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1. 【ケース別】保険会社の対応が悪いと感じた場合の対処法
交通事故では、相手方の保険会社の担当者とやり取りする機会が多くあります。しかし、中には対応に不満を感じるケースも少なくありません。ここでは、保険会社の対応が悪いと感じる主なケースと適切な対処法を解説します。
1-1. 保険会社の電話がしつこい・非常識な時間にかかってくる
事故後は、保険会社の担当者から手続きや事故状況の確認のため、電話で連絡が入ることがあります。しかし、中には何度も電話をかけてきたり、仕事中や早朝・夜間など、こちらの都合を十分に考慮せず連絡してきたりする担当者もいます。
このような場合は、我慢して対応し続ける必要はありません。「今後はメールで連絡してほしい」「仕事中は電話に出られないため、18時以降に連絡してほしい」など、希望する連絡方法や時間帯をはっきり伝えることが大切です。
それでも改善されない場合は、保険会社のカスタマーセンターへ相談し、担当者の対応について伝えることも検討しましょう。
1-2. 連絡がつかない、対応が遅い
反対に、担当者からの返信が遅く、連絡がなかなか取れないケースもあります。そのような場合は、次のような対応が有効です。
・こちらから積極的に連絡する
・電話だけでなく、メールや問い合わせフォームなど記録が残る方法で連絡する
また、各保険会社のカスタマーセンター(コールセンター)へ連絡すれば、担当者から折り返しの連絡がもらえる可能性があります。
なお、平日の営業時間内であれば、特別につながりにくい時間帯はほとんどありません。担当者が不在でも、伝言を残せば折り返しの連絡を受けられるのが通常です。
対応が遅い場合は、現在の手続き状況や今後のスケジュールを確認し、「いつまでに何をするのか」を明確にしてもらいましょう。それでも改善しない場合は、担当者の変更を依頼する方法もあります。
1-3. 態度が高圧的・威圧感がある
担当者の態度があまりにも高圧的で威圧感がある場合は、無理に我慢する必要はありません。高圧的な対応を受け続けると、言いたいことが言えずに不利な状況で手続きが進むおそれがあります。
そのような場合は、担当者とのやり取りを記録に残したうえで保険会社のカスタマーセンターなどへ相談し、担当者の変更を依頼することも有効な対処法です。
1-4. こちらの主張や質問をはぐらかされる
被害者の主張を受け入れず、事実と異なる説明をしてくるケースもあります。
そのような場合は感情的にならず、事実に基づいて修正を主張しましょう。書面での回答を求めるなど、やり取りをできるだけ記録に残しておくとよいです。それでも納得できない場合は、資料や証拠を持参したうえで弁護士へ相談することをおすすめします。
1-5. 一方的に治療費の打ち切りを宣言された
事故で負ったけがの治療が長期間に及ぶ場合には、相手の保険会社から一方的に治療費の打ち切りを通告されたり、打ち切りの意向をほのめかされたりすることがあります。しかし、治療を続ける必要があるかどうかを判断するのは、保険会社ではなく主治医です。
治療費の打ち切りを告げられても、主治医の指示に従って治療を継続しましょう。必要であれば、治療継続の必要性を記載した診断書を作成してもらい、保険会社に診断書を提出して打ち切りの延長を交渉することも有効です。
1-6. 提示された示談金額があまりに少ない
提示された示談金額に納得できない場合は、その場で安易に同意せず、まずは算定根拠を書面で確認することが大切です。
また、休業損害(事故のけがで仕事を休んだ場合の減収分)や逸失利益(事故がなければ将来得られるはずだった収入)など、賠償項目に漏れがないかを確認することも重要です。特に、家事従事者(主婦・主夫)の休業損害は、専業・兼業を問わず見落とされやすいため注意しましょう。
交通事故の賠償金を算定する際には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」という3つの基準があります。どの基準で採用するかによって、賠償額が大きく異なります。
自賠責保険基準は、すべての自動車に加入が義務づけられている自賠責保険の支払い基準です。最低限の補償となるため、3つの基準の中で最も低額になります。任意保険基準は、各保険会社が内部的に定める支払い基準です。金額は自賠責保険基準と弁護士基準の中間程度となります。
一方、弁護士基準は過去の判例に基づく支払い基準で、3つの基準の中で最も高額になります。
任意保険会社は自賠責保険基準や任意保険基準を用いて賠償額を算定することが多いです。適正な賠償を受けるためには、弁護士に相談して弁護士基準を前提に算定・交渉を進めることが重要です。
2. 保険会社の対応が悪い場合、その理由は?
保険会社の対応が悪いと感じても、必ずしも担当者個人だけに原因があるとは限りません。ここでは、保険会社側に見られる主な事情や背景について解説します。
2-1. 担当者が多くの事故案件を抱えているため
保険会社の中でも、保険金の支払いを担当する部門は収益を生み出す部署ではないため、慢性的な人員不足に陥っていることが少なくありません。そのため、担当者一人で非常に多くの事故案件を抱えているケースも珍しくなく、事実確認や被害者への返信に時間がかかることがあります。
また、担当者にも個人差があるため、対応のスピードや質にばらつきが生じることもあります。
2-2. 保険会社は営利企業であり、支払額を抑える立場にあるため
保険会社は営利を目的とする企業です。そのため、企業としての性質上、支払う保険金をできるだけ抑える方向で交渉してくることがあります。
特に、慰謝料や逸失利益のように評価の幅がある項目や、過失割合(事故における当事者双方のミスや不注意の程度)のように当事者間で認識が食い違いやすい項目では、相手方保険会社にとって有利な主張をしてくることがあります。
2-3. 被害者側と認識が食い違っているため
交通事故では、事故状況やけがの程度などについて、当事者双方の認識や主張が一致しないことがよくあります。たとえば、信号のある交差点での事故において、被害者と加害者の双方が「自分の信号は青だった」と主張しているようなケースです。
多くの場合、加害者側の保険会社は立場上、加害者側の認識に沿って主張せざるを得ません。その結果「被害者側が必要以上の請求(過大請求)をしている」と判断するケースもあります。
このような場合は、ドライブレコーダーの映像や専門医の診断書など、できる限り客観的な証拠を準備したうえで交渉に臨むことが重要です。
3. 保険会社の対応が悪いと感じてもやってはいけないこと
保険会社の対応に不満があっても、対応を誤るとかえって交渉で不利になるおそれがあります。次のような対応は避けるようにしましょう。
3-1. 感情的に怒鳴ったり暴言を吐いたりする
事故の示談交渉に限らずどのような交渉でも、強い口調で相手を責めたからといって、有利になるとは限りません。保険会社の担当者も人間です。やり取りがこじれ、かえって対応が悪化することもあり、まさに百害あって一利なしです。
場合によっては「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と受け取られ、担当社員ではなく、会社の顧問弁護士が対応する案件に切り替えられる可能性もあります。事実と要望を整理し、冷静かつ理性的に伝えることが重要です。
3-2. 納得できないまま示談書に署名する
被害者が主張すべきことを十分に主張しないまま、納得できない示談書に署名してしまうことも避けるべきです。仮に本意ではなかったとしても、一度示談が成立すると、その効力を後から覆し、示談をやり直すことは極めて困難です。
後になって追加の損害が判明しても、事故との因果関係や示談書の効力が問題となり、請求が認められない可能性が高いです。示談書には通常「今後は互いに一切の債権債務(お金を請求したり、請求されたりすること)が存在しないことを確認する」という内容の「清算条項」が設けられているためです。
示談には安易に応じず、内容を十分に確認したうえで慎重に判断しましょう。
3-3. 保険会社からの連絡を無視する
担当者への不信感から、保険会社から届いた書類や連絡を放置したくなることもあるかもしれません。しかし、そのような対応は避けるべきです。
必要書類を提出せず、重要な事項の確認も進まないため、手続きが長引くだけでなく、自分の主張や有利な証拠を提出する機会を失うおそれがあります。また、そのまま自分に不利な条件で手続きが進められてしまう可能性もあります。
さらに、通常の担当社員ではなく、会社の顧問弁護士が対応する案件へ切り替えられることもあるため、保険会社からの通知や書類を放置することは、できる限り避けるべきです。
3-4. SNSなどで社名や担当者の実名をあげて非難する
保険会社の対応に不満があっても、SNSなどで社名や担当者の実名を挙げて発信することは避けましょう。
不特定多数に向けて情報を発信した場合、内容によっては名誉毀損や信用毀損、業務妨害などの法的責任を問われる可能性があります。また、弁護士が対応する案件へ移行し、場合によっては訴訟を提起されるリスクも否定できません。
さらに、SNSでの発信内容によっては、示談交渉で不利な事情として利用されたり、けがの症状や生活状況との矛盾を指摘されたりする可能性もあります。安易な気持ちでSNSへ投稿することは避けるべきです。
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4. 保険会社の対応が悪いときの相談窓口
保険会社との話し合いだけでは解決が難しい場合は、第三者機関や弁護士へ相談することも有効です。状況に応じて適切な相談先を選びましょう。
4-1. 相手の保険会社の苦情窓口(カスタマーセンター)
保険会社や共済組合によって名称は異なりますが、多くの場合「カスタマーセンター」や「コールセンター」といった窓口が設けられています。詳しくは各社のホームページなどで確認してください。
この窓口は補償内容そのものへの不満というよりも、「担当者の対応に問題がある」「担当者との相性が悪い」「交渉中に暴言を吐かれた」など、担当者の対応に関する苦情を申し立てたい場合や、担当者の変更を希望する場合に有効です。
ただし、あくまでも保険会社の内部窓口なので、どこまで改善が期待できるかについては、一概にはいえません。
4-2. そんぽADRセンター
そんぽADRセンターは、損害保険会社が共同で設立した損害保険協会が運営する紛争解決機関です。担当者個人の対応に関する苦情ではなく、事故状況や双方の主張そのものに争いがあり、当事者同士の交渉では解決が難しい場合に利用できます。
専門的な知識を持つ相談員や担当弁護士が、公平・中立な立場から話し合いを進めてくれることが期待できます。また、話し合いが成立した場合は、一定の法的拘束力を持つ合意書が作成されます。
もっとも、話し合い自体に強制力はないため、保険会社側に譲歩する意思がない場合には、解決に至らないこともあります。
4-3. 交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターは、損害保険会社とは独立した公益財団法人が運営する紛争解決機関です。そんぽADRセンター以上に、中立的な立場から手続きが行われます。
事故状況や損害額などについて双方の主張が対立し、当事者間の交渉だけでは解決が難しい場合に、専門知識を有する弁護士が公平・中立な立場で話し合いを進めます。
話し合いで解決できなかった場合には、弁護士や裁判官経験者などで構成される審査会による審査を申し立てることができます。審査では当事者双方から事情を聴取したうえで、裁定(裁判でいう判決)が行われます。保険会社は裁定を尊重しなければならないとされているため、申立人が同意すれば裁定内容での和解が成立します。
5. 保険会社の対応が悪い場合に弁護士に相談・依頼するメリット
保険会社の対応が悪いときに弁護士に相談すると、どのような効果が期待できるでしょうか。弁護士に相談・依頼するメリットは以下のとおりです。
・保険会社とのやり取りを任せられ、治療や日常生活に専念できる
・弁護士基準で交渉でき、慰謝料や賠償金の増額が期待できる
・後遺障害等級の認定や異議申立てにも対応できる
・弁護士費用特約があれば自己負担なく依頼できる場合がある
5-1. 保険会社とのやり取りを任せられ、治療や日常生活に専念できる
弁護士に示談交渉を依頼すれば、その後は相手方保険会社との連絡窓口が弁護士になります。そのため、担当者と直接やり取りをする必要がなくなり、大きな精神的負担から解放されます。煩雑な交渉は弁護士に任せ、自身はけがの治療や仕事、日常生活に専念できることは、大きなメリットといえるでしょう。
5-2. 弁護士基準で交渉でき、慰謝料や賠償金の増額が期待できる
弁護士は保険会社との交渉にあたり、原則として弁護士基準にもとづいて交渉を行います。
相手方保険会社が提示する示談金額は、自賠責保険基準や任意保険基準に基づくケースが多く、被害者にとって十分とは言えない金額である可能性もあります。弁護士に依頼し、賠償金が最も高額となる弁護士基準で算定・交渉してもらうことで、慰謝料や賠償金の増額が期待できます。
5-3. 後遺障害等級の認定や異議申立てにも対応できる
医師から「後遺障害が残る」と診断されたにもかかわらず保険会社に認められない場合や、認定された等級に納得できず異議申立てを検討している場合には、弁護士への依頼が有効です。
後遺障害等級は症状の重さに応じて1級から14級まで分かれており、等級が認定されると後遺障害慰謝料や逸失利益などを加害者側に請求できるようになります。認定される等級によって賠償額が大きく変わるため、適正な等級を認定してもらうことが大切です。
等級認定の申請や異議申立てには専門的な判断が必要となるため、弁護士の知見が大いに役立ちます。
5-4. 弁護士費用特約があれば自己負担なく依頼できる場合がある
自分や家族が加入している自動車保険に弁護士費用特約(家族特約を含む)が付いている場合は、交通事故の被害者として弁護士に依頼する費用を保険会社が負担してくれる可能性があります。弁護士費用の上限は300万円程度としている保険が多く、自己負担なく依頼できることがあります。
弁護士費用特約を利用できるケースは多いため、まずは自分や家族が加入している保険の契約内容を確認してみることをおすすめします。
6. 保険会社とのトラブルで弁護士が介入して解決できた事例
弁護士である筆者が、保険会社の担当者の対応に不満を抱えていた依頼者から依頼を受け、交渉によって解決に至った事例を紹介します。
依頼者は後遺障害の認定を受けるため、医師が作成した「後遺障害診断書」を相手方保険会社へ提出していました。しかし、提出から数カ月が経過しても何の連絡もなく、後遺障害等級認定の手続きも進まないまま放置されていました。
そこで私が依頼を受け、まずは相手方保険会社へ受任通知(弁護士などが依頼者の代理人になったことを相手に知らせる文書)を送りました。しかし、その後もしばらくは反応がありませんでした。
そこで改めて、「○月○日に受任通知を書面で送付しておりますが、貴社からは何らご回答をいただいておりません。至急ご対応ください。」「後日の証拠とするため、書面にて送付しておりますのでご了承ください。」という内容をファックスで送付しました。もちろん、ファックスの送信記録も保存しました。
すると、速やかに後遺障害等級認定の手続きが進み、その後のやり取りも非常にスムーズになりました。さらに、補償内容についても、私から提示した内容に近い金額で回答が得られ、結果として依頼者が十分満足できる内容で解決できました。
7. 「保険会社の対応が悪い」に関して、よくある質問
Q. 加害者側の保険会社が弁護士をつけてきたら、どうすればいい?
加害者側の保険会社から依頼を受けた弁護士は、まず初めに「事件を受任しました」という内容の書面(受任通知)を送ってきます。受任通知が届いた場合は慌てず、書面を持参して弁護士に相談してください。
Q. 弁護士に依頼することで、保険会社の対応がさらに悪くなることはない?
弁護士に依頼しても、保険会社の対応が悪くなることは通常ありませんが、保険会社も弁護士をつけてくることはあります。
特に、過失割合や賠償額などについて当事者間の主張が大きく異なる状況では、被害者側が弁護士に依頼すると、保険会社は「担当者レベルでの解決は困難」と判断することがあります。その場合、保険会社側も顧問弁護士へ対応を引き継ぐことになるケースが少なくありません。
保険会社側が訴訟も視野に入れた対応へ切り替えた結果といえます。
Q. 保険会社の対応が悪いときは、担当者を変えてもらえる?
「担当者の対応が悪い」と感じる場合、その担当者は他の事故案件でも複数件の苦情を申し立てられている可能性があります。そのような場合は、苦情を申し立てることにより、担当者が変わる可能性があります。
8. まとめ 保険会社の対応が悪いときは冷静に対応し、必要に応じて弁護士へ相談を
保険会社のベテラン担当者と、不慣れな被害者が示談交渉を進めることは、大きな精神的負担になります。しかし、担当者の対応が悪いと感じても感情的にならず、やり取りを記録に残し、必要に応じて担当者の変更や第三者機関への相談を検討することが大切です。
それでも解決が難しい場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。弁護士に依頼すれば、保険会社との交渉を任せられるだけでなく、適正な賠償額の獲得も期待できます。
(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)
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