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自転車にひかれたら慰謝料はもらえる? 被害者がすべき対応と請求を解説

更新日: / 公開日:
自転車にひかれたら、治療費や慰謝料はどこに請求すればいいのでしょうか (c) Getty Images
2026年4月から自転車の交通違反に交通反則通告制度、いわゆる「青切符」の制度が導入されました。その背景には自転車関連の交通事故件数が減らず、悪質な違反や危険な運転があとを絶たない状況があります。自転車は車道を走るのが原則とされていますが、実際には歩道を走行する自転車も多く、歩行者は自動車より自転車と接触するほうが日常的です。 ところが、自転車には自動車の自賠責保険のような強制的な保険がないことに加え、加害者が子どもだったり、支払い能力に問題があったりと、自転車との事故には特有の問題があります。もし加害者から十分な補償を受けられそうにない場合には、弁護士に相談することで適切な補償を受けられる可能性が高まります。 歩行中に自転車にひかれたらどう行動したらいいのか、誰が治療費や慰謝料を補償してくれるのかなど、自転車による事故に遭った場合の対処や解決の方法について、弁護士が解説します。

目 次

1. 自転車にひかれた! 事故直後にすべき6つのこと

1-1. 安全確保

1-2. 警察への報告

1-3. 加害者の情報を確認する

1-4. 事故現場の状況を記録し証拠を保存する

1-5. すみやかに病院(整形外科)を受診し診断書をもらう

1-6. 自分の保険会社へ連絡

2. 【ケース別】自転車にひかれたら、損害賠償は誰に請求する?

2-1. 加害者本人が保険に加入している場合

2-2. 加害者本人が無保険の場合

2-3. 加害者が子どもの場合

2-4. 加害者が配達員など業務中の場合

2-5. ひき逃げで加害者が不明な場合

3. 自転車にひかれたときに請求できる賠償金の内訳と相場

3-1. 治療関係費|治療のために支払った費用

3-2. 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

3-3. 後遺障害慰謝料

3-4. 死亡慰謝料

3-5. 休業損害|仕事を休んだために減少した収入

3-6. 逸失利益|後遺症や死亡によって減少した収入

3-7. 物損

3-8. 将来介護費

4. 要注意! 自転車事故の過失割合はどう決まる?

5. 【高額事例】自転車事故の賠償金は1億円近くになることも

6. 自転車にひかれたときに、自分の保険は使える?

7. 高齢者の家族が自転車にひかれたときの対応ポイント

7-1. 保険会社の提示額をうのみにしない

7-2. 判断能力を欠いている場合は、成年後見人の選任が必要

7-3. 介護保険サービスを利用する場合は「第三者の行為による傷病届」の提出が必要

8. 自転車にひかれたときに最大限の賠償金を獲得するためのポイント

8-1. 【重要】交通事故に精通している弁護士に依頼する

8-2. 事故直後から適切な頻度で通院する

8-3. 後遺症に関する主張や立証の準備を十分に整える

9. 損害賠償請求の弁護士費用は、相手に請求できる?

10. 弁護士費用が心配なときには「弁護士費用特約」や無料相談を賢く活用

11. 自転車にひかれた事故に関してよくある質問

12. まとめ 自転車にひかれる事故に遭ったら弁護士を有効に活用して早期解決を

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1. 自転車にひかれた! 事故直後にすべき6つのこと

自転車にひかれたら、すぐに次の行動をとる必要があります。

交通事故に遭った直後に被害者がやること。警察への通報と医療機関の受診が重要
交通事故に遭った直後に被害者がやること。警察への通報と医療機関の受診が重要

1-1. 安全確保

 自転車との事故に遭ったら、まず何が起こったのか把握し、身の安全を確保するのが重要です。衝突の衝撃で車道に出てしまったのであれば、二次被害を避けるために安全な場所に移動します。自力での移動が難しい場合には、周囲に助けを求めてください。けがをしている場合には救急車を呼びます。

1-2. 警察への報告

身の安全を確保できたら、警察へ必ず通報してください。警察官に事故を記録してもらうことで、後々のリスクを避けることができます。通報しないと交通事故証明書が発行されず、事故の存在自体が否定される可能性があるため、当日通報しなかった場合でも後日なるべく早く事故の届け出をするべきです。

けがをしている場合には、あとで警察に診断書を提出して人身事故の扱いにすることも重要です。人身事故になれば警察が捜査として実況見分を行い実況見分調書を作成するため、事故状況を証明するのに役立ちます。人身事故とされていないと、治療費や慰謝料を否定される可能性もあります。

1-3. 加害者の情報を確認する

自転車に乗っていた加害者の名前、電話番号、住所を聞き、記録しておきます。確認せずに逃げられた場合、損害賠償を請求するのが非常に難しくなります。加害者が子どもの場合には保護者の名前や連絡先、学校名も聞いておきます

また、加害者が自転車保険や個人賠償責任保険などの保険に加入しているかどうかも確認し、加入している場合は保険会社名も確認しておきます。保険加入の有無で補償の請求先や方法が大きく違うためです。

1-4. 事故現場の状況を記録し証拠を保存する

事故現場の状況の記録はあとでトラブルになった場合に証拠として役立ちます。スマートフォンのカメラで、事故の現場や加害者の自転車、自分のけが、壊れた物などを複数の角度から撮影してください。

目撃者がいる場合には連絡先を聞いておくことをお勧めします。周囲の防犯カメラやドライブレコーダーの映像も証拠になるため、近くにいた車のナンバーや防犯カメラの位置を控えておくのも有効です。

1-5. すみやかに病院(整形外科)を受診し診断書をもらう

できるだけ早く医療機関を受診して検査や治療を受けます。外傷や痛みがなくても、検査をして初めてけがを負っていることが判明することもあります。大したことはないと思っても、早期に受診することが重要です。受診が遅れると事故とけがとの因果関係が疑われ、損害賠償の請求が難航するおそれがあります。

検査や診断などの医療行為ができるのは医師だけです。整骨院や接骨院ではなく、必ず整形外科などの医療機関を受診してください。受診してけがをしていることがわかったら医師に診断書を作成してもらい、警察に提出して人身事故の扱いにすることも重要です。

1-6. 自分の保険会社へ連絡

自分が加入している任意保険会社に連絡します。人身傷害保険に加入していれば、損害の補償を受け取ることができます。自動車保険や火災保険に付帯している弁護士費用特約が使えれば、弁護士に依頼する場合の費用を保険会社が負担してくれます。また、医療保険からけがの保険金が支払われることもあります。

家族の保険が使える場合もあるため、自分の保険会社に連絡して使える保険がないか確認することをお勧めします。

2. 【ケース別】自転車にひかれたら、損害賠償は誰に請求する?

自転車にひかれてけがをした場合、誰に対して損害賠償請求をすればよいのでしょうか。ケース別に解説します。

2-1. 加害者本人が保険に加入している場合

法律上、事故によって損害を発生させた加害者は、その損害を賠償しなければならないとされています。そのため、自転車との事故の場合も原則として加害者本人に対して請求します。

ただし、加害者が自転車保険や個人賠償責任保険などに加入している場合には、加害者に代わって保険から賠償されるため、保険会社に請求します。最近は自転車保険への加入を義務づける自治体も増えているため、保険の有無を必ず確認してください。

保険会社が対応する場合には、必要な手続きや書類は保険会社が案内してくれることがほとんどです。けがの治療が続いている間は、基本的に保険会社から治療費が支払われます。

治療が終了すると最終的な賠償額を計算できるようになるため、保険会社から金額が提示されます。示談交渉により最終的な金額を決め、最後に免責証書などの書類を作成して示談成立となります。

2-2. 加害者本人が無保険の場合

加害者が無保険の場合には、加害者本人に請求します。治療費は自分でいったん支払ったあとに加害者に請求しますが、スムーズに支払われるとは限りません。

治療が終了したら自分で損害額を計算し、加害者本人と示談交渉する必要がありますが、連絡がとれない、責任を否定される、金額が折り合わないといった問題が起きることがあります。事故から時間が経っている場合には、時効になるのを防ぐために「誰が誰に何をいつ送ったか」を郵便局が証明する内容証明郵便での請求が必要な場合もあります。

示談できたとしても、加害者に支払い能力がなければ実際に全額を受け取ることは難しいかもしれません。自賠責保険への加入が義務づけられている自動車との事故と異なり、自転車との事故では加害者の支払い能力に左右されるため、ほとんど補償がされない可能性もあります。

2-3. 加害者が子どもの場合

加害者が子どもの場合には、責任能力の有無によって誰が法的な責任を負うのかが変わります。責任能力とは「自分の運転によって事故を起こしてしまった場合には、その被害を償う必要があることを認識する能力」のことです。おおよそ12、13歳で責任能力があると認められ、この場合には子ども本人が損害賠償の責任を負います

責任能力が認められないときには、その監督義務者、つまり通常はその子どもの親が損害賠償の責任を負うのが原則です。この場合は親に対して請求します。

どちらの場合も、親が個人賠償責任保険などに加入していれば、保険でカバーできるケースがほとんどです。

2-4. 加害者が配達員など業務中の場合

宅配便やフードデリバリーなど、業務中の自転車にひかれた場合は、自転車を運転していた加害者に対して損害賠償を請求します。

加害者が使用者の指揮監督のもとで事業に従事して事故を起こしたときには、使用者に対して請求することができます。加害者を雇用している会社が使用者の典型例です。加害者本人が保険に加入していなかったり支払い能力がなかったりする場合でも、使用者に請求することで賠償金が支払われる可能性が高まります。

ただし、Uber Eats(ウーバーイーツ)の配達員のように運転者が個人事業主とされている場合には、プラットフォーム事業者であるウーバーイーツに使用者としての責任を追及するのは現時点では困難です。事業者の指揮監督のもとで運転していると言えるのか争いがあり、これを認めた裁判例も今のところないためです。

2-5. ひき逃げで加害者が不明な場合

ひき逃げで自転車が立ち去ってしまった場合、警察の捜査や防犯カメラの映像などから加害者が特定されるのを待たなければなりません。加害者や自転車の情報をできるだけ記録しておくことが重要です。

それでも加害者がわからない場合には、補償を受けるのは難しいのが実情です。自動車によるひき逃げ事故であれば政府保障事業から補填を受けられますが、自転車事故にはそのような制度がありません。自分が加入している人身傷害保険が使える可能性があるため、保険会社に相談してみてください。

3. 自転車にひかれたときに請求できる賠償金の内訳と相場

自転車事故に遭ったときに請求できるのは、事故によって発生した損害の賠償です。賠償金の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)の3つがあり、弁護士基準が最も高額です。

交通事故の賠償金の3つの算定基準の図。弁護士基準が被害者にとって最も有利
交通事故の賠償金の3つの算定基準の図。弁護士基準が被害者にとって最も有利

自転車にひかれたときに請求できる賠償金には、主に次の項目があります。

3-1. 治療関係費|治療のために支払った費用

通院して治療を受けるためにかかった、次のような費用が賠償の対象になります。

【治療費】病院での治療にかかった費用、整骨院や接骨院の施術料、薬局での調剤費用など、実際にかかった金額を請求できます。

【付添費】医師の指示があるときや被害者が幼児のときなど、付き添いが必要な場合は、弁護士基準で入院だと1日あたり6500円、通院だと1日あたり3300円の付添費が認められます。

【通院交通費】通院のための交通費で、公共交通機関なら実際にかかった金額を請求できます。自家用車利用の場合におけるガソリン代は、1kmあたり15円が相場です。

3-2. 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

けがを負ったことにより精神的苦痛を受けたことに対する賠償です。精神的苦痛の程度をできるだけ客観的かつ公平に金額に反映させるため、原則として入通院の期間を基準にして決められます

弁護士基準では、通院期間を基準の表に当てはめて計算します。たとえば打撲などの軽傷の治療で90日間通院した場合には「別表Ⅱ」の通院3カ月に該当し、慰謝料は53万円です。骨折などの重傷で120日間通院した場合には「別表Ⅰ」の通院4カ月で90万円です。

入院がある場合にはさらに高額化します。

交通事故の入通院慰謝料早見表(別表Ⅱ/軽傷の場合)。打撲などの軽傷の治療で90日間通院した場合には「別表Ⅱ」の通院3カ月に該当し、慰謝料は53万円となる
交通事故の入通院慰謝料早見表(別表Ⅱ/軽傷の場合)。打撲などの軽傷の治療で90日間通院した場合には「別表Ⅱ」の通院3カ月に該当し、慰謝料は53万円となる
交通事故の入通院慰謝料早見表(別表Ⅰ/重傷の場合)。骨折などの重傷で120日間通院した場合には「別表Ⅰ」の通院4カ月に該当し、慰謝料は90万円となる
交通事故の入通院慰謝料早見表(別表Ⅰ/重傷の場合)。骨折などの重傷で120日間通院した場合には「別表Ⅰ」の通院4カ月に該当し、慰謝料は90万円となる

3-3. 後遺障害慰謝料

事故により後遺症が残ったことに対する慰謝料です。後遺症とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない「症状固定」となったあとも残る症状や障害のことです。

自動車事故の場合には、自賠責制度で後遺症の部位や程度によって中立の機関が後遺障害の等級を認定し、その等級に基づいて金額が決められます。弁護士基準での慰謝料額は、14級が110万円、1級が2800万円です。

ところが、自転車事故にはこのような後遺障害の認定制度がありません。加害者の任意保険会社が独自に認定することもありますが、中立の機関による認定ではありません。後遺症に対する十分な補償を獲得するためには、後遺症の存在と程度を医学的に立証する必要があり、裁判が必要になることもあるため、弁護士によるサポートが重要です。

3-4. 死亡慰謝料

被害者が死亡したことに対する慰謝料です。結婚や子どもの有無などによって異なりますが、弁護士基準で2000万円以上です。

3-5. 休業損害|仕事を休んだために減少した収入

仕事を休んだことで減少した収入が補償されます。

給与所得者の場合は、弁護士基準では事故前3カ月分の給与をもとに1日あたりの金額を出し、休業した日数や時間にかけ合わせて算出するのが一般的です。有給休暇を使った場合や学生がアルバイトを休業した場合も補償の対象になります。

自営業者の場合は、事故前の確定申告の所得額をもとに1日あたりの金額を出しますが、事業継続のために必要な家賃や従業員の給与などの固定費も所得額に加算できます。これに休業した日数をかけ合わせて算出します。

主婦や主夫などの家事従事者の場合も補償されます。賃金センサスと呼ばれる平均収入に関する統計から女性労働者の平均賃金額を出し、けがのために家事ができなかった期間と割合をかけ合わせて算出することが多いです。

3-6. 逸失利益|後遺症や死亡によって減少した収入

「逸失利益(いっしつりえき)」とは、後遺症や死亡によって、将来得られるはずだった収入が得られなくなったことに対する補償です。

後遺症逸失利益は「事故前の年収×後遺障害等級に応じた労働能力喪失率×喪失の期間に応じたライプニッツ係数」の計算式で算出します。後遺症の程度が重いほど、また年齢が若いほど、高額化する仕組みです。ライプニッツ係数とは、逸失利益などを算出する際、将来受け取るはずのお金を一括で前倒しして受け取る分、事前に利息を控除して現在価値に換算するための数値を言います。

死亡逸失利益は「事故前の年収×(1-生活費控除率)×67歳までの期間に応じたライプニッツ係数」の計算式で算出し、やはり年齢が若いほど高額化します。

3-7. 物損

事故によって破損した衣服、バッグ、スマートフォンなども賠償されます。ただし、購入時の金額ではなく、破損した時点での価格が補償の対象です。

3-8. 将来介護費

後遺症によって将来にわたって介護が必要になった場合、医師の指示や症状の程度から必要性があると判断されると、弁護士基準で1日8000円の介護費が認められます。

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4. 要注意! 自転車事故の過失割合はどう決まる?

事故の被害者にも不注意やミスなどの落ち度がある場合、落ち度の割合の分だけ賠償の金額が減ります。この落ち度の割合を「過失割合」と言います。事故の種類ごとに基本となる過失割合が設定されており、被害者の年齢や事故の具体的な状況などの要素を考慮して、個別ケースに合わせて割合を修正します。

横断歩道上で自転車にひかれた場合】

横断歩道上で自転車にひかれた場合の過失割合の図説。基本の過失割合は「0:100」となる
横断歩道上で自転車にひかれた場合の過失割合の図説。基本の過失割合は「0:100」となる

横断歩道では歩行者が法的に強く保護されており、自転車は歩行者が横断しようとしている横断歩道では直前で一時停止し、通行を妨げないようにしなければなりません。過失割合もこれを反映しています。

【信号のない横断歩道上でひかれた場合】
基本は「0:100」ですが、幹線道路での事故や自転車が通る直前を横断した場合などには5%程度加算され、被害者が子どもや高齢者の場合には5%減算されます。

【横断歩道のない交差点上でひかれた場合】

横断歩道のない交差点での事故の過失割合を図説。基本の過失割合は「15:85」となる
横断歩道のない交差点での事故の過失割合を図説。基本の過失割合は「15:85」となる

歩行者側にも安全確認をする義務があるため、基本の過失割合は「15:85」です。

【横断歩道付近でひかれた場合】

横断歩道付近での事故の過失割合を図説。過失割合は「35:65」が基本となる
横断歩道付近での事故の過失割合を図説。過失割合は「35:65」が基本となる

横断歩道が近くにある場合には、道路を横断する際は横断歩道を使わなければならないとされているため、横断歩道を使わなかった場合の基本過失割合は「35:65」と高めに設定されています。

加害者の保険会社から提示される金額は、被害者に有利な修正要素が考慮されていないなど、不利な過失割合で計算されていることが少なくありません。保険会社に任せきりにするのではなく、基本割合や修正要素を踏まえて交渉することが重要です。

5. 【高額事例】自転車事故の賠償金は1億円近くになることも

自転車にひかれた事故でも、被害の状況によっては賠償金が膨大になることがあります。実際の例を紹介します。

神戸地方裁判所で2013年7月4日に出された判決では、合計9500万円あまりの損害賠償が認められました。この事例では、当時11歳(小学5年生)の子どもが運転する自転車が、坂道を時速20kmから30kmで走行して62歳の歩行者と正面衝突し、被害者が急性硬膜下血腫、頭蓋骨骨折などの傷害を負って植物状態になりました。

裁判所は、治療関係費や付添費などで約438万円、休業損害約143万円、入院慰謝料300万円、後遺障害慰謝料2800万円、後遺障害逸失利益約2190万円、将来の介護費用約3938万円の合計約9800万円を認定したうえで事故による障害で受給した障害年金の額を控除し、加害者の責任能力がなかったため監督義務者である親への約9500万円の請求を肯定しました。

自転車は多くの人が日常的に使用する移動手段ですが、高速で歩行者と衝突すると重傷を負わせ、重度の後遺症が残る可能性があります。今後の生活にも大きな支障が出るため、障害の程度や生活の支障に対して適正で十分な賠償金が受け取れるよう、主張立証を尽くす必要があります。

6. 自転車にひかれたときに、自分の保険は使える?

人身傷害保険に加入している場合、契約内容によっては自転車にひかれた際の損害も補償の対象になります。この場合、過失割合や加害者との示談の有無にかかわらず、治療費、休業損害、慰謝料などの実際に発生した損害に対する補償が、契約の範囲内で自分の保険から支払われます。

自分の車の任意保険だけでは補償されませんが、任意保険とセットで人身傷害保険を契約している場合があるため、確認してみてください。

また、医療保険もけがの程度や入院の有無によって一定の金額が支払われる契約になっているものもあるため、こちらも確認することをお勧めします。

7. 高齢者の家族が自転車にひかれたときの対応ポイント

高齢者が自転車にひかれると、けがや後遺症が重傷化しやすかったり、自分では損害賠償の請求が難しい可能性があったりと、特有な事情があるため、特に次の3点に注意が必要です。

7-1. 保険会社の提示額をうのみにしない

高齢者に限りませんが、保険会社の提示額は任意保険基準で算定しているため、弁護士基準よりも低いことがほとんどです。付添費や将来介護費などは被害者側から求めなければ算定されないケースも多く、過失割合も加害者側に有利な事情だけが考慮されていることがあります

保険会社の提示額は弁護士基準より低いという前提をしっかり踏まえ、弁護士と協力しながら適切な補償を求めていくべきです。

7-2. 判断能力を欠いている場合は、成年後見人の選任が必要

認知症や事故の後遺症などで被害者の判断能力が十分でない場合には、損害賠償の請求や示談などの法的行為ができません。家庭裁判所に後見開始の申立てをして親族が成年後見人となったうえで、本人に代わって請求や示談を行う必要があります。診断書や財産目録など多くの書類を裁判所に提出する必要があり、審査には時間もかかります。

この手続きにも弁護士の支援を受けられるため、損害賠償請求と併せて相談することをお勧めします。

7-3. 介護保険サービスを利用する場合は「第三者の行為による傷病届」の提出が必要

事故のけがや後遺症によって介護サービスが必要になり、介護保険を利用する場合には、市区町村に「第三者行為による傷病届」などを提出しなければなりません。本来、介護費用を負担すべきは事故の加害者であり、市区町村が加害者に対して請求するためです。

提出の方法や必要な書類などは市役所や町村役場で教えてもらえます。届け出をしないと、市区町村から費用の返還を請求されるなどのデメリットがあるため、注意が必要です。

8. 自転車にひかれたときに最大限の賠償金を獲得するためのポイント

自転車にひかれた場合に、適正で十分な賠償金を得るためには、以下のポイントが重要です。

  • 【重要】交通事故に精通している弁護士に依頼する

  • 事故直後から適切な頻度で通院する

  • 後遺症に関する主張や立証の準備を十分に整える

8-1. 【重要】交通事故に精通している弁護士に依頼する

事故の対応を被害者が自ら行うには、かなりの労力が必要になるだけでなく、十分な補償が得られるとも限りません。

交通事故に精通している弁護士であれば、加害者が無保険でも補償を受ける方法を検討できます。また、相手が保険に入っている場合には、保険会社が提示する賠償金額に対して損害の漏れを指摘し、弁護士基準による計算や適切な過失割合の主張をすることで、増額交渉ができます。

弁護士は後遺症が的確に評価されるように主張や立証をサポートし、示談交渉から訴訟まで一貫して任せることができるため、自分の労力や不安はかなり軽減されます。相手への対応に心配がある場合には、弁護士に相談し依頼することを検討すべきです。

8-2. 事故直後から適切な頻度で通院する

事故後はすみやかに医療機関を受診し、けががある場合には医師の指示に従って、完治または症状固定の診断を受けるまで適切な頻度で通院することが大切です。保険会社から治療費の支払いを打ち切られたり、後遺症の診断や認定に影響したりする可能性があるためで、自分だけの判断で通院を終了してはいけません

8-3. 後遺症に関する主張や立証の準備を十分に整える

後遺症が残った場合に請求する慰謝料や逸失利益は高額になるケースは少なくありません。もしそれらが認められないと、大変な損失になります。事故の後遺症として認められるためには、医学的根拠に基づく主張や立証が不可欠です。後遺障害等級認定の制度がない自転車の事故では、自動車事故にも増して綿密で慎重な準備が必要になります。

9. 損害賠償請求の弁護士費用は、相手に請求できる?

示談交渉で解決する場合は、原則として弁護士費用を加害者側に請求することはできません。弁護士に依頼するかどうかは被害者の自由であり、弁護士費用は事故によって当たり前に発生する損害とは言えないからです。

裁判で損害賠償が認められた場合には、損害額の1割程度が弁護士費用として加算されるのが通常です。裁判を起こす際には弁護士に依頼するのが一般的であり、一定割合の弁護士費用が事故と関連のある損害として認められています。

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10. 弁護士費用が心配なときには「弁護士費用特約」や無料相談を賢く活用

弁護士費用特約は、弁護士に相談したり依頼したりする際にかかる弁護士費用を保険で負担してくれる特約です。この特約が使えれば300万円までの弁護士費用をまかなえるため、自転車による事故の場合は多くのケースで弁護士費用の負担なく依頼できます。

弁護士費用特約は自動車保険などに付帯していることが多いほか、火災保険やクレジットカードに付帯している場合もあります。保険証券を確認し、保険会社に問い合わせましょう。自分の保険だけでなく、家族の保険に付帯している弁護士費用特約が使えることもあります

弁護士費用特約がない場合でも、相談や依頼はできます。初回相談を無料で実施している法律事務所は珍しくありません。また、各地の弁護士会に窓口がある日弁連交通事故相談センターでも無料相談を受け付けています。依頼時に発生する着手金を無料にしている事務所もあるため、自分のニーズに合った弁護士を探すことをお勧めします。

11. 自転車にひかれた事故に関してよくある質問

Q. 自転車にひかれて倒れたり、軽い接触でかすったりした程度では、賠償金は請求できない?

外傷や痛みがなくても、検査で初めてけがが発覚することもあるため、まずはできるだけ早く医療機関を受診してください。けががあれば治療費や慰謝料などを請求でき、検査費用も賠償金として請求できます。必要に応じて弁護士に相談し、対応策を考えることが大切です。

Q. 軽い自転車事故でも、自転車にぶつけられたら病院に行くべき?

事故直後は大したことはないと思っても、あとから痛みなどの症状が出てくるのはよくあることです。けがをしている可能性があるため、できるだけ早く医療機関を受診すべきです。

Q. 事故から数日後など、時間が経って痛みが出てきた場合でも賠償金は請求できる?

事故によるけがであれば賠償金を請求できます。ただし、事故から時間が経てば経つほど事故によるけがだと証明するのが難しくなるため、すみやかに医療機関を受診し、弁護士への相談も検討してください。

Q. 相手が賠償金を支払ってくれない場合、どうすればいい?

被害者が請求しても相手が賠償金を支払ってくれない場合、弁護士からの請求や裁判によって支払いを求める手段があります。むやみに支払いを求めてもこじれて解決が遠のくため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 加害者に支払い能力がない場合はどうなる?

加害者に支払いの意思がある場合には、分割での支払いにも応じるなど柔軟に対応し、しっかりと書面化する、保証人をつけるなどの対処を考えます。自分の人身傷害保険から補償を受けられる場合があるため、保険会社に確認することをお勧めします。

Q. 服が破れただけなど、物損のみでも請求できる?

事故によって服が破れたのであれば、請求できます。ただし、認められるのは服の購入価格ではなく、事故の時点での価格です。いつ、いくらで購入したのかも参考になるため、購入時の資料があれば証拠として提出します。

12. まとめ 自転車にひかれる事故に遭ったら弁護士を有効に活用して早期解決を

身近な移動手段である自転車との衝突は、誰にでも起こり得る事故です。しかし、加害者が保険に入っておらず十分な補償がされない、賠償に慣れていない加害者と直接対応しなければならない、後遺障害等級認定の制度がないなどの、自転車特有の問題に突き当たって、解決が難航することがあります。

適正で十分な補償を受けるためには、専門知識や経験が豊富な弁護士にサポートを求めることが有効です。自転車との事故に遭ったら、まずは信頼できる弁護士に相談し、早期の解決をめざしてください。

(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)

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山口統平法律事務所 代表弁護士
愛知県弁護士会所属、登録番号48444。企業法務、一般民事事件を幅広く取り扱う一方で、交通事故、債務整理、男女問題を主要分野として多数の案件を解決してきた。特に交通事故案件については、物損事故から人身事故、後遺障害等級認定が争点となる事案、死亡事故に至るまで、被害者側・加害者側双方の代理人経験を有する。保険会社対応の実務に精通しており、治療費打切りへの対応、後遺障害等級の妥当性検討、逸失利益・慰謝料算定、過失割合の修正交渉など、実務上争点となりやすいポイントを的確に整理した交渉・訴訟対応を強みとする。また、交通事故に付随して問題となる休業損害、主婦・自営業者の収入認定、車両の評価損や全損・修理費をめぐる紛争などについても、裁判例をふまえた現実的かつ依頼者利益を重視した解決を心がけている。刑事事件を伴う交通事故についても弁護経験があり、民事・刑事を横断した視点からのアドバイスが可能である。YouTubeチャンネル「弁護士とーへいの法律問題110番」を通じて、交通事故や身近な法律問題についても積極的に情報発信を行っており、親しみやすさをモットーに活動している。
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このサイトでは、交通事故問題の解決に役立つ正確な情報を提供するとともに、あなたの状況に合った弁護士をスムーズに検索できるサービスを通じて、あなたの「安心の道しるべ」となることを目指しています。
「まさか」の出来事をなかったことにはできません。しかし、その後の人生を少しでも心穏やかに過ごしていくために、頼れる専門家と共に進んでいくことは可能です。
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