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保険会社の提示額に「納得いかない」ときはどうする? 交通事故トラブルを解決に導く「交通事故紛争処理センター」とは

更新日: / 公開日:
交通事故紛争処理センター相談担当弁護士の堀口昌孝さん(写真右)と、事務局長の竹内淳博さん=東京都新宿区の同センター東京本部
突然の交通事故。保険会社から提示された賠償額に「本当にこれで妥当なのだろうか」「このまま示談してしまっていいのか」と、新たな悩みに直面する人は少なくありません。裁判は敷居が高いし、かといって泣き寝入りもしたくない……。そんなときに頼れるのが、無料で中立な専門家がサポートしてくれる「交通事故紛争処理センター」です。年間約5000件の相談が寄せられている同センターの具体的な利用法と解決の秘訣(ひけつ)について、相談担当弁護士の堀口昌孝氏と、事務局長の竹内淳博氏に聞きました。

目 次

1. 保険会社との交渉に行き詰まったら。知っておきたい「第三の選択肢」

2. 初回の電話予約から、約9割が半年以内に解決

3. 示談金額は9割以上が“納得”。悩み続けた日々に「ピリオドを打てる」

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1. 保険会社との交渉に行き詰まったら。知っておきたい「第三の選択肢」

――交通事故紛争処理センターとは、どのような機関なのでしょうか?

竹内:私たちは、交通事故の被害者と加害者側との間でトラブルが起きた際に、その解決をお手伝いする機関です。専門家である弁護士が、中立・公正な第三者の立場で間に入り、話し合いをまとめる「和解あっせん」と更なる紛争解決を図る審査会による「審査」が主な業務です。

裁判に比べて解決までの時間が短く、また相談も無料のため、金銭的・心理的な負担を大きく抑えながら解決を目指せるのが特徴です。

――なぜ利用者は「無料」で利用でき、かつ保険会社に忖度(そんたく)しない「中立・公正な立場」を維持できるのですか?

竹内:当センターは、1978年に設立された財団法人で2012年に公益財団法人に移行しています。1974年に設立した前身組織から数えれば50年以上の歴史があります。1974年に損害保険会社が示談代行付自動車保険を販売するに際し、「交渉のプロである保険会社に対して、法律や保険制度の知識がない被害者側が不利にならないよう」被害者を支援するために中立な第三者機関として設立されたという経緯があります。

運営は、すべての自動車に加入が義務付けられている「自賠責保険」の運用益や、自動車保険(共済)を販売する損害保険会社や各種共済からの寄付金によって成り立っています。業界側も私たちの公益性を理解し、判断を信頼してくれているからこそ、この中立な仕組みが維持できています。

――実際に交通事故の被害に遭われた方は、どのような悩みでセンターに相談に来ることが多いのでしょうか?

堀口:人身事故のケースで最も多いのは、「保険会社から提示された賠償額が低すぎるのでは?」というお悩みです。特に慰謝料について「本当にこれだけ?」と疑問に思って来られる方が非常に多いです。

一方で、物損事故の場合は「過失割合」での対立が多いです。「こちらは1割しか悪くないはずなのに、保険会社は3割だと言っている」というように、双方の見解が食い違い、交渉が行き詰まっているという相談者の方が多いですね。

堀口昌孝さん
堀口昌孝さん

2. 初回の電話予約から、約9割が半年以内に解決

――センターを利用したい場合は、どうすればよいのでしょうか。また、解決まではどのように進んでいくのですか?

堀口:まずは、お電話で相談の予約をするところから始まります。センターは全国に11カ所あり、お住まいの地域や事故が発生した場所によって担当が決まっています。当センターのウェブサイトなどで、どこに電話すればよいか確認いただくとスムーズです。

電話予約の約1カ月後に、担当の嘱託弁護士との初回面談を行います。直接センターにお越しいただく対面のほか、電話での面談も可能です。ここでご持参いただいた資料を拝見し、何が争点になっているのかを整理。そこから、本格的な話し合いである「和解あっせん」に入っていきます。

ご本人と相手方の保険会社担当者が出席し、相談担当弁護士が中立な立場で双方の主張をじっくりと聞きながら、専門的な視点から「これぐらいの賠償額でいかがでしょうか」と解決案を提示します。双方がこのあっせん案に合意すれば、そこで和解成立となり手続きは終了です。

――話し合いで合意できなかった場合は、どうなるのですか?

堀口:合意できなければ、「審査会」という次の段階に進むことができます。審査会では、元裁判官や法律学者、ベテラン弁護士の3人が、より客観的な立場で適切な賠償額を「裁定」として示します。保険会社側は、この裁定を尊重する取り決めになっているので、被害者側が同意すれば、そこで和解が成立します。もし、被害者側がこの裁定に不同意であれば、そこでセンターでの取り扱いは終了となり、訴訟などによる解決の道を探ることとなります。

竹内: 2024年度は、新規相談5073件のうち、9割近い4470件が和解(審査による裁定での和解を含む)に至っています。

――弁護士に直接依頼したり、自分で保険会社と交渉したりするのと比べ、センターを利用するメリットは何ですか?

堀口:やはり、解決までの「時間」ですね。相談に来られた方のうち、1回目の話し合いで解決するケースは約1割、3回目までは約7割、5回目までには約9割が解決に至っています。 話し合いは月1回のペースなので、大多数の方が電話予約から半年程度で決着している、というのが現場の相談担当弁護士としての実感です。一般的に民事裁判の平均審理期間は10カ月と言われていますから、その速さは大きなメリットだと思います。

もう一つのメリットは、最終的に受け取れる賠償金の額が増える可能性が高いことです。ご自身で保険会社と直接交渉しても、金額を上げるのは非常に難しいのが現実です。保険会社は自社の基準で金額を提示しますが、私たちは過去の判例などを基にした「裁判基準」をベースに金額を算定し、双方にあっせん案として提示します。そのため、当初の提示額より増額されて解決するケースが多いのです。

竹内:ただし、誤解していただきたくないのは、私たちは被害者の代理人として保険会社と交渉するわけではない、という点です。あくまで中立的な立場で双方の主張を聞き、専門家として妥当な着地点を示すのが私たちの役割です。

――センターを利用する上で、注意すべき点はありますか?

堀口:センターでは対応できないケースがいくつかあります。例えば、事故の相手が任意保険に加入していない場合や、ひき逃げで相手が分からない場合。また、自転車同士の事故のように自動車が関わらない場合も対象外となります。「過失割合だけ決めてほしい」といった、損害の一部分だけを切り取ったご相談もお受けできません。

また、お申し込みができるのは、例えば、人身事故の場合はけがの治療が完全に終了してからになります。もし後遺障害が残った場合は、自賠責保険での等級認定の手続きがすべて終わってからご連絡いただく必要があります。焦るお気持ちは分かりますが、損害の全体像が固まってからがスタート地点、とご理解ください。

竹内淳博さん
竹内淳博さん

3. 示談金額は9割以上が“納得”。悩み続けた日々に「ピリオドを打てる」

――実際に利用された方からは、どのような声が届いていますか?

竹内:アンケート調査では、最終的に合意した示談金の額について92.9%の方が「妥当」または「許容範囲」と回答されており、非常に高い評価をいただいています。また、「交通事故で困っている人がいたらセンターの利用を勧めますか?」という質問にも、96.1%の方が「勧める」と答えてくださっています(いずれも2024年度の調査/768人から回答)。

もちろん「賠償金が増えて良かった」というお声も多いのですが、それと同じくらい「やっと解決できた」「もっと早く知っていれば」という安堵(あんど)の声をよく耳にします。出口の見えない交渉が数カ月、時には1年以上続くこともあります。その宙ぶらりんの状態が被害者の方にとって一番の重荷です。そこから解放されたことへの感謝の言葉をいただくことも少なくありません。

堀口:私が担当した案件で特に印象深いのは、ある死亡事故でご遺族から相談を受けたケースです。夜間の暗い国道で、ご高齢の親御さんを亡くされた事故でした。当初、保険会社が提示した金額は、ご遺族のお気持ちには到底及ばないほど低いものでした。そこで私たちが間に入り、裁判基準に照らして算定し直したところ、3回ほどの話し合いでご納得いただける形で解決できました。最後に「本当に助かりました」という言葉をいただき、こちらも胸が熱くなりましたね。

――最後に、今まさに悩みを抱えている読者に向けてメッセージをお願いします。

竹内: 交通事故に遭った後の損害賠償は、示談をしなければ終わりません。どうしても折り合いがつかないときは、一人で抱え込まずに、どうか私たちを頼っていただければと思います。気持ちが解放され、きっと前に進めるはずです。

堀口:「交通事故に遭うのは初めてで何も分からない」とおっしゃる方がほとんどですが、それは当たり前のことです。私たちは、そんな皆さんの悩みに「ピリオドを打つ」お手伝いをしたいと心から思っています。もし事故に遭い、交渉に疲れてしまったら、この交通事故紛争処理センターの存在を思い出していただければ幸いです。

交通事故紛争処理センターの公式サイトはこちら

(記事は2026年2月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

堤美佳子(ライター・編集者・記者)

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ライター・編集者・記者
1993年、愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在は、ビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。
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