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1. 後遺障害14級とは?認定率はどのくらい?
交通事故のけがで後遺症が残った場合、症状に応じて後遺障害等級の認定を受けることができます。認定するのは、損害保険会社を会員とする「損害保険料率算出機構」です。
後遺障害等級は、要介護1級、2級および介護を必要としない1級から14級の16段階からなります。後遺障害14級は、そのなかで最も軽い等級になります。
損害保険料率算出機構が発表している「自動車保険の概況」によると、2023年度における14級の後遺障害等級認定件数は2万205件で、等級認定を受けた人のうち56.03%と最多の割合になっています。次に多い12級が5928件で16.44%なので、14級が突出して多いと言えます。
2. 後遺障害14級の主な症状と認定基準
後遺障害14級の対象となる症状と認定基準について解説します。なお、後遺障害14級は症状別に9種類に分類されており、「号」という単位がつけられています。
1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの |
|---|---|
2号 | 3歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
3号 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では 小声を解することができない程度になったもの |
4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6号 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を 屈伸することができなくなったもの |
8号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの |
9号 | 局部に神経症状を残すもの |
2-1. 14級1号|片目のまぶたの一部に欠損が残った、またはまつげが生えなくなった
具体的には、目を閉じた状態で「球結膜(きゅうけつまく)」と呼ばれる白目部分が見えている状態、またはまぶたの欠損によりまつげが半分生えてこなくなった状態が当てはまります。
なお、両目に上記の症状が残った場合は13級4号に該当します。
2-2. 14級2号|3本以上の歯に歯科補綴を加えた
「歯科補綴(しかほてつ)」とは、歯が欠けたり失われたりした場合に、それを補うために入れ歯やブリッジ、インプラントなどの人工歯を追加する治療を指します。
なお、治療した歯が14本以上の場合は10級4号、10本以上は11級4号、7本以上は12級3号、5本以上は13級5号に該当します。
2-3. 14級3号|片耳の聴力が低下した
片耳の聴力が、1m以上の距離では小声を聞き取れない場合に該当します。具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが「40dB以上70dB以下」の状態を指します。
平均純音聴力レベルは、防音室でヘッドホンなどを装着し、検査対象の各周波数帯がどのくらい小さな音まで聞こえるかを測定して平均的数値を計算する検査手法です。70dBはセミの鳴き声や高速道路を走行する車の車内の音、40dBは図書館内の物音程度と言われています。
2-4. 14級4号|腕の露出部に手のひら大の傷跡が残った
腕の付け根から指先までの間の部位に、指を含まない手のひら大の傷跡が残った状態が該当します。
2-5. 14級5号|足の露出部に手のひら大の傷跡が残った
股関節からつま先までの間の部位に、指を含まない手のひら大の傷跡が残った状態が該当します。
2-6. 14級6号|片手の親指以外の指骨を一部失った
片手の親指以外の指の骨を一部失った状態、または骨折後に骨が癒着していない「遊離骨折」の状態が当てはまります。レントゲンなどで確認できる必要があります。
2-7. 14級7号|片手の親指以外の指が曲がらなくなった
片手の親指以外の指の遠位指節間関節を曲げられない状態が該当します。「遠位指節間関節」とは、親指を除く指の、指先に最も近い第一関節を指します。
関節の強直や屈伸筋の損傷などによって症状が引き起こされる場合に認められます。
2-8. 14級8号|片足の中指・薬指・小指のいずれかの用を廃した
「用を廃する」とは、本来の働きができなくなった状態を指します。具体的には、片足の中指・薬指・小指のうち1本または2本が以下の状態にあてはまる場合に14級8号に認定されます。
遠位指節間関節(指先に一番近い関節)から先のすべてを失う
中足指節関節(足の指の付け根の関節)もしくは近位指節間関節(足の指の途中の関節)の動きが健康な状態の半分程度に制限される
2-9. 14級9号|体の一部に痛みやしびれなどの神経症状が残った
頸椎(けいつい)ねん挫や頸部ねん挫、腰椎(ようつい)ねん挫による「むち打ち」やその他の外傷により、体の一部に痛みやしびれが残った場合、またはめまい、吐き気が後遺症として残った場合に認定されます。
外傷に由来する神経症状は12級13号に認定される場合もありますが、12級はレントゲンやCT、MRIなどの画像検査により、医学的かつ客観的に異常所見を認められる必要があります。
14級9号の場合は、画像などによる所見がない場合でも、痛みやしびれといった自覚症状が継続していて、最も強い症状の内容および一貫性、治療内容、通院の期間、頻度などから、後遺症の存在が医学的に説明できる必要があります。
また、交通事故が原因で非器質的損傷、つまり精神病を発症した場合も14級9号に該当します。
2-10. 併合14級|複数の後遺症が残った場合
複数の後遺症が残った場合、まとめて一つの等級として認定することを「併合」と言います。
たとえば、頸椎ねん挫と腰椎ねん挫など、体のいくつかの部位にいずれも14級9号に該当する神経症状が残った場合や、頸椎ねん挫と腕や足の露出部に手のひら大の傷跡が同時に残った場合は「併合14級」と認定されます。
筆者の弁護士としての経験でも、自動車事故やバイク事故などで全身をぶつけたケースや、手術などのあとが残ったケースで併合14級の認定を獲得した経験があります。
なお、13級以上の後遺障害が複数ある場合には、より重いほうの等級を繰り上げるのが基本ですが、14級の場合は複数の症状が残ったとしても併合14級にとどまります。そのため、慰謝料額や後遺障害逸失利益などについて増額が認められるわけではありません。
ただし、筆者が担当した案件で、頸椎ねん挫と手足の傷跡が残ったことについて併合14級となった際に、数十万円程度の慰謝料の増額が認められた経験があります。事案によっては保険会社などとの交渉のなかで事実上の考慮がなされる場合があります。
3. 後遺障害14級の被害者が受け取れる慰謝料の相場
後遺障害14級に認定された場合、被害者側が受け取れる慰謝料の相場について解説します。
3-1. 【重要】慰謝料を算定する際の3つの基準
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料のいずれにも、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)という3つの基準があります。
自賠責保険基準は、交通事故の最低限度の保障が定められている支払い基準です。
任意保険基準は、任意保険会社が独自に定めた基準で、自賠責保険基準と同等か、若干高い金額が設定されていることが多いです。任意保険基準は一般には公開されていません。
弁護士基準(裁判所基準)は、弁護士や裁判所などで参照されている基準で、地域によって参照する対象は異なります。公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「損害賠償額算定基準」、いわゆる「赤い本」などが有名な基準です。3つの基準のなかで最も被害者に有利で高額となります。
事案によって異なりますが、筆者の弁護士としての経験上、弁護士基準を100%とすると、自賠責保険基準が60%から70%、任意保険基準は70%から80%程度となる傾向にあります。
3-2. 入通院慰謝料の計算方法
具体例として、頸椎ねん挫で入院がなく、通院期間6カ月(実通院日数70日)の場合を考えてみます。自賠責保険基準と弁護士基準で入通院慰謝料を計算します。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準の場合は、以下の計算方法のうちいずれか少ないほうが入通院慰謝料額の目安となります。
➀治療期間(入院期間+通院期間)×4300円
➁入院日数+(実通院日数×2)×4300円
➀の場合の計算式は「180日×4300円=77万4000円」、➁の場合は「70日×2×4300円=60万2000円」となります。②のほうが少ないため、支給額は60万2000円となります。
【弁護士基準】
弁護士基準によって入通院慰謝料を計算する場合は、いわゆる「赤い本」の重傷用(別表Ⅰ)または軽傷用(別表Ⅱ)の算定表が用いられます。総治療期間6カ月の入通院慰謝料は、軽傷用(別表Ⅱ)に準じるのが一般的です。
下表は、軽傷用の早見表です。
被害者の通院期間と入院期間が交差するマスの数字が入通院慰謝料の金額となります。今回の例では入院期間0カ月、通院期間6カ月が交差する89万円が相手に請求できる入通院慰謝料となります。
3-3. 後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料は、自賠責保険基準、弁護士基準ともに等級に応じて金額が定められています。後遺障害14級では、自賠責保険基準では32万円、弁護士基準では110万円です。
自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
|---|---|
32万円 | 110万円 |
複数の要因による後遺障害がある場合など、個別具体的事案によって、後遺障害慰謝料の増額を求めることはありますが、基本的には上記の表のとおりです。
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4. 後遺障害14級で慰謝料以外に請求できる賠償金の種類と計算方法
後遺障害14級に認定されると、慰謝料以外に逸失利益や休業損害なども請求できます。それぞれの概要と計算方法について解説します。
4-1. 後遺障害逸失利益とは
逸失利益とは、事故の後遺症で労働能力が失われたことによって、将来にわたり得られなくなった収入を指します。
後遺障害逸失利益は「年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算出します。
後遺障害14級の労働能力喪失率(後遺障害により失われた働く能力の割合)は5%とされています。労働能力喪失期間は、症状固定時(これ以上治療をしても改善が見込めないと診断されたとき)から原則67歳までとされているものの、特に痛みやしびれなどの神経症状を主体とした障害内容の場合は、5年間程度に限定されるのが一般的です。
「ライプニッツ係数」とは、将来生じる減収に関する補償を先にまとめて受け取る際に、利息分を差し引くために用意された係数です。
年収500万円の会社員で、症状固定時に35歳、頸椎ねん挫で痛みやしびれが残り後遺障害14級に認定されたケースで、後遺障害逸失利益を計算してみましょう。この場合の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年間で、ライプニッツ係数は4.580となります。
「500万円(年収)×0.05(労働能力喪失率)×4.580(労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数)=114万5000円」が後遺障害逸失利益となります。
被害者が主婦や主夫の場合でも、後遺障害逸失利益の請求は認められます。その場合、厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」の結果をもとに算出した平均年収、通称「賃金センサス」における女性の平均賃金額をもとに計算します。
若年者や今後も稼働が期待できる年齢の人であれば、無職でも転職の可能性があるとして、平均賃金などの金額を利用して後遺障害逸失利益が認められる可能性があります。
後遺障害14級が認定されても逸失利益がもらえないケースとして考えられるのは、無職で無収入の人の場合や、かなりの高齢ですでに年金のみで生活をしている人の場合です。年金のみで生活をしている高齢者が後遺障害を負った場合、事故でそれまでどおり働けなくなり、減収が生じるとは想定できないため、逸失利益が認定されない可能性が高いです。
また、実務上よく問題が生じるのが、自営業者が税金の支払いを回避するために、事実と異なる赤字申告や、無申告をしている場合です。自営業者の場合は事故前の確定申告書の所得額を基礎として逸失利益を計算するため、赤字申告や無申告をしていると実際の所得よりも低い金額で逸失利益を計算することになります。この場合は非常に不利な結果になるケースも多いので、いざというときに備えて適切な申告をお勧めします。
4-2. 休業損害
休業損害とは、けがの影響で仕事を休んだ場合に得られなかった収入に対する補償を指します。休業損害は「1日あたりの収入額×休業日数」の計算式で算出できます。
「1日あたりの収入額」の基準は、自賠責保険基準と弁護士基準で異なります。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準では日額6100円(2020年3月31日以前の交通事故の場合は日額5700円)です。実際の収入額がこれより高いと立証できる場合は実際の金額が1日あたりの収入額となりますが、上限額は1万9000円とされています。
【弁護士基準】
弁護士基準では源泉徴収票や確定申告書などからわかる実際の収入額を用いて日額を算出します。
給与所得者の場合は、事故前直近3カ月間の収入を90日あるいは稼働日数で割るのが基本です。自営業者は確定申告書の所得金額にテナント料やリース料、従業員給与、事業税などの固定経費を加算したうえで365日で割るなどして収入額を求めます。
主婦や主夫の場合は、賃金センサスにおける女性の平均賃金を365日で割ります。無職で収入がない人でも、年齢的に稼働能力がある場合は、その年齢などに応じた平均年収などを365日で割って算出します。
【計算例|自賠責保険基準と弁護士基準で金額を比較】
たとえば、40歳の専業主婦で、会社員の夫と2人の子どもがいる人が、頸椎ねん挫で6カ月間治療を行い、そのうち90日間通院した場合について計算してみましょう。
まず、自賠責保険基準における休業日数は、会社員の場合、勤め先から発行される休業損害証明書をもとに計算しますが、主婦や主夫は第三者が休業日数を証明できないため、実通院日数を使用して休業損害の計算を行います。
そのため、自賠責保険基準での休業損害は「6100円×90日=54万9000円」となります。
一方で、弁護士基準のもととなる収入額は、専業主婦(主夫)の場合は賃金センサスにおける女性の平均賃金で計算します。令和6年の女性の全年齢平均賃金額は419万4400円であり、1日あたりの収入額は「419万4400円÷365日≒1万1492円」となります。
休業日数については、主婦や主夫の場合は治療期間の1カ月目は100%、2カ月目から3カ月目は50%、4カ月目から6カ月目は20%の家事を休業したと推定して計算する「逓減(ていげん)法」と、実通院日数を用いる方法などがあります。実務上は逓減法での計算が多いのですが、ここでは計算がわかりやすい実通院日数を使用します。
この場合の休業損害は「1万1492円×90日=103万4280円」となります。
4-3. その他|治療関係費、物損など
交通事故で支払われる賠償金には、ほかに以下のようなものがあります。
治療費:病院や接骨院での治療費、薬剤費
付添看護費:入院などで親族などが付き添った際の費用
入院雑費:入院時に必要になる物品の購入にあてる費用で、日額1500円
通院交通費:通院時の交通費
物損:車やバイクの修理代や、服やヘルメットなどの損害
ほかにも、将来かかる治療費やリハビリ代、手術代、装具費なども請求できます。
5. 後遺障害14級の賠償金は総額でいくらになる?
具体的な事例を用い、弁護士基準で支払われる賠償額の総額を算出してみましょう。
年収500万円の会社員で、総治療期間6カ月、実通院日数90日、休業なし、症状固定時に35歳、頸椎ねん挫で痛みやしびれが残り後遺障害14級と認定された場合を想定します。
弁護士基準で算定した場合、請求できる主な賠償金項目と金額は以下のとおりです。
入通院慰謝料 :89万円
後遺障害慰謝料:110万円
後遺障害逸失利益:114万4925円
合計:313万4925円
なお、後遺障害14級が認定されない場合、受け取れるのは入通院慰謝料の89万円のみとなります。つまり、同じ痛みを抱えていても、後遺障害が認定されるかどうかで約3.5倍の差が生じます。
6. 後遺障害等級認定と賠償金請求の流れ
後遺障害等級認定と損害賠償請求は、次のような流れで進みます。
6-1. 医療機関を受診し、医師の指示どおりに治療を続ける
交通事故に遭った場合、整形外科など病院での受診が必須となります。最初から整骨院や接骨院に行くことはお勧めできません。整骨院や接骨院は医療機関ではなく、等級認定の申請手続きに必要な後遺障害診断書を作成できないからです。また、以降も医師の指示に従って入通院をし、治療を受ける必要があります。
時間の都合などから整骨院や接骨院での治療を希望する人も多いですが、筆者の経験上、整骨院や接骨院に主として通った場合、後遺障害の認定が厳しくなるケースが多いです。
後遺障害について診断をし、意見を述べられるのは医師だけです。整骨院や接骨院に主として通っていると、医師から「自分で治療していないので具体的な症状経過がわからない。診断には協力できない」と告げられる可能性や、後遺障害診断書の作成を拒否されるケースもあります。
後遺障害等級の申請が想定される事案の場合は、診察の受付時間が長く、かつリハビリ設備が充実している整形外科を選ぶのが無難です。
また、治療の間隔が空くと、その後の治療費を相手の保険会社に負担してもらえなくなったり、後遺障害の認定を受けられなかったりします。医学的に改善が見込めなくなる「症状固定」と主治医から診断されるまで、定期的に通院してください。
6-2. 医師に後遺障害診断書を作ってもらう
後遺障害診断書、正式名称「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」は、後遺障害等級の申請をする際に提出する資料です。主治医に作成してもらいます。書式は所定のものがあり、加害者の任意保険会社や、加害者の自賠責保険会社、自分が依頼している弁護士などから入手できます。
診察時に依頼するのが一般的で、おおむね1週間から1カ月程度で作成されます。
6-3. 後遺障害等級認定を申請する
症状固定後は、後遺障害等級の認定を自賠責保険会社に申請しますが、加害者の任意保険会社が行う「事前認定」と、被害者が自ら行う「被害者請求」があります。
事前認定は、後遺障害診断書を加害者の任意保険会社に提出すれば、その後の手続きはすべて加害者の任意保険会社が進めてくれるため、被害者としては非常に楽です。
ただし、申請時にどのような書類が提出されているのかわからず、どのような書類を提出すれば有利になるかのアドバイスも受けられないなどのデメリットがあります。
一方、被害者請求は、レントゲン画像や医療記録など提出書類の収集を自ら行う必要があるため手間と時間がかかります。しかし、後遺障害の要件を満たす証拠や主張書面などを自分で収集して提出でき、有利な証拠の追加提出もできるなどのメリットがあります。
後遺障害14級の認定を受けるために必要な資料としては、後遺障害診断書、診断書、診療報酬明細書、カルテ、画像、医学的意見書、陳述書、事故の衝撃を示す資料としての事故画像などが挙げられます。
6-4. 加害者側との示談交渉を開始する
後遺障害が認定されたあとは、加害者の任意保険会社と示談交渉を開始します。最初に相手から提示される示談金額は、自賠責保険基準や任意保険基準などで算出された低い金額であることが多いです。弁護士に相談し、弁護士基準での交渉をお勧めします。
筆者の経験上、弁護士が交渉した場合は、被害者側の過失割合が非常に大きい事例を除けば、加害者の任意保険会社の当初の提示額から全く増額されないケースはありません。
6-5. 示談が成立しない場合はADRや訴訟を検討する
加害者の任意保険会社と示談交渉がまとまらないときは、公正中立な第三者を通じた話し合いで解決する「裁判外紛争解決手続(ADR)」や、裁判によって解決をめざす訴訟を検討します。
訴訟は管轄の裁判所に対して提起し、1カ月に1回程度の審理を経て、裁判官が判決を下します。法的な結論を必ず得られるというメリットはありますが、時間や労力がかかり、和解交渉時より慰謝料が減額される可能性もあるなどのリスクがあるため、見通しについて担当弁護士と入念に話し合う必要があります。
弁護士への依頼が難しい場合はADRがお勧めです。「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」などが取り扱っており、センターが委嘱した弁護士が間に入って、弁護士基準でのあっせん案を提示してくれます。解決までの期間も数カ月程度と、訴訟よりも早いです。
6-6. 賠償金が振り込まれる
示談交渉やADR、訴訟などで決まった内容に従い、損害賠償金が支払われます。
7. 後遺障害14級9号の認定を受けるためのポイント
後遺障害14級9号の認定を受けるためには、以下のポイントに留意する必要があります。
適切な頻度と期間で通院を続ける
むち打ちの場合は認定基準を正しく把握する
症状を医師に正確に伝え、不足のない後遺障害診断書を作成してもらう
被害者請求で申請する
早めに弁護士に相談する
7-1. 適切な頻度と期間で通院を続ける
自分の判断で治療をやめてしまうと、正しい後遺障害等級が認められにくくなります。必ず医師の指示に従い、症状固定の診断を受けるまで治療を続けるようにしてください。
むち打ちなどで後遺障害14級9号の認定を受ける際には、整形外科での総通院期間と実通院日数が重要とされています。筆者の経験上、総通院期間は最低でも半年間は必要です。また、実通院日数が総通院期間の3分の1を下回った場合は、入通院慰謝料が減額される可能性が高くなるとともに、後遺障害等級の認定も難しくなります。
そのため、症状固定の診断を受ける前に相手の保険会社から治療費の打ち切りを受けた場合は、自身の健康保険で通院を続け、症状固定の診断を受けてから後遺障害等級認定の申請をする方法もあります。
7-2. むち打ちの場合は認定基準を正しく把握する
むち打ちで後遺障害14級9号が認定されるには、後遺障害の症状が「医学的に説明可能」である旨が要件とされ、具体的には以下の要素が総合的に判断されています。
事故の状況が、当該の症状を発生させ得る程度である
事故当初から病院への通院を継続している
事故当初からの症状の訴えが、連続かつ一貫している
症状がそれなりに重篤であり、常時性が認められる
症状に整合する画像所見や神経学的検査結果などの他覚的所見がある
ただし、後遺障害14級9号の場合、画像所見については必須ではありません。
認定の際には、特にカルテや後遺障害診断書の記載が重視されます。たとえば、実際には事故直後から腰の痛みがあったにもかかわらず、その事実を医師に伝えていなかった場合、カルテに腰椎ねん挫の記載をしてもらえずに後遺障害が非該当になる可能性があります。
また、本当は強い痛みが続いているにもかかわらず、診察時に「そこまで痛くない。治療のおかげで快方に向かっている」などと述べていると、後遺障害診断書に「症状が軽快している」などと書かれて、後遺障害が非該当になるケースも少なくありません。
7-3. 症状を医師に正確に伝え、不足のない後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害診断書には、認定基準を満たすように記載してもらう必要があります。ただし、すべての医師が交通事故の後遺障害等級や賠償請求に精通しているわけではありません。
特に後遺障害14級9号の「神経症状」は、被害者本人の自覚症状が重要となるため、医師に症状を明確に伝えることが大切です。診断書の内容が不十分と思われる場合は、弁護士を通じて医師に追加の記載や検査を働きかけることも検討すべきです。
後遺障害が非該当になる事案で多いのが、後遺障害診断書の「症状の見通し」の欄に「軽快、治癒」などと書かれているケースや、傷病名以外がほとんど空欄になっているケースです。
こうした後遺障害診断書では申請自体が無為に終わる可能性が高くなるため、主治医ともよく話し合い、不足のない後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
7-4. 被害者請求で申請する
相手の任意保険会社に手続きを一任する「事前認定」は、手間がかからないものの、要件を満たす内容で申請してくれるとは限りません。自分で申請する「被害者請求」のほうが、認定に有利な証拠や主張を添付できるため、納得できる結果につながりやすいと言えます。
7-5. 早めに弁護士に相談する
後遺障害等級認定の申請は専門性が高く、経験も要するため、医師と弁護士の共同作業が必要な分野です。
この点、弁護士に早めに相談をすれば、以下のようなメリットが得られます。
後遺障害診断書の内容をチェックしてもらえる
必要に応じて医師とコミュニケーションをとってもらえる
被害者請求の書類を適切に作成してもらえる
認定結果に納得できない場合、異議申立ての手続きも一任できる
後遺障害認定後、加害者側との示談交渉も任せられる
等級認定後の示談交渉に弁護士が介入すると、弁護士基準で適正な賠償額を算出し、相手と交渉してくれます。自分で交渉するよりも増額できる可能性が高まります。
加入している自動車保険に弁護士特約を付帯している場合は弁護士費用がかからず、経済的なデメリットがなくなるため、早期の依頼をお勧めします。
8. 後遺障害14級の認定を受ける際の注意点は?
後遺障害等級の申請では、以下の5点に留意する必要があります。
症状固定後の治療費は自己負担になるため、症状固定の診断が出るまで可能な限り治療を続ける
加害者の保険会社から治療の早期打ち切りと後遺障害申請を勧められても、すぐには応じない
痛みやしびれが残っている事案でも14級9号の後遺障害が否定される可能性がある
被害者請求の場合、手続きに時間と労力がかかる
異議申立ては医師との面談や医学的意見書の作成が必要になるケースが多く、弁護士の助力なしでは難しい
後遺障害等級の申請については、弁護士にあらかじめ相談して、方針の妥当性を確認してから効率的に手続きを進めるのがお勧めです。
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9. 後遺障害14級の被害者が、示談金以外に受けられる支援や給付
通勤中や勤務中の事故などの場合、労災保険を使用できます。労災保険では、以下の給付を受けられます。
療養補償給付:通常療養のために必要な治療費、入院費など
休業補償給付:事故前の平均賃金の60%相当額
傷病補償年金:治療開始から1年6カ月を経過しても治療中の場合に支払われるもの
障害補償給付:症状固定後を対象とした障害の程度に応じた年金または一時金
遺族補償給付:受給資格を満たす遺族に対する年金または一時金
葬祭料
介護補償給付:介護の状況に応じた介護費用
そのほかの特別支給金
ただし、加害者側から受け取る賠償金と同じ性質の給付については、二重取りにならないように調整がなされます。これを「損益相殺」と言います。
一方で、税金などの減免や医療費の助成を受けられる障害者手帳については、後遺障害14級の場合は身体障害者福祉法に基づく認定要件を満たさないため、原則として交付はされません。
10. 後遺障害14級に関してよくある質問
Q. 後遺障害等級の認定結果が「非該当」だった場合、再申請は可能?
自賠責保険会社への異議申立てが可能です。また、この異議申立てには回数制限はありません。
Q. 後遺障害14級が認定されたら、生命保険に加入できなくなる?
生命保険会社の契約の諾否は、各生命保険会社に委ねられているため、弁護士の立場では確定的にはお答えできません。ただし、精神障害によるものを除けば、14級は生命身体に重大な影響を与える類型の後遺障害ではないため、一般論として生命保険に加入できなくなるとは考えづらいです。
また、後遺障害認定の有無にかかわらず、生命保険加入時には身体の状態や通院状況についての申告義務があるため、認定結果で加入しやすさに差が出るとは考えにくいです。
Q. 後遺障害等級が認定されても、仕事や日常生活に支障がなければ、逸失利益や慰謝料を請求できない?
仕事や日常生活に全く支障がないのであれば、そもそも後遺障害が認定されません。
後遺障害が認定されていれば「痛みやしびれなどを抱えながらも仕事をしていて減収が生じていない」という状況でも、それは本人の努力で損害を回避しているにすぎないと評価され、慰謝料や逸失利益が認められます。
11. まとめ 後遺障害の認定について悩みがある場合は弁護士に相談を
後遺障害14級は、16段階ある後遺障害等級のなかで最も軽い等級です。「3本以上の歯に歯科補綴(しかほてつ)を加えた」「片耳の聴力が低下した」「体の一部に神経症状が残った」など、症状別に9つの認定基準があります。後遺障害14級に認定された場合、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、休業損害などを請求できます。
適切な後遺障害等級の認定を受けるには、まずは整形外科などの医療機関を受診し、医師の指示に従って治療を受ける必要があります。そのうえで、後遺障害が残った場合には、認定基準を満たす内容が記載された「後遺障害診断書」を作成してもらうことが重要です。記載内容に不備があると非該当になる可能性があります。
後遺障害等級認定の申請は、専門性と経験が求められる分野です。適切な資料を集め、正しい手順を踏んで申請できるか不安がある場合は、弁護士への早期の依頼をお勧めします。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)
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