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1. 交通事故で足を切断することになったら、後遺障害等級の申請を
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の対象となります。後遺障害等級には1級から14級まであり、症状が重いほど等級は小さくなります。足を切断した場合は切断の部位や程度に応じて等級が決まります。
認定された等級によって受け取れる後遺障害慰謝料や、事故に遭わなければ将来にわたり得られたはずの収入である逸失利益の額が変わります。そのため、交通事故で足を切断した場合は、必ず後遺障害等級認定申請を行い、適切な等級認定を受けることが重要です。
後遺障害等級認定の申請は、治療が一段落し、これ以上改善が見込めない状態である「症状固定」と診断されたあとに可能です。ただし、適正な後遺障害等級認定を受けるためには専門的な知識が必要になるため、弁護士に依頼してサポートを受けながら申請を行うことをお勧めします。
2. 交通事故で足を切断したあとに起こり得る合併症や後遺症
交通事故で足を切断した場合、合併症や後遺症に悩まされることがあります。考えられる合併症や後遺症について解説します。
2-1. 関節の拘縮
関節の拘縮(こうしゅく)とは、関節の柔軟性が失われて硬くなり、動きが悪くなった状態を言います。足の切断の程度がふとももから下の大腿切断にいたった場合では、股関節を外に開いて曲げる外転方向、または足を前に出す屈曲方向に硬くなりやすいとされています。この場合、股関節の動きが悪くなり、義足を使った歩行に支障が生じることがあります。
2-2. 幻肢痛
幻肢痛(げんしつう)とは、足を失ったにもかかわらず、足が存在しているかのように痛みを感じる症状を言います。通常は早期のリハビリ治療と、適切な薬物治療などで徐々に消失していくとされています。
2-3. 断端神経種
断端神経種(だんたんしんけいしゅ)とは、足の一部を切断したあと、切れた神経の端が回復しようとして良性の腫瘍を形成し、そこが過敏になって激しい痛みやしびれを引き起こす状態を言います。マッサージや薬物治療などで徐々に改善するとされています。
2-4. 傷口の感染症
足の切断部位や手術で切った傷口に細菌が入り込み、増殖して炎症を起こすことがあります。手術を実施する場合は抗生物質の投与などで予防を行いますが、それでも感染が起こるリスクはあるとされています。
2-5. 壊死
壊死(えし)とは、細胞や組織が局所的に死滅する状態を指します。足を切断すると、切断部位周辺の血流循環が急激に悪化し、細胞に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなったり、患部の感染症により壊死が起こったりする可能性があります。患部に弾性包帯を巻くことで血腫や浮腫を予防し、血流を促進させて壊死を防ぐなどの方法がとられますが、術後管理が不十分な場合は壊死する場合があります。
2-6. 精神的合併症
足の切断に伴い、身体機能の喪失感や今後の社会復帰に対する不安から、抑うつ症状が出現し、うつ病などの精神的疾患を発症するケースがあります。家族や周囲による精神的なケアと同時に、身体機能と自信(精神的安定)の回復にリハビリが欠かせません。
3. 交通事故で足を切断した場合に認定され得る後遺障害等級
交通事故で足を切断した場合、たとえ合併症が生じなくても、足の切断自体で後遺障害等級が認定される可能性は十分にあります。どのような後遺障害等級に該当するか、具体的に解説します。
3-1. 足指を切断した場合
足の指を切断した場合、後遺障害等級として認定される可能性があるのは、5級または7級から14級までのいずれかの等級です。失った足指の本数や、失った足指がどの指か、失った関節の範囲(足の複数の関節のうちどの部分までか)によって等級が決定されます。
後遺障害等級 | 基準 |
|---|---|
5級8号 | 両足の足指の全部を失ったもの |
7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
8級10号 | 1足の足指の全部を失ったもの |
9級14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
10級9号 | 1足の第1指の足指またはほかの4の足指を失ったもの |
11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
12級11号 | 1足の第2の足指を失ったもの、 第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは 第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
13級9号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの |
14級8号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの |
具体的には以下のいずれかに該当する状態になった際は、後遺障害等級として認定される可能性があります。
【親指の場合】
指先の骨である末節骨の半分以上を失った状態、または指の曲げ伸ばしに関わる指節間関節に著しい運動障害が残った状態
【そのほかの4つの指の場合】
最も指先側の関節である遠位指節間関節より先の部分を失った状態、または足の甲の骨と足の指の骨をつなぐ中足指関節か指の第二関節にあたる近位指間関節に著しい運動障害が残った状態
3-2. 片足を切断した場合
片足を切断した場合、後遺障害等級として認定される可能性があるのは、以下の表のとおり4級、5級または7級の各等級のいずれかです。失った足の関節の範囲によって等級が決定されます。
後遺障害等級 | 基準 |
|---|---|
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
3-3. 両足を切断した場合
両足を切断した場合、後遺障害等級として認定される可能性があるのは、以下の表のとおり1級、2級または4級の各等級のいずれかです。失った足の関節の範囲によって等級が決定されます。
後遺障害等級 | 基準 |
|---|---|
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
4. 交通事故の賠償金の算定基準
交通事故の損害を算定する基準には以下の3つがあります。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準は、自賠責保険が独自に設定している基準です。「最低限度の補償」を目的としたもので、補償金額に上限があるなど補償の範囲が限定されています。
【任意保険基準】
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている補償基準です。具体的な基準は、各保険会社が内部的に定めており、一般には公開されていません。おおむね、自賠責保険基準と弁護士基準の中間くらいの金額とされています。
【弁護士基準(裁判所基準)】
弁護士基準は、過去の裁判例などをもとに裁判所の考え方などを踏まえて定められた基準で、弁護士が通常使用する基準です。仮に裁判になった場合、裁判所も基本的にはこの基準を参考にして判断します。
算出される金額は3つの基準のなかで最も高額であり、かつ適正な金額です。被害者として十分な補償を得るためには弁護士基準で請求することが重要です。
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5. 交通事故で足を切断した場合に請求できる賠償金の項目と相場
交通事故で足を切断した場合に請求できる賠償金の項目には、以下のようにさまざまなものがあります。
治療関係費
入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
休業損害
逸失利益
そのほか(装具代、家屋や車両の改造費など)
5-1. 治療関係費
治療関係費には、治療費、付添看護費、通院交通費、診断書などの文書作成費などが含まれます。これらは、基本的に実費が請求可能です。ただし、付添看護費は、医師の指示により付き添いが必要と認められる場合に限ります。近親者が付き添いをした場合の相場は、弁護士基準で入院1日6500円、通院1日3300円です。
また、通院交通費は基本として、公共交通機関を利用した場合の料金が想定されますが、医師の判断によりタクシーの利用が必要とされる場合には、その料金も対象となります。足を切断した場合、歩行そのものに支障が出るため、タクシーを利用した通院は認められやすい傾向です。
5-2. 入通院慰謝料
入通院慰謝料は、入院や通院の日数によって基準金額が変わります。
自賠責保険基準による入通院慰謝料は、1日あたりの慰謝料額を4300円として計算します。計算式は以下のとおりです。
入通院慰謝料額=4300円×対象日数
※対象日数は「治療期間」または「実入通院日数×2」のいずれか少ないほう
弁護士基準で入通院慰謝料を算定する場合には、以下の早見表を参考にします。入院期間と通院期間を早見表に当てはめ、交わった部分が基準金額です。
なお、入院期間が7カ月以上、通院期間が12カ月以上のケースについては、『民事交通訴訟 損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)などに掲載されている算定表をご確認ください。
【別表Ⅰ:弁護士基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)】
以下の3つの具体例から、自賠責保険基準と弁護士基準の入通院慰謝料の基準金額を紹介します。
【入院3カ月、通院9カ月(通院実日数90日)の場合】
自賠責保険
基準:154万8000円(4300円×360日)
弁護士基準:226万円
【入院6カ月、通院10カ月(通院実日数100日)の場合】
自賠責保険基準:206万4000円(4300円×480日)
弁護士基準:294万円
【入院11カ月、通院9カ月(通院実日数90日)月の場合】
自賠責保険基準:258万円(4300円×600日)
弁護士基準:338万円
弁護士基準では、例外的に治療期間が長期になり、かつ実通院日数が極端に少ない場合などに実通院日数を基準とすることがあります。しかし、上記では例外にあたらない原則的な基準のみを紹介しています。
また、自賠責保険基準はけがの治療と精神的苦痛に対する補償の上限を、120万円と定めています。これには、治療費、休業損害、入通院慰謝料などが含まれます。したがって、たとえば自賠責保険基準での入通院慰謝料が258万円と算出されても、満額支払われることはありません。
足を切断した場合、リハビリを目的とした病院に転院してさらに入院治療を行うこともあり、通院期間も含めると治療期間が1年以上に及ぶことも珍しくありません。また、場合によっては、入院自体が1年以上になることもあります。入通院にかかった日数を適切に算定し、それに対応した入通院慰謝料を請求することが大切です。
5-3. 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故によるけがの治療を続けても症状が残り、後遺障害等級が認定された場合に、その精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。後遺障害の内容や程度によって1級~14級に分けられており、等級が重いほど慰謝料の金額も高くなります。
自賠責保険基準と弁護士基準における後遺障害等級別の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
なお、下記の表には、足の切断によって認定される可能性がある後遺障害等級のみを記載しています。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 (裁判所基準) |
|---|---|---|
1級 | 1150万円 | 2800万円 |
2級 | 998万円 | 2370万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
5-4. 休業損害
休業損害とは、けがの治療で入院や通院が必要となり、仕事を休んだ分の補償を請求できる賠償項目です。けがの完治、または症状固定に至るまでの休業について認められます。自賠責保険基準の場合、原則として日額6100円で、これに仕事を休んだ具体的な日数をかけて算出します。
一方、弁護士基準では、実際に減少した収入の実額を算定して請求します。職業によって計算方法が異なりますが、たとえば、会社員の場合は以下のように計算します。
休業損害(会社員の場合)=休業した日数(遅刻や早退などを含む)×1日あたりの賃金額
なお、弁護士基準による1日あたりの賃金額は、以下のように計算します。
1日あたりの賃金額(弁護士基準)= 事故前3カ月間の給与総額÷実際に働いた日数
【具体的な計算例】
条件
・事故前3カ月の給与総額が90万円(1カ月あたり30万円)
・実際に働いた日数が60日(1月あたりの休日を10日とし、差し引いた日数)
・事故後の休業(欠勤)日数が20日
自賠責保険基準、弁護士基準それぞれの計算例
・自賠責保険基準:6100円×20日=12万2000円
・弁護士基準:(90万円÷60日)×20日=30万円
5-5. 逸失利益
逸失利益とは、事故に遭わなければ将来にわたり得られるはずだった収入(利益)のことです。交通事故で足を切断し後遺障害が残った場合、これまでと同じように働くことは難しいため、その分の損失を逸失利益として請求できます。
後遺障害による逸失利益は、以下の計算式で算出します。
逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入額は事故前年の被害者の年収額を用います。労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級ごとの相場に応じて算定します。たとえば、1級の労働能力喪失率は100%、5級は79%などです。労働能力喪失期間は、症状固定時の年齢から67歳までの期間をそれぞれ基準とします(高齢者の場合など一部例外はあります)。
労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数は、自動車損害賠償保障法施行令別表第2-2を参照して当てはめます。なお、ライプニッツ係数とは、将来受け取るはずの収入を今まとめて受け取ることで発生する利息分を、中間利息控除としてあらかじめ差し引いて現在の価値に換算するための数値です。
自賠責保険基準も弁護士基準も、逸失利益の基本的な計算方法は共通しています。しかし、細かくは違いがあることや、自賠責保険基準では後遺障害等級に応じた「補償上限額」が設定されている点に注意が必要です。
具体的な例を見てみましょう。
【具体的な計算例】
条件
・基礎収入額(年収)500万円
・後遺障害等級7級8号=労働能力喪失率56%
・症状固定時年齢35歳=労働能力喪失期間「67歳−35歳=32年間」
計算例
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
=500万円×56%×32年間に対応するライプニッツ係数
=500万円×56%×20.389
=5708万9200円
後遺障害等級7級の場合、自賠責保険では逸失利益や後遺障害慰謝料などを合わせた総額で「1051万円」が補償の限度額です。つまり、この金額までしか後遺障害慰謝料が支払われることはなく、弁護士基準で算出される金額とは大きな差があります。
5-6. そのほか(装具代、家屋や車両の改造費など)
交通事故で足を切断し、車椅子や義足が必要になった場合、それらの装具の購入費も請求可能です。装具は将来の買替費用に関しても請求が認められています。また、足の切断による後遺障害で介護が必要と認められれば、将来分の介護費用を請求することも可能です。
さらに、足の切断に伴い、家屋や車両のバリアフリー化などを実施した場合、それらにかかった費用も、必要かつ相当と認められた範囲について請求が可能です。
ただし、将来分の費用を一時金としてまとめて受領する場合は、将来分について中間利息控除を行うのが一般的です。
6. 交通事故で足を切断した場合の裁判例
交通事故で足を切断し、後遺障害慰謝料の金額や基礎収入の認定額が争点となった 裁判例を紹介します。
【京都地方裁判所令和7年3月25日判決】
事故と事故後の状況
・被害者は事故当時大学生
・被害者が自転車、加害者は中型貨物車の交差点での事故
・事故により被害者は右足指の開放骨折などの傷害を負い、その後壊死した右足指2指について手術により切断
・入院約2カ月、その後の通院とリハビリで1年6カ月ほど治療し症状固定
判決の概要
裁判では、後遺障害慰謝料の金額、逸失利益の基礎となる基礎収入の認定額などについて、当事者の間で争いが生じました。裁判所は2つ以上の異なる後遺障害を認め「併合9級」と認定したうえで、これらの点に関して以下のように判断しました、最終的に加害者に対して、被害者への総額約5300万円の損害賠償を命じています。
併合とは、2つ以上の後遺障害が認定された場合に、それぞれの等級によって重い等級に繰り上げることがあるしくみのことです。ただし、今回の裁判の事案では、14級と9級の後遺障害の認定だったため、繰り上げが行われることなく、すべての後遺障害をまとめて併合9級相当と判断されています。
ポイント
①後遺障害慰謝料の金額
本来、9級の後遺障害慰謝料の相場は690万円とされていますが、裁判所は以下の点などを考慮して、800万円を認定しました。これは、8級の830万円に近い金額です。
被害者の後遺障害のなかに、右足背の傷跡(醜状障害)が含まれていたこと
被害者は傷害の程度が重く、入通院治療を続けた影響で予定していた留学の時期を遅らせることとなり、留学期間も予定より短くなったこと
被害者が一度は内定を得た就職先での就労を、長時間の立ち仕事に耐えられないと考えて断念せざるを得なかったこと
②逸失利益の基礎収入認定額
被害者は事故当時および症状固定時には大学生であり、就職はしていませんでした。しかし、裁判所は以下の2点などを考慮し、全労働者の平均給与である令和4年(2022年)男女計学歴計全年齢平均賃金(国の作成する平均賃金の統計)を参照して、基礎収入額を496万5700円と認定しました。
被害者には学生として将来多様な就労の可能性があること
被害者が在籍していた大学の卒業生の就職先には、大手企業も多く含まれていること
7. 交通事故で足を切断した場合の損害賠償請求の流れ
交通事故で足を切断するという大きな事故に遭った場合、すぐにでも示談金(損害賠償金)を受け取りたいと考えるかもしれません。しかし、実際に示談金を受け取るまでには、さまざまな手続きを踏む必要があります。交通事故で足を切断した場合における損害賠償請求の主な流れを詳しく解説します。
7-1. 医療機関の受診
まずは医療機関を受診し、医師の指示に従って必要な検査や治療、リハビリを受けることが大切です。自己判断で通院をやめると、本来請求できるはずの損害賠償請求の一部または全部が認められないおそれがあります。
7-2. 完治または症状固定の診断
治療の結果、後遺症がなければ完治となり後遺症が残った場合は症状固定の診断を受けます。足を切断した場合、リハビリなどを行ったうえで症状固定となるケースがほとんどです。
治療の必要性や症状固定の時期を判断するのは、あくまで医師です。万が一、相手の保険会社から症状固定の診断前に治療費の打ち切りを打診されても、それに応じて治療をやめる必要はありません。保険会社からの通知に戸惑っている場合は、一度弁護士に相談することをお勧めします。
7-3. 後遺障害等級認定の申請
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の手続きを行いましょう。後遺障害等級認定手続きには、相手の保険会社が申請を行う「事前認定」と、被害者自身が必要書類を準備して申請する「被害者請求」の2つの方法があります。
相手の保険会社に申請を代わりに行ってもらう事前認定と異なり、被害者請求は被害者に有利な資料を自分で精査して提出できるため、適正な後遺障害等級の認定を受けやすいと言えます。
とはいえ、足の切断に関してはほかの後遺障害と比較して認定基準が明確なため、事前認定でも適正な後遺障害等級が認定されるケースは少なくありません。ただし、医師の診断書に足の切断範囲や状態がきちんと記されていることが前提です。
7-4. 示談交渉
後遺障害等級認定の結果が出たら、その結果と算定した損害の総額をもとに、加害者の保険会社と示談交渉を行います。加害者の保険会社から提示される示談金は、自賠責保険基準や任意保険基準をベースにした金額になっていることが多いです。適正な補償を受けるためには、弁護士基準で算定した金額をもとに交渉することが重要です。
7-5. ADRまたは訴訟
加害者との示談交渉がまとまらないときは、交通事故ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟を通じた解決をめざします。ADRとは、弁護士などが中立な立場の第三者として当事者間の話し合いに立ち会い、解決をめざす手続きです。ただし、あくまで話し合いによる解決が目的のため、激しい対立がある場合には決着がつかないこともあります。
一方、訴訟とは民事裁判のことで、話し合いによる解決が難しい場合に、決定権限を持った裁判所による判断を受ける手続きです。なお、実際には、訴訟中に話し合いで和解するケースが多くあります。
7-6. 賠償金の受け取り
示談交渉やADR、訴訟の結論が確定したら、加害者または加害者の保険会社から慰謝料を含む賠償金が支払われます。賠償金は結論が確定したのち、2週間から1カ月程度で支払われることが多いです。
8. 交通事故で足を切断した場合の損害賠償請求に関する注意点
交通事故で足を切断した場合、賠償金で損をしないためには以下の2つの点に注意する必要があります。
8-1. 適切な後遺障害等級の認定を受ける
後遺障害慰謝料や逸失利益の額は、認定される後遺障害等級によって大きく左右されます。足の切断の状態に応じて、適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。
そのためには、後遺障害等級の認定申請で被害者請求を選択したほうがよい場合もあるでしょう。しかし、被害者請求は必要書類を被害者自身で集めなければならず、交通事故や後遺障害等級認定に対する専門的知識が欠かせません。
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには無理に自分だけで手続きを進めず、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
8-2. 将来的にかかる費用も漏れなく請求する
損害賠償の項目には、義足や車椅子などの購入費用だけでなく、買替費用や将来の介護費用なども含まれます。義足や車椅子などは、一度購入すれば一生使えるというものではありません。そこで、実際の使用頻度や被害者の性別、年齢に対応する平均余命などをもとに買い替えのタイミングを定め、買替費用を決めます。
また、足の切断では歩行時などの転倒が危惧されるため、実際の生活では介護が必要になり、介護費用が認められるケースも少なくありません。こうした実情を鑑み、将来の介護費用を求めることも可能です。
損害賠償請求をする際は、実際に支払った入通院慰謝料や休業損害、逸失利益だけでなく、こうした将来的にかかる費用も漏れなく請求することが重要です。
なお、将来分については中間利息控除を行い、実際の補償額が決定されます。
9. 交通事故で足を切断した場合、示談交渉は自分でもできる?
示談交渉自体は被害者自身でも可能です。ただし、日常生活や仕事に加え、足の切断による治療やリハビリなどを行いながら示談交渉をするのは、非常に負担がかかります。
また、保険会社が相手の場合は特に、法的または医学的な客観的主張や反論が欠かせません。これを個人で行うことは難しいため、弁護士に依頼するのがお勧めです。弁護士に依頼すれば、これらの対応を一任できます。交渉が負担に感じたら、弁護士への相談や依頼を検討しましょう。
10. 交通事故で足を切断した被害者が弁護士に依頼するメリット
交通事故によって足を切断する大けがを負った場合、弁護士に依頼しサポートを受けることで以下のようなメリットが期待できます。
後遺障害等級認定の申請をサポートしてもらえる
弁護士基準での算定と交渉により賠償金の増額が期待できる
将来の不安に寄り添い、精神的な支えになってもらえる
被害者請求後も引き続き加害者や加害者側の保険会社との示談交渉を任せることができる
なお、被害者自身が事故時に加入していた自動車保険などに弁護士特約(弁護士費用特約)が付帯していた場合は、弁護士費用の自己負担なし、または少ない負担で依頼できる可能性があります。弁護士に依頼する前に弁護士特約の有無を確認し、利用できるか保険会社に問い合わせてみてください。
11. 交通事故による足の切断に関してよくある質問
Q. 交通事故で足が切断されるのはどんなケース?
交通事故が原因で、足の切断に至るケースは大きく2つ考えられます。
1つ目は、事故自体の衝撃により足の切断に至るケースです。
2つ目は、事故で骨折や挫創(ざそう/皮膚の表面が破れたり裂けたりしたけが)など、重いけがを負った場合です。これらがもとで血流障害や感染症などを起こして足が壊死した場合、より重度な全身へのダメージを防ぐために、医師の判断により手術で足を切断するケースがあります。
Q. 事故後に強い痛みや違和感が続く場合、後遺障害として評価されることはある?
足の切断による後遺障害とは別に、痛みやしびれなどが残る場合は、神経障害として後遺障害が認定されることがあります。これにより等級が複数になる場合は、併合という形で最も重い(高い)等級よりさらに重い等級が認定されるケースがほとんどです。
Q. 足がちぎれるほど重大なバイク事故の場合、慰謝料の増額は可能?
交通事故そのもので足がちぎれるような大けがを負った場合、慰謝料が増額される可能性は十分に考えられます。たとえば、足を切断した事故のショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し精神科に通うことになった、休業や失業、転職せざるを得なくなったといった場合です。
ただし、基本的に後遺障害慰謝料は認定される後遺障害等級により決まります。たとえば、両足のひざ関節よりも上から全部を失った場合の等級は1級となり、慰謝料は弁護士基準で2800万円です。また、入通院慰謝料は、入院や通院の期間などを考慮して期間が長いほど原則として金額も増加します。
つまり、慰謝料の増額を求める場合は、事故によるけがだけでなく、上記のような具体的な支障や精神疾患の点など重大な精神的苦痛を伴う点も加味して交渉する必要があります。特に保険会社との示談交渉では、保険会社の基準で低い賠償額が提示されることもあるため、自身で対応が難しい場合は、弁護士に依頼するなどして、弁護士基準での算定と交渉を行いましょう。
12. まとめ 交通事故で足を切断したら弁護士に相談を
足の切断という重大な交通事故に遭った場合、適切な後遺障害等級の認定を受け、弁護士基準で算定することが、適正な損害賠償額を受け取ることにつながります。また、足の切断によって必要になった義足や車椅子の費用は、将来の買替費用まで含めて請求することが重要です。
足を切断するほどのけがを負うと、肉体的にも精神的にも大変つらいうえ、治療やリハビリも過酷なものになることが少なくありません。そのような状況で加害者や加害者の保険会社と交渉するとなれば、被害者にとって精神的な負担は非常に大きくなります。
こうした負担やストレスを軽減するために、加害者や保険会社への対応は弁護士に一任するのが有効な方法です。交通事故で足を切断し、交渉や手続きで悩んでいるなら、できるだけ早い段階で交通事故の取り扱い経験がある弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2026年10月1日時点の情報に基づいています)
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