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1. 交通事故で骨折した場合の慰謝料相場と計算方法
交通事故で骨折した場合には、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。それぞれの慰謝料の相場と計算方法について解説します。
1-1. 【重要】慰謝料の3つの算定基準
慰謝料を算定する際には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの基準があります。
自賠責保険基準は、すべての車に加入が義務づけられている自賠責保険の支払い基準です。被害者の救済を目的としており、3つの基準の中で最も低い金額となります。任意保険基準は、各保険会社が内部的に定める支払い基準で、金額は自賠責基準と弁護士基準の中間程度です。
一方、弁護士基準(裁判所基準)は、蓄積された過去の判決をもとに、被害者が訴訟提起した場合に判決で認められると見込まれる金額相場で、自賠責基準や任意保険基準よりも高額に設定されています。
加害者側の任意保険会社は、被害者に弁護士がつくまでは自賠責基準や任意保険基準で慰謝料を算定し、被害者に弁護士がついた場合は弁護士基準で交渉することが多いです。
したがって、弁護士基準に基づいて算定される慰謝料を請求したいのであれば、弁護士への依頼が重要です。
1-2. 入通院慰謝料の相場|入通院期間や通院日数によって異なる
入通院慰謝料とは、交通事故でけがをして入院や通院を余儀なくされたことによる肉体的・精神的苦痛に対する賠償金です。自賠責基準と弁護士基準で計算方法が異なります。なお、任意保険基準は一般に公開されていません。
例として、交通事故で骨折し、治療のための入院期間が1カ月間、通院期間が6カ月間、うち通院日数が24日間の事案で計算します。
【自賠責基準の場合】
自賠責基準では「対象日数×4300円」の計算式で入通院慰謝料額が算出されます。対象日数は、「治療期間」または「実入通院日数×2」のいずれか短いほうになります。
入院期間1カ月間・通院期間6カ月間、うち通院日数が24日間である場合、治療期間は「入院1カ月(30日)+通院6カ月(180日)=210日、実入通院日数×2は「(入院1カ月+通院日数24日)×2=108日」となり、短いほうの108日が採用されます。
したがって、自賠責基準による入通院慰謝料は「108日×4300円=46万4400円」となります。
【任意保険基準】
任意保険基準は保険会社によって異なり、非公表です。基本的には弁護士基準より低額で、自賠責基準に近い金額となります。
【弁護士基準の場合】
弁護士基準での入通院慰謝料は、重傷の場合に用いられる基準と、軽傷(むちうち症で他覚所見がない場合や軽い打撲や挫創など)の場合に用いられる基準の2つがあり、重傷の場合に用いられる基準のほうが高額に設定されています。
骨折はX線画像またはMRI画像によって骨への異常所見が認められる傷病であるため、重傷用の基準が採用されるケースが多いです。
以下、弁護士基準における重傷用の入通院慰謝料の早見表です。入院期間と通院期間の交差するマスの数字が入通院慰謝料額の目安となります。
たとえば、入院期間が1カ月間で、通院期間が6カ月間、うち通院日数24日間である場合、入通院慰謝料は上記の表の「入院期間1カ月」と「通院期間6カ月」が交わる部分の「149万円」となります。
1-3. 後遺障害慰謝料の相場|32万~2800万円程度
後遺障害慰謝料とは、交通事故で負ったけがが完治せず症状が残ったことにより、被害者が受けた肉体的・精神的苦痛に対する賠償金です。
後遺障害慰謝料の金額は、認定される後遺障害等級に応じて決まります。後遺障害等級は要介護1級・2級と介護を要しない1級から14級までの16段階に分けられており、症状が重いほど等級が小さく、慰謝料が高額になります。
自賠責基準と弁護士基準における後遺障害慰謝料は、以下の表のとおりです。任意保険会社基準が非公表である点は入通院慰謝料と同様です。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
要介護1級 | 1650万円 | 2800万円 |
要介護2級 | 1203万円 | 2370万円 |
1級 | 1150万円 | 2800万円 |
2級 | 998万円 | 2370万円 |
3級 | 861万円 | 1990万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
6級 | 512万円 | 1180万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
このように、同じ等級でも基準によって2倍以上の差が出ることがあります。また、等級が1つ違うだけでも金額が大きく変わるため、適切な等級認定を受け、弁護士基準で請求することが大切です。
なお、骨折の場合は、足指、上腕骨、頸椎(けいつい)など骨折した箇所の違いによって該当し得る等級が異なります。
【足や足指、上腕、手指の骨折】
足や足指、上腕、手指の骨折において後遺障害が残る可能性があるのは、切断などの欠損、可動域制限などの機能障害、変形、醜状(傷あとやケロイド、変色が残る状態)などです。また、しびれなどの神経症状が残る場合もあります。
たとえば、切断手術などにより両腕をひじ関節以上で失った場合には1級3号、片腕をひじ関節以上で失った場合には4級4号が認定される可能性があります。
【頸椎骨折】
「頸椎」とは、頭を支える首の部分の背骨です。頸椎骨折で後遺障害が残る可能性があるのは、可動域制限などの機能障害、変形、醜状などです。
また、頸椎の骨の内部には、脳と全身をつなぐ重要な神経である脊髄(せきずい)が通っています。脊髄の損傷を伴う場合には、しびれなどの神経症状が残ったり、場合によってはまひのような重篤な障害が残ったりする場合もあります。
たとえば、頸椎骨折により頸椎に著しい変形や運動障害が残った場合には、6級5号に認定される可能性があります。
2. 【事例別】交通事故で骨折した場合の慰謝料額シミュレーション
3つの例をもとに、交通事故で骨折した場合の慰謝料の金額を弁護士基準でシミュレーションします。なお、治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害が残ったことによる逸失利益など、慰謝料以外の損害賠償については後述します。
2-1. 事例①|骨折で入院はしなかったが9カ月通院し、後遺障害が残らなかった場合
症状が残っていないため後遺障害慰謝料は請求できないものの、入通院慰謝料は請求できます。
弁護士基準での入通院慰謝料には、軽傷用と重傷用の2つの基準があり、骨折の場合は重傷用の基準を採用します。「1-2. 入通院慰謝料の相場|入通院期間や通院日数によって異なる」にある表を見ると、「入院期間0カ月」と「通院期間9カ月」が交差するマスの数字は「139」となっています。
したがって、この場合の入通院慰謝料額は139万円となります。
2-2. 事例②|骨折で1カ月入院、8カ月通院して、12級の後遺障害が認定された場合
後遺障害が認定された場合、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料も請求できます。
弁護士基準での入通院慰謝料は、「1-2. 入通院慰謝料の相場|入通院期間や通院日数によって異なる」にある表の「入院期間1カ月」と「通院期間8カ月」が交差するマスを見ます。この場合の入通院慰謝料額は164万円です。
また、弁護士基準による後遺障害12級の後遺障害慰謝料は290万円となります。
したがって、この場合の慰謝料の合計額は「164万円+290万円=454万円」となります。
2-3. 事例③|骨折で3カ月入院、12カ月通院して、後遺障害5級が認定された場合
弁護士基準での入通院慰謝料は、「1-2. 入通院慰謝料の相場|入通院期間や通院日数によって異なる」にある表の「入院期間3カ月」と「通院期間12カ月」が交差するマスを見ます。この場合の入通院慰謝料額は236万円です。
また、弁護士基準による後遺障害5級の後遺障害慰謝料は1400万円となります。
したがって、この場合の慰謝料の合計額は「236万円+1400万円=1636万円」となります。
3. 交通事故で骨折した場合に、適正額の慰謝料を受けるためのポイント
交通事故で骨折した際、適正額の慰謝料を受け取るためには、以下のポイントに注意してください。
人身事故として警察に報告する
医師の指示に従い、適切な頻度で治療を受ける
整骨院や接骨院に通うときは、事前に医師の指示を受ける
後遺障害等級認定の被害者請求を行う
弁護士基準(裁判所基準)で慰謝料を計算し、請求する
交通事故に強い弁護士に依頼する
3-1. 人身事故として警察に報告する
「交通事故証明書」とは交通事故の発生を公的に証明する書類で、保険金を請求する際に必要になります。交通事故証明書での取り扱いが「人身事故」ではなく「物損事故」とされていると、慰謝料や休業損害などの人身損害に関する保険金がスムーズに支払われないおそれがあります。
交通事故証明書で人身事故として取り扱われるためには、警察署提出用の診断書を医師に作成してもらい、警察署に提出して人身事故への切替えを申請する必要があります。医師の診断書が提出されないと、交通事故証明書での取り扱いは基本的に車や建物など「物」だけが破損した「物件事故」とされます。事故から日数が経つと人身事故への切り替えを受け付けてもらえない可能性があるため、早めに切り替えを申請しましょう。
自賠責保険の被害者請求をする場合も、物件事故扱いになっていると「人身事故証明書入手不能理由書」という書類の提出を求められ、追加資料が求められるケースもあります。
このような手間を省くためにも、交通事故でけがを負った際には人身事故として警察に報告するようにしてください。
3-2. 医師の指示に従い、適切な頻度で治療を受ける
弁護士基準の入通院慰謝料は、入院期間と通院期間の2つの要素によって算定します。被害者が医師の指示に従わずに自己判断で治療を中止した場合は、入通院期間が短くなるため入通院慰謝料が低額になります。
また、後遺障害等級の認定においても、必要な治療を尽くしていないため後遺障害が認定されない可能性が高まり、適正な賠償を得られないリスクがあります。
医師の指示に従って入通院し、完治または症状固定(これ以上治療を続けても改善の見込みがない状態)の診断を受けるまで治療を継続するようにしてください。
3-3. 整骨院や接骨院に通うときは、事前に医師の指示を受ける
整骨院や接骨院は医療機関ではなく、そこでの施術は医師免許のない柔道整復師により行われます。柔道整復師は、医師の同意を得た場合を除き、骨折の患部を施術してはならないと定められています。そのため、整骨院や接骨院に通院すると、相手の保険会社から治療の必要性を疑われ、慰謝料が減額されるおそれがあります。
骨折の患部の施術のために整骨院や接骨院に通院したい場合は、法律上、医師の同意が必要となるので注意しましょう。
3-4. 後遺障害等級認定の被害者請求を行う
後遺障害等級認定の審査は、申請の際に提出された資料に基づいて自賠責損害調査事務所が行います。
申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
「事前認定」は、加害者側の任意保険会社に申請を一任するものです。ただし、保険会社は等級認定に基づいて慰謝料などを支払う立場です。そのため、保険会社は申請の際に被害者に有利な資料を積極的に添付してくれるとは限りません。
一方の「被害者請求」は、被害者が自ら、または弁護士に依頼し、必要な証拠書類を集めて申請を行う手続きです。被害者請求には次のようなメリットがあるため、後遺障害等級認定の申請は被害者請求で行うのが望ましいと言えます。
適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まる
認定の結果に納得しやすい
自賠責分の保険金の先払いを受けられる
加害者が任意保険に加入していなくても申請できる
3-5. 弁護士基準で慰謝料を計算し、請求する
入通院慰謝料も後遺障害慰謝料も、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの基準があり、弁護士基準が最も高額です。
そのため、弁護士基準で慰謝料を計算し、請求するのが望ましいです。示談書に一度サインをすると、後から追加で賠償金を請求することが基本的にできなくなるため、サインをする前に保険会社の提示額を確認して増額の交渉を行いましょう。
3-6. 交通事故に強い弁護士に依頼する
交通事故で骨折し、後遺障害が残った場合は、多岐にわたる後遺障害の内容のなかから適切なものを選定する必要があり、また後遺障害認定のための資料収集や必要な検査も受ける必要があります。
医師は治療の専門家ではありますが、損害賠償の専門家ではありません。そのため、後遺障害等級認定の基準に詳しくない場合もあります。交通事故に強い弁護士に早期に依頼して、適切な助言を受けるようにしてください。
交通事故を弁護士に相談や依頼をすると、主に以下のメリットが期待できます。
治療や検査に関するアドバイスがもらえる
保険会社からの「治療費の打ち切り」に対応してもらえる
適切な被害者請求により正しい後遺障害等級が認定されやすくなる
慰謝料を弁護士基準で請求できる
慰謝料以外の損害項目も漏れなく確認してもらえる
保険会社は交渉のプロです。被害者自身で慰謝料の増額を交渉しても応じてもらえない可能性があります。弁護士に依頼すれば、弁護士基準での増額が期待できるほか、慰謝料以外の損害項目についても漏れなく確認し、不足のない請求が望めます。
また、適正な後遺障害等級を得るためには、必要な検査を実施して、主治医に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。後遺障害によっては、後遺障害診断書以外の書類が別途必要となる場合もあります。弁護士に依頼すれば、必要な検査の選定や書類の収集など、後遺障害等級認定の請求に向けて最善を尽くしてもらえます。
なお、自動車保険などに弁護士費用特約が付いている場合は、弁護士への依頼費用を保険会社が負担してくれる場合があります。自己負担ゼロまたは少ない負担で弁護士に依頼できるほか、翌年以降の保険料も上がりません。特約が利用できるかどうかは、保険会社に確認してください。
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4. 【注意】交通事故の慰謝料が減額されるケース
以下のようなケースでは、交通事故の慰謝料が減額される可能性があるので注意してください。
4-1. 自己判断で治療を中止する
入通院慰謝料は、入院期間と通院期間に基づいて算出されます。そのため、被害者が医師の指示に従わずに自己判断で治療を中止した場合は、入通院期間が短いために入通院慰謝料が低額になるおそれがあります。また、必要な治療を尽くしていないために後遺障害が認定されない可能性も高まります。
治療の中止は自己判断では行わず、必ず医師の指示に従って判断するようにしましょう。
4-2. 被害者側に過失がある
過失とは、事故におけるミスや不注意などを言います。事故状況によって異なるものの、一般的には被害者にも多少の過失が認められるケースが多いです。
被害者側にも過失がある場合には、その割合に応じて賠償額が減額される「過失相殺(かしつそうさい)」がなされます。たとえば、損害額が200万円の事故で、過失割合が「加害者10:被害者0」の場合、被害者は200万円全額を受け取れます。しかし、「加害者8:被害者2」の場合には、過失分の2割を差し引いた160万円しか受け取れません。
過失割合は過去の裁判例などに基づいて行われるため、弁護士への依頼をお勧めします。弁護士に依頼すれば、過失割合の主張が説得力を増すだけでなく、最終的な結論への納得感も得られます。
4-3. 被害者に持病や既往症がある
被害者に持病やすでに完治している病気やけがの既往症があり、それらが交通事故後の症状に影響していると考えられる場合には、交通事故と当該症状との因果関係が争われ、因果関係が認められて慰謝料が減額される可能性があります。これを「素因減額(そいんげんがく)」と言います。
持病や既往症があり、加害者側が交通事故後の症状への因果関係や素因減額を主張してきた場合は、高度な法律上の議論になるので、交通事故に精通している弁護士への依頼をお勧めします。
5. 交通事故で骨折した場合に、慰謝料以外にもらえるお金は?
交通事故で骨折した場合、被害者は慰謝料以外にも、交通事故と相当因果関係が認められる範囲で、治療などにかかった費用や、事故がなければ本来得られたはずの利益を請求できます。
慰謝料以外に請求できる賠償項目を紹介します。
5-1. 積極損害|治療費など
積極損害とは、事故により支出を余儀なくされた費用のことです。
骨折した場合は、完治または症状固定と診断されるまでにかかった入院費用や通院費用、薬の費用、通院交通費などが含まれます。通院交通費は、自家用車で通院した場合でも一定程度認められるのが一般的です。
加えて、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢などによって必要がある場合は、「入通院付添費」も積極損害として認められる可能性があります。近親者による付添いの場合にも請求できる場合があります。
また、重傷で将来にわたって車椅子が必要になった場合は、車椅子の購入代金も賠償が認められる可能性もあります。
そのほか、交通事故に関連した支出がある場合は、それも請求できる可能性があります。ただし、基本となる入院費用や通院費用、薬の費用、通院交通費以外の積極損害については、交通事故との因果関係や損害額が問題となるケースが多いため、弁護士に相談しながら進めるのがお勧めです。
5-2. 消極損害|休業損害や逸失利益など
消極損害とは、事故がなければ得られたはずの収入や利益を指します。
完治や症状固定と診断されるまでの入通院で仕事を休まざるを得なかった場合は、その間の賃金を補償する「休業損害」を請求できます。また、後遺障害が認められた場合には、逸失利益(事故がなければ将来得られたはずの収入や利益)を請求できます。消極損害は家事従事者や無職者でも認められる場合があります。
休業損害については、事故との因果関係が問題になるケースも少なくありません。具体的には、受傷部位の治療状況と職種や仕事内容を考慮し、保険会社から「治療中でも仕事ができたのではないか」と反論される可能性があります。
カルテを取り寄せたり、医師から意見を聴取したりする必要がある事案もあるため、相手側からの反論があった場合には弁護士への依頼をお勧めします。
また、消極損害は金額が争点になるケースが多く、職業形態(給与所得者や、事業所得者、家事従事者など)によって証拠資料が異なる点に注意が必要です。
6. 交通事故で骨折した被害者が賠償金を受け取るまでの流れ
交通事故に遭って骨折し、治療などを経て賠償金を受け取るまでの流れは、おおむね以下のようになります。
6-1. 事故直後の対応
事故車両の運転者などは法律上、次の義務を負っています。
負傷者がいる場合は救急車を呼ぶなどの救護措置をする
ハザードランプを点灯させる、発炎筒をたくなどして道路の危険防止措置をする
警察に交通事故の発生および事故内容を報告する
被害者側は、交通事故に遭ったら、まずは加害者の連絡先を入手し、ドライブレコーダーの搭載状況を確認してください。また、事故現場全体の状況や自身のけがの状況、車両の損傷状況などを撮影して記録に残しましょう。加入している保険会社への連絡もすみやかに行ってください。
6-2. 医療機関の受診
すみやかに医療機関を受診し、完治または症状固定と診断されるまで治療を続けてください。自分の判断で医療機関への受診を中止すると、得られる慰謝料額が減り、後遺障害等級が認定されない可能性があります。
なお、交通事故の被害に遭って治療をする場合、通常は加害者の任意保険会社が病院に直接治療費を支払います。これを「一括対応」と言います。しかし、治療中であるにもかかわらず、保険会社から一括対応を打ち切る旨を通達されるケースがあります。
一括対応の打ち切りは保険会社側の都合であり、必ずしも完治や症状固定を意味するものではありません。治療を続けるべきかどうかを判断するのは主治医の役割です。症状が残っている場合は、すみやかに主治医と相談し、治療を続けるべきかどうかの判断を仰いでください。
一括対応打ち切りの通達を受けたあとも治療が必要である場合は、保険会社に治療費支払い延長の交渉を行うか、労災保険や健康保険に切り替えたうえで治療を続け、完治や症状固定の診断を受けたあとに交渉や民事訴訟などで保険会社に立替分を請求してください。
6-3. 完治または症状固定の診断
治療を経て症状がなくなった場合は「完治」となります。一方で、最後まで完治せずに症状が残る場合は、医師の判断により「症状固定」と診断されます。
完治や症状固定の判断は、保険会社ではなく主治医が行います。
6-4. 後遺障害等級認定の申請
症状固定後も症状が残る場合は、後遺障害等級認定を申請します。申請方法には、保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身または依頼した弁護士が書類をそろえて申請する「被害者請求」の2つがあります。
被害者請求のほうが手間はかかるものの、正しい後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
6-5. 示談交渉
けがの完治後、または後遺障害等級の認定後に、加害者側と示談交渉を行います。示談交渉に要する期間は、加害者側と被害者側で意見が異なる点(争点)の多さや内容の複雑さ、交渉の難易度などによって異なります。特に争点がなければ、弁護士基準で請求して問題なく認められるケースもあり、その場合は1カ月ほどで完了します。
争点がある場合は、準備作業の複雑さの程度によっては交渉が成立するまでに6カ月程度かかる可能性もあります。
6-6. ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟
当事者間での示談交渉が難航した場合には、ADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟など、第三者が関与する手続きで解決をめざします。
ADR(裁判外紛争解決手続)とは、中立的な第三者を交えた話し合いの場です。手続きによっては期間が「3カ月以内」と決められているなど、訴訟に比べて早期解決をめざせるのが特徴です。
交通事故のADRには複数の種類があり、無料で利用できるものもあります。また、利用できる条件もさまざまであるため、詳細を知りたい場合は弁護士への相談をお勧めします。
6-7. 賠償金の受け取り
示談交渉やADR、訴訟などによって賠償金額が確定したら、通常は1週間から1カ月以内に保険会社から賠償金が支払われます。
加害者が任意保険に加入していない場合は、賠償金が支払われない可能性があります。その場合は、相手の給与や不動産などを差し押さえて強制的に賠償金を回収する「強制執行」などの手続きが必要です。
加害者の勤務先が判明している場合には給与を差し押さえますが、勤務先が不明な場合は財産調査をする必要があり、数カ月を要する可能性があります。
7. 交通事故による骨折の慰謝料に関してよくある質問
Q. リハビリのための通院も入通院慰謝料の通院期間に含まれる?
リハビリのための通院も、入通院慰謝料の通院期間に含まれます。実務では、医師による診察は経過の把握と定期的な薬の処方のためであり、通院の多くはリハビリのためであることも珍しくありません。また、医師の同意を得た場合は接骨院での施術も通院に含みます。
ただし、完治または症状固定と診断されたあとのリハビリは、原則として通院期間に含まれません。
Q. ギプス固定中の自宅待機は入院と同じ扱いになる?
ギプス固定中などのうち、安静を要する自宅療養期間は、通常は入院期間とはみなされません。ただし、骨折部位をギプス固定して入院待機している期間などは、例外的に入院期間とみなされる場合もあります。
医師の指示内容などにもよるため、弁護士への相談をお勧めします。
8. まとめ 交通事故で骨折を負い慰謝料を請求する場合は弁護士への早めの相談を
交通事故で骨折した場合、完治または症状固定まで治療のための入通院に対する「入通院慰謝料」と、症状固定後の残存症状に対する「後遺障害慰謝料」を請求できます。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の算定には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの基準があり、このうち弁護士基準が最も高い金額が設定されています。弁護士基準で入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求するには、弁護士に依頼しましょう。
また、後遺障害慰謝料を請求するには適切な後遺障害診断書を入手したうえで、被害者請求で後遺障害等級認定の申請をするのが望ましいです。
交通事故に遭って骨折した場合は、けがの治療に専念しながら加害者側との示談交渉をストレスなく進め、適切な額の入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を受けるためにも、弁護士への早めの相談をお勧めします。
(記事は2026年10月1日時点の情報に基づいています)
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