや低下している(70ml/分以下)もの |
第11級 (10号) | ・両側の腎臓のGFRがやや低下している(70ml/分以下)もの ・片方の腎臓を失い、残った腎臓のGFRがわずかに低下している(90ml/分以下)もの |
第13級 (11号) | ・片方の腎臓を失ったが、もう片方の腎臓は正常に機能している(GFRが90ml/分を超える)もの ・両側の腎臓が残っているが、GFRが軽度に低下している(70ml/分を超え90ml/分以下)もの |
【尿路変向術または排尿障害】
膀胱が破裂して機能を果たさなくなったり、尿道が完全にふさがったりした場合、尿を体外に出すための別の経路を手術で作る必要があります。これを「尿路変向術」と言います。また、神経の損傷などにより、自分の意志で尿をコントロールできなくなる尿失禁や頻尿などの障害も評価対象です。
等級 | 主な状態 |
|---|---|
第5級 (3号) | 腸を使っておなかに尿の出口を作り(ストーマ)、そこに袋(パウチ)を貼って尿を溜めるようにしたものの、 尿漏れがひどく皮膚がただれ、パウチの装着すらできない状態 |
第7級 (5号) | ・おなかにストーマを造設し、パウチの装着は可能な状態 ・持続的に尿が漏れ続けてしまう「持続性尿失禁」の状態 |
第9級 (11号) | ・尿道からカテーテル(管)を入れて自力で尿を抜き取る自己導尿の処置が必要な状態 ・頻繁に尿が漏れてしまい、常に尿取りパッドなどを手放せない状態 |
第11級 (10号) | ・尿道から膀胱までカテーテルを刺して尿を抜く「尿道カテーテル」を常に留置しておかなければならない状態 ・少量の尿漏れがあり、パッドなどの装着は必要ないものの下着が汚れる状態 ・身体的な病変により、日中8回以上トイレに行かなければならない「頻尿」の状態 |
尿漏れや頻尿、ストーマの管理など、排尿障害に関する問題があると、仕事中に何度もトイレに行かなければならなかったり、長時間の会議や移動が困難になったりするため、労働能力は確実に低下します。また、腹部臓器における「脾臓の喪失」と同様に、「片方の腎臓の喪失(13級)」も保険会社との間で激しい争いになります。保険会社は「もう片方の腎臓が正常に働いているのだから、仕事に支障はなく、逸失利益はゼロだ」と主張してくる傾向があります。
しかし、残された一つの腎臓には、本来二つでこなしていたろ過作業が偏るため、「過剰ろ過」と呼ばれる過度な負担がかかり続けます。これにより、将来的に腎不全に陥るリスクが高まることが医学的に指摘されています。
弁護士は、将来の人工透析のリスクに対する強い不安感や、腎臓をいたわるために過酷な肉体労働や長時間の残業ができなくなるという就労上の制限を主張し、適正な賠償を求めていきます。また、生涯にわたって尿取りパッドやストーマ装具を購入し続けなければならないため、これらの「将来雑費」も損害賠償としてしっかりと請求します。
3-5. 生殖器破裂の後遺障害等級
生殖器とは、人間が子孫を残すために必要な器官であり、男性であれば睾丸(精巣)や陰茎、女性であれば卵巣や子宮などを指します。
交通事故でバイクのタンクや自転車のサドルに股間を強打する、いわゆる「またがり損傷」を負った場合や、車にひかれて骨盤を開放骨折するような重大な事故に巻き込まれた場合、生殖器が破裂または損傷するおそれがあります。
これらの損傷は、生命そのものをただちに脅かすものではないかもしれません。しかし、「将来、自分の子どもをもつことができないかもしれない」という、被害者の人生設計の根幹を揺るがす、きわめて深刻な精神的ダメージを与える後遺障害ともなりえます。
生殖器の後遺障害は、外見の損傷以上に、「生殖機能(子どもを作る能力)」がどの程度失われたかという機能的な側面が厳密に審査されます。
等級 | 男性の場合の認定基準 | 女性の場合の認定基準 |
|---|---|---|
第7級 (13号) (生殖機能を完全に喪失したもの) | 両側の睾丸を失ったもの | ・両側の卵巣を失ったもの ・卵子が形成されないもの(正常な状態として) |
第9級 (17号) (生殖機能に著しい障害を残すもの) | ・陰茎の大部分を欠損したもの ・勃起障害を残すもの ・射精障害を残すもの | ・膣口の狭窄(狭くなること)を残すもの ・両側の卵管が閉塞、または癒着(くっつくこと)したもの ・子宮を失ったもの |
第11級相当 (生殖機能に障害を残すもの) | - | 狭骨盤、または 比較的狭骨盤(骨盤骨折により産道が狭くなり、自然分娩が 難しくなった状態) |
第13級 相当 (生殖機能に軽微な障害を残すもの) | ・片側の睾丸を失ったもの ・片側の睾丸が著しく萎縮(縮むこと)したもの | 片側の卵巣を失ったもの |
男性の勃起障害や射精障害が9級として認定されるためには、本人の申告だけでなく、医学的な証明が必要です。たとえば、夜間の睡眠中に無意識に起こる勃起現象を専用の機器で測定するリジスキャンなどの検査を行い、身体的な原因による障害であることを客観的に証明しなければなりません。
また、片方の睾丸や卵巣を失った場合(13級)は、残されたもう片方が正常に機能していれば、医学的には生殖能力(妊娠させる能力、あるいは妊娠する能力)は保たれていると判断されるため、等級としては「軽微な障害」として扱われます。
生殖器の後遺障害は、実際に損害賠償請求の手続きにおいて、すべての後遺障害のなかでも最も論理的かつ感情的な対立が激しくなる、非常に特殊で難しいテーマです。争いの核心は、「子どもが作れなくなったことは、働く能力(労働能力)が低下したことと同じなのか?」という点にあります。
たとえば、交通事故で両側の睾丸を失い、生殖機能を完全に喪失したとして「7級」が認定されたとします。通常、7級という重い後遺障害が認定されれば、「労働能力を56%喪失した」とみなされ、数千万円という多額の逸失利益(将来の減収分の補償)が認められます。しかし、保険会社は「手足が動かなくなったり、目が見えなくなったりすれば仕事はできなくなるが、生殖機能を失っても、これまでどおりパソコンを打つことも、営業に回ることもできるはずだ。つまり、収入は減らないのだから、逸失利益を支払う理由はない」という主張をしてくることがあります。
こうした保険会社の主張は、肉体的な機能のみに着目したものであり、被害者の心情を逆撫で(さかなで)しうるものです。また、これに対する裁判所の判断は過去から大きく揺れ動いており、必ずしも画一的な結論は出ていないのが現状です。
弁護士は、被害者の側に立ち、「子どもを持てないという絶望感や、将来の結婚に対する極度の不安、男性ホルモンや女性ホルモンのバランスが崩れることによる身体的な倦怠感は、確実に被害者の労働意欲を削ぎ、職場の人間関係やキャリア形成に甚大な悪影響を及ぼす。したがって、生殖機能の喪失は、間接的ではあるが確実に労働能力の低下につながっている」といった主張を行い、逸失利益を求めていきます。
裁判では、この主張が認められて一定の逸失利益が肯定されるケースもあります。また、仮に「直接的な労働能力の低下はない」として逸失利益が否定された場合や減額された場合であっても、その分、精神的苦痛が通常の7級のケースよりもはるかに甚大であるとして、「後遺障害慰謝料」を相場から数百万円単位で大幅に上乗せして賠償を命じる判決が数多く出されています。特に被害者が若年であったり、未婚であったりする場合は、その悲痛な思いが強く考慮され、慰謝料が増額される傾向にあります。
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4. 交通事故で内臓破裂した場合に請求できる主な賠償金
交通事故で内臓破裂の被害に遭った場合、加害者側の任意保険会社に対して賠償金を請求できます。ここでは、主な四つの賠償金について詳しく解説します。
4-1. 治療費
内臓破裂の治療に要した費用です。緊急手術の費用や入院費、通院費など、実費相当額を請求できます。加害者側の任意保険会社に依頼すれば、任意保険会社が医療機関などへ直接支払ってくれるのが一般的です。これを「任意一括対応」と言います。
もし相手が無保険であったり、交通事故の当事者のそれぞれの責任を数値化した「過失割合」が争点となって任意一括対応をしてもらえなかったりするときは、いったん自分で治療費を立て替え、後日、加害者側に請求できます。
ただし、当面の支払いが苦しい場合は、自賠責保険の「被害者請求」という手続きを行えば、けがの治療費に対する限度額(120万円)の範囲内で自賠責保険分の治療費を早期に受け取れます。
4-2. 慰謝料
慰謝料は、肉体的または精神的苦痛に対する賠償金です。内臓破裂には主に以下の三つがあります。
【入通院慰謝料】
入院や通院を余儀なくされたために受けた苦痛に対する慰謝料です。入通院の期間に応じて支払われます。長期間の入院が必要な内臓破裂では数百万円になるケースもあります。弁護士が介入した場合に用いられる弁護士基準(裁判所基準)では、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』という書籍(通称「赤い本」)に記載の重傷用算定表に基づいて計算します。
【後遺障害慰謝料】
交通事故によって負ったけがの治療後に、後遺症が残った場合の苦痛を補償する慰謝料です。後遺障害等級が認定された場合に支払われます。弁護士基準では1級で2800万円、9級で690万円など、等級によって高額な基準が設定されています。
【死亡慰謝料】
被害者が亡くなった場合、本人と遺族の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。一家の支柱であれば2800万円程度が弁護士基準の目安となります。
4-3. 逸失利益
事故の影響で将来にわたり得られなくなった収入のことです。後遺症が残った場合、または死亡した場合に請求できます。
「事故前の基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で求められます。内臓破裂で高い等級が認定されれば、数千万円という最も高額な賠償項目になるケースが多いです。
なお、死亡した場合の逸失利益は、被害者が生存していれば原則67歳(就労可能年数)まで得られたはずの収入をもとに算定されます。
4-4. 休業損害
事故のけがが原因で仕事を休んだことで得られなかった収入に対する賠償です。「1日あたりの基礎収入 × 休業日数」で計算します。有給休暇を使った場合や、家事労働ができなくなった専業主婦または主夫であっても請求できます。
内臓破裂のような重傷では、入院期間が数カ月に及ぶことがあるため、休業損害の総額も高額になるケースがあります。請求漏れがないよう、弁護士に確認してもらうとよいでしょう。
5. 内臓破裂の賠償金を増額するためのポイント
内臓破裂という大けがに見合った適正な賠償金を受け取るためには、保険会社から提示された金額や見解を鵜呑みにせず、以下の三つポイントを押さえる必要があります。
5-1. 医師の指示に従い、適切に治療や検査を受ける
「痛みが引いたから」「忙しいから」と途中で通院をやめると、入通院慰謝料の額が減るだけでなく、保険会社から治療費を打ち切られる原因になります。また、正しい後遺障害等級の認定を受けられないおそれもあります。「これ以上治療を続けても症状の改善が見られない」と医師が判断する「症状固定」の状態となるまで、医師の指示に従ってしっかりと治療を続けましょう。
さらに、内臓機能の低下を証明するため、基本的には医師の指示に従い、必要な検査はすべて受けることが大切です。
特に内臓の後遺障害は、血液検査や画像検査など客観的なデータがなければ等級認定が難しい場合があります。「もう痛みがないから検査は不要」と自己判断せず、医師と十分にコミュニケーションをとりながら治療を進めてください。
5-2. 後遺障害等級認定の被害者請求を行う
後遺障害の申請には、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身で手続きを行う「被害者請求」があります。
事前認定は手間がかからないものの、相手の保険会社はあくまで自社の支払いを減らしたい立場にあり、被害者に有利な証拠を積極的に集めてはくれません。
一方、被害者請求は、被害者側で必要な検査結果や医師の意見書などを集めて直接申請する方法です。手間はかかるものの、自分の後遺症を正確に証明するための証拠を提出できるため、適切な等級認定を受けるためには被害者請求を行うメリットが大きく、強く推奨されます。
5-3. 弁護士基準で損害額を算定し、請求する
損害賠償額の計算に用いられる基準には、最低限の補償水準である「自賠責保険基準」、保険会社独自の「任意保険基準」、そして過去の裁判例に基づき最も高額な賠償額を算出できる「弁護士基準(裁判所基準)」の三つがあります。被害者にとっては弁護士基準が最も有利であり、かつその額を受け取る正当な権利があります。
しかし、被害者が自力で「弁護士基準に基づく賠償額への増額」を求めても、保険会社は社内規定にのっとり、応じないケースがほとんどです。弁護士基準での適正な賠償金を獲得するには、弁護士を代理人として立てて交渉や裁判を行うことが実質的に不可欠です。
6. 内臓破裂の損害賠償請求について、交通事故に詳しい弁護士に相談するメリット
内臓破裂という重傷を負いながら、相手の保険会社と一人で示談交渉を行うことは、心身ともに限界を超えた負担となります。交通事故に詳しい弁護士に相談や依頼をすることには、次のような大きなメリットがあります。
6-1. 被害者請求の手続きを全面的にサポートしてもらえる
内臓の後遺障害は医学的に複雑で、被害者自身で後遺障害等級の申請手続きを行うのは容易ではありません。しかし、弁護士のサポートを受けることにより、適切な後遺障害診断書の作成や証拠収集が可能になります。
6-2. 適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まる
後遺障害等級認定の申請手続きを弁護士に依頼した場合、法律的な専門知識に基づき、必要な書類を精査してもらえます。また後遺障害等級の認定結果について納得がいかない場合の異議申立てのサポートを受けることも可能です。こうしたサポートにより、適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。
6-3. 保険会社とのわずらわしいやりとりや訴訟対応などをすべて任せられる
賠償金の請求をはじめとする任意保険会社との交渉を被害者自身が行うのは簡単ではなく、精神的に大きな負担となります。弁護士に交渉を依頼した場合、保険会社とのやりとりは代理人である弁護士にすべて任せられます。その結果、被害者はストレスから解放され、治療や生活再建に専念できます。
6-4. 賠償金の大幅な増額が期待できる
弁護士が介入することで、賠償金の三つの算定基準のうち最も高額な「弁護士基準」での交渉が可能となります。これにより、賠償金の増額が期待できます。
弁護士費用が心配な場合にも、自身が加入している自動車保険などに「弁護士費用特約(弁護士特約)」が付帯していれば、原則として300万円まで保険会社が弁護士費用を負担してくれます。実質自己負担なし、あるいは少ない費用負担で弁護士に依頼できる可能性が高いため、早めに相談することをお勧めします。
内臓破裂のような重傷案件では、後遺障害等級の認定結果一つで賠償金の総額が数百万円から数千万円単位で変わるケースも珍しくありません。示談書にサインする前に、一度弁護士に内容を確認してもらうだけでも、大きな違いが生まれる可能性があります。
7. 交通事故による内臓破裂に関してよくある質問
Q. 事故直後は痛みが少なくても、あとから内臓破裂が判明するケースはある?
事故から時間が経ってから内臓破裂が判明する可能性は十分にあります。事故直後は極度の緊張状態で、痛みを感じにくくなっています。そのため、肝臓や脾臓(ひぞう)などが損傷してじわじわと出血が続いている場合、数時間後や翌日になって出血量が限界に達し、突然激しい腹痛やショック症状が現れて内臓破裂が判明する例がよくあります。
Q. 救急搬送されなかった場合でも、損害賠償は請求できる?
請求可能です。自力で帰宅したとしても、その後医療機関を受診し、医師の診断によって内臓破裂が「今回の交通事故によって生じたものである」と医学的に証明または説明できれば、損害賠償を請求できます。
ただし、受診までに日数が経ちすぎると、内臓破裂と事故との因果関係を疑われ、示談交渉が難航する可能性があります。事故直後の段階で医療機関を受診したほうがよいでしょう。
Q. 交通事故後に腹部が痛い場合、慰謝料を増額できる?
痛みの原因が内臓破裂などのけがであり、入通院が長引いた場合や、機能障害や痛みが後遺症として残って後遺障害等級が認定された場合などは、弁護士基準を用いることで慰謝料を大幅に増額できる可能性があります。
Q. 内臓破裂はどんな痛みがくるもの?
痛みの感じ方は、破裂した臓器の種類や出血量などにより人によってまったく違います。「刺されるような激痛」「息ができないほどの鈍痛」などさまざまです。「大したことはない」と自己判断せずに、少しでも違和感があればただちに医療機関を受診することをお勧めします。
8. まとめ 交通事故により内臓破裂が起こった場合は、弁護士に相談を
交通事故による内臓破裂は、命の危険が伴う重大な傷害であり、重い後遺症が残るおそれも高いです。長期入院を余儀なくされるケースでは、加害者側に治療費や入通院慰謝料を請求できます。また、内臓破裂による後遺症が残った場合には、後遺障害等級の認定を受けたうえで後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することになります。
賠償金の算定には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の三つの基準があり、弁護士が介入した場合に用いられる弁護士基準が最も高い賠償額を算出できます。
適切な後遺障害等級の認定を受け、正当な賠償金を獲得するには、専門的な知識が不可欠です。保険会社との交渉のストレスをなくし、適正な補償を得て事故後の生活を守るためにも、内臓破裂のけがを負った場合は、できるだけ早く交通事故に精通した弁護士に相談してください。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)
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