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1. 事故相手と連絡がとれない場合、警察はどこまで対応してくれる?
事故相手と連絡がとれない場合、警察に対応を求められる範囲は限られます。警察の役割、そして警察が対応できないケースについて解説します。
1-1. 警察の役割は犯罪の捜査や取り締まり
警察の主な役割は、犯罪の捜査や取り締まりです。警察が交通事故を把握すると、捜査を開始しますが、それは負傷者多数といった重大事故の場合や、被害者が1名でも被害届が提出された場合、物損事故でも無免許や飲酒運転など犯罪性が疑われる場合です。
具体的には、次のようなケースです。
【過失運転致死傷や危険運転致死傷】
人身事故を起こすと、「過失運転致死傷」や「危険運転致死傷」といった刑事上の責任が問われます。 現場では実況見分や防犯カメラの画像収集、目撃者からの事情聴取などの捜査が行われます。
【ひき逃げや当て逃げ】
事故の犯人が現場から逃走した場合は、道路交通法上の「救護義務違反」や「報告義務違反」という犯罪が成立する可能性があります。人身事故の場合は「ひき逃げ」、車や建物などの物損事故のみの場合は「当て逃げ」とされ、警察は、犯人特定のための捜査を行います。
【無免許運転や飲酒運転】
無免許運転や飲酒運転は犯罪であり、警察が実況見分などの捜査を行います。
1-2. 「民事不介入」! 警察が対応しないケースとは
警察は犯罪の捜査などを行う機関です。個人と個人の間の金銭トラブルの仲介は、警察の役割ではありません。これを「民事不介入の原則」といいます。
そのため、警察に以下のような相談をしても対応はしてくれません。
加害者に修理代や治療費の支払いを求めているが無視されている、あるいは金額の折り合いがつかないので間に入ってほしい
過失割合でもめているから、警察から加害者に説明してほしい
加害者が音信不通になったので、自宅や会社を教えてほしい
加害者が自分の保険会社に連絡していないので、保険会社の連絡先を教えてほしい
1-3. 【一覧表】警察ができること・できないこと
交通事故の際、警察が対応できることとできないことは下表のとおりです。
状況 | 警察の対応 |
|---|---|
交通事故、ひき逃げ、当て逃げの捜査 | ◯ 刑事事件として対応 |
無免許運転や飲酒運転 | ◯ 道路交通法違反として対応 |
相手が支払いの請求を無視、 金額の折り合いがつかない | × 対応不可(民事不介入) |
過失割合の仲裁 | × 仲裁しない(民事不介入) |
自宅や会社、保険会社を教える | × 原則として不可 (加害者の同意がある場合を除く) |
1-4. 事故相手と連絡がとれない場合、警察は事故相手の連絡先を教えてくれる?
近年は個人情報保護の観点から、連絡先の開示に対する対応は特に厳しくなっています。たとえ警察が加害者の住所や連絡先を知っていて、被害者が事故相手と連絡がとれない状況でも、加害者の同意がない限り警察が被害者に教えてくれることは原則としてありません。
2. 事故相手が連絡を無視する心理と放置する重大なリスク
事故相手と連絡がとれない状態を放置するのは大きなリスクが伴います。なぜ連絡を無視するのか、事故相手の心理とともに放置する重大なリスクについて解説します。
2-1. 相手が連絡をしてこない主な理由
事故相手と連絡がとれなくなる理由として、損害賠償を回避するために意図的に連絡を拒否している可能性が考えられます。具体的には、以下のような理由です。
事故の原因は被害者にあると考えている
自分の保険は使いたくない
「大した事故ではない」「被害者が自身の保険で対処するだろう」と思い込んでいる
任意保険に未加入で貯蓄などの財産がなく、お金を借りる親族もいない
2-2. 最大のリスクは時効による請求権の消滅
事故相手と連絡がとれない状態を放置していると、時効により損害賠償請求権が消えるという大きなリスクが生じます。
交通事故の損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時点から発生します。そして、物損事故では3年間、人身事故では5年間で、時効により消滅します。物損事故の場合、3年というのは意外と短いため、注意が必要です。
ただし、時効の完成を防ぐことはできます。その方法が、時効の「完成猶予」と「時効の更新」です。
完成猶予とは、時効のカウントを一時的にストップさせることです。たとえば交渉が長引いているときに裁判を起こすなどすれば、その手続き終了まで、つまり裁判期間が終わるまでは時効の完成が止まります。
一方、時効の更新とは、時効のカウントをリセットすることです。典型的なものが「承認」です。損害賠償を認め、一部でも弁済した場合には、その時点から新たに時効が進行します。
たとえば、2026年の6月30日に人身事故を起こした場合、時効は5年なので2031年の7月1日に時効が完成します。しかし、2028年の6月30日に事故相手が一部を弁済した場合、時効の完成は2033年の7月1日となります。
3. 【状況別】事故相手と連絡がとれない場合の対処法
事故相手と連絡がとれない場合、状況に応じて適切な対処法が異なります。絶対にやってはいけないNG行動とともに詳しく解説します。
3-1. <注意>絶対にやってはいけないNG行動
事故相手と連絡がとれない焦りや怒りからとりがちな行動が、かえって自分の立場を悪くすることがあります。
【自宅や職場へのアポなし訪問や待ち伏せ】
自宅や職場へのアポなし訪問や待ち伏せは、相手から迷惑行為を受けているとして警察に相談される可能性があります。特に、事故と直接関係のない職場への訪問は、名誉毀損罪などに問われるおそれもあります。
【SNSやネット掲示板での情報拡散】
SNSやネット掲示板での情報拡散は名誉毀損罪や侮辱罪に該当し、刑事罰や損害賠償請求を受ける可能性があります。
【脅迫的かつ威圧的な連絡、感情的かつ執拗な連絡の繰り返し】
ようやく連絡がとれたような場合でも、怒りにまかせて「訴えてやる!」「ただでは済まさない!」などと発言した場合、脅迫罪に問われる可能性があります。また、損害賠償請求が減額される理由になることもあります。
どれほど理不尽な状況であっても、冷静かつ法的に正しい方法で動くことが、最終的に正当な賠償を得るための近道です。
3-2. 【状況1】相手の連絡先が不明な場合
事故直後に連絡先を交換できなかった、あるいは教えられた情報がうそだった場合には、次の方法で相手の情報を調べることができます。
【交通事故証明書の取得】
警察に事故の届出をしていれば、「交通事故証明書」を取得できます。この書類には、事故日時や場所、および当事者の氏名や住所などが記載されています。最寄りの自動車安全運転センターの窓口のほか、郵便やオンラインでも申請が可能です。
【加害車両のナンバーから所有者を照会する】
加害車両のナンバープレートを控えていたならば、運輸支局または自動車検査登録事務所に「登録事項等証明書」を申請して、車両所有者の氏名や住所などを調べることができます。
【防犯カメラやドライブレコーダーの解析】
筆者の弁護士事務所では以前、事故現場の防犯カメラに加害車両が映っていたものの、画像が不鮮明でナンバーが読み取れないという事案を取り扱ったことがあります。この事案では、民間の画像解析会社に依頼するなどした結果、加害者を特定できました。
なお、交通事故証明書は、警察に事故の届出を出していれば被害者自身で受け取ることのできる証明書です。しかし、ナンバープレートからの所有者の特定や映像の解析は、手続きが煩雑であったり、どこに依頼すればよいのか迷ったりすることが多いでしょう。そのため、弁護士の力を借りるのが確実な方法と言えます。
3-3. 【状況2】相手の連絡先はわかるが、無視される場合
相手の電話番号に電話をかけても出ない、ショートメールも無視されるような場合には、次の手段をとることが有効です。
【内容証明郵便で請求の意思を明確に伝える】
内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の手紙を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれる郵便の種類です。相手に対して「損害賠償を請求する意思がある」と正式に通知できるため、プレッシャーを与える効果が期待できます。特に弁護士に交渉を依頼し、弁護士名で内容証明郵便を送付すれば、損害賠償請求の意思を明確に伝えられるため有用です。
【加害者が加入する保険会社に連絡する】
加害者が加入している任意保険会社がわかっている場合には、保険会社に直接連絡して損害賠償についての話し合いを進められることがあります。
3-4. 【状況3】ひき逃げや当て逃げで相手が不明な場合
ひき逃げや当て逃げにより相手が不明な場合は、以下の手段をとるようにしましょう。
【まずは警察へ!】
事故直後に相手が逃げた場合は、すぐに警察へ連絡してください。事故現場には、防犯カメラやドライブレコーダー、衝突により破損した加害車両の部品、目撃者など、加害者の特定につながり得る証拠が多数残っています。しかし、時間とともに失われるものもあるため、ただちに実況見分を実施してもらうことが重要です。
実況見分が行われることで事故状況を証拠化でき、その後の示談交渉で適切な賠償を受けることにもつながります。
【政府保障事業への請求を検討する】
相手が最終的に見つからなかった場合でも、泣き寝入りにはなりません。相手が不明または無資力で補償を受けられない場合の最後のセーフティーネットとして、「政府保障事業」という国の制度があります。この制度を利用すると、自賠責保険と同等の補償(治療費や慰謝料など)を国から受けることができます。請求先は損害保険会社の窓口です。
また、自分が加入している任意保険の「人身傷害補償保険」や「無保険者傷害特約」から補償を受けることもできます。
なお、政府保障事業も任意保険の人身傷害補償保険や無保険者傷害特約も、対象となるのは人身の損害のみです。車両故障などの物損の補償は、任意保険の「車両保険」を利用することになります。
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4. 事故相手と連絡がとれない場合、弁護士に依頼するメリット
事故相手と連絡がとれなくなり、警察にも協力してもらえないとなると、自分だけで対処するのが難しいケースも少なくありません。また、適切な賠償を受けるためにも、弁護士を依頼することには主に4つのメリットがあります。
弁護士会照会などを活用して加害者を特定できる
賠償金の増額が期待できる
補償に関する助言を受けられる
精神的負担と手間を大幅に軽減できる
4-1. 弁護士会照会などを活用して加害者を特定できる
弁護士は、正当な理由がある場合に戸籍や住民票を取り寄せる「職務上請求」や、弁護士会を通じて企業や携帯電話会社などに情報開示を求める「弁護士会照会」という制度を利用して調査できます。たとえば、加害者から聞いていた電話番号で最初は連絡をとり合っていたものの突如つながらなくなった場合、携帯電話会社に対する弁護士会照会により、住所などが判明することもあります。
4-2. 賠償金の増額が期待できる
加害者が特定できた後は、弁護士が交渉の窓口になります。弁護士が介入することで、弁護士基準(裁判所基準)という最も適切かつ高額な賠償金額を算定できる基準が使えます。これにより、損害賠償額が増えるケースは少なくありません。
4-3. 補償に関する助言を受けられる
政府保障事業や被害者の保険の活用など、自分では気づきにくい補償手段について、適切な助言を受けることができます。
4-4. 精神的負担と手間を大幅に軽減できる
加害者特定という精神的負担や手間の大きい作業を、弁護士に委ねることができます。また、適切な助言を受けられることで、不安から解放されることもあるでしょう。治療に専念でき、落ち着いた日常生活を送れるようになるかもしれません。
弁護士への依頼を検討する場合は、自身や家族が加入している自動車保険やクレジットカードに「弁護士費用特約」が付いていないか確認しましょう。この特約を利用すれば、自己負担ゼロまたは少ない負担で弁護士に依頼して、上記のメリットを受けることができます。
5. 事故相手と連絡がとれても、賠償金の支払いを拒否されたらどうすべき?
もし、連絡がとれた事故相手から賠償金の支払いを拒否されても、相手が任意保険に加入しているのであれば保険会社の担当者と話してみましょう。しかし、保険会社は契約者である加害者の意向に沿って対応する必要があります。そのため、加害者が賠償には一切応じないという立場を貫くのであれば、訴訟による解決も視野に入れなければなりません。
加害者が任意保険に加入していないのなら、自賠責保険に対して自身または代理人の弁護士が「被害者請求」をし、最低限の賠償金を獲得しましょう。被害者請求とは、被害者本人が加害者側の自賠責保険に対し、治療費や慰謝料などの損害賠償金を直接請求する手続きです。被害者自身が書類集めを行うため、適切な等級認定や賠償を受けやすくなるメリットがあります。
自賠責保険からの賠償でも足りない部分は、加害者に直接請求することになります。加害者が賠償金の支払いを拒むときは、ドライブレコーダーの映像や診断書の入手、刑事記録の取り寄せなど、客観的証拠をそろえたうえで裁判を起こすかどうか検討します。
裁判は自身で起こすこともできます。裁判では、以下の内容について被害者側が十分に立証する必要があります。立証不十分の場合には、本来得られたはずの賠償金が大幅に減額されるおそれがあるため、弁護士の力を借りるのが理想的と言えます。
事故の状態(いつ、どこで、何と何が、どのように衝突または接触したのか)
過失割合(当事者双方の責任の割合)
傷害や後遺障害の内容
休業損害(事故が原因で減少した収入)
逸失利益(事故に遭わなければ得られたはずの将来的な収入)
6. 事故相手と連絡がとれない場合に関してよくある質問
Q. 事故相手と連絡がとれないまま弁護士に依頼すると、費用倒れになるリスクはない?
弁護士費用特約に加入している場合には、示談金よりも弁護士費用が上回る「費用倒れ」のリスクはほぼありません。
一方、弁護士費用特約に加入していない場合には、弁護士費用はすべて自腹です。加害者と連絡がとれないままだと、費用倒れになる可能性があります。
Q. 事故直後に警察を呼んでおらず、あとから相手と音信不通になったときはどうすべき?
できるだけ早く警察に通報しましょう。事故から時間が経つにつれ、加害者特定に有用な証拠が集めにくくなるためです。また、今後の対応について弁護士に相談しましょう。
Q. 事故相手が突然、事前連絡なしで自宅に押しかけてきたらどうすべき?
加害者が興奮していて身の危険を感じる場合には、すぐに警察に通報してください。冷静な話し合いができそうならば、玄関先など第三者の目がある場所で話し合うのも一案です。訪問状況は、録画や録音をしておきましょう。
Q. 事故相手から伝えられた連絡先がうそだった場合は、どのように相手を探せばいい?
交通事故証明書や登録事項等証明書を取得して連絡先を調べることが考えられます。担当刑事に事情を説明し、刑事から加害者に、被害者が連絡を待っていると伝えてもらうのもよいでしょう。それでも話し合いが進まない場合には、弁護士に相談しましょう。
7. まとめ 事故の相手と連絡がとれない場合は早めに弁護士に連絡し適切に対応しよう
事故の相手と連絡がとれない状況は、焦りや不安を伴う苦しいものです。
しかし、適切な手順を踏めば、適切な賠償を得られる可能性が高まります。警察の捜査権限を最大限に利用する一方、早めに弁護士に相談することが大切です。弁護士のサポートを受けながら、自賠責保険や政府保障事業の活用などで自身の利益を確保し、加害者への請求準備を進めましょう。
(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)
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