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1. 交通事故で届く「受任通知」とは
まずは、受任通知とはどのような書面なのかを確認しましょう。通知の意味や記載内容を理解しておくことで、その後の対応も落ち着いて進められます。
1-1. 受任通知とは弁護士が代理人になったことを知らせる書面
受任通知とは、加害者側の保険会社から依頼を受けた弁護士が、被害者に対して「今後、自分が加害者の代理人として交渉窓口になる」ことを知らせる書面です。この通知が届いた後は、原則としてそれまでの保険会社の担当者ではなく、通知に記載された弁護士が交渉相手になります。
加害者本人に直接連絡することもできなくなり、以後のやり取りはすべてこの弁護士を通じて行うことになります。被害者にとっては、いきなり交渉相手が「専門家」に変わるため、戸惑いや不安を感じるのも無理はありません。
1-2. 受任通知が届くタイミング
受任通知は、加害者側が弁護士に依頼した後、実際に交渉を開始する前のタイミングで送付されるのが一般的です。ただし、事故直後に届くこともあれば、示談交渉がある程度進んだ後、あるいは交渉が難航し始めた段階で届くこともあり、届くタイミングはケースによってさまざまです。
特に、休業損害や治療期間について保険会社との間で意見が対立していた場合には、交渉が行き詰まったタイミングで受任通知が届くことも珍しくありません。
1-3. 受任通知に書かれている内容とチェックポイント
受任通知には、弁護士の氏名・所属事務所・連絡先、通知の趣旨、今後の連絡方法、回答期限などが記載されているのが一般的です。届いた書面が本物の弁護士事務所からのものかどうか不安な場合は、日本弁護士連合会や所属弁護士会の登録情報で事務所の実在を確認することもできます。
回答期限が明記されていても、その場ですぐに回答する必要はなく、まずは書面全体の内容を落ち着いて確認することが大切です。
2. 加害者が示談で弁護士に依頼する目的
受任通知が届いた背景には、加害者側が弁護士に依頼した理由があります。どのような目的で弁護士が選任されるのかを解説します。
2-1. 保険会社や被害者との交渉を任せるため
加害者が弁護士に依頼する目的の一つは、保険会社や被害者との交渉を任せるためです。交渉窓口を弁護士に一本化することで、加害者本人は被害者と直接やり取りする必要がなくなります。また、保険会社との連携や必要書類のやり取りも弁護士が代行するため、手続きをスムーズに進められます。
被害者側からすると、これまでやり取りしていた保険会社の担当者に代わり、弁護士が交渉窓口となるため、戸惑うことも少なくありません。
2-2. 法的に適切な示談金額で解決するため
また、法的に適切な示談金額で解決することも、弁護士に依頼する目的の一つです。弁護士は、損害賠償額が妥当かどうかを法的な観点から精査します。そして、過失割合や損害額について根拠のある主張を行い、不当に高額な請求や、加害者にとって不利な条件での示談を避けます。
被害者側の請求内容に疑問がある場合は、医療照会や資料の精査を行うこともあります。
2-3. 被害者との直接のやり取りによる精神的負担を軽減するため
被害者との直接のやり取りによる精神的負担を軽減する目的もあります。事故への罪悪感やストレスを抱えている加害者にとって、被害者からの連絡や要求への対応を弁護士に任せることで、当事者同士の感情的な対立を避け、負担を減らしながら示談を進めることができます。
特に、被害者からの連絡が頻繁である場合や、感情的なやり取りが続いている場合に、この目的で依頼されるケースが多い印象です。
2-4. 裁判に発展するリスクを減らし、早期解決を目指すため
裁判に発展するリスクを減らし、早期解決を目指す目的も挙げられます。専門的な交渉により示談成立の可能性を高め、紛争の長期化を防ぐことができ、万が一訴訟になった場合もそのまま対応を任せられる安心感があります。
示談で解決できず訴訟に移行しても、加害者側は一貫して弁護士に対応を委ねることができます。
2-5. 刑事事件の処分を軽くするため
人身事故では、被害者との示談成立が刑事処分の判断において考慮される場合があります。弁護士が示談交渉を進めることで示談成立の可能性が高まり、不起訴や処分の軽減を目指して依頼するケースもあります。
3. 受任通知が届いたら、まずやるべき3つのステップ
受任通知が届いても、慌てる必要はありません。まずは次の3つのステップに沿って、冷静に対応することが大切です。
3-1. Step1:冷静に書面の内容をすべて確認する
受任通知が届くと、まず多くの人が動揺しますが、焦って行動しないことが何より重要です。誰から届いた通知で、誰宛のもので、どのような内容が書かれているか、いつまでに何を回答する必要があるのかを、まず落ち着いて確認しましょう。
感情的になって急いで反応すると、後の交渉で不利になりかねません。私の事務所への相談でも、届いた直後は「何を言われているのかわからず怖かった」という声をよく聞きますが、内容を一つずつ整理していけば、決して太刀打ちできないものではありません。
3-2. Step2:回答期限を把握する
書面には回答期限が記載されていることが一般的ですが、期限があるからといって焦って不利な内容の回答をしてしまう必要はありません。期限内に弁護士へ相談する時間を確保することを優先し、必要であれば期限の延長を相手方弁護士に申し出ることも可能です。
期限を過ぎたからといって即座に不利益が生じるわけではありませんが、無視し続けることは避けるべきです。
3-3. Step3:自分の保険会社に連絡し、弁護士に相談する
相手方が弁護士という専門家を立ててきた以上、被害者側も専門家を交えて対応するのが基本的な対応です。自身が加入している保険会社にも受任通知が届いた旨を報告したうえで、早めに弁護士へ相談し、今後の対応方針を一緒に検討してもらいましょう。
一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することが、結果的に負担を軽くする近道になります。
4. 受任通知が届いた後の4つのNG行動
受任通知への対応を誤ると、その後の交渉で不利になるおそれがあります。特に避けたい行動を紹介します。
4-1. NG①:受任通知を無視・放置する
受任通知を無視・放置することは、最も避けるべき対応です。何の反応も示さなければ、反論する意思がないと受け取られ、相手方に有利な形で交渉や手続きが進むおそれがあります。また、対応を先延ばしにしている間に、示談交渉の主導権を相手方に握られ、最終的には訴訟へ発展する可能性もあります。
4-2. NG②:加害者本人やその家族に直接連絡する
交渉窓口が弁護士に一本化された後、加害者本人やその家族に直接連絡を取ることは避けるべきです。当事者間での直接のやり取りは、感情的なトラブルや発言の食い違いを招きやすく、後の交渉においてかえって不利な材料にされてしまうおそれがあります。連絡が必要な場合は、必ず窓口となっている弁護士を通して行いましょう。
4-3. NG③:相手方弁護士の要求に安易に同意・署名する
相手方弁護士から示談条件や書面への署名を求められても、内容を十分に理解しないまま安易に同意・署名してはいけません。相手はあくまで加害者側の代理人であり、提示される条件は加害者にとって有利な内容になっている可能性が高いことを念頭に置きましょう。
署名する前に、必ず自分側の専門家にも内容を確認してもらうことをおすすめします。
4-4. NG④:感情的な内容の返信をする
届いた通知の内容に怒りや不満を感じても、感情的な内容の返信をすることは避けるべきです。感情的な言葉遣いや発言は、後の交渉において不利な証拠として利用されるリスクがあります。
冷静に事実関係を整理したうえで、必要な範囲で法的な対応をとることが重要です。
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5. 受任通知を無視するとどうなる?考えられるリスクとは
「後で対応しよう」と放置すると、交渉や裁判に影響が及ぶ可能性があります。ここでは、受任通知を無視することで生じる主なリスクを解説します。
5-1. 民事訴訟(裁判)を起こされる
受任通知を無視し続けると、交渉の余地なしと判断され、相手方が民事訴訟(裁判)を提起してくる可能性があります。ある日突然、裁判所から訴状が届き、指定された期日までに答弁書を提出しなければならない事態に発展することもあります。
訴訟になれば、対応にかかる時間や精神的な負担も、示談交渉の段階とは比べ物にならないほど大きくなります。
5-2. 不利な条件での示談が成立してしまう
反論や意見表明を行わなければ、相手方の主張がそのまま全面的に認められたものと解釈されてしまうリスクがあります。結果として、本来請求できたはずの正当な賠償が受けられないまま、不利な条件で示談が成立してしまうことにもなりかねません。
5-3. 最終的に財産を差し押さえられる可能性も
訴訟に発展し、敗訴した場合や、和解額・判決額の支払いに応じない場合には、最終的に給与や預貯金といった財産が差し押さえられる強制執行の手続きに至ることもあります。
無視を続けることは、想像以上に重大な結果を招く可能性があるため、届いた時点で早めに対応を検討することが重要です。
6. 加害者側の弁護士が出てきたときに被害者が弁護士に依頼するメリット
相手方に弁護士がついた場合は、被害者側も弁護士に相談・依頼することを検討しましょう。依頼することで得られる主なメリットを紹介します。
6-1. 加害者側の弁護士と対等に交渉できる
加害者側に弁護士がついた場合、被害者側も弁護士に依頼することで、法律の専門家同士で対等に交渉できるようになります。法的知識のない状態で相手方弁護士と直接やり取りをすると、不利な条件で示談を進められてしまうリスクがありますが、こちらも弁護士を立てることで、相手方の主張に対して適切に反論できるようになります。
相手が専門家であるからこそ、こちらも同じ土俵に立つことが交渉の出発点になります。
6-2. 弁護士基準での請求で、適正な示談金や慰謝料を請求できる
弁護士に依頼すれば、弁護士基準に基づいて示談金や慰謝料を請求できます。弁護士は、治療期間やけがの程度などを踏まえ、損害額を正確に計算します。そのうえで、裁判例を基にした金額を相手方へ請求します。
保険会社や加害者側の弁護士から低い金額を提示された場合も、法的な根拠を示して交渉できます。同じけがや通院期間であっても、どの基準を用いるかによって、受け取れる金額が大きく変わることがあります。
6-3. 過失割合や後遺障害等級についても適切に主張できる
過失割合や後遺障害等級についても、専門的な立場から適切に主張することができます。過失割合に納得がいかない場合は見直しを求めることができ、後遺障害認定に関しても、証拠収集や資料作成のサポートを受けながら手続きを進められます。
6-4. 示談交渉のストレスや負担を軽減できる
示談交渉にかかるストレスや負担を大きく軽減できる点も重要なメリットです。加害者側弁護士との連絡や書面のやり取りを任せられるため、被害者自身は治療や日常生活の立て直しに専念しやすくなります。
相手方から届く書面一つひとつに神経をすり減らす必要がなくなる点は、想像以上に大きな安心につながります。
6-5. 裁判になった場合もそのまま対応を任せられる
万が一裁判に発展した場合も、そのまま弁護士に対応を任せることができます。訴訟提起や相手方からの反訴への対応、裁判所へ提出する書類の作成まで一貫した方針で進められるため、途中で対応が変わる不安もありません。
自身が加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、これらの依頼を実質的にほぼ負担なく行えるケースが多くあります。
7. 交通事故で加害者側が弁護士を立ててきた場合にも賠償金を増額できた事例
実際に弁護士へ依頼したことで、賠償金の増額につながった事例をご紹介します。どのような点が結果を左右したのか見てみましょう。
ケース①:個人事業主の休業損害が争点となり、訴訟で高額認定に至ったケース
加害者側は休業損害を認めず、その旨が記載された受任通知が届きました。交渉では折り合いがつかなかったため、訴訟を提起した事案です。
被害者は個人事業主でした。そこで、確定申告書や毎月の売上資料を提出し、事故の前後で売上がどの程度減少したのかを具体的に立証しました。その結果、裁判所に相当額の休業損害を認めてもらうことができました。
個人事業主は、給与所得者と比べて収入の減少がわかりにくい場合があります。しかし、事故前後の収入を示す資料を十分にそろえることで、適正な休業損害が認められる可能性があります。
ケース②:過失割合の主張が認められ、訴訟で大幅な見直しに至ったケース
加害者側は、過失割合を「5:5」とする自損自弁を強く主張していました。交渉が進まなかったため、被害者側から訴訟を提起した事案です。訴訟の提起後、相手方の保険会社も弁護士へ対応を依頼しました。
訴訟では、事故当時の状況や双方の運転方法などを丁寧に立証しました。その結果、裁判所から、加害者側の過失を大きく認める「8:2」の和解案が示され、和解が成立しました。
相手方が主張する過失割合をそのまま受け入れず、事故状況を詳しく検証したことが、大幅な見直しにつながったケースです。
8. 交通事故で弁護士に依頼し、示談金をもらうまでの流れ
弁護士に依頼した後は、示談成立まで一定の流れに沿って手続きが進みます。全体の流れをあらかじめ把握しておきましょう。
8-1. 交通事故が発生し、治療を開始する
事故が発生したら、まず警察へ通報し、医療機関を受診しましょう。医師の指示に従って治療を続け、診断書や通院記録をきちんと残しておくことが、後の損害賠償請求の基礎となります。自己判断で通院をやめると、症状と事故との因果関係が争われやすくなるため注意が必要です。
8-2. 弁護士へ相談・依頼する
弁護士に相談・依頼する段階では、事故の状況や現在の損害額について説明し、弁護士費用や今後の見通しについての説明を受けたうえで、委任契約を締結します。この段階で疑問点はすべて解消しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。すでに加害者側から受任通知が届いている場合は、その書面も持参して相談しましょう。
8-3. 弁護士が受任通知を送付する
契約後、弁護士は加害者側や保険会社へ受任通知を送付します。以後の交渉窓口は弁護士になるため、被害者本人が直接やり取りする負担は大きく軽減されます。並行して、治療費・治療期間・休業損害・後遺障害等級に問題がないか、集まった資料をもとに精査していきます。
8-4. 示談交渉を行う
資料の確認が終わったら、弁護士が損害賠償請求書を作成し、保険会社や加害者側の弁護士との示談交渉を始めます。
休業損害が争いになっている場合は、収入が減ったことを示す資料を追加で提出し、適正な金額を請求します。過失割合に争いがある場合は、実況見分調書などの刑事記録を取り寄せたり、事故現場を調査したりして、事故状況を詳しく立証します。
また、後遺障害等級の認定結果に納得できない場合は、医師へ医療照会を行ったり、異議申立てを行ったりして、適正な等級が認められるよう対応します。
8-5. 示談成立・示談書を締結する
条件について合意に至れば、示談書(免責証書)を取り交わして示談が成立します。示談成立後は原則としてやり直しができないため、内容は慎重に確認します。
合意できない場合は訴訟に移行し、和解または判決によって解決を図ることになります。加害者が任意保険に未加入の場合は、自賠責保険への被害者請求や加害者本人への催告が中心となり、返答がなければ訴訟提起を検討することになります。
8-6. 示談金を受け取る
示談成立後、または判決確定後は、示談金・和解金・判決金が指定口座に振り込まれます。そこから弁護士費用を精算して、手続きは完了となります。
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9. 交通事故の受任通知に関して、よくある質問
Q. 受任通知が届いたら必ず返信しないといけない?
必ずしもその場で返信する必要はありませんが、完全に無視すると不利な状況になるおそれがあります。まずは内容を確認し、早めに弁護士へ相談したうえで対応を検討しましょう。
Q. 加害者側に弁護士がついたら、被害者も絶対に弁護士を立てないといけない?
必須ではありませんが、被害者側だけが弁護士抜きで対応すると交渉が不利になる可能性があります。対等に交渉するためにも弁護士への相談をおすすめします。
Q. 受任通知に書かれた期限内に回答しないとどうなる?
すぐに大きな不利益が生じるわけではありませんが、無視し続けると相手方の主張がそのまま認められたと解釈されるリスクがあります。期限内に弁護士へ相談する時間を確保しましょう。
Q. 受任通知が届いた後も加害者本人に連絡していい?
交渉窓口が弁護士に一本化されているため、加害者本人への直接連絡はトラブルの元になります。連絡が必要な場合は、必ず窓口となっている弁護士を通じて行いましょう。
Q. 弁護士費用特約が使えない場合はどうすればいい?
特約がない場合でも、相談料・着手金無料としている事務所も多くあります。増額分の範囲内で費用をまかなえることもあるため、まずは無料相談で見込み額を確認してみましょう。
Q. どのタイミングで弁護士に相談するのがベスト?
受任通知が届いた時点、あるいはそれ以前でも、保険会社の対応に疑問や不安を感じた時点で早めに相談するのが望ましいです。早い段階の相談ほど、対応の選択肢が広がります。
10. まとめ 事故相手から受任通知が届いても、慌てずに対応すること
交通事故で相手方の弁護士から受任通知が届いても、それだけで不利になるわけではありません。まずは通知の内容を冷静に確認し、安易に署名や回答をせず、必要に応じて自分の保険会社や弁護士へ相談することが大切です。
相手が法律の専門家を立ててきた以上、こちらも専門家のサポートを受けることで、過失割合や示談金について適切な主張がしやすくなります。受任通知を「怖いもの」と考えて放置するのではなく、正しく対応することが、納得できる解決につながります。
(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)
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