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1. 歩きスマホ事故とは?|歩きスマホが危険な理由
歩きスマホは前方不注視や視野の狭まりを招き、事故のリスクを大きく高めます。まずはその危険性を具体的に確認しておきましょう。
1-1. 前方不注視になり事故を回避できなくなる
歩きスマホ中は画面に視線が集中するため、進行方向への注意が著しく低下します。横断歩道を渡りながらスマホを操作していた歩行者が、赤信号で進入してきた車両に気づかず接触したケースや、駅構内でスマホを見ながら歩いていた利用者がホームから転落して死亡した事例も実際に起きています。
「画面は少ししか見ていなかった」という感覚があっても、スマホを持って歩いている時点で前方への注意は大幅に低下しており、危険を察知してから回避行動をとるまでの時間が著しく遅れます。
1-2. 視野が狭くなり周囲の危険を察知しにくくなる
人間の視野は、注意を向けている対象に集中するほど周辺の情報が入りにくくなります。歩きスマホ中はスマホの画面に意識が向いているため、視野が極端に狭くなり、斜め前方から近づいてくる自転車や、交差点を曲がってくる車両を見落とすリスクが高まります。
「前は見ていた」という主張があっても、実際には視野の中心しか認識できておらず、周囲の人が避けてくれていたから事故にならなかったというケースも少なくありません。
1-3. 判断力・反応速度が低下する
歩きスマホ中は認知資源がスマホの操作・閲覧に割かれるため、周囲の状況を判断する能力と危険に対して反応する速度がともに低下します。信号が変わったことに気づくのが遅れたり、前方の人が急に立ち止まっても避けられなかったりするのはこのためです。
一見、スマホをちらっと見ているだけのように思えても脳の処理能力は分散されており、「ながら歩き」の状態では通常の歩行時と比べて危険回避能力が大きく損なわれています。こうした状態での事故は、過失判断においても不注意として評価される可能性があります。
2. 歩きスマホ事故の過失割合|被害者にも加害者にもなりうる
歩きスマホ事故では、被害者であっても過失が認められることがあります。どのように評価されるのかを解説します。
2-1. 歩きスマホ側が被害者の場合
歩きスマホをしていた歩行者が車や自転車に接触してけがを負った場合、基本的には歩行者が被害者となりますが、歩きスマホをしていたことが過失として評価され、過失割合に影響する可能性があります。
たとえば、本来であれば車側:歩行者側=100:0となるケースでも、歩きスマホによる前方不注視が認められれば90:10程度に修正されることがあります。過失割合が変わると受け取れる賠償金の額も変わるため、「被害者なのに損をする」という状況が生じます。
保険会社から歩きスマホを理由に過失を指摘された場合も、その主張が法的に妥当かどうかを冷静に確認することが重要です。
2-2. 歩きスマホ側が加害者の場合
歩きスマホをしていた歩行者が、何も過失のない自転車や他の歩行者と接触して相手をけがさせた場合、民事上の損害賠償責任を負うことになります。相手の治療費や休業損害、慰謝料などを賠償しなければならないケースもあります。
さらに、状況によっては刑事上の責任として過失傷害罪や過失致死罪、重過失致死傷罪が問われる可能性もあります。「ぶつかっただけ」という感覚であっても、相手が重傷を負った場合や死亡した場合には、刑事事件に発展することもあるため軽視できません。
また、行政上の責任として、自治体によっては歩きスマホに対する罰則規定を設けているところもあり、条例違反として罰金が科される場合もあります。歩きスマホ中の事故は「うっかりミス」では済まないケースがあることを理解しておく必要があります。
3. 歩きスマホ事故の過失割合の基本的な決まり方
過失割合は一定の基準をもとに判断されますが、歩きスマホの有無によって修正されることがあります。基本的な考え方を確認します。
3-1. 歩きスマホは「著しい過失」や「安全運転義務違反」にあたる可能性
道路交通法では、歩行者にも安全に通行する義務が課されています。歩きスマホによる前方不注視は、この義務に違反する行為として評価される可能性があります。
特に、信号のある横断歩道での歩きスマホや、車道に近い場所での歩きスマホは「著しい過失」と判断されるケースもあります。著しい過失と認定されると、通常の過失よりも重く評価され、過失割合の修正幅が大きくなることがあります。
3-2. 通常よりも過失割合が「10%〜20%」修正(加算)されるリスク
歩きスマホが過失として認定された場合、基本の過失割合に10%程度が加算されるケースが多いですが、状況によっては20%程度修正されることもあります。たとえば、車側:歩行者側=95:5が基本割合のケースで、歩きスマホによる著しい過失が認められれば75:25程度まで変動する可能性があります。
過失割合の修正幅は事故の状況や証拠によって異なるため、保険会社が提示する割合が必ずしも正確とは限りません。自分に不利な修正が加えられていないかどうかを、専門家の目で確認することが重要です。
3-3. 【重要】被害者であっても賠償金が減額される「過失相殺」とは
過失相殺とは、被害者側にも過失がある場合に、その割合に応じて賠償金が減額される仕組みです。たとえば、本来100万円の賠償金が認められるケースでも、被害者側に10%の過失が認定されれば、受け取れる金額は90万円に減額されます。
歩きスマホが過失として認定されると、この過失相殺が適用されるため、被害者であっても受け取れる賠償金が減ることになります。保険会社との交渉では、歩きスマホの事実を過大に評価されないよう、事故状況を正確に整理したうえで対応することが重要です。
4. 【ケース別】歩きスマホ事故の過失割合の事例と修正要素
事故の状況によって過失割合は大きく変わります。代表的なケースごとの判断傾向を見ていきましょう。
4-1. 横断歩道での事故
横断歩道を歩行中にスマホを操作していた歩行者が、直進してきた車両と接触するケースです。本来、横断歩道上の歩行者は強く保護されており、車側の過失が重く評価されます。しかし、歩きスマホによる前方不注視が認められると、歩行者側にも一定の過失が加算される可能性があります。
交差点での横断中であっても、歩きスマホの事実が修正要素として働くことがあるため、注意が必要です。
4-2. 車道への進入・飛び出し事故
歩きスマホをしながら歩道を歩いていた歩行者が、誤って車道に踏み出し走行中の車両と接触するケースです。この場合、歩行者側の過失は通常の飛び出し事故よりも重く評価される傾向があります。
スマホの画面に集中するあまり、歩道と車道の境界を認識できなかったという状況は、著しい前方不注視として判断されることがあり、過失割合の修正幅も大きくなりやすい傾向があります。ただし、この事実の立証は難しいので、ドライブレコーダーがないと難しい現状があります。
4-3. 右左折車との巻き込み事故
交差点付近で歩きスマホをしていた歩行者が、右折または左折してきた車両に巻き込まれるケースです。車両側には右左折時の安全確認義務がありますが、歩行者が歩きスマホにより車両の接近に気づかず回避行動をとれなかった場合、歩行者側にも過失が認定されることがあります。
信号のない交差点では本来100:0となるケースでも、歩きスマホが修正要素として加味される場合があります。
4-4. 自転車・バイクとの接触事故
歩道や歩行者専用エリアで歩きスマホをしていた歩行者が、自転車やバイクと接触するケースです。自転車側に過失がある場合でも、歩きスマホによる前方不注視が認められれば歩行者側にも過失が加算されます。
逆に、歩きスマホをしていた歩行者が自転車の通行を妨害する形で接触した場合には、歩行者側の過失がより重く評価されることもあります。
当事務所でも、歩道上での歩きスマホ中に自転車と接触し、当初被害者として扱われていた歩行者に一定の過失が認定された案件を扱ったことがあります。
4-5. 人同士の衝突事故
歩きスマホをしていた歩行者が、他の歩行者と正面衝突または側面衝突するケースです。人同士の事故であっても、相手がけがを負えば損害賠償責任が生じます。歩きスマホをしていた側は前方不注視として過失が重く評価される一方、相手側にも不注意があれば、双方に過失が認定されることがあります。
軽い接触であっても、高齢者が転倒して骨折するなど重篤な結果につながる場合があり、「ぶつかっただけ」では済まないケースも実務上存在します。人通りの多い駅周辺や商業施設での事故では状況の証拠が残りにくいため、事故直後の対応が後の交渉に大きく影響します。
5. 歩きスマホが慰謝料・賠償金に与える影響【シミュレーション】
歩きスマホが過失として認定されると、受け取れる賠償金は減額されます。具体例で見てみましょう。たとえば、車との接触事故で、入通院慰謝料・治療費・休業損害を含めた損害額が300万円と算定されたケースを想定します。
歩きスマホがなければ、「車側:歩行者側=100:0」となり、300万円を全額受け取れます。しかし、歩きスマホによる過失が10%加算されて90:10となると、過失相殺により受取額は270万円に減額されます。さらに、著しい過失として20%加算され80:20となった場合は、240万円まで減額されます。
このように、過失割合がわずかに変わるだけでも、賠償金に大きな差が生じます。保険会社が歩きスマホを理由に過失を加算してくる場合は、その根拠や修正幅が適切かを確認することが重要です。弁護士に相談することで、不当な減額を防げる可能性があります。
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6. 自分が加害者になってしまった場合の法的責任
歩きスマホ中の事故では、加害者として責任を負うこともあります。民事・刑事それぞれの責任について解説します。
6-1. 民事責任
歩きスマホ中の事故で相手にけがを負わせた場合、民事上の損害賠償責任を負います。相手の治療費・入通院費・休業損害・慰謝料・逸失利益など、事故によって生じた損害を賠償しなければなりません。
賠償額は相手のけがの程度や収入によって大きく異なり、後遺障害が残った場合や死亡事故となった場合には、賠償額が数千万円規模に達することもあります。歩きスマホをしていた側に過失が認定されれば、相手方から損害賠償請求を受ける立場となります。
6-2. 刑事責任
歩きスマホ中の事故で相手をけがをさせた場合、過失傷害罪(刑法209条)が成立する可能性があります。相手が死亡した場合には過失致死罪(刑法210条)、危険な状況下での事故であれば重過失致死傷罪(刑法211条)が問われることもあります。
重過失致死傷罪の法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められており、決して軽い罪ではありません。また、自治体によっては歩きスマホを禁止する条例を制定しているところもあり、条例違反として別途罰則が科される場合もあります。
「ぶつかっただけ」という認識であっても、相手の被害状況によっては刑事事件として扱われることを理解しておく必要があります。
6-3. 賠償金が払えない場合はどうなるか
賠償金の支払い義務は、経済的な事情があっても原則として免除されません。支払いができない場合、相手方から民事訴訟を提起され、判決が確定すれば給与や預貯金が差し押さえられる可能性があります。
自動車保険や個人賠償責任保険に加入していれば、保険で賠償金をまかなえるケースがありますが、歩きスマホ中の事故が補償対象となるかどうかは保険の内容によって異なります。賠償金の分割払いや減額交渉が可能なケースもありますが、相手方の同意が必要です。
こうした状況に陥った場合も、早めに弁護士に相談することで、対応の選択肢を整理することができます。
7. 歩きスマホの事故を弁護士に相談するメリット
事故後の対応は結果を大きく左右します。弁護士に相談することで得られる主なメリットを解説します。
7-1. 過失割合や重過失の有無を専門的に判断してもらえる
歩きスマホが事故の過失判断にどの程度影響するかは、事故の状況や証拠によって異なります。保険会社が提示する過失割合が法的に妥当かどうかを、専門知識のない状態で判断することは困難です。
弁護士であれば、事故状況を詳細に確認したうえで、歩きスマホが著しい過失にあたるかどうか、修正幅が適切かどうかを法的な観点から判断することができます。不当に過失を加算されている場合には、根拠をもって反論することが可能です。
7-2. 慰謝料や損害賠償額を適正に算定し、不利な示談を防げる
保険会社が提示する賠償額は、弁護士基準(裁判基準)と比べて低く算定されているケースがほとんどです。特に慰謝料については、弁護士が介入することで増額されるケースが多く、当事務所でも示談前に相談を受けたことで賠償額が大幅に改善された事例があります。
歩きスマホを理由に過失相殺を主張されている場合も、その根拠と修正幅が適切かどうかを確認したうえで交渉を進めることが、不利な示談を防ぐうえで重要です。
7-3. 相手方や保険会社との交渉、示談書の確認まで一任できる
示談交渉は、法的知識がない状態で臨むと相手方の主張をそのまま受け入れてしまうリスクがあります。弁護士に交渉を一任することで、感情的になりやすい場面でも冷静かつ法的根拠に基づいた対応が可能になります。
また、示談書の内容には後から覆せない条項が含まれていることも多く、署名前に弁護士が内容を確認することで、不利な条件で合意してしまうリスクを防ぐことができます。
7-4. 刑事責任や裁判に発展した場合も一貫して対応してもらえる
歩きスマホ事故が刑事事件に発展した場合や、示談が成立せず訴訟に移行した場合も、弁護士であれば一貫して対応することができます。民事と刑事の両面から状況を整理し、依頼者にとって最善の結果を目指した対応が可能です。
事故直後から弁護士が関与していれば、証拠の保全や相手方への対応も迅速に行えるため、早期の相談が結果に大きく影響します。弁護士費用特約に加入している場合は、費用面の負担を大幅に抑えることもできます。
8. 歩きスマホによる事故の現状と防止策
歩きスマホ事故は実際に増加傾向にあります。現状を踏まえたうえで、有効な防止策を確認しましょう。
8-1. 歩きスマホ事故の現状
東京消防庁の発表によると、令和3年(2021年)から令和7年(2025年)までの5年間で、東京消防庁管内において171人が歩きスマホを原因とした事故で救急搬送されており、令和7年は速報値で43人となっています。
事故の種別では「転ぶ」が最も多く、次いで「落ちる」「ぶつかる」と続きます。初診時の程度については、約8割が軽症である一方、約20%にあたる36人は入院が必要な中等症以上と診断されており、歩きスマホによる事故が決して軽微なものばかりではないことがわかります。
日常のちょっとした不注意が、入院を要するけがにつながるリスクがある点は、あらためて認識しておく必要があります。
8-2. 歩きスマホでの事故を起こさないための防止策
歩きスマホによる事故を防ぐために、日常生活のなかで意識できる対策を以下にまとめます。
歩行中はスマートフォンを操作しない
メッセージの確認や返信は必ず立ち止まって行う
交差点や横断歩道では必ず画面から目を離す
イヤホンの音量を上げすぎず、周囲の音が聞こえる状態を保つ
信号や車両の動きを目視で確認する習慣をつける
右左折車の近くや大型車の周囲には近づかない
歩道上でも自転車の通行を意識する
階段・踏切・駅ホームではスマホを見ない
どれも当たり前のことに思えますが、実際には習慣的にスマホを触ってしまっているケースがほとんどです。「今すぐ確認しなければならないか」を一度立ち止まって考えるだけで、事故のリスクを大きく下げることができます。
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9. 歩きスマホの事故に関して、よくある質問
Q. 歩きスマホで事故が起きたらまずやるべきことは?
負傷者の救護を最優先に行い、警察へ連絡します。示談交渉はその場で行わず、保険会社にも連絡しましょう。軽傷でも病院を受診し、可能であれば現場の写真や目撃者情報を確保します。
Q. 歩きスマホをした側が100%の加害者になるケースはある?
あります。歩きスマホで相手の通行を妨げて接触した場合などは、100%の過失となることがあります。状況によっては刑事責任を問われる可能性もあります。
Q. 自転車でのながらスマホなど、相手もスマホを見ていた場合の過失割合は?
双方の過失の程度を比較して決まります。相手のながらスマホは過失加算の要素になりますが、自分の歩きスマホも同様に評価され、相殺されるケースが多いです。
Q. 歩きスマホの事故は、自分の保険で補償される?
保険内容によります。個人賠償責任保険で相手への賠償が補償される場合があります。自身のけがは傷害保険などの対象となることもあるため、契約内容を確認しましょう。
10. まとめ 歩きスマホは加害者になるリスクもあるので要注意
歩きスマホは前方不注視や判断力の低下を招き、重大な事故につながる危険な行為です。事故では被害者であっても過失が認められ、賠償金が減額されることがあり、場合によっては加害者として損害賠償責任や刑事責任を負う可能性もあります。
過失割合は事故状況や証拠によって変わるため、保険会社の提示をそのまま受け入れるのは危険です。日頃から歩きスマホを控えることが最も重要であり、万一事故が起きた場合は早めに弁護士へ相談することが適切な解決につながります。
(記事は2026年6月1日時点の情報に基づいています)
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