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後遺障害9級の認定を受けるために 認定基準や申請の流れ、慰謝料相場

更新日: / 公開日:
後遺障害9級は賠償金が数千万円になる可能性があります(c)GettyImages
交通事故に遭い、懸命な治療を続けたにもかかわらず、体に不自由が残ってしまうことがあります。身体の一部が欠損したり、視力障害、聴力障害、高次脳機能障害などが残った場合には「後遺障害9級」に認定される可能性があります。 後遺障害9級は、これまでの仕事や生活に明らかな支障が出るレベルの重い障害です。認定されれば慰謝料や逸失利益などを含めて数千万円と高額な賠償金を受け取れることもあります。等級認定を受けるためには、早めに弁護士に相談し、適切な検査と治療を受けることが大切です。 後遺障害9級の具体的な認定基準や、請求できる賠償金の項目と相場、認定のポイントについて、弁護士が専門知識を交えて徹底的に解説します。

目 次

1. 後遺障害9級とは?

2. 後遺障害9級の具体的な症状と認定基準

2-1. 9級1号|両目の視力が0.6以下になった

2-2. 9級2号|片目の視力が0.06以下になった

2-3. 9級3号|両目に視力障害が残った

2-4. 9級4号|両目のまぶたが欠損した

2-5. 9級5号|鼻を欠損し、著しい機能障害が残った

2-6. 9級6号|咀嚼および言語機能に障害が残った

2-7. 9級7号|両耳に聴力障害が残った

2-8. 9級8号|片耳に著しい聴力障害が残った

2-9. 9級9号|片耳の聴力を失った

2-10. 9級10号|神経系統の機能や精神に障害が残り、仕事が制限される

2-11. 9級11号|胸腹部臓器の機能に障害が残り、仕事が制限される

2-12. 9級12号|親指または親指以外の2本の手指を失った

2-13. 9級13号|親指を含む2本、または親指以外の3本の手指の用を廃した

2-14. 9級14号|片足の親指を含む2本以上の指を失った

2-15. 9級15号|片足のすべての指の用を廃した

2-16. 9級16号|頭や顔などに大きな傷跡が残った

2-17. 9級17号|生殖器に著しい障害が残った

2-18. 併合9級|複数の症状が残る場合

3. 後遺障害9級に認定された被害者が請求できる慰謝料の相場

3-1. 【重要】慰謝料算定の「3つの基準」の仕組み

3-2. 後遺障害慰謝料の計算方法

3-3. 入通院慰謝料の計算方法

4. 後遺障害9級の被害者が、慰謝料以外に請求できる賠償金の種類

4-1. 休業損害

4-2. 逸失利益

4-3. その他|治療関係費、通院交通費など

5. 後遺障害9級の賠償金総額と内訳

6. 後遺障害申請と賠償金請求の流れ

6-1. 「症状固定」の診断まで、医師の指示に従って通院する

6-2. 医師に後遺障害診断書を作成してもらう

6-3. 後遺障害等級認定を申請する

6-4. 事故の相手側と示談交渉をする

6-5. 示談がまとまらない場合|ADR、訴訟

6-6. 賠償金が支払われる

7. 後遺障害9級を獲得するための6つのポイント

7-1. 症状固定まで通院を続ける

7-2. 後遺障害診断書の内容が正しいか確認する

7-3. 関節の可動域は適切な測定方法で検査する

7-4. 高次脳機能障害での9級認定には、適切な検査と家族の協力が不可欠

7-5. 被害者請求で申請をする

7-6. 早い段階で弁護士に依頼する

8. 後遺障害9級の被害者が、示談金以外に受けられる給付や公的支援は?

9. 後遺障害9級についてよくある質問

10. まとめ 後遺障害9級は賠償金が数千万円になる可能性がある

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1. 後遺障害9級とは?

後遺障害9級とは、交通事故によるけがが「症状固定(これ以上治療しても改善しない状態)」に達した後も残った障害のうち、自動車損害賠償保障法(自賠法)の施行令で定められた「9級」の基準に該当するものを指します。

後遺障害には1級から14級までの等級があり、1級が最も症状が重く、14級が最も軽度です。9級はちょうど中間に位置するように見えますが、その実態は「就労可能な職種が相当程度制限される」状態です。

法的には、後遺障害9級に認定されると「労働能力を35%喪失した」と評価されます。これは、事故前と同じように働こうとしても、身体的・精神的な制約によって効率が3分の2程度に低下してしまうことを意味します。この数値は、将来の減収を補償する「逸失利益」の計算において非常に重要です。

2. 後遺障害9級の具体的な症状と認定基準

後遺障害9級には、1号から17号までの具体的な症状が定められています。それぞれの認定基準を詳しく見ていきましょう。

1号

両眼の視力が0.6以下になったもの

2号

一眼の視力が0.06以下になったもの

3号

両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

4号

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

5号

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

6号

咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

7号

両耳の聴力が1メートル以上の距離では
普通の話声を解することができない程度になったもの

8号

一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、
他耳の聴力が1メートル以上の距離では
普通の話声を解することが困難な程度になったもの

9号

1耳の聴力を全く失ったもの

10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

11号

胸腹部臓器の機能に障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

12号

一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの

13号

一手のおや指を含む二の手指の用を廃したもの
又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの

14号

一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの

15号

一足の足指の全部の用を廃したもの

16号

外貌に相当程度の醜状を残すもの

17号

生殖器に著しい障害を残すもの

2-1. 9級1号|両目の視力が0.6以下になった

両目の矯正視力(メガネやコンタクトレンズを使用した場合の視力)が、いずれも0.6以下になった状態です。 日常生活や運転、事務作業において「見えにくい」というストレスが常につきまとう状態といえます。

2-2. 9級2号|片目の視力が0.06以下になった

片目の矯正視力が0.06以下に低下した場合です。 片方の視力が極端に低いと、遠近感が掴みづらくなり、階段の昇降や車両の運転などに危険を伴うようになります。

2-3. 9級3号|両目に視力障害が残った

ここでいう視力障害とは「両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの」をいいます。

  • 半盲症(はんもうしょう):視野の右半分または左半分が見えなくなる

  • 視野狭窄(しやきょうさく):周辺の視界が狭まり、中心部分しか見えないようになる

  • 視野変状(しやへんじょう):見えている部分が波打って見えたり、欠けて見えたりする

2-4. 9級4号|両目のまぶたが欠損した

両方のまぶたの一部を失い、目を閉じても角膜(黒目)が露出してしまう状態を指します。外見上の苦痛だけでなく、眼球の乾燥による二次的な視力障害のリスクも伴います。

2-5. 9級5号|鼻を欠損し、著しい機能障害が残った

鼻の大部分(軟骨部など)を欠損し、かつ「鼻呼吸が困難」または「嗅覚を完全に失った」状態です。外見の著しい変化に加え、食事の味がわからないといった生活の質の低下も生じます。

2-6. 9級6号|咀嚼および言語機能に障害が残った

「咀嚼(噛むこと)」と「言語」の両方に障害が残った状態です。

【咀嚼障害】
たくあんやピーナツなど一定の固さがある食べ物が食べられず、柔らかいものしか摂取できない

【言語障害】
4つの語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、1つが発音不能になった状態
・口唇音:ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ
・歯舌音:な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ
・口蓋音:か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
・喉頭音:は行

2-7. 9級7号|両耳に聴力障害が残った

両耳の難聴です。具体的には「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった」状態の難聴です。

具体的な数値は以下の通りです。

・両耳の平均純音聴力レベル(どれくらい小さい音が聴こえるか)が60dB以上
・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上かつ最高明瞭度(聴こえた音の意味や内容が理解できる程度)が70%以下

60dBは普通の会話、50dbは静かなオフィスや換気扇の音などに相当します。

2-8. 9級8号|片耳に著しい聴力障害が残った

両耳が難聴になり、その中でも片耳の難聴の程度が重い状態です。具体的には「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった」状態の難聴です。

具体的な数値は以下のとおりです。

・片耳の平均純音聴力レベルが80dB以上で、もう片方の耳の平均純音聴力レベルが50dB以上

80dBは地下鉄の中や街頭の音などに相当します。

2-9. 9級9号|片耳の聴力を失った

片耳の難聴です。片耳の聴力を失った状態で、具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のものを言います。90dBは犬の鳴き声や工場の中の音などに相当します。

2-10. 9級10号|神経系統の機能や精神に障害が残り、仕事が制限される

ここは非常に重要な項目です。脳外傷による「高次脳機能障害」や、脊髄(せきずい)損傷により「就労可能な職種が相当な程度に制限される」状態、つまり複雑な事務作業ができなくなったり、長時間の集中が困難になったりする場合です。

高次脳機能障害とは、交通事故によって脳に損傷を受けたことにより「言語・思考・記憶・行為・学習・注意」など、脳の持つ知的活動に障害が発生する状態を指します。外見から症状が分かりづらく見過ごされるケースも多いため注意が必要です。高次脳機能障害の具体的な症状には、以下のようなものがあります。

【記憶障害(覚えられない・思い出せない)】
・新しいことが覚えられない、さっき指示されたことを忘れる
・何度も同じ質問を繰り返す
・自分の持ち物をどこに置いたか分からなくなる

【注意障害(集中できない・うっかりミス)】
・一つの作業を長く続けられない、気が散りやすい
・複数のことを同時に進めるとパニックになる
・単純なデータ入力などで、以前は見られなかった小さなミスを連発する

【遂行機能障害(計画が立てられない)】
・仕事の段取りが組めない
・優先順位をつけられず、重要でないことから手をつけてしまう
・予想外のトラブルが起きると、思考が止まり動けなくなる

【社会的行動障害(性格が変わった・キレやすくなった)】
・感情のコントロールが効かず、些細なことで激高する(易怒性)
・相手の気持ちを推し量ることができず、失礼な発言をしてしまう
・意欲が極端に低下し、一日中ぼーっとしている

9級10号は一般的な就労能力は残っているものの、神経系統の機能または精神の障害のため、社会通念上、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される程度の障害が残った場合に認定されます。

2-11. 9級11号|胸腹部臓器の機能に障害が残り、仕事が制限される

9級11号は「胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」を指します。具体的には呼吸器、循環器、腹部臓器、泌尿器の障害により、働くことはできるが仕事の内容に制限がかかる場合に認定されます。

2-12. 9級12号|親指または親指以外の2本の手指を失った

片方の手の親指を失った場合、または親指以外の指を2本失った場合です。「指を失う」とは、以下のような状態が該当します。

・手指を中手骨(手の甲にある骨)または基節骨(指の付け根側の骨)で切り離した
・人さし指から小指の場合は近位指節間関節(指の根元から2番目にある関節)、親指の場合は指節間関節(指の先端側の関節)で基節骨と中手骨を切り離した

2-13. 9級13号|親指を含む2本、または親指以外の3本の手指の用を廃した

「用を廃した」とは、以下のいずれかの状態を指します。

・指の末節骨(先端の骨)の長さの2分の1以上を失った
・親指なら指節間関節(指の先端側の関節)、他の指なら中手指節関節(指の付け根の関節)または近位指節間関節(指の根元から2番目にある関節)の可動域が、障害を負っていない側の2分の1以下になった
・指の末節(第1関節から先)の感覚が完全にまひして脱失した

指を切断していなくても、まひや関節の固着によって、動かすことができない状態です。

2-14. 9級14号|片足の親指を含む2本以上の指を失った

足の指の欠損です。「指を失った」とは、指の中足指節関節(指の付け根側の関節)から失ったものを言います。

足の指を失うと歩行時のバランス調整が難しくなり、日常生活に影響が出ます。

2-15. 9級15号|片足のすべての指の用を廃した

片足の指5本すべてが動かなくなった状態です。具体的には以下の状態が該当します。

・親指は指節間関節から先の末節骨(指の先端側の骨)の半分以上を失い、その他の指は遠位指節間関節(指先に最も近い骨)から先をすべて失った
・親指は指節間関節(指の先端側の関節)、その他の指は中足指節関節(足指の付け根の関節)または近位指節間関節(指の根元から2番目にある関節)の可動域が健康な状態の半分以下になった

足の指に著しい運動障害が残ると、地面を蹴る力が弱まり、歩行能力が低下します。

2-16. 9級16号|頭や顔などに大きな傷跡が残った

頭や顔などに大きな傷跡が残ることを「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」と呼びます。具体的には、顔面や頭部に、人目に付く程度の長さ5㎝以上の線状の痕が残る場合です。かつては男女で差がありましたが、現在は男女平等に9級が適用されます。

2-17. 9級17号|生殖器に著しい障害が残った

陰茎の欠損や勃起障害、射精障害、膣口狭窄など、生殖器に障害を残した場合です。生殖機能は残っているものの、通常の性交では生殖を行うことができない場合に認定されます。

また、両側の卵管に閉塞や癒着が残った場合、頸管に閉塞が残った場合、子宮を失った場合は、画像所見があれば9級17号が認められる可能性があります。

2-18. 併合9級|複数の症状が残る場合

後遺障害認定においては2つ以上の後遺障害等級が認定された場合、より重い等級にまとめて評価するルールがあります。具体的には、以下のように評価します。

・5級以上の後遺障害が2つ以上残っている場合は、重い方の等級を3級繰り上げる
・8級以上の後遺障害が2つ以上残っている場合は、重い方の等級を2級繰り上げる
・13級以上の後遺障害が2つ以上残っている場合は、重い方の等級を1級繰り上げる
・14級の後遺障害が2つ以上残っている場合は、等級を繰り上げず14級のままとする

つまり、1つの後遺症では9級に届かなくても、例えば「10級の障害と12級の後遺障害が存在する」場合などは、繰り上げによって「併合9級」として認定されます。

3. 後遺障害9級に認定された被害者が請求できる慰謝料の相場

後遺障害9級に認定されると、加害者側に対して「後遺障害慰謝料」を請求できます。しかし、ここで知っておかなければならないのが、どの基準で計算するかによって金額が大きく異なる点です。

3-1. 【重要】慰謝料算定の「3つの基準」の仕組み

日本の交通事故賠償には、以下の3つの基準が存在します。

  • 自賠責保険基準: 法律で定められた最低限の補償。金額は3つの基準の中で最も低い

  • 任意保険基準 : 各保険会社が独自に設けている基準で、一般には公開されていない。自賠責保険基準よりは少し高いが、十分とは言えない

  • 弁護士基準(裁判所基準): 過去の判例に基づいた正当な基準。3つの基準の中で最も高額となる

保険会社は自賠責保険基準もしくは任意保険基準で算出した慰謝料額を提示してくることが多く、弁護士基準より低額になります。つまり、保険会社から提示された金額をそのまま受け入れてしまうと正当な賠償金額を獲得できないおそれがあるのです。

正当な賠償金を獲得したいなら、提示額を受け入れる前に弁護士に相談し、弁護士基準で算定・交渉してもらうことが大切です。

自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の違いの図。弁護士基準が最も高額となる
自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の違いの図。弁護士基準が最も高額となる

3-2. 後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料とは、事故で後遺症が残ったことにより被った精神的苦痛に対する補償です。認定される後遺障害等級に応じて金額が異なります。

後遺障害9級における自賠責保険基準、弁護士基準の後遺障害慰謝料額は以下の通りです。

自賠責保険基準

弁護士基準

249万円

690万円

このように、採用する基準によって445万円もの差額があります。

3-3. 入通院慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料とは別に、けがの治療のために病院に通ったことに対する「入通院慰謝料」も請求できます。 入通院慰謝料は、入院期間や通院期間に基づいて計算されます。

例として、入院期間1カ月、通院期間5カ月(実際の通院日数50日)の場合の入通院慰謝料額を、自賠責保険基準と弁護士基準で計算してみます。

【自賠責保険基準】
自賠責保険基準における入通院慰謝料は、以下の計算式で算出します。

日額4300円(2020年3月31日以前の事故は日額4200円)×対象日数
※対象日数は「治療期間」または「実際の入通院日数×2」のいずれか少ないほう

上記の例の場合、対象日数は治療期間(=180日)と、実際の入通院日数×2(=160日)のうち、少ないほうの160日を採用します。したがって、入通院慰謝料額は「4300円×160日=68万8000円」です。

なお、交通事故のけがに対する自賠責保険の支払限度額は、一つの事故につき総額120万円です。治療が長引くなどして医療費が高額になると、受け取れる慰謝料額が68万8000円を下回る可能性があります。

【弁護士基準】
弁護士基準では、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行する「赤い本」に記載されている早見表をもとに、入通院慰謝料額を算定します。

以下は、交通事故で重傷を負った場合の早見表(別表Ⅰ)です。

弁護士基準による入通院慰謝料表。骨折などの重傷の場合の表
弁護士基準による入通院慰謝料表。骨折などの重傷の場合の表

表の見方を説明します。たとえば、交通事故で重傷を負い、1カ月入院した後、5カ月通院を続けた場合は、上の表の「入院期間1カ月」と「通院期間5カ月」が交差するマスの数字を見ます。数字は「141」となっているので、この場合の入通院慰謝料額は141万円です。

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4. 後遺障害9級の被害者が、慰謝料以外に請求できる賠償金の種類

「慰謝料」は精神的苦痛に対する対価ですが、それ以外にも経済的な損失を補填するための賠償項目があります。

4-1. 休業損害

休業損害とは、事故によるけがの治療のために仕事を休まざるを得なかった期間の減収を補償するものです。休業損害も慰謝料と同様、採用する基準(自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準)によって金額が大きく異なることがあります。

たとえば、事故前の収入が年収500万円(1日あたり約1万3700円)の人が、事故のけがで30日休業した場合で計算してみます。

自賠責保険基準では、1日につき原則6100円(最大1万9000円)の定額を基準としているため、この基準に照らすと休業損害は「6100円×30日=18万3000円」となります。一方、弁護士基準では事故前の実際の収入をもとにした日額を基準に計算します。したがって、休業損害は「約1万3700円×30日=約41万1000円」となります。

後遺障害9級となると長期間の休業となることが多く、慎重に算定する必要があります。

4-2. 逸失利益

逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られたはずの利益のことです。

逸失利益を図解。後遺障害が残った場合や死亡事故が起こった際に請求可能
逸失利益を図解。後遺障害が残った場合や死亡事故が起こった際に請求可能

逸失利益は以下の計算式で算出します。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

  • 基礎収入: 事故前の年収

  • 労働能力喪失率:後遺障害によって失われた労働能力の割合。9級の労働能力喪失率は35%とされている

  • 労働能力喪失期間: 原則として症状固定時から67歳まで

  • ライプニッツ係数: 将来受け取るはずのお金を前払いで受け取る際に中間利息を控除するための数値

例えば、年収500万円の40歳の会社員が後遺障害9級に認定された場合、労働能力喪失率を35%、40歳から67歳までの27年間に対応するライプニッツ係数を18.3270とすると、逸失利益は「500万円×35%×18.3270=3207万2250円」となります。

4-3. その他|治療関係費、通院交通費など

状況に応じて、交通事故に起因して支出した以下の費用も請求可能です。

・治療費:診察代、手術代、入院費、リハビリ代など
・入院雑費:入院に必要な日用品や通信費など
・付添看護費:けがにより介助や介護が必要な場合にかかる費用。医師の指示や必要性がある場合のみ請求可能
・通院交通費:通院にかかる公共交通機関の実費。必要な場合はタクシー代が認められることもある
・装具費:義足・義手・補聴器・コルセットなど
・物損:車や携行品の修理費や買替費用など

5. 後遺障害9級の賠償金総額と内訳

後遺障害9級に認定されると、実際にどの程度の賠償金が支払われるのでしょうか。具体的なケースを想定してみましょう。

たとえば、年収500万円(日額1万円、賞与年2回)の40歳会社員が、事故のけがで6カ月通院したのち、医師に症状固定を告げられたケースです。後遺障害9級が認定された場合、受け取れる賠償金の総額は以下のようになります。なお、弁護士基準で算出したものとします。

・後遺障害慰謝料:690万円
・入通院慰謝料:116万円
・休業損害:約100万円(80日休業、賞与減額20万円と想定)
・逸失利益:500万円×35%×18.327(27年間に対応するライプニッツ係数)=3207万2250円
・治療関係費・通院交通費:実費
合計:約4113万円

「弁護士基準」で計算し、逸失利益をしっかり確保すれば、数千万円単位の賠償金になることがあります

6. 後遺障害申請と賠償金請求の流れ

適切な賠償金を受け取るためには、正しい手順で手続きを踏む必要があります。

後遺障害等級認定と損害賠償請求の流れの図。示談は後遺障害の有無が確定してから行う
後遺障害等級認定と損害賠償請求の流れの図。示談は後遺障害の有無が確定してから行う

6-1. 「症状固定」の診断まで、医師の指示に従って通院する

医師から「症状固定(これ以上治療をしても改善が見込めない状態)」と診断されるまで通院を続けましょう。自己判断で通院をやめてはいけません。通院実績が少ないと「大したけがではない」と判断され、等級認定に不利に働きます。また、必要な検査も治療状況に応じて行う必要があります。

6-2. 医師に後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定後、主治医に「後遺障害診断書」を書いてもらいます。後遺障害診断書の記載内容が、認定結果を大きく左右すると言っても過言ではありません。等級認定は原則として書面審査で行われるためです。

また、必要な検査を行ったうえで、その内容を漏れなく記載した後遺障害診断書が作成されているかも重要です。

6-3. 後遺障害等級認定を申請する

申請方法には、以下の2種類があります。

【事前認定】
申請手続きを 加害者側の任意保険会社に任せる方法です。被害者側は主に後遺障害診断書を提出するだけでよく、手間がかかりません。ただし、相手の保険会社は賠償金額を抑えるために「低い等級」で済ませようとするため、被害者に有利な主張や資料の収集までは期待できないリスクがあります。

【被害者請求】
被害者自身または被害者側の弁護士が、相手方の自賠責保険会社に直接申請する方法です。手続きの透明性が高く、有利な証拠を追加できるため、納得のいく認定結果を得やすい点で強く推奨されます。

6-4. 事故の相手側と示談交渉をする

後遺障害等級の認定結果が通知されたら、加害者側の保険会社と「示談金(賠償金総額)」の交渉に入ります。

相手の保険会社は示談金額を低く抑えようとする傾向にあるため、提示された金額をうのみにせず、増額の余地がないかを弁護士に相談することが大切です。

6-5. 示談がまとまらない場合|ADR、訴訟

交渉が決裂した場合は、紛争処理センター(ADR)を利用するか、裁判(訴訟)を起こして裁判所に判断を仰ぐことになります。

ADRは裁判に比べて早期解決が見込める可能性が高いですが、過失割合や後遺障害等級そのものに争いがある場合は裁判のほうが適しているケースもあります。どちらを選ぶべきかは弁護士に相談しましょう。

6-6. 賠償金が支払われる

示談・ADR・訴訟などで決まった内容に従い、数週間以内に指定口座に賠償金が振り込まれます。

7. 後遺障害9級を獲得するための6つのポイント

後遺障害9級の認定を獲得するのは決して簡単ではありません。以下のポイントを意識してください。

  • 症状固定まで通院を続ける

  • 後遺障害診断書の内容が正しいか確認する

  • 関節の可動域は適切な測定方法で検査する

  • 高次脳機能障害での9級認定には、適切な検査と家族の協力が不可欠

  • 被害者請求で申請をする

  • 早い段階で弁護士に依頼する

7-1. 症状固定まで通院を続ける

医師の指示に従って症状固定まで通院を継続してください。勝手に通院を終了したり、医師の指示に従わず通院を怠ったりすると、のちの後遺障害等級認定で不利に働く場合があります。また、必要な検査を定期的に行い、症状の推移を残しておくことも重要です。

7-2. 後遺障害診断書の内容が正しいか確認する

後遺障害診断書には、傷病名・自覚症状・他覚所見(検査結果)などを詳細に記載してもらう必要があります。自覚症状とは、痛みやしびれなど被害者本人が感じている症状を指します。些細な症状でも医師に正確に伝えておくことが大切です。

他覚所見とは、自覚症状を医学的に裏付ける所見であり、X線、CT、MRIなどの画像検査結果が該当します。

こうした所見が過不足なく記載され、後遺障害の認定基準に該当すると判断されれば、後遺障害等級が認定される可能性が高まります。しかし、医師は治療の専門家であり、法律や後遺障害等級の認定基準に詳しいとは限りません。そのため、必要な検査結果が後遺障害診断書に記載されていなかったり、伝えた自覚症状が過小評価されていたりするケースもあります。

後遺障害診断書を作成してもらったら、必ず内容を確認することが重要です。記載内容が不十分と思われる場合は、弁護士を通じて医師に補足を依頼することも検討しましょう。

7-3. 関節の可動域は適切な測定方法で検査する

関節の可動域制限がある場合は、適切な方法で測定されているかを確認する必要があります。9級では、13号の「一手のおや指を含む二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの」や、15号の「一足の足指の全部の用を廃したもの」などで、可動域が問題となります。

症状固定までに複数回検査を行うこともあり、測定方法が不適切だと数値の推移が不自然となり、後遺障害認定が難しくなる可能性があります。

医師の指示に従って通院を継続することで、適切な測定結果を残すことができます。病院で求められる検査には、しっかり応じるようにしましょう。

7-4. 高次脳機能障害での9級認定には、適切な検査と家族の協力が不可欠

高次脳機能障害(記憶力低下や性格変化など)の場合、MRIやCTなどの画像所見に加え、知能検査の結果や日常生活での変化をまとめた「日常生活報告書」が極めて重要になります。

日常生活報告書は、被害者を身近で見ている家族などが作成するのが一般的であり、家族の協力が不可欠です。些細な変化でも見逃さず、正確に記載することが大切です。

特に9級10号の認定では、事故前との性格や行動の変化をどれだけ具体的に示せるかが重要になります。気になる変化があれば担当医に相談し、必要に応じて頭部MRIやCTなどの検査を継続して受けることをおすすめします。

7-5. 被害者請求で申請をする

納得のいく認定結果を得るためには、認定に有利な提出書類を自分で準備できる「被害者請求」がおすすめです。保険会社にすべて任せる「事前認定」では、重要な証拠が漏れてしまうおそれがあります。

後遺障害の申請については被害者請求で申請しましょう。

7-6. 早い段階で弁護士に依頼する

「示談交渉が始まったら弁護士に相談しよう」と考える人が多いですが、実は通院中の段階から依頼するのが最も効果的です。弁護士は適切な後遺障害等級の認定に向けた検査のアドバイスや医師への働きかけをサポートしてくれます。

また、等級認定後の示談交渉を弁護士に依頼すると、弁護士基準に基づいた適切な賠償額を計算し、相手方と交渉してくれます。そのため、自分で交渉するよりも増額できる可能性が高まります。

交通事故の損害額を算定する際の3つの基準の図解。弁護士に示談交渉を依頼すれば賠償金の増額が期待できる
交通事故の損害額を算定する際の3つの基準の図解。弁護士に示談交渉を依頼すれば賠償金の増額が期待できる

なお、加入している自動車保険などに「弁護士費用特約」を付けていれば、弁護士費用の負担をゼロまたは少額に抑えられる場合もあります

8. 後遺障害9級の被害者が、示談金以外に受けられる給付や公的支援は?

交通事故の賠償金以外にも、活用できる制度があります。

  • 障害年金:厚生年金や国民年金に加入していれば、障害の程度に応じて受給できる可能性がある

  • 身体障害者手帳:視力や聴力、肢体の障害が一定基準を満たせば、税金の減免や公共交通機関の割引が受けられる

  • 労災保険:通勤中や仕事中の事故であれば、労災から「障害補償給付」などが支給される

9. 後遺障害9級についてよくある質問

Q. 後遺障害等級認定の結果に納得できない。認定結果を覆す方法はある?

「異議申立て」が可能です。認定結果に不服がある場合、新たな証拠(医師の意見書や追加の検査結果など)を添えて、再審査を請求できます。事前認定によって後遺障害等級の認定を受けた場合は相手方の任意保険会社に、被害者請求によって認定を受けた場合は自賠責保険会社に直接、申立書を送付して行います。

一度非該当になったり低い等級になったりしても、専門家の協力があれば覆る可能性は十分にあります。

Q. 顔に大きな傷跡が残ったことで後遺障害9級に認定された場合、仕事に影響がなければ逸失利益はもらえない?

業務内容によります。外貌を生業とする職業(タレントやホステスなど)の場合は逸失利益が認定される可能性があります。また、小さい子供の場合は将来的な外貌の影響が否定できないとして逸失利益が認められるケースもあります。

10. まとめ 後遺障害9級は賠償金が数千万円になる可能性がある

後遺障害9級は、これまでの生活を一変させてしまうほどの大きな障害です。認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能になり、賠償金が数千万円と高額になることもあります。

後遺障害9級を認定してもらうためには「症状固定まで通院を続ける」「後遺障害診断書の内容が正しいか確認する」「適切な方法で検査を受ける」「被害者請求で申請する」などのポイントを押さえることが大切です。

もしあなたが今、後遺障害の申請を控えていたり、保険会社からの提示額に疑問を感じていたりするなら、まずは交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。けがによる損害や精神的苦痛に対して、法律に基づいた「正当な対価」を獲得しましょう。

(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

中西博亮(弁護士)

中西博亮(弁護士)

アスカル法律事務所 代表弁護士
東京弁護士会所属、登録番号52472。東京都内大手法律事務所にて約9年民事、刑事を問わず多数の事件を経験。部門長として管理職も歴任したのち、令和7年4月弁護士10年目を迎えアスカル法律事務所を開設。「弁護士は、頼りになると言われたい」を事務所理念として、全力で事件解決にあたることをお約束します。
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