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交通事故で顔に傷が残ったら 慰謝料から後遺障害等級、注意点まで解説

更新日: / 公開日:
交通事故によるけがで顔に傷痕が残ると、後遺障害として認められる可能性があります(c)Getty Images
交通事故に遭ってけがを負い、後遺障害が残ると、認定された症状や程度に応じて賠償金を請求できます。その後遺障害のなかで、被害者の心情や希望と、実際に認定される結果の落差が大きく、被害者が困惑し不満に思うことが特に多いのが、顔に残った傷痕などを指す醜状(しゅうじょう)障害です。 交通事故で顔に傷が残った場合、弁護士にすみやかに相談や依頼をするのが有効です。示談交渉を一任できる、賠償金の増額が期待できる、後遺障害等級認定もサポートしてもらえるといったメリットを受けられるからです。 醜状障害の一つである顔の傷痕について、後遺障害等級の認定基準や慰謝料の相場、請求できる賠償金の項目と計算ポイント、適切な対応をするための注意点などを、交通事故案件に長く携わってきた弁護士が、具体的に解説します。

目 次

1. 交通事故で顔に傷痕や変形が残ったら、後遺障害等級の認定を受けられることがある

1-1. 「外貌(がいぼう)」とはどこまでを指す?

1-2. 男女の差は廃止されて統一基準になっている

1-3. 後遺障害認定を受けるための審査方法

2. 顔の傷痕の後遺障害等級と後遺障害慰謝料の相場

2-1. 7級12号:著しい醜状を残すもの

2-2. 9級16号:相当程度の醜状を残すもの

2-3. 12級14号:醜状を残すもの

2-4. 認定のポイントとなる「人目につく」などの定義と測定方法は?

3. 交通事故で顔に傷痕が残ったときに請求できる主な賠償金と計算のポイント

3-1. 治療費、将来の整形手術費用

3-2. 化粧品代、ウィッグ代など

3-3. 休業損害

3-4. 入通院慰謝料(障害慰謝料)

3-5. 後遺障害慰謝料

3-6. 逸失利益

4. 顔の傷の「その後」や「将来」に関する疑問とは

4-1. メイクやマスクで隠せる傷でも後遺障害になる?

4-2. 傷痕を消すためのレーザー治療代は請求できる?

4-3. 子どもの顔に傷が残った場合、将来への影響はどう考慮される?

5. 顔の傷痕は逸失利益が争点になりやすく、否定されやすい

5-1. なぜ保険会社は「労働能力に影響しない」と主張してくる?

5-2. 逸失利益が認められやすい職業やケース

5-3. 逸失利益が否定された場合の対抗策

6. 交通事故で残った顔の傷痕につき、適切な賠償金を受け取るためのポイント

6-1. 整形外科だけでなく、形成外科や皮膚科を受診し、医師の指示に従って治療を受ける

6-2. 後遺障害診断書作成時の注意点

6-3. 顔の傷痕が職業に与える影響を主張する

6-4. 示談交渉前から弁護士へ相談する

7. 弁護士介入によって交通事故による顔の傷痕の賠償金が増額された事例

8. 交通事故による顔の傷痕に関してよくある質問

9. まとめ 交通事故で顔に傷痕が残ったら、弁護士に相談し適切な後遺障害認定や賠償請求を

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1. 交通事故で顔に傷痕や変形が残ったら、後遺障害等級の認定を受けられることがある

交通事故によるけがで顔に傷痕が残った場合、「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」として後遺障害等級が認定される可能性があります。

後遺障害等級とは、事故による後遺症を症状や程度によって認定する等級のことで、認定されると等級に応じた賠償金などを請求することができます。顔の傷跡が後遺障害等級に認定される際には、傷痕の形状や大きさの基準が存在します

1-1. 「外貌(がいぼう)」とはどこまでを指す?

頭や顔、首などの日常的に人目につく部分を「外貌(がいぼう)」と言います。手足などは外貌とは呼びません。

外貌醜状とは、こうした外貌部分にやけどや傷痕が残っている状態を指します。

1-2. 男女の差は廃止されて統一基準になっている

外貌醜状が一定の基準を満たすと、後遺障害として等級認定されます。

過去には外貌醜状の障害認定の基準に男女差がありましたが、現在は男女差は廃止され、統一基準で認定されています。

1-3. 後遺障害認定を受けるための審査方法

後遺障害認定を受けるための審査は、基本的には書面で行われます。しかし、外貌醜状は傷痕の形状や大きさなどが審査のポイントとなるため、書面や傷痕の写真などだけでは判断がつかない場合は、審査機関による面接審査が実施されることがあります

2. 顔の傷痕の後遺障害等級と後遺障害慰謝料の相場

顔の傷痕は、傷痕の位置や大きさに応じて、7級、9級、12級のいずれかの後遺障害等級に該当する可能性があります。

基準は下記の表のとおりです。

【顔の傷痕の後遺障害等級と認定基準】

後遺障害等級

基準

7級12号

外貌に著しい醜状を残すもの

9級16号

外貌に相当程度の醜状を残すもの

12級14号

外貌の単なる醜状を残すもの

それぞれの等級の認定基準の具体的な内容と、弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場について、以下で解説します。

顔の傷痕の後遺障害等級を図解。傷痕の位置や大きさに応じて、7級、9級、12級のいずれかの後遺障害等級に該当する可能性がある
顔の傷痕の後遺障害等級を図解。傷痕の位置や大きさに応じて、7級、9級、12級のいずれかの後遺障害等級に該当する可能性がある

2-1. 7級12号:著しい醜状を残すもの

後遺障害等級7級12号の認定基準である「著しい醜状を残すもの」は原則として、下記のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものを言います。

7級12号に該当すると判断された場合、後遺障害慰謝料の相場は1000万円です

【頭部の場合】
「手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕(はんこん)」または「頭蓋骨の手のひら大以上の欠損」

【顔面部(目や鼻、口、頬などがある、おでこからあごまでの部分)の場合】
「鶏卵大(一般的な鶏の卵の大きさ)以上の瘢痕」または「10円銅貨大以上の組織陥没(骨の欠損などで皮膚や皮下組織が周囲に比べてへこんだ状態)」

【頸部(首)の場合】
「手のひら大以上の瘢痕」

2-2. 9級16号:相当程度の醜状を残すもの

後遺障害等級9級16号の認定基準である「相当程度の醜状を残すもの」は原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕(せんじょうこん)で、人目につく程度以上のものを言います。線状痕とは、いわゆる切り傷のように線状の傷が治ったあとの傷痕を指します。

9級16号に該当すると判断された場合、後遺障害慰謝料の相場は690万円です

2-3. 12級14号:醜状を残すもの

後遺障害等級12級14号の認定基準である「醜状を残すもの」は原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものを言います。

12級14号に該当すると判断された場合、後遺障害慰謝料の相場は290万円です

【頭部】
「鶏卵大面以上の瘢痕」または「頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損」

【顔面部】
「10円銅貨以上の瘢痕」または「長さ3センチメートル以上の線状痕」

【頸部】
鶏卵大面以上の瘢痕

2-4. 認定のポイントとなる「人目につく」などの定義と測定方法は?

認定基準には「人目につく」という文言が盛り込まれています。そのため、人目につかない傷痕は、後遺障害認定の対象にはなりません。ただし、ほかの後遺障害に該当する可能性は残ります。

具体的には、毛髪やまゆげなどで隠すことが可能な程度の傷痕は、「人目につく」の要件を満たさないと判断される可能性があります。

また、各傷の測定方法は、一般的には以下のとおりです。

【線状痕の測定】
傷痕が曲線的な場合、直線的に定規を当てるのではなく、糸を傷痕の形に沿わせてその長さを測定する必要があります。

【大きさ(面積)の測定】
盛り上がった傷などを指す瘢痕は、原則として「手のひら大」や「鶏卵大」「10円銅貨大」といった基準をもとに、目視や実測で判定されます。

たとえば「手のひら大」は被害者の薬指の下端から手首の上端までの縦の長さと、親指の上端から小指側の手のひらの端の横の長さを測定したうえで算出される面積とされています。

また、傷痕が複数あり、それぞれ一つずつでは基準の大きさに該当しなかった場合でも、それらを一体とすれば一個の醜状基準に該当する大きさであると判断できる場合には、後遺障害等級が認定されることもあります。

3. 交通事故で顔に傷痕が残ったときに請求できる主な賠償金と計算のポイント

交通事故によるけがで顔に傷痕が残ったときに請求できる、主な賠償金について解説します。

3-1. 治療費、将来の整形手術費用

顔の傷の治療費は、実費分を請求することが可能です。また、傷痕を少なくする、あるいはなくすための手術の費用なども請求できます

現時点では手術費用がかかっていなくても、将来的に手術の予定がある場合は、将来の手術費用を請求することも可能です。

ただし、医師に「症状固定」と診断されたあとの治療費は、一部の例外を除いて請求できません。症状固定とは、けがの治療を継続してもこれ以上改善する見込みがなくなった状態のことです。

残った傷痕は後遺症と判断され、基準に従って後遺障害等級が認定されるかを検討することになります。

3-2. 化粧品代、ウィッグ代など

傷痕を隠すために必要と認められる範囲で、化粧品やウィッグ(医療用かつら)の代金が賠償金として請求できることがあります。

3-3. 休業損害

休業損害は、けがの影響で仕事を休んだ場合に失われた収入分を補填するものです。けがの治療のために通院や手術などをするために、仕事を休んだ分の補償を請求することが可能です。

具体的な計算方法は、会社員などの給与所得者か自営業などの個人事業主かによっても異なるものの、基本的には一日あたりの収入を算定したうえで、実際に仕事を休んだ日数をかけ合わせて算出します。

休業損害は、けがが完治するか、症状固定の診断を受けるまでが、請求できる期間の上限です。

3-4. 入通院慰謝料(障害慰謝料)

入通院慰謝料は、けがをしたこと自体や治療のために入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する賠償金です。入院や通院の期間や実際の日数に応じて金額が決まります。

3-5. 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺症が残ったことによる身体的苦痛や精神的苦痛に対する賠償金です。後遺障害等級に応じて相場の金額が変わります。

3-6. 逸失利益

逸失利益とは、後遺障害によって労働能力を失った結果、将来にわたって得られなくなった収入を補償するための賠償金です。

逸失利益は、計算式【基礎収入 × 労働能力喪失率 ×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】で算定します。ライプニッツ係数とは、将来受け取るはずの金額を現在の価値に換算するための指数です。

4. 顔の傷の「その後」や「将来」に関する疑問とは

顔の傷と後遺障害に関して、被害者からよく寄せられる疑問に答えます。

4-1. メイクやマスクで隠せる傷でも後遺障害になる?

マスクで隠せる傷痕であっても、マスクなしだと人目につく場合は、後遺障害として認定される可能性があります

一方、メイクを行うことで人目につかない程度まで傷痕が隠れると判断される場合は、後遺障害として認定されない可能性もあります。

4-2. 傷痕を消すためのレーザー治療代は請求できる?

医師の診断に基づき治療の一環としてレーザー治療が実施される場合は、その治療代も請求可能と考えられます。

一方で、医師の診断ではなく自己判断でレーザー治療を行った場合、治療費が必要とは認められず、加害者側に請求できない可能性もあります

4-3. 子どもの顔に傷が残った場合、将来への影響はどう考慮される?

子どもの顔の傷痕は、将来的にどのような経済的、社会的影響を及ぼすのかが不透明であることに加え、子どもの今後の成長度合いによって傷痕がどの程度残るのかが見通しにくいことから、将来の影響に関して難しい判断を迫られることがあります。そのために、逸失利益が認められにくい傾向があります。

ただし、弁護士である筆者の経験では、子どもの顔に傷が残った場合、将来の進路や職業選択の範囲が狭まったり、仕事の能率や意欲が低下することで減収が生じたりする可能性があると強調することで、逸失利益が認定されるケースもありました。

被害者が成人ですでに就労している場合は、就労先での減収などが見込まれない場合や、そもそも減収することを認めない場合は、逸失利益が認定されないケースもあります。それに比べると、子どもの場合はより柔軟な解決の可能性があります

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5. 顔の傷痕は逸失利益が争点になりやすく、否定されやすい

顔の傷痕は、逸失利益をめぐって相手側の保険会社と争いになりやすく、さらに認められにくい傾向があります。その理由や対抗策について解説します。

5-1. なぜ保険会社は「労働能力に影響しない」と主張してくる?

外貌醜状などの醜状障害の場合、加害者側の保険会社は示談交渉で「仕事に影響しない」「身体能力は落ちていない」などを理由に、逸失利益の支払いを拒否するケースがあります。これは、過去の裁判例で顔の傷痕が被害者の仕事の減収につながることが認められず、逸失利益が否定されているケースが存在するためです。

逸失利益を求める場合、「人前に出たくない」などの心理的影響のみを主張するのではなく、顔の傷痕があることにより現在や将来の被害者の労働能力が失われる根拠を説得的に示すことが重要です。

5-2. 逸失利益が認められやすい職業やケース

顔の傷痕などの外貌醜状は、外見が重視される職業に就いている場合、過去の裁判例でも逸失利益が認められる傾向があります。たとえば、接客業、モデルや芸能人のほか、営業職などです。

顔の傷痕が影響を及ぼすと客観的に判断されるケースでは、実際には収入が減少していなくても、逸失利益が認められることが多い印象です。

ただし、逸失利益を算定する際の「労働能力喪失期間」は、ほかの後遺障害では「67歳までの期間」とされるのが一般的ですが、顔の傷痕の場合は40歳や45歳など一定の年齢までを労働能力喪失期間と限定されることがあるため、注意が必要です。

5-3. 逸失利益が否定された場合の対抗策

逸失利益そのものが否定されたり、逸失利益が認められる期間が通常よりも短くされたりする場合には、逸失利益ではなく、後遺障害慰謝料のほかの項目で、通常よりも高い額の獲得をめざす方法が考えられます。

実際に過去の裁判例では、外貌醜状による労働能力の喪失が証明できないケースでも、外貌醜状を慰謝料の増額事由とし、相場よりも高い慰謝料額を認めたケースが多く存在します。

6. 交通事故で残った顔の傷痕につき、適切な賠償金を受け取るためのポイント

交通事故で傷痕が残った場合に、適切な額の賠償金を受け取るための注意点について解説します。

6-1. 整形外科だけでなく、形成外科や皮膚科を受診し、医師の指示に従って治療を受ける

交通事故に遭って顔に傷を負った場合、救急科や整形外科などだけでなく、傷痕が残らないための治療をする形成外科や皮膚科を受診してください。医師の指示に従って、傷痕が目立たなくなるか、または症状固定の診断を受けるまで、治療を継続することが大切です。

保険会社に治療費を打ち切られたとしても、自分だけの判断で途中で通院を中断したり、医師に相談せず独断で治療をやめたりしてはいけません。

6-2. 後遺障害診断書作成時の注意点

医師から顔の傷痕について症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定のための手続きを検討します。

この手続きには、医師に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。その際、顔の傷痕の大きさや部位を正確に測定し、記録に残してもらうことが重要です。

6-3. 顔の傷痕が職業に与える影響を主張する

顔の傷痕について後遺障害等級が認定されたら、逸失利益や後遺障害慰謝料といった賠償金の請求を検討します。

顔の傷痕が被害者の現在または将来の職業に悪影響を及ぼすことを具体的に示せるかどうかが、こうした賠償金が認められるかの分かれ目になります

6-4. 示談交渉前から弁護士へ相談する

けがの治療や日常生活をしながら、被害者自身が加害者や保険会社と示談交渉を行うのは、非常に負担やストレスがかかります。ましてや、賠償金請求の際に重要なポイントを押さえた主張を準備して交渉をするのは、こうした法的知識や交渉経験のない通常の被害者にはとても難しいことです。

弁護士に示談交渉などを依頼することで、こうした負担の軽減が期待できるだけではなく、早期に弁護士に相談しサポートを受けることで、次のようなメリットが得られます。

【賠償金の増額が期待できる】
適切な賠償金の支払いを受けるためには、適切な治療を受けたうえで、後遺障害等級の認定を受け、適切な賠償金の基準に従って加害者側に請求し、示談交渉などを行うことが必要です。

弁護士に依頼することで、こうした手続きを弁護士に一任できるだけでなく、弁護士の経験に基づいて適切な賠償を請求し、示談交渉をしてもらえます。その結果、加害者側が提示してくる賠償額からの増額が期待できます。弁護士は過去の裁判例に基づいた「弁護士基準(裁判所基準)」を用い、相手の保険会社が提示する額よりも高い賠償金を請求するからです。

交通事故の損害賠償における3つの基準を図解。任意保険基準と弁護士基準の差が大きいケースも少なくない
交通事故の損害賠償における3つの基準を図解。任意保険基準と弁護士基準の差が大きいケースも少なくない

【後遺障害等級認定もサポートしてもらえる】
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、顔の傷痕が後遺障害として認定されるかどうかの基準を正確に把握したうえで、認定される可能性があると判断した場合には、必要書類の収集などの準備を適切に行う必要があります。

弁護士に依頼すると、こうした手続きもサポートしてもらうことが可能です。医師から顔の傷痕に関して、症状固定で後遺症が残ると言われたら、早めに一度弁護士に相談することをお勧めします。

なお、加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、弁護士費用を保険でまかなえるケースがほとんどです。まずは自身の保険証券を確認してください。

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7. 弁護士介入によって交通事故による顔の傷痕の賠償金が増額された事例

弁護士である筆者が実際に顔の傷痕に関する依頼を受け、賠償金が増額された事例を紹介します。なお、個人情報保護の観点から、事案の内容を一部修正しています。また、今回は顔の傷痕に関する事例として紹介するため、そのほかのけがの症状に関する経過は割愛しています。

依頼者と事故やけがの状況
・依頼者:20代女性(学生)
・事故の状況:横断歩道を青信号で歩行中、徐行することなく左折してきた車両に追突され、衝突時の衝撃で飛ばされ、頭部や顔面部を強打するなどして、救急搬送された。
・治療経過:1カ月間の入院治療ののちに退院。その後は通院治療を10カ月ほど続けて症状固定と診断された。
・治療後の状況:事故時に顔面部に複数の切り傷を負い、治療を続けたが、外貌醜状として、複数の線状痕が残った。

筆者が依頼を受けた段階では、後遺障害等級認定の申請がすでに行われており、後遺障害等級は「非該当」と判断されていました。

筆者が実際に複数の線状痕の状態を確認し、医療記録なども含めて検討したところ、複数の線状痕が近接しており、これらを合算すると少なくとも3センチメートルを超えるのではないかと判断しました。そのため、これらの見解をまとめた意見書を作成して資料をそろえ、異議申立てを行いました。

審査の結果、最終的に近接した一体の線状痕と評価できると判断され、後遺障害等級12級14号の認定を受けることができました。

また、示談交渉で相手側の保険会社は当初、被害者は学生であり仕事には影響しないという理由で、逸失利益なしと判断しました。示談交渉が難航したため、裁判で客観的に判断してもらったほうがよいと考え、裁判を提起しました。

裁判で筆者は、学生の場合は顔の傷痕によって将来の進路や職業選択の範囲が狭まることや、実際に減収が生じる可能性があることを強調しました。また、被害者が就職を予定していた職業を諦めざるを得ないという支障がすでに生じていることなどを具体的に示したうえで、類似したケースの過去の裁判例を示すなどしました。

その結果、裁判所からは和解案として、こちらが主張していた逸失利益が認められることを前提に、労働能力喪失期間は一部調整されたものの、後遺障害慰謝料も含めて、保険会社からの当初の提示額よりも1000万円以上の増額が提示され、和解が成立しました。

8. 交通事故による顔の傷痕に関してよくある質問

Q. 顔がぐちゃぐちゃになるほど大けがをした場合、後遺障害何級が認定される?

外貌醜状の後遺障害等級は最も重いもので7級12号ですが、顔が損傷が激しいほどの大けがをしたとすると、脳への衝撃も相当に大きかったことが予想され、脳損傷などにより脳の後遺障害が残存している可能性も考えられます。

その場合、脳に関する後遺障害等級として、程度によりさらに重い等級が認定されることがあります。

Q. 事故から数年経って傷痕が目立ってきた場合、あとからでも慰謝料や逸失利益を請求できる?

傷痕による後遺障害慰謝料や逸失利益を加害者やその保険会社に請求できるのは、症状固定時の翌日から数えて5年間です。5年が経過した場合は、消滅時効により請求できなくなる可能性があります。なお、自賠責保険への請求の場合は、時効期間は3年間です。

時効前であったとしても、事故から数年経って後遺障害慰謝料の請求をする場合は、そもそも後遺障害等級認定が受けられるか、また事故によって残った傷痕であることを医学的に証明できるのかなどについても、検討が必要です。

Q. 交通事故で子どもの顔に傷痕が残ったら、大人と同じ基準で慰謝料はもらえる?

子どもの場合でも、原則として顔の傷痕に関する後遺障害等級認定の基準は同一です。ただし、子どもの場合は逸失利益や後遺障害慰謝料の金額を判断する際、将来の職業選択の幅が狭まるなどの観点から、逸失利益の有無や後遺障害慰謝料の金額が算定されることがあり、その場合は大人と異なった金額が認定されることもあります。

Q. 交通事故で自分の過失が大きくても、顔の傷痕の慰謝料は請求できる?

請求は可能ですが、自分に事故の過失がある場合はその割合に応じて減額されるため、過失割合が大きい場合は十分な補償がなされないことがあります。

なお、自賠責保険を利用して保険金を請求する場合、自分の過失割合が70%未満であれば減額なしに請求が可能ですが、自賠責保険による補償は最低限の金額となるため、補償の上限額が存在することに注意が必要です。

Q. 傷痕を消すために受けた自由診療の整形手術費用も、全額請求できる?

傷痕を消すための整形手術の費用は、治療の一環として必要性が認められる場合は請求できることもありますが、医師の指示や判断に基づかない整形手術を自費で行った場合には、事故との因果関係が否定されて請求できない可能性があります。

不安な場合は、実際に手術を受ける前に弁護士に相談することをお勧めします。

9. まとめ 交通事故で顔に傷痕が残ったら、弁護士に相談し適切な後遺障害認定や賠償請求を

顔に傷痕が残ることは、交通事故の被害者にとって、精神的にも非常につらいことの一つです。将来の仕事や日常生活への不安などは大きいものの、加害者や保険会社からそれに見合った賠償額の提示を得られないケースも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、賠償金請求のために重要なポイントを押さえながら相手や保険会社との示談交渉を進めてもらうことができ、当初の提示額から増額できる可能性もあります。また、手続きを代行してもらうことで、自分の負担やストレスも軽減されます。

顔に残った傷痕の賠償で悩んでいる場合は一度、交通事故に関する事案の取り扱い経験が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

甲野裕大(弁護士)

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甲リーガル法律事務所 代表弁護士
第二東京弁護士会所属、登録番号49939。医療分野のなかでも不妊治療分野の法律問題に注力するとともに、交通事故分野も多く取り扱う。これまで所属してきた法律事務所において、被害者側の弁護士としてだけではなく、加害者側(保険会社側)の弁護士としても多くの交通事故案件に携わった経験を生かして、双方の視点や考え方をふまえ賠償の見通しや方針を立てたうえで、適切な解決に向けて尽力する。型にはまった解決策ではなく、幅広い選択肢のなかから一人ひとりにとっての最適な解決を常にめざし、日々業務に邁進している。
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