目 次
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」で
交通事故トラブルに強い弁護士を探す
交通事故トラブルに強い
弁護士を探す
1. 交通事故で後から痛みが出やすい理由
交通事故では、事故直後は痛みを感じなくても、時間が経ってから首や腰などに症状が現れることがあります。特に、むちうちなどは後から痛みが出やすい代表的なけがです。ここでは、交通事故で後から痛みが出る主な理由を解説します。
1-1. 事故直後は興奮状態で痛みに気づきにくいから
人間は危機的状況に陥ると、その状況に対応するために交感神経が優位になり、一時的に痛みを感じにくくさせる作用を持つアドレナリンが多く分泌されます。交通事故はまさに危機的な状況なので、アドレナリンが多く分泌され、けがをしていても痛みを感じにくくなります。
時間が経過することによって落ち着きを取り戻すと、痛みを感じるようになります。これは、特にむちうちなどによくみられる傾向にあります。
1-2. 筋肉や神経のダメージが遅れて症状化するから
交通事故によって筋肉や神経がダメージを受けている場合でも、炎症がすぐにピークに達するわけではありません。炎症が徐々に悪化し、腫れや痛みが顕在化するまでに数時間から数日かかることはよくあります。
1-3. むちうち(頸椎捻挫)、脳内出血のケースなどで起こりうる
追突事故などにおいては、むちうち(頸椎捻挫)は、遅れて症状が出やすい代表的なけがです。また、頭を強く打っていた場合、後になってから慢性硬膜下血腫などの脳内出血による頭痛や吐き気が現れる危険なケースもあります。
2. 交通事故で後から痛みが出てきたときの対処法
交通事故後に痛みが出てきた場合は、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、早めに対応することが重要です。対応が遅れると、症状の悪化だけでなく、保険会社とのトラブルにつながることもあります。
2-1. できるだけ早く受診する
むちうちは、事故から少し時間が経ってから痛みを感じるようになることが多いです。そのため、痛みを感じたら、我慢せずに1日でも早く整形外科を受診するべきです。受診が遅れると、けがが悪化してしまうだけでなく、事故とけがの因果関係が否定され、相手方や保険会社から治療費などが支払われないリスクが高まります。
2-2. 保険会社に連絡する
病院を受診する前、または受診後速やかに、自分が加入している保険会社と加害者側の保険会社に対して、後から痛みが出たため通院するという旨を連絡するべきです。これにより、治療費の一括対応や示談交渉がスムーズに行われます。
2-3. 人身事故への切り替えを行う
けががないと思って警察に物損事故として処理されている場合、速やかに人身事故への切り替えを行う必要があります。自身の交通事故を扱った警察署に診断書を持参し、切り替えの手続きを行いましょう。
人身事故への切り替えを行わないと、警察に実況見分調書を作ってもらえず、後の過失割合の交渉における証拠として利用できなくなってしまいます。
3. 人身事故に切り替える方法|手続き、必要書類、注意点、費用
交通事故後に痛みが出てきた場合、治療費や慰謝料を請求するためにも物損事故から人身事故へ切り替えることが重要です。ここでは、人身事故へ切り替える際の基本的な流れや注意点を解説します。
3-1. 医療機関で診断書を取得する|整骨院の利用には注意
まずは整形外科を受診し、医師に対し、交通事故によるけがであることを伝えた上で、警察に提出するための診断書を作成してもらいます。整骨院(接骨院)では診断書を発行してもらうことができないため、必ず医師のいる整形外科などの医療機関を受診しましょう。
なお、診断書の作成費用は通常数千円程度かかりますが、後日、加害者に対して請求できます。
3-2. 警察に人身事故への変更を届け出る
交通事故を管轄する警察署の交通課に連絡し、取得した診断書や運転免許証等の必要書類を持参して、物損事故から人身事故への切り替えを申し出ます。
3-3. 警察の実況見分に協力する
当事者立ち会いのもとで事故当時の状況を詳しく確認する実況見分が実施され、その結果を記録した実況見分調書が作成されます。この実況見分調書は、後に相手方と過失割合でもめた際に、過失割合を判断するための証拠となります。実況見分にあたっては、記憶に基づき、あいまいな返事はせず、事実を正確に伝えましょう。
3-4. 人身事故証明書を申請する
人身事故への切り替え手続きが完了すると、自動車安全運転センターで発行される交通事故証明書の種別が人身事故になるため、切り替え後の交通事故証明書を取得します。これは、後に保険会社に対して治療費や慰謝料を請求するために必要となる書類です。
4. 交通事故で後から痛みが出た場合に請求できる賠償金
交通事故で後から痛みが出た場合でも、事故との因果関係が認められれば、治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。ここでは、主な賠償項目について解説します。
4-1. 積極損害|治療費など
積極損害とは、交通事故が原因で被害者が実際に支出せざるを得なくなった損害をいいます。主に、以下のようなものがあります。
内訳 | 概要 |
|---|---|
治療関係費 | 病院の診察代、検査代、投薬代など ※通常は加害者の保険会社が病院に直接支払う |
付添費 | 入院や通院に近親者の付き添いが必要だった場合の費用 |
将来介護費 | 重度の後遺障害が残り、 将来にわたって他者の介護が必要となった場合に請求できる費用 |
雑費 | 入院期間中に発生する細々とした日用品や、 重度の障害を負って自宅介護する場合の紙おむつ代などの出費を補填する費用 |
通院交通費 | 病院への通院や、退院時にかかった交通費 ※基本的には、電車、バスの料金で計算する ※自家用車を利用した場合には、ガソリン代(1キロ15円など)、 高速道路料金、駐車場料金などの実費になる |
装具・器具費 | コルセットや車いすなどの費用 |
弁護士費用 | 被害者が弁護士に依頼して裁判(訴訟)を起こした場合に、 加害者側に請求できる費用 |
4-2. 消極損害|休業損害・逸失利益など
消極損害とは、交通事故に遭ったことで、本来得られるはずだった収入や利益を得られなくなった損害をいいます。主に以下のものがあります。
内訳 | 概要 |
|---|---|
休業損害 | けがによって仕事を休んだ期間の減収の損害 |
後遺障害逸失利益 | 治療を続けても痛みが残り、後遺障害が認定された場合、 将来にわたって労働能力が低下した分の損害 |
死亡逸失利益 | 被害者が亡くなったことで、生存していれば将来得られるはずだった収入分の損害 |
4-3. 慰謝料|入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料
慰謝料とは、交通事故によって受けた精神的な苦痛に対する金銭的な賠償です。交通事故でむちうちとなった場合の慰謝料には、主に、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
内訳 | 概要 |
|---|---|
入通院慰謝料 | 交通事故で負ったけがの治療のため、 入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への賠償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級(1級~14級)が認定された場合に請求できる慰謝料。 等級に応じて金額が分かれている |
死亡慰謝料 | 亡くなった被害者本人の精神的苦痛と、 大切な家族を失った遺族の精神的苦痛への賠償 |
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」
5. 交通事故で後からむちうちと診断された場合の慰謝料の目安
交通事故で後からむちうちと診断された場合でも、事故との因果関係が認められれば、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などを請求できる可能性があります。もっとも、慰謝料には複数の算定基準があり、どの基準を用いるかによって金額が大きく変わることもあります。
5-1. 【重要】賠償金の3つの算定基準
交通事故における損害賠償額の算定基準は、主に、①自賠責保険基準、②任意保険基準、③弁護士基準(裁判所基準)の3つがあります。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障法などに基づく最低限の補償基準です。3つの基準の中では、最も低い金額水準になります。
【任意保険基準】
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている基準です。保険会社との示談交渉では、この基準で慰謝料額が提示されることが一般的です。
金額は保険会社ごとに異なりますが、一般的には、自賠責保険基準より高く、弁護士基準(裁判所基準)より低い傾向があります。
【弁護士基準(裁判所基準)】
弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした基準です。「赤い本」や「青本」と呼ばれる基準集を参考に算定されます。3つの基準の中では最も高額になりやすく、弁護士が示談交渉を行う際にも重視される基準です。
5-2. 入通院慰謝料
むちうちで3カ月間通院した場合でも、どの基準で計算するかによって慰謝料額は大きく異なります。ここでは、他覚所見(X線やMRIなどで確認できる異常)がないむちうちで、合計3カ月(90日)通院し、実際の通院日数が30日のケースを例に説明します。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準では、入通院慰謝料について1日あたり4300円(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)を基準に計算します。日数については、「治療期間」と「実通院日数×2」を比較し、少ない方の日数が採用されます。今回のケースでは、「90日」と「30日×2=60日」を比較し、少ない60日を採用します。
4300円 × 60日 = 25万8000円 となります。
【弁護士基準】
弁護士基準では、「赤い本」の別表Ⅱ(むちうちなど軽傷用)を基準に算定します。同じ条件の場合、慰謝料は53万円程度になる可能性があります。
5-3. 後遺障害慰謝料
むちうちで後遺障害等級が認定されるケースは多くありません。しかし、痛みやしびれなどの症状が残った場合には、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。むちうちで認定されやすい等級としては、主に「12級13号」と「14級9号」があります。
【12級13号の場合】
「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する場合に認定される等級です。
・自賠責保険基準:94万円
・弁護士基準:290万円
【14級9号の場合】
「局部に神経症状を残すもの」に該当する場合に認定される等級です。
・自賠責保険基準:32万円
・弁護士基準:110万円
このように、どの基準を用いるかによって慰謝料額には大きな差が生じることがあります。
6. 示談成立後に痛みが出てきた場合、損害賠償請求は可能?
交通事故では、示談成立後に痛みや後遺症が出てくるケースもあります。しかし、示談後は追加請求が難しくなることが多いため、示談のタイミングには注意が必要です。
6-1. 示談成立後の請求は基本的に難しい
示談は、法律上「和解契約」と呼ばれる契約です。示談書には通常、「本件について、これ以上お互いに請求しない」といった内容の清算条項が含まれています。
そのため、一度示談が成立すると、「後から痛みが出たので追加で治療費を払ってほしい」と請求しても、原則として認められません。
6-2. 例外的に請求できるケース
示談成立後は追加請求が難しいのが原則ですが、例外的に認められるケースもあります。たとえば、事故直後には症状が軽いと思って早期に示談したものの、その後になって予想できなかった後遺症や重い症状が判明した場合です。
実際の裁判でも、「示談当時に予想できなかった損害」については、清算条項によって請求権まで放棄したとはいえないとして、追加の損害賠償請求を認めた事例があります(最二小判昭和43年3月15日)。
6-3. 事故当日や事故日から間もないうちに示談をするのは避けるべき
示談後でも例外的に追加請求が認められるケースはあります。しかし、清算条項のある示談をしてしまうと、後から損害賠償請求をすることは基本的に難しくなります。
そのため、事故直後や症状が安定していない段階で、安易に示談に応じるべきではありません。事故状況や過失割合、治療状況、損害額などを十分に確認したうえで、示談するべきかどうかを判断することが重要です。
特に、むちうちは後から痛みが出たり悪化したりすることもあります。加害者や保険会社から早期の示談を求められても、焦って示談書へサインしないよう注意しましょう。
7. 交通事故で後から痛みが出てきたときに弁護士に相談・依頼するメリット
交通事故で後から痛みが出た場合は、事故との因果関係や慰謝料額などをめぐって、保険会社とトラブルになることがあります。弁護士に相談・依頼することで、適切な賠償を受けやすくなるだけでなく、精神的な負担の軽減にもつながります。
7-1. 事故とけがの因果関係を証明しやすくなる
交通事故から数日経ってから受診した場合、保険会社から「事故によるけがではない」と主張されることがあります。事故との因果関係を認めてもらうためには、医師の診断内容や通院状況などが重要になります。
弁護士に相談すれば、どのような診断書や資料が重要になるかについて助言を受けられるため、事故との因果関係を適切に主張しやすくなります。
7-2. もらえる示談金の額が増えやすくなる
すでに解説したとおり交通事故の慰謝料には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあります。
保険会社は、一般的に任意保険基準で示談金を提示してきます。そのため、被害者側が何も知らずに示談してしまうと、本来より低い金額で合意してしまうこともあります。弁護士に依頼した場合は、最も高額になりやすい弁護士基準をもとに交渉を進めるため、示談金が増額する可能性があります。
7-3. 示談交渉を任せることでストレスを減らせる
交通事故の被害者は、痛みや不安を抱えながら、保険会社と何度も連絡を取らなければならないことがあります。弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りを任せることができるため、被害者自身は治療や生活の立て直しに専念しやすくなります。
7-4. 後遺障害等級認定のサポートを受けられる
治療を続けても症状が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。もっとも、後遺障害等級認定では、後遺障害診断書の内容や医療記録が重要になります。
弁護士に依頼すれば、適切な資料収集や被害者請求のサポートを受けられるため、適正な等級認定につながる可能性があります。
7-5. 弁護士費用特約を使えば負担なしで弁護士に依頼できる
自動車保険や火災保険に「弁護士費用特約」が付いている場合は、弁護士費用を保険会社が負担してくれることがあります。一般的には、着手金、報酬金などを含めて300万円程度まで補償されることが多く、通常の交通事故であれば自己負担なく弁護士に依頼できるケースも少なくありません。
家族の保険や火災保険などについている特約を使える場合もあるため、事故にあったらまずは特約の有無を確認しておきましょう。
8. 交通事故で後から痛みが出た場合に関して、よくある質問
Q. 後から出てくる痛みは、保険会社に疑われやすい?
疑われやすい傾向があります。受診が遅れるほど、事故との因果関係を否定されやすくなるため、違和感があれば早めに整形外科を受診しましょう。
Q. 後から痛みが出てきた場合でも、後遺障害等級に認定される可能性はある?
可能性はあります。ただし、痛みが出るまでの期間が長いと、事故との因果関係を疑われ、認定のハードルが上がることがあります。
Q. 交通事故から数カ月後に痛みを感じることはある?
あります。慢性硬膜下血腫などでは、数週間~数カ月後に頭痛やしびれが出ることもあるため、自己判断せず受診しましょう。
Q. 人身事故切り替えに期限はある?
法律上の明確な期限はありませんが、一般的には事故から10日以内が目安です。時間が空くほど切り替えは難しくなります。
9. まとめ 交通事故で後から痛みが出たら必ず受診すること
交通事故では、事故直後ではなく、数時間後や数日後に痛みが現れることがあります。特に、むちうちや神経症状は後から悪化するケースも少なくありません。
痛みや違和感がある場合は、我慢せず早めに整形外科を受診し、人身事故への切り替えや保険会社への連絡を行うことが重要です。対応が遅れると、事故との因果関係を疑われ、治療費や慰謝料が支払われないリスクもあります。不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」で
交通事故トラブルに強い弁護士を探す