目 次
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」で
交通事故トラブルに強い弁護士を探す
交通事故トラブルに強い
弁護士を探す
1. 後遺障害7級とは?日常生活や仕事への影響
交通事故の後遺症について「どの程度の障害が残ったか」を段階評価するのが後遺障害等級です。等級は要介護1・2級と1〜14級の計16段階で整理され、後遺症が重いほど等級が小さくなります。どの等級に該当するかの審査は第三者機関が行います。
後遺障害7級は、視力・聴力の障害、四肢の欠損・機能障害、神経・精神の障害、外貌醜状など対象が幅広いのが特徴です。後遺症によって失われた労働力の割合を示す「労働能力喪失率」は56%とされ、仕事や日常生活への影響が大きいと評価されます。
そのため、慰謝料や逸失利益を含めた賠償額が1000万円を超えるケースも十分にあり得ます。
2. 後遺障害7級の具体的な症状と認定基準
後遺障害7級には、症状ごとに1号から13号までの認定基準があります。「自分は何号に当たりそうか」を把握することが、等級認定の第一歩です。
1号 | 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
|---|---|
2号 | 両耳の聴力が40cm以上の距離では 普通の話声を解することができない程度になったもの |
3号 | 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では 普通の話声を解することができない程度になったもの |
4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6号 | 一手のおや指を含む三の手指を失ったもの 又はおや指以外の四の手指を失ったもの |
7号 | 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの |
8号 | 一足をリスフラン関節以上で失ったもの |
9号 | 上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10号 | 下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
13号 | 両側の睾丸を失ったもの |
なお、後遺障害の審査は基本的に書面中心です。医師に作成してもらう後遺障害診断書に等級認定の要件を満たす情報が書かれているか、検査結果が揃っているかが重要になります。
そのような状況で「症状は重いのに、診断書の書き方が抽象的で伝わりにくい」ケースが少なくありません。疑問がある場合は、早い段階で弁護士に相談して整理しておくと安心です。
2-1. 7級1号:片目が失明+他眼の視力が0.6以下になった
視力は、原則としてコンタクトや眼鏡を付けた状態(矯正視力)の数値で判断します。ここでいう「失明」とは、次の状態を指します。
・眼球を亡失(摘出)した
・光の明暗が完全にわからない
・光の明暗が辛うじてわかる程度
また、失明していない方の目の視力が0.06以下なら3級、0.1以下なら5級に該当する可能性があります。視力検査の結果が古い、測定条件が不明確などの場合は、数値の信憑性を裏付けるための資料の整え方でもめやすいので注意が必要です。
2-2. 7級2号:両耳が重度の難聴になった
両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を理解できない状態です。具体的には、次のいずれかに該当する場合が目安になります。
・両耳の平均純音聴力レベルが70デシベル以上
・両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上で、最高明瞭度が一定水準以下
70デシベルはセミの鳴き声などに相当し、「大きい音は分かっても会話が難しい」イメージです。日常会話や電話対応の困難さは、生活の支障としても重要になります。
2-3. 7級3号:片耳の聴力喪失+他耳の難聴
一方の耳の聴力をほぼ失い、他方の耳も難聴になっている状態です。例として、下記の数値要件が問題になります。
・片耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上
・他耳の平均純音聴力レベルが60デシベル以上
会話が聞き取りにくく、外出・仕事・家庭内でも支障が出やすい類型です。
2-4. 7級4号:神経系統または精神の障害により就労制限
神経系統の機能または精神に障害が残り、軽易な労務以外の労務に服することができない状態です。代表例は、以下のとおりです。
・高次脳機能障害(記憶・注意・段取り・対人面などの障害)
・脳挫傷・脊髄損傷による身体性機能障害(上下肢のまひ)
高次脳機能障害は外見で分かりづらい一方、仕事や生活では「段取りができない」「ミスが増える」「約束を忘れる」「感情のコントロールが難しい」といった形で表れます。
神経内科・脳神経外科・リハビリテーション科の医師に加え、理学療法士・作業療法士などのリハビリ職が協力して診療・評価することも多いです。
この類型は医療機関での検査だけでなく、家族の観察(事故前後の変化)を具体的に示せるかが非常に重要だと感じます。家族が作成する日常生活状況の記録は、等級を左右することがあります。
2-5. 7級5号:胸腹部臓器の機能障害により就労制限
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽い仕事以外が難しい状態です。認定されうる症状は、以下の通りです。
・呼吸器の障害(息切れが強く、少し動くだけで苦しい等)
・循環器の障害(動悸・呼吸困難など)
・消化器の障害(食事や排泄管理に支障がある等)
・泌尿器の障害(排尿管理に支障がある等)
ポイントは「検査結果」と「生活・就労上の支障」が結びついて説明できることです。単に「つらい」だけでなく「何が、どの程度、できないか」を具体化すると伝わりやすくなります。
2-6. 7級6号:親指を含む3本の手指を喪失、または親指以外の4本の手指を喪失した
手の指を失った(切断した)場合の類型です。重要なのは切断の位置(どの関節より根元か)です。該当例は以下になります。
・手指を中手骨(手の甲にある骨)または基節骨(指の付け根側の骨)で切り離した
・近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)から先を失った
簡単にいうと、片手の親指ともう2本の指を根本から失った場合や、片手の親指以外の4本の指を根本から失った場合などが該当します。
診断書に「どの関節で指を切断したか」が明確に書かれていないと、審査側に正確に伝わりにくいことがあります。なお、利き手かどうか、右手か左手かは、等級の認定そのものには影響しないと整理されます。
2-7. 7級7号:親指を含む多くの手指が動かせない(手指の用を廃した)
手の指自体は残っていても、機能が著しく失われた状態です。具体的には、片手の5本の指または親指を含む4本の指の用を廃した状態を指します。「用を廃した」とは、次のいずれかを指します。
・指の末節骨(先端の骨)の長さの2分の1以上を失った
・中手指節関節(指の付け根の関節)または近位指節間関節(親指は指節間関節)の可動域が、障害を負っていない側の2分の1以下になった
・指の感覚が完全にまひして脱失した
この類型は、可動域(角度)や感覚検査など数字で示せる情報が鍵になります。物をつまむ・握るのが難しい、ボタンが留められないなど、生活上の支障についての具体例があると伝わりやすいです。
2-8. 7級8号:片足をリスフラン関節より上から失った
リスフラン関節は、足指の骨と足の甲の骨の間にある関節です。「リスフラン関節以上で失った」とは、下記の状態を指します。
・リスフラン関節から先の足部分がなくなった
・リスフラン関節を境に中足骨(足の甲にある骨)と足根骨(足の甲からかかとにかけて存在する7つの骨)が切り離された
かかとを着いて歩けなくなるため、義足や装具、生活環境の調整が必要になることが多いです。
2-9. 7級9号:片腕に偽関節を残し、著しい運動障害が残った
偽関節とは、骨折後に骨がうまくくっつかず、関節ではない部分が関節のように動く状態です。対象部位は下記のとおりです。
・上腕骨(肩からひじまでをつなぐ骨)の骨幹部または骨幹端部
・ひじから手首までをつなぐ2本の骨である橈骨(親指側)と尺骨(小指側)の両方の骨幹部または骨幹端部
「著しい運動障害」は、硬性補装具で常に固定が必要な状態を指します。ギプスや関節を固定するサポーターなどの常時固定が不要な偽関節は、7級ではなく8級に整理されることがあります。
2-10. 7級10号:片足に偽関節を残し、著しい運動障害が残った
下肢の偽関節で、硬性補装具による常時固定が必要な場合が対象です。対象となる骨折部位は以下のとおりです。
・大腿骨(股関節からひざ関節までをつなぐ骨)の骨幹部または骨幹端部
・ひざと足首をつなぐ2本の骨のうち、脛骨(内側)と腓骨(外側)の両方の骨幹部または骨幹端部
・脛骨だけの骨幹部または骨幹端部
常時固定が不要な偽関節は、7級ではなく8級に認定されることがあります。
2-11. 7級11号:両足の全ての指が動かせない(足指の全部の用を廃した)
両足の足指全部の用を廃した状態です。具体的には以下のとおりです。
・親指は指節間関節から先の末節骨(指の先端側の骨)の半分以上を失い、その他4指は遠位指節間関節(指先に最も近い骨)から先をすべて失った
・中足指節関節(足指の付け根の関節)または第1関節に著しい運動障害が残った
歩行バランスや転倒リスク、靴の選択ができない等、生活上の支障が大きくなりやすい類型です。
2-12. 7級12号:頭・顔・首に目立つ傷跡が残った(外貌の著しい醜状)
頭・顔・首など、日常的に露出する部位に目立つ傷跡が残る類型です。「著しい醜状」とは、例えば以下を指します。
・頭部:指の部分を含まない手のひら大以上の瘢痕(はんこん)、または頭蓋骨の欠損
・顔面:鶏卵大以上の瘢痕、または10円硬貨大以上の組織陥没
・頸部:指の部分を含まない手のひら大以上の瘢痕
等級認定手続きで面接調査が行われることがあり、男女で等級の差はありません。写真・医療記録・生活上の影響(対人対応の困難など)がポイントになります。
2-13. 7級13号:両側の睾丸を失った
両側の睾丸を失った場合、生殖機能の喪失として7級が認定されます。睾丸が残っていても精子がない状態、女性が両側卵巣を失う(または卵子が形成されない)状態は「7級13号に該当する後遺障害に相当する」として等級が認定される可能性があります。これを「準用」と言います。なお、片側の睾丸喪失は13級に整理されます。
2-14. 複数の後遺症がある場合は「併合7級」に認定され得る
異なる後遺障害が複数あるとき、一定のルールで重いほうの等級が繰り上がる(併合)ことがあります。
13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは重いほうの後遺障害を1級繰り上げ、8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは重いほうの後遺障害の等級を2級繰り上げ、5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは重いほうの後遺障害の等級を3級繰り上げます。
たとえば、脊柱(せきちゅう)の運動障害(8級2号)と醜状障害(12級14号)が認められる場合、重いほうの8級を1級繰り上げて「併合7級」となる場合があります。
ただし、症状が複数でも「1つの後遺障害」といえる場合は併合にならないこともあります。併合が絡むと賠償額に直結するため、等級の整理は弁護士に一度確認するのがおすすめです。
3. 後遺障害7級の被害者が請求できる慰謝料の相場
後遺障害7級に認定されると、治療費などとは別に、主に後遺障害慰謝料と入通院慰謝料を請求できます。ここで極めて重要なのが、計算に用いる基準によって金額が大きく変わる点です。
3-1. 【重要】慰謝料を算定する際の3つの基準
交通事故の賠償では、一般に次の3つの基準があります。
・自賠責保険基準:最低限の補償基準。強制保険である自賠責保険に基づく
・任意保険基準 :任意保険会社が独自に定める。自賠責保険基準より高いが、弁護士基準より低い
・弁護士基準(裁判所基準):過去の判例に基づく。3つの基準のなかで最も高くなる
保険会社が最初から弁護士基準を前提に示談金を提示してくるケースは多くありません。一般的には、自賠責保険基準や任意保険基準に近い金額で示談を提案されることが多く、そのまま受け入れてしまうと、後から内容を覆すのは難しいのが実務の現実です。
実際に「一度サインしてしまったが、やはり納得できない」という相談は少なくありません。ただ、サイン前に確認していれば避けられた不利益だったケースも見受けられます。後遺障害7級は賠償額が大きくなりやすいため、基準の違いがそのまま金額差につながる点には特に注意が必要です。
任意保険基準は一般には公開されていません。以下で、自賠責保険基準と弁護士基準における後遺障害慰謝料と入通院慰謝料の金額を比較してみます。
3-2. 後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料とは、事故によって後遺障害を負った被害者が請求できる慰謝料です。認定される後遺障害等級に応じて金額が異なります。
7級の後遺障害慰謝料の目安は、次のとおりです。
自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
|---|---|
419万円 | 1000万円 |
このように、弁護士基準で見直すだけで、後遺障害慰謝料が約2.4倍になり、金額にして約581万円の差が生じます。7級では、逸失利益・将来費用など他の項目も大きくなりやすいため、総額の差はさらに広がり得ます。
3-3. 入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料は、けがの痛みや治療の苦痛に対する慰謝料です。例として入院期間1カ月、通院期間4カ月(実際の通院日数40日)の場合の入通院慰謝料を、自賠責保険基準と弁護士基準で比較してみます。
【自賠責保険基準】
自賠責保険基準における入通院慰謝料は「日額4300円(2020年3月31日以前の事故は日額4200円)×対象日数」で計算します。対象日数は「治療期間」または「実際の入通院日数×2」のいずれか少ない方です。
上記の例の場合、対象日数は治療期間(=150日)と、実際の入通院日数×2(=140日)のうち、少ないほうの140日を採用します。したがって、入通院慰謝料額は「4300円×140日=60万2000円」です。
なお、自賠責保険による交通事故でのけがに対する補償額は、一つの事故につき総額120万円が上限です。治療費などが高額になると、慰謝料額が60万2000円以下となる可能性があります。
【弁護士基準】
弁護士基準では、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行する「赤い本」に記載されている早見表をもとに、入通院慰謝料額を算定します。
以下は、交通事故で重傷を負った場合の早見表(別表Ⅰ)です。入院期間と通院期間が交わるマスの数字が慰謝料額の目安となります。
たとえば骨折などで入院1カ月、その後4カ月通院した場合、上の表で入院期間と通院期間が交わるマスの数字は「130」となっています。したがって、この場合の入通院慰謝料の目安は130万円です。
自賠責保険基準の60万2000円と比べると、金額に2倍以上の差が生まれます。通院期間が長くなるほど差は広がりやすいため、「治療の見通し」や「示談のタイミング」については、早めに弁護士に相談して方針を整理しておくと安心です。
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」
4. 後遺障害7級の被害者が、慰謝料以外に請求できる賠償金の項目
交通事故の際に加害者に請求できるのは、後遺障害だけではありません。ここでは、その他の項目について説明します。
4-1. 逸失利益
逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られたはずの収入に対する補償です。
逸失利益の基本の計算式は以下のとおりです。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する係数(ライプニッツ係数)
基礎収入:原則として事故前年の年収(源泉徴収票・確定申告書など)
労働能力喪失率:後遺障害によって失われた労働能力の割合。7級の労働能力喪失率は56%とされている
労働能力喪失期間:症状固定時から就労可能年齢(例:67歳)までの期間で考えることが多い
ライプニッツ係数:将来分の収入を一括で受け取る際に中間利息を控除するための係数
【計算例】
たとえば、被害者が年収500万円の会社員で、症状固定時(治療をしてもこれ以上の改善が見込めないと診断されたとき)の年齢が50歳であり、後遺障害7級の認定を受けたケースを例に計算します。
この場合の労働能力喪失期間は17年(50歳から67歳まで)、ライプニッツ係数が13.1661とすると、逸失利益は「500万円×0.56×13.1661≒約3686万円」となります。
実務上の注意点として、逸失利益は「7級の労働能力喪失率は必ず56%」と機械的に決まるわけではありません。特に外貌醜状(7級12号)では、保険会社が「見た目の傷は仕事の能力に影響しない」として、逸失利益を否定・縮小してくることがあります。こうした場面では、職種(対人業務か)、転職の不利、心理的影響などを具体的に積み上げて主張します(喪失率は事案ごとの判断になり得ます)。
2025年に発表された「令和6年賃金構造基本統計調査」における平均年収に基づく男女別・年齢別の逸失利益の目安額は次のとおりです。なお、すべて弁護士基準で算出した金額です。
20歳 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 | |
|---|---|---|---|---|---|
男性 | 5022万円 | 6515万円 | 6577万円 | 5191万円 | 2966万円 |
女性 | 4684万円 | 5149万円 | 4565万円 | 3377万円 | 2124万円 |
症状固定時の年収が同じくらいであれば、若い人の方が労働能力喪失期間が長くなるため、逸失利益の金額は高くなりやすい傾向にあります。
4-2. 休業損害
休業損害は、事故による治療・通院で働けず、収入が減った場合の補償です。会社員だけでなく、自営業、家事従事者でも請求できます。
休業損害の金額は、自賠責保険基準と弁護士基準で差が出ることがあります。たとえば、事故前の収入が年収500万円(1日あたり約1万3700円)の人が、事故のけがで30日休業した場合で計算してみます。
弁護士基準では「事故前の実際の収入をもとにした日額×休業日数」で計算されるため、休業損害は「約1万3700円×30日=41万1000円」となります。一方、自賠責保険基準では、1日につき原則6,100円(条件により最大1万9,000円)で計算されるため「6100円×30日=18万3000円」が目安となります。このように、基準によって2倍以上の差が生じるケースもあります。
実務では「休業の必要性」「休業日数」「基礎収入」を保険会社が争ってくることがあるため、早めに休業損害証明書や給与資料、確定申告書などの資料を整理しておくと交渉が安定します。
4-3. その他:治療費、通院交通費など
代表的な賠償項目は次のとおりです。
治療費、検査費、薬代
通院交通費:通院の際に利用する公共交通機関の費用。タクシー代が認められる場合もある
付添看護費:けがにより介助や介護が必要な場合にかかる費用。医師の指示や必要性がある場合のみ
入院雑費:入院に必要な日用品や通信費など
装具費:義足・義手・補聴器・コルセットなど
物損:車や携行品の修理費や買替費用など
なお、症状固定後にかかる将来治療費や将来介護費、将来装具費も請求できる場合があるものの、必要性が争点となる可能性があります。
5. 後遺障害7級の賠償金総額はいくらになる?
後遺障害7級は、後遺障害慰謝料と逸失利益が大きくなりやすく、賠償金の総額が高額になりがちです。
【モデルケース】
・40歳の会社員
・年収500万円
・入院1カ月+通院3カ月
・後遺障害7級
・症状固定時40歳
この場合、弁護士基準で計算するとおおよそ次のようになります。
後遺障害慰謝料:約1000万円
入通院慰謝料:約115万円
逸失利益:基礎収入(500万円)×労働能力喪失率(0.56)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(18.3270)≒約5132万円
休業損害(30日休業と仮定):約41万円
合計:約6288万円
さらに、治療費、通院交通費、装具費、将来費用などが加算される可能性があります。
一方で、自賠責保険基準に近い水準で計算した場合、後遺障害慰謝料は419万円にとどまり、逸失利益も制限を受けるため、総額で数百万円〜1000万円以上の差が生じることもあります。
6. 事故後から後遺障害認定、賠償金請求までの流れ
ここでは、交通事故で後遺障害認定され、最終的に損害賠償請求するまでの流れを解説します。
6-1. 症状固定の診断
医師の指示に従って通院し、治療を続けます。自己判断で通院を中断したり、1カ月以上空いたりすると、保険会社から「治った」「治療の必要性がない」と言われ、治療費打ち切りや後遺障害の非該当につながるリスクがあります。改善が見込めなくなった段階で「症状固定」と診断されます。
6-2. 医師が後遺障害診断書を作成
後遺障害の審査は、原則として書面中心です。つまり、医師が作成する後遺障害診断書の内容が結果を大きく左右します。診断書では、下記の2点が漏れなく記載されているかが重要です。
・自覚症状(痛み・しびれ・見えにくさ等)が具体的に書かれているか
・他覚所見(X線・MRI・CT・神経学的検査・聴力検査・視野検査・可動域など)
特に7級は「検査結果の数値」や「硬性補装具による固定の要否」など、客観情報が決め手になりやすい類型が多いので、記載内容が大切です。
6-3. 後遺障害等級認定の申請
症状固定後、後遺障害等級認定を申請します。申請方法は「事前認定」と「被害者請求」の2つがあります。
・事前認定:相手方の保険会社に手続きを任せる申請方法
・被害者請求:被害者側で資料をそろえて提出する申請方法
後遺障害7級のように重い等級が見込まれる場合は、被害者請求で申請するほうが有利となる可能性が高いです。これは、医証(診断書・検査結果など)が適切に揃っているかを被害者側で確認し、納得できる資料を提出できるためです。
事前認定は提出資料を被害者側で揃える手間がかからないメリットがある一方、資料が十分に整理されず進み、認定結果に不満が残るケースも見られます。7級では特に、画像・検査結果、可動域や固定の必要性に関する記録、生活や就労への支障を示す資料などが重要になることが多いため、被害者請求での申請をお勧めします。
6-4. 事故の相手側との示談交渉
等級認定の結果が出たら、慰謝料・逸失利益・過失割合などを巡って、加害者側との示談交渉に入ります。相手の保険会社の提示額は低いことが多く、採用する基準の違いで数百万円〜1000万円単位の差が出ることもあります。示談書にサインする前に、増額の可能性を弁護士に確認するのが安全です。
6-5. 示談が成立しない場合は、ADRや訴訟
示談がまとまらない場合、交通事故紛争処理センター等のADRや訴訟を検討します。ADRは比較的早期に結論が出ることもありますが、争点が大きい場合は訴訟が適することもあります。どれを選ぶかは「争点の種類」と「証拠のそろい方」で決まります。
6-6. 賠償金の受け取り
示談・ADR・訴訟などで決まった内容に従い、賠償金が支払われます。後遺障害7級は金額が大きくなりやすいので、支払時期や清算条項などの合意内容も含めて慎重に進める必要があります。
7. 後遺障害7級の認定を受けるためのポイント
後遺障害7級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求できるようになります。等級認定を受けるうえで押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
自己判断で通院をやめてはいけない
後遺障害診断書の記載が認定基準を満たしているか確認する
高次脳機能障害での7級認定は、適切な検査と家族の協力が必要
被害者請求で申請をする
なるべく早く弁護士に依頼する
7-1. 自己判断で通院をやめてはいけない
適正な賠償金を得る大前提は、適正な等級認定を受けることです。通院が途切れると、症状の一貫性が説明しづらくなり、相手の保険会社から「治っている」「治療不要」と見られるリスクが高まります。症状固定の診断を受けるまでは、医師の指示に従って治療を継続することが基本です。
7-2. 後遺障害診断書の記載が認定基準を満たしているか確認する
後遺障害等級の審査は書面中心です。後遺障害診断書の内容が抽象的だと、症状が重くても認定要件を満たす形で伝わらず、7級よりも低い等級が認定されたり非該当になったりすることがあります。7級では、視力・聴力・可動域・感覚、装具の常時固定の要否などの「数値・具体」が重要です。
後遺障害診断書の記載内容が不十分と思われる場合は、弁護士を通じて医師に補足を依頼することも検討しましょう。医師に何をどう追記してほしいか、弁護士側が整理したうえで伝えると通りやすいことがあります。
7-3. 高次脳機能障害での7級認定は、適切な検査と家族の協力が必要
高次脳機能障害は外見から分かりにくく、審査でも伝わりにくい類型です。画像診断(CT・MRIなど)や認知機能検査に加え、事故前後の生活や性格の変化を示す日常生活状況の記録が重要になります。家族が具体的なエピソードとして整理しておくと、障害の実態が伝わりやすくなります。
7-4. 被害者請求で申請をする
事前認定は手続きの負担が少ない半面、資料の収集や提出を相手方の保険会社に委ねる形になります。被害者請求は手間はかかりますが、必要な資料を精査して提出できるため、特に7級のように重い等級が見込まれる場合は有利に働くことがあります。
7-5. なるべく早く弁護士に依頼する
早い段階で弁護士に相談・依頼することで、等級認定や賠償金の見通しを整理しやすくなります。主なメリットは次のとおりです。
後遺障害診断書の内容をチェックしてもらえる
必要に応じて医師への補足説明や検査依頼の整理ができる
被害者請求の資料収集・書類作成を任せられる
認定結果に不満がある場合、異議申立てを見据えた準備ができる
弁護士基準(裁判所基準)で賠償額を算定し、交渉を進められる
外貌醜状の場合、面接調査に立ち会ってもらえることがある
加害者側との示談交渉を弁護士に依頼すると、弁護士基準に基づいた適切な金額で交渉してくれるため、自分で対応するよりも賠償金を増額できる可能性があります。
また、弁護士費用特約を利用できれば、費用負担を抑えて依頼できる場合もあります。後遺障害7級は賠償額が大きくなりやすいため、早期に専門家へ相談する意義は大きいといえるでしょう。
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」
8. 後遺障害7級の被害者が、賠償金以外に受けられる給付や公的支援は?
後遺障害7級が見込まれるほど重い後遺症の場合、損害賠償とは別に、公的制度の対象になることがあります。代表例は障害年金と労災保険です。
事故が業務中や通勤中であれば、労災保険の給付対象になり得ます。加害者側からの損害賠償と関係する部分もありますが、制度が違うため双方から適切な補償を受けることが大切です。
また、症状の内容によっては障害年金(国民年金・厚生年金)の対象となる可能性があります。
どちらも「要件に当てはまるか」「診断書や書類が揃うか」で結論が変わります。後遺症で生活が大きく変わる場面では、賠償金と並行して、公的支援も含めた選択肢を確認しておくと安心です。
9. 後遺障害7級についてよくある質問
Q. 後遺障害7級の認定を受けられなかった場合、認定結果を覆す方法はある?
一般に「異議申立て」を検討します。ただし「認定結果に納得できない」という主張だけでは結果は覆りにくく、なぜ非該当・低等級になったのかを分析し、追加の検査結果や医師の意見書など新しい医学的根拠を出す必要があります。
Q. 後遺障害7級の認定後、事故前と同じように仕事ができるまで回復したら、逸失利益はもらえない?
原則として逸失利益の請求は可能ですが、事故の相手側(保険会社)が「収入が減っていない=損害がない」と争ってくることがあります。実務では、仕事内容の制限、将来の昇進・転職の不利、働き方の変更などを具体的に示して解決を図ります。
Q. 夫が後遺障害7級になったら、妻の付添看護費や近親者慰謝料は請求できる?
付添看護費は、医師の指示や必要性が認められる場合に請求できる可能性があります。近親者慰謝料は、事故によって死亡した場合や重度後遺障害(1級・2級など)となった場合で問題になりやすく、7級では原則ハードルが高いのが通常です。ただし、症状が極めて重く家族の負担が大きいなど、個別事情で検討余地が出ることもあります。
10. まとめ 後遺障害7級の賠償金は弁護士に依頼するかどうかで大きく変わる
後遺障害7級は認定類型が幅広く、賠償額も大きくなりやすい等級です。労働能力喪失率は56%とされ、慰謝料・逸失利益を含めると1000万円以上になるケースも十分にあります。7級の認定を獲得するためには「自己判断で通院をやめない」「後遺障害診断書の記載が認定基準を満たしているか確認する」「被害者請求で申請をする」など、いくつかのポイントがあります。
後遺障害等級認定は、早い段階で方針を誤ると、あとから取り返しにくいことがあります。認定の確実性を高め、保険会社との示談交渉を有利に進めるためにも、できるだけ早く交通事故に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)
朝日新聞社運営「交通事故の羅針盤」で
交通事故トラブルに強い弁護士を探す