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交通事故の芽を摘むAI分析 未来の危険地点を可視化、子どもの交通安全にも活用

更新日: / 公開日:
交通安全の分野にもAIを活用した新サービスが登場し、注目を集めています(c)Getty Images
交通事故を未然に防ぐために、AI(人工知能)を活用する取り組みが始まっています。KDDIが提供を開始した「交通安全インサイト」は、スマートフォンや自動車のデータ、警察庁の事故統計をAIで分析し、今後事故が発生する可能性が高い地点を可視化するサービスです。事故が起きた後に対策を講じるのではなく、潜在的なリスクを事前に把握することで、自治体や企業の交通事故を未然に防ぐ新しい手段として期待されています。

目 次

1. 危険な場所を地図上に可視化

2. 通学路や生活道路での活用事例

3. 交通事故ゼロ社会へ向けて

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1. 危険な場所を地図上に可視化

日本の交通事故は長期的に減少しています。警察庁の統計によると、1970年の交通事故の死者数は1万6765人にのぼりましたが、2024年には2663人まで減りました。また、事故件数も2004年のピーク時には約95万件に及びましたが、24年は約29万件に減少しました。一方で、24年の死者に占める65歳以上の割合は56.8%に達し、高齢者の比重が高いのが特徴です。また、内閣府の交通安全白書では、歩行中と自転車乗用中の死者割合が諸外国と比べて高いとして、生活道路における安全対策の必要性を訴えています。

この課題に対応するためKDDIが開発し、2025年3月から提供されているのが「交通安全インサイト」です。主に自治体や建設関係の企業向けに提供されており、AIを使って事故リスクを分析し、危険度の高い地点を予測します。交通安全インサイトでは、従来のように過去の事故件数に基づいて危険箇所を割り出すのではなく、「これから事故が起きる可能性のある場所」を可視化できる点が特長です。同社の担当者は、「既に事故が頻発しているような場所でなかったとしても、今後事故が発生するリスクの高い場所を分析して示せるのが本サービスの強み」と説明します。これによって、利用者は事故が起きる前に対策を施すことが可能になります。

交通安全インサイトは3種類のデータをAIで分析することで実現しています。第一に、人流データです。auのスマートフォン利用者から利用規約などで同意を得たうえで収集されるGPSの位置情報を匿名化・集計したデータです。 移動速度や移動経路などから歩行者か自転車かを区別し、さらに、スマートフォン契約者から追加の同意があった場合には年代や性別といった利用者の属性データを組み合わせて分析できます。これにより、道路ごとに「高齢者の通行が目立つ」「特定の時間帯に学生の登下校が集中している」といった傾向を把握でき、生活道路の危険度を精緻(せいち)に捉えることが可能になります。

第二は自動車から収集される走行データで、平均走行速度や一時停止率、急ブレーキの多発やABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の作動といった挙動を抽出できます。これにより、従来の調査では見落とされがちな「運転者がヒヤリとした地点」も数値で示すことができます。また、走行データについても、利用者の同意を得ている場合のみ自動車メーカーから位置情報や走行データの提供を受けており、個人情報の保護に留意されています。

交通安全インサイトの分析対象は日本全国で、人口や交通状況などのため取得できる人流データや車両の走行データが少ない地域においても、統計的な処理を施すことで分析の精度が落ちない工夫をしているといいます。

そして、第三に警察庁が公表している交通事故統計などのオープンデータを加え、AIがこれら3種類のデータを突き合わせながら分析します。こうして導かれた分析結果は危険度をスコア化し、地図上にヒートマップとして表示されます。

「交通安全インサイト」の分析画面イメージ。AIが事故リスクを予測し、危険度を地図上に色分けして表示します(KDDI株式会社提供)
「交通安全インサイト」の分析画面イメージ。AIが事故リスクを予測し、危険度を地図上に色分けして表示します(KDDI株式会社提供)

このヒートマップは赤やオレンジ、青などの色でリスクの度合いを直感的に把握できるだけでなく、「急ブレーキが多い」「高齢歩行者が多い」といった要因についても同時に表示されます。これにより、自治体や企業は「どこが危険か」だけでなく「なぜ危険なのか」を把握でき、対策の優先順位を合理的に判断できます。

さらに、リスクの高低は約50メートル四方ごとに区切られて表示されるため、きめ細かなリスク把握が可能です。「50代以上の自転車利用者が多い」「急ブレーキ発生率が高い」「一時停止率が低い」など危険要因を多角的に確認でき、単に危険な場所を示すだけでなく、その背景にある要因まで説明できる仕組みになっています。この危険スコアの算出方法は、幹線道路や生活道路など対象となる道路の特性に応じてチューニングされ、顧客の求めに応じてオーダーメイドで提供されています。

自治体にとっては、限られた予算や人員をAIが示す高リスク地点に集中できる利点があります。企業にとっても調査や経験に頼らず、AIの予測を根拠に提案できるため説得力が増します。さらに、対策実施後にデータを再び分析することで、施策の効果を数値で検証できる点も特徴です。安全対策のPDCAサイクルを回しやすくし、従来の「実施したものの効果が不明」という課題の解消を目指します。

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2. 通学路や生活道路での活用事例

「交通安全インサイト」はすでに複数の企業や自治体で活用が始まっています。浜松市では、建設コンサルタント会社が小学校周辺の生活道路を対象に分析し、AIが高リスクと判定した地点を基に具体的な安全対策案を作成しました。

抽出された箇所では、実際の現場においても危険な交通状況などが確認できたといい、対策が必要な箇所を効率的・効果的に発見することができる効果が認められました。従来型の事故が起きてから対応する調査に比べ、AIの予測を根拠に先手を打てることが大きな変化といえます。

さらに、今春には東京都世田谷区エリアを対象に子ども向け見守りGPSサービスを提供する企業が、交通安全インサイトと連携したサービスの実証実験を行いました。アプリ上にAIが示した事故リスクの高いエリアが表示され、通学路の危険箇所を事前に可視化できる仕組みです。

保護者はアプリ上で子どもの移動経路や危険エリアを確認でき、GPS端末を持っている子どもが危険度の高いエリアに近づくと、端末のランプが点灯し、「危ない場所です。気をつけてください」などと音声で警告が流れます。KDDIによると、危険場所の可視化と子どもの接近時の警告について、利用者のおよそ8割が高く評価しました。

KDDIでは、交通安全インサイトについて将来的に事故防止だけでなく、渋滞緩和など他の交通課題にも対応範囲を広げたい考えです。

エリアごとにAIが危険と判断した要因についても表示されます(KDDI株式会社提供)
エリアごとにAIが危険と判断した要因についても表示されます(KDDI株式会社提供)

3. 交通事故ゼロ社会へ向けて

AIを活用した交通安全の取り組みは、将来のインフラ整備の分野にも広がっています。トヨタ自動車とNTTは2024年10月、「交通事故ゼロ社会」を目指して「モビリティAI基盤」を共同で開発することに合意しました。両社は2030年までに5000億円規模の投資を見込んで2025年から開発を開始し、2028年ごろから社会実装を進める計画です。

モビリティAI基盤は、車両から収集される膨大な走行データをAIが学習・分析し、危険運転や事故につながる行動を予測するものです。切れ目のない通信インフラと、再生可能エネルギーを活用した分散型データセンターを組み合わせることで、ヒト・クルマ・インフラを三位一体で連携させることを目指しています。

この基盤は、交差点での出合い頭事故の防止や高度運転支援、将来的な自動運転システムの開発に活用される予定です。生活道路の小さな交差点から、国家規模のモビリティ基盤までAIの予測力を活用した交通安全の取り組みは、個々の現場での安全確保と同時に、社会全体の事故リスク低減へとつながります。人とAI技術、そしてインフラが連携することで、長年の課題であった交通事故を「予測し、防ぐ」時代の到来が現実味を帯びつつあります。

(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています)

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